ゾイドバトルストーリー 中央山脈の戦い 山岳基地攻防戦   作:ロイ(ゾイダー)

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今回は作戦会議関係の話になります。戦闘はありません



第3話 戦力分析 前編

ZAC2045年 12月14日 

 

―――――――― ZAC2045年 12月14日  中央山脈某所―――――――

 

 

中央山脈で縦横無尽にゲリラ戦を繰り返し、正面戦力に勝る帝国軍に多大な損害を強いていたヘリック共和国軍は、山脈の各地に無数の仮設基地を保有していた。

 

中央山脈の山岳地帯の奥深くにある谷間の一つに設けられたこの拠点もその一つである。岩山に挟まれた大地には、組み立て式の基地施設と輸送ゾイド グスタフが3台いた。

 

内2台は通常のグスタフだったが、最後の1台は、他のグスタフと違う塗装が施され、形状も一部異なっていた。このグスタフは、移動指揮所として利用されていたのである。

 

グスタフの就役以前、共和国軍ではこの手の移動指揮所は、ビガザウロやゴルドスが利用されてきた。

 

だが、この2機種は、敵の攻撃に脆弱だという欠点があった。特にビガザウロは、ZAC2030年代の時点で旧式化が著しく、帝国ゾイドと遭遇した場合壊滅する可能性が高かったのである。

 

事実、ある戦闘では、サーベルタイガーの奇襲攻撃を受けて破壊され、それで指揮系統が崩壊した悲劇もあった。だがグスタフの場合、いざという時には、司令部要員をその分厚いことで有名な装甲に守られたコックピットへと避難させることが出来た。

 

通常型のグスタフでも最大6人を収容可能な程広いが、この移動指揮所型のグスタフは胴体内にも居住区画が延伸されており、機体出力と速度の低下と引き換えに司令部要員を全員収容可能だった。

 

そのグスタフの隣には、情報分析用に新型の電子戦ゾイド ゴルヘックスが待機している。護衛部隊がいた。10機程の護衛部隊の指揮官機を務めるのは、約1か月前に実戦配備されたばかりの新型歩兵ゾイド アロザウラーである。

 

アロザウラー以外には、ゴドス、カノントータス、コマンドウルフが展開していた。グスタフも、護衛機も共にこの周辺の風景に溶け込む様な白系統の迷彩塗装が施されている。

 

「それにしても隊長、退屈な任務ですよねぇ」

 

「軍曹、たるみ過ぎだぞ」

 

アロザウラーに搭乗する指揮官 ウェルク・ラーソン少佐は、やや語気を強めて部下を窘めた。この部隊に配属されてから、彼は、一度も実戦を経験していない。

 

彼の部下達も同様である。その為、彼の部下の一人がこのような発言をしてしまうのもある意味当然と言えた。

 

だが、ウェルクは、着任当時からこの日に至るまで、任務期間中は一度も気を抜いたことは無かった。

 

なぜならば、護衛対象の重要性は些かも衰えることは無かったからである。

 

この移動指揮所には、中央山脈に展開する共和国軍の総司令部が設置されている。もし今ここに帝国軍の砲撃なり、空爆なりが行われたら、中央山脈に展開する共和国軍の相当数は、機能不全に陥りかねない。

 

丁度、ウルトラザウルスの艦砲射撃で司令部を吹き飛ばされたZAC2038年のゼネバス帝国軍の様に。数年前ゼネバス帝国本土での戦いで、指揮系統が崩壊した軍隊がいかに脆い物かをそれと交戦する立場で見せられた。

 

 

あのカオスが自軍に降りかかること等、想像したくも無かった。この髭面の護衛部隊指揮官の考えるとおり、中央山脈に展開するヘリック共和国軍を一人の戦士に例えるならば、この移動司令部は、戦士の頭脳に例えることが出来るだろう。

 

現在、グスタフに連結されたトレーラーの中では、共和国軍の頭脳を形成する脳細胞とも言える共和国軍の参謀や士官達が作戦会議を行っていた。

 

「これより、中央山脈封鎖作戦<自由の両手>の第4段階 北国街道分断作戦についての作戦会議を開始する。」

 

会議は、第6軍集団 司令官 スタンリー・ノートン中将の一言から始まった。この巌の様な巨躯の持ち主の指揮下には、4つの師団が存在している。内1つは、次の作戦の為に新たに送り込まれた師団である。

 

第6軍集団は、中央山脈北部での戦闘を担当する部隊で、大半の部隊がゲリラ戦に適した中型、小型ゾイドで編成されている。

 

この室内は、防音加工が施され、外部の人間はこの空間で行われた会話の内容を知るすべはない。また二重構造の外壁の間に特殊な断熱材を挟むことで、内部に何人の人間がいるのかも分からない様になっていた。

 

 

今回の会議には、作戦に参加する各師団の司令官やその副官、参謀、一部には大隊指揮官が集められていた。また陸軍のみならず、物資輸送や航空支援に関わる海軍、空軍の将校も連絡役として参加していた。

 

その中には、会議のオブザーバーとしてヘリック共和国の最高指導者であるヘリック2世 大統領の姿もあった。

 

 

ヘリック大統領…正確に言うならば、大統領の服装をした人物は、翼の形をした飾り付ヘルメットをかぶった姿でノートン中将の右隣の席に座っていた。無論本物の大統領がここにいる筈はなく、彼は、ヘリック大統領の影武者であった。

 

 

影武者達は、各方面の共和国 陸・海・空の三軍の前線を視察し、前線の兵士の士気を高めると共に敵側の攪乱を目的に各地の戦場に派遣された。

 

記録上、ヘリック大統領は、今日のこの作戦会議以外にも2つの部隊の視察を行い、3日前は、ミドルハイウェイ方面での残敵掃討作戦で、シールドライガー部隊を率いて参加していたことになっている。

 

更にその1週間前には、空中輸送の主力を成す サラマンダー輸送隊で活躍したパイロットに勲章を授与していた。

 

これは、明らかに1人の人間では不可能な行為であると幼児でも分かる事だろう。

 

同じ日に別の離れた場所で、ヘリック大統領が率いるとされた部隊による攻撃が行われることも珍しくは無かった。だが、それらが影武者であるとは、前線の共和国軍兵士も、敵であるゼネバス帝国軍の将兵も知ることは出来ない。

 

大統領の影武者が戦闘ゾイドに乗り込み出撃し、前線に視察に現れる度に共和国軍の士気は向上した。

 

「ヘリック大統領が、部隊を率いて現れた。」

 

この情報が伝わっただけで前線の共和国軍は勢いを盛り返し、逆に帝国軍は、浮き足立った。

 

 

どこかの戦場にいるであろう、本物のヘリック大統領を捕える為に帝国軍は何十万という将兵と多数の戦闘ゾイドを主戦場である共和国領に派遣した。だが、これらの大軍は、占領地の治安維持や各地の共和国軍部隊と戦うために分散され、各個撃破される始末であった。

 

今では、前線の共和国兵の間には、

 

「ヘリック大統領の弟は、ゼネバス皇帝1人だが、ゼネバス皇帝には、100人のヘリック兄さんがいる。」と言う冗談が流行っていた。

 

本物のヘリック大統領がどこにいるのかを知っている者は、共和国の軍人、政府関係者でも100人以下に限られていた。

 

 

「地図を見ればわかることだが、北国街道の遮断には、ダナム山岳基地の攻略が不可欠である。このダナム山岳基地攻略作戦については、既に2か月前に基本案が出来ているということを諸君はご存じのとおりだろう。だが、今日に至るまで帝国軍は、この拠点の戦力を増強していることが偵察部隊によって確認され、作戦の修正を必要とする可能性もあることを諸君には、考えていただきたい。…ダナム山岳基地の現有戦力については、ケネス・ロバートソン大佐からの報告がある。…ロバートソン大佐」

 

「はっ」

 

1人の青年士官が部屋の中央へと歩み出た。

 

共和国軍の青い軍服を着た金髪の青年に対して、会議の参加者の視線が集中する。

 

ケネス・ロバートソン大佐は、第3師団旗下の第6機動大隊の参謀である。

彼は、ミドル・ハイウェイ分断作戦の作戦立案にも関わっていた。

 

15日前に34歳の誕生日を迎えたこの男は、今回の作戦の攻略対象であるダナム山岳基地の敵戦力の分析を担当していた。

 

「…はじめてくれたまえ」

 

影武者ヘリックの落ち着いた声が会議室に響いた。

 

その声は、本物の大統領のそれと見分けが付かなかった。もしかしたら本物の大統領がこの場にいるのかもしれないと思ってしまう者さえいた。

 

その多くは、各師団の参謀や副官を務める若手将校達で、その中には、最新の戦力分析報告を行うケネス大佐も含まれていた。

 

「現在のダナム山岳基地の敵戦力についてですが、現在のダナム山岳基地攻略作戦の基本案の前提である3か月前の駐留戦力予想とは大きく異なっています。尚この情報は、現在も活動中の友軍偵察部隊からの報告により、更新されるものと考えてください。」

 

「うむ…」

 

「…まず、現時点でのダナム山岳基地の戦力についてですが、比較の為に3か月前の駐留戦力についての話をさせていただきます。この時点では、基地内には、第3機甲旅団のアイアンコングノーマルタイプ5機、レッドホーン10機、サーベルタイガー10機と小型ゾイド146機を有する部隊が存在し、歩兵、整備兵等、後方要員合わせて約8000人弱が駐留していることが確認されていました。しかしその後、数回に渡って増援部隊が派遣されたことが確認されています。この増援部隊についての情報の内、最新の物は、今月初日の強行偵察作戦で、第223遊撃大隊所属のスネークス小隊によって確認されたものです。以下の映像をご覧ください。」

 

ケネスはここで一端発言を中断すると、データを収めたディスクを机の下に入れた。

同時に机の上に光の粒子が巻き起こり、何もない中空に像を結んだ。机に内蔵されたホログラム発生装置が作動したのである。

 

この技術が、地球人の手でゾイド星の住民にもたらされた時、彼らの多くは、それを人知を超えた魔法だとさえ思った。

 

だが、地球人の技術についてある程度理解している室内のメンバーは大した感慨を抱いていない。ここ最近は、毎日の様に青白い幽霊の様な光の像を見せつけられていた。

 

ホログラムには、ダナム山岳基地に駐留するゼネバス帝国軍の戦力…基地とその周囲に展開するゾイド部隊の映像が映し出されていた。

 

 

次々と表示され、切り替えられていく映像に映し出されるダナム山岳基地のゼネバス軍…それは、3か月前のダナム山岳基地の駐留戦力とは比較できない程強化されていることは、明らかであった。

 

その中でも目を惹いたのは、赤く塗装され、全身を重火器で武装したアイアンコング…アイアンコングmkⅡ限定型とその周囲にいるその量産型…アイアンコングmkⅡ量産型の姿だった。

 

その姿を見た会議の参加者の数人は、思わず言葉を漏らした。

 

「アイアンコングmkⅡもいるとは…」

 

「…あの赤い悪魔がいるとなると厄介なことになるな。」

 

強力だが、生産台数の少ないアイアンコングmkⅡ限定型は、重要な作戦に投入される。その為この機体が戦場に出現するということは、その地域がゼネバス帝国にとってどうしても確保したい場所であることを意味している。

 

その為、共和国軍にとってもこのゾイドは特別な存在であり、特に戦場で直接相対する確率が高い前線の兵士は、遭遇すれば生き残れない〝赤い悪魔〟と恐れていた。同様にゼネバス帝国側では、ライバル機であるゴジュラスmkⅡ限定型が、共和国の勇者の乗機として、ウルトラザウルスとは違った意味で、特別視されていた。

 

 

会議の様子を見たケネスは、机の下の端末を操作し、ホログラムの設定をアイアンコングmkⅡ限定型の映像で固定させた。

 

「このアイアンコング部隊の所属は分かっているのかね?」

 

同時にノートン中将が質問した。

 

「…第38北部方面隊の機体ではないのか?」

 

第6軍集団の指揮下の第12師団 師団長のジェフリー・スミス少将が自らの推測を口にした。

 

第38北部方面隊…通称〝オーロラ・ロック〟は、白く塗装されたアイアンコングmkⅡ量産型を保有する部隊で、この中央山脈では、最も有名なアイアンコング部隊であった。

 

山岳戦に熟練したこの部隊がダナム山岳基地の防衛に参加すると考えるのはある意味で当然と言える。

 

「オーロラ・ロックだと…もしそうなら長期戦で挑んでくるのは間違いないな」

 

「その可能性はどうなのだ?」

 

一瞬席に座る者達の視線がケネスに集中した………そして目の前の若き士官は、静かに口を開いた。

 

「…それについては、検討しましたが、まず考えられません。まず第1に〝オーロラ・ロック〟所属のアイアンコングは、全機がホワイトに塗装されています。第2にオーロラ・ロック部隊は、ダナム山岳基地の存在する更に北に数十キロ近く離れた、ヴィンターフィーア基地に駐留していることが確認されています。」

 

「…だが、部隊を交代させ、再塗装したという可能性があるのでは?」

 

「ありえません。それにそれが事実だとして、現在オーロラ・ロック部隊として駐留している部隊は、どこの所属なのかという問題があります。」

 

ケネスは冷静に質問を受け流しつつ、机に内蔵されたホログラム装置を操作した。彼の指がスイッチを押すと同時に別のホログラムが電子音と共に映し出された。

 

どこかの雪原を映し出した映像で、そこには、基地施設と共に白く塗装されたアイアンコングmkⅡ量産型が8機並んでいた。それらのゾイドの右肩には、第38北部方面隊 オーロラ・ロックの所属であることを示す。部隊章が刻まれている。

 

「オーロラ・ロックではないことが分かった…ではどこの部隊なのか?それについて推測は?」

 

影武者ヘリックが質問する。

 

「はい。既にどの部隊がダナム山岳基地に駐留しているのかは予測が出来ております。まずアイアンコングmkⅡ限定型を有する部隊は、10存在していますが、まずこの中で最もアイアンコングmkⅡ限定型を保有する部隊である<ローテ・アイゼン・ファウスト>大隊は、1か月前からヘリックシティ占領部隊に保有機全機が派遣されていることが宣伝放送で確認されています。また前述したオーロラ・ロックと第6機甲師団 第12機甲師団 第2兵器開発部隊の4つの部隊は、ゼネバス帝国領の防衛部隊に配備されていることが、情報部からの情報で確認されました。」

 

「ということは、候補は、残された5つの部隊のうちのどれかと言うことになるな。」

 

「はい。残り5つの部隊 第45装甲旅団 通称マイヤー戦闘団と第2装甲大隊は、クック要塞近辺に、 第21北部方面隊 ホワイト・ロックはヴィンタードライ基地に、第4装甲大隊は、ミドルハイウェイ分断作戦で打撃を受けて、現在クロケット砦で再編成中です。そして最後の候補である第23装甲師団は、本国から占領されている共和国領への移動が決定されたという情報が入ったのみで現在所在不明であります。………以上、アイアンコングmkⅡ限定型の存在等の情報を考慮すると、クルト・ヴァイトリング少将の第23装甲師団から派遣された部隊である可能性が高いと思われます。」

 

ケネスは、自身の分析結果を続けた。僅かな生産台数で製造が中止されたアイアンコングmkⅡ限定型を保有する部隊は、当然ながら数少なく、その中でも尤も有名なアルメーヘン橋攻略戦に参加したことで有名なアイアンコングmkⅡ限定型を多数擁する部隊<ローテ・アイゼン・ファウスト>(赤の鉄拳大隊)は、デスザウラー大隊と共に共和国首都 ヘリックシティの占領部隊に確認されていた。

 

その為、どの部隊の所属機かは比較的判別し易かったのである。

 

「ヴァイトリング…2038年の大攻勢でグレイ砦を最初に攻撃した将軍か。」

 

第8師団の師団長 ウォルター・バーク少将が言う。参加者の中で最年長である彼は、7年前のグレイ砦の陥落時に撤退支援を行うための部隊に参加していた。その時、ゴジュラスに搭乗していた彼は、ヴァイトリングの指揮下のアイアンコングと交戦した経験を有していた。

 

「次にアイアンコング以外の第23機甲師団からダナム山岳基地への派遣戦力についての調査結果を報告させていただきます。この機甲師団の配下には、ヨッヘン・エルツベルガー大佐の突撃部隊が存在しており、この部隊は、敵陣地の突破、敵部隊への打撃を目的とした部隊であり、レッドホーン14機、ブラックライモス36機、ツインホーン26機、モルガ68機、ゲルダー32機を保有しており、平野部での攻撃力と突破力は侮れないものがあります。今回の山岳戦では、基地周辺での防御に回ると考えられます。次に偵察、追撃、機動戦の為の高速部隊があり、指揮官のアルベルト・ボウマン中佐の指揮下にサーベルタイガー16機、ヘルキャット36機が所属しています。この部隊は、現在ダナム山岳基地周囲でのパトロール行動に従事しており、我々の偵察隊に被害が出ております。電子戦・通信部隊のディメトロドン6機、ゲーター20機、連絡機としてマーダ10機が配備されており、アイアンコング部隊の補助としてハンマーロック68機、イグアン56機、ゴリアテ、シルバーコング等、アタックゾイド120機が確認されています。」

 

「第23師団だけでもこれほどの大戦力とは、やはり長期戦は避けられないですな」

 

「ウォルター少将 それは当初の予定通りです。それに我軍には〝切り札〟があります。」

 

スミス少将が切り札という言葉を強調して言う。

 

「確かにな。だが、油断は出来ない。」

 

「第23師団以外の部隊についての情報は?」

 

ウォルター少将の隣に座る女性士官が挙手した。短く切った黒髪と童顔が特徴的なその女性士官の胸元には、准将の階級章が眩く煌いている。

 

彼女…リンナ・ブラックストン准将は、第8師団の参謀としてこの会議に参加していた。

若干32歳で准将の階級を手にした彼女の経歴は、士官学校首席卒業から、南部山岳道路制圧戦まで勝利の栄光に彩られていた。

 

彼女が今回の会議で報告を行っているケネス・ロバートソン大佐と会うのは、これが初めてではなく、任務外のプライベートでも何度か顔を合わせていた。彼女は、ケネス大佐とは士官学校の先輩後輩の関係であった。

 

リンナ先輩か… 士官学校時代に兵棋や作戦試案の評論で手酷く〝私的指導〟された時の事を思い出し、思わず苦笑いを浮かべたくなった。

 

だが、この公的な、厳粛な場でそれを行うのは、社会的自殺行為になりかねないとそれを押し殺した。

 

 

「第23師団以外の戦力については、まず前回の偵察時に駐留していた守備隊は、その大半が交代に本国に帰還しています。ダナム山岳基地の守備隊の大半は、第23機甲師団が占めており、それ以外の部隊は、部隊名は不明ですが、キャノリーモルガ20機で編成される砲兵部隊が2つ、多弾頭ミサイル装備のディメトロドン1機とミサイル戦仕様のブラックライモス3機で編成された砲兵部隊が1つ、ブラックライモス1機、イグアン10機、兵員輸送型モルガ5機で編成される部隊が2つ、最後にディメトロドン1機とゲーター7機で編成される通信部隊が存在が確認されています。最後にダナム山岳基地に駐留している兵員の数ですが、数日前に空軍のサラマンダー偵察機による高高度偵察で確認できた兵舎や物資の倉庫、トイレ等の数や基地施設と出入りする補給部隊の規模等の情報を勘案すると、ダナム山岳基地には、現在約32000人が駐留していると思われます。」

 

「32000もの兵員をあの山岳地帯の一点に集めて、補給の面では問題はないのかね?」

 

会議に参加していた将官の一人が質問する。戦争とは、将棋やコンピュータゲームの様にその地点に兵士や兵器を集めればいいと言うものではない。

 

戦闘開始から終了に至るまで、場合によっては戦争が終わるまでの間、その地域に展開する部隊の戦闘能力を維持し、兵士の生存を維持する為の物資とそれを継続的に補給する必要がある。

 

それが出来なければ、軍隊は戦わずして崩壊を余儀なくされる。

 

「敵基地の補給の面については、現在も調査中ですが、ダナム山岳基地へと移動している補給部隊の数や基地施設の規模から推測するに、基地単独では最大でも2ヶ月が限度だと考えられます。これ以上の期間、駐留戦力を維持するには、継続的な外部からの補給が必要です。更に前述したダナム山岳基地の戦力は基地施設の規模に対してやや過剰です。このことから、ダナム山岳基地の帝国軍は、前回の推定通りに山岳基地の防御を固め、持久戦を行い、我軍が冬の寒さと補給切れによって疲弊したところを集めた戦力で殲滅することを企図していると推測します。」

 

「やはり敵は我が軍が本格的な冬が訪れる前に短期決戦を挑むと考えているのだな…」

 

影武者ヘリックが威厳のある声で尋ねた。

 

「はい。敵は、これまでゲリラ戦を挑んできた我々が冬までの長期戦を戦い抜けないと考えていることは間違いありません。だからこそダナム山岳基地を決戦場に定めたのだと考えられます。」

 

「大統領閣下。」

 

ウォルター少将が挙手した。

 

「何かね」

 

「ゼネバス帝国軍は、我々がダナム山岳基地を短期間で攻略する為に強襲を仕掛けると思っているに違いありません。それを正面から粉砕する戦力として、精鋭の第23機甲師団を送り込んだのでしょう。これまでのケネス大佐の分析は、それを裏付けています。」

 

「…分かった。ダナム山岳基地での戦闘で、持久戦をゼネバスの連中が考えているというのは、今も変わらないということか。」

 

 

 


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