ゾイドバトルストーリー 中央山脈の戦い 山岳基地攻防戦 作:ロイ(ゾイダー)
このコマンドウルフLCのロングレンジライフルは、大異変前の旧大戦と言う時期から判断し、実弾兵器という設定を採用しました。
中央山脈――――――――中央大陸を東西に分けるこの自然の生み出した障壁。
この障壁によって大陸の東西の気候と文化、経済力が異なる状態に置かれ、2つの地域の対立を醸成する遠因となった。
また大軍の派遣が制限される為、ヘリック共和国に対して国力に劣るゼネバス帝国は、数十年の長きに渡り存続し、1度の滅亡からの復活を成し遂げることができた。
同時にヘリック共和国も、ゼネバス帝国の有するデスザウラーと重装甲師団の脅威が無力化されるこの天然の要害に拠って戦う選択を取り、今日まで戦い抜くことが出来ていたのである。
ゼネバス帝国とヘリック共和国は、この中央山脈に多数の基地を建設した。それらの大半が、小規模な仮設基地であった。
この帝国軍第122基地も、その一つである。
基地の格納庫には、イグアンやハンマーロック等併せて10機程度のゾイドが待機しており、ZAC2045年12月18日の時点では、12機の小型ゾイドを有していた。
更に基地の周辺には、45mmビーム砲座4門と80mmのAZ砲の陣地が6つ存在していた。
AZ(アンチゾイド)砲とは、名称から分かる通り、対ゾイド用の火砲の内ゾイドに搭載しないものを指す。地球における対戦車砲のゾイド版とでもいうべき兵器である。
その定義は、国家や組織により様々だが、ゼネバス帝国軍における定義は、一撃でゴドスクラスのゾイドを破壊可能な実弾、光学兵器というものである。
平均的なAZ砲は、ゾイドよりも安価かつ砲戦ゾイドと同等の砲撃力を有しているという利点があった。
機動性は皆無の為、攻撃兵器には用いることは不可能だが、防御用の兵器としては優秀な兵器であった。
「全く……殺風景で退屈な場所だぜ」
おまけに寒いと来ているから最悪だ。
ヴェン・キーレン曹長は、乗機のイグアンのコックピットで心に溜った任務と任地への不満の半分を吐き捨てる様に呟いた。
彼の機体の右隣には、同僚の乗るイグアンが立っている。
現在、2機のイグアンとそのパイロットは第122基地の周辺の警戒任務に就いていた。
「ヴェン、後1週間だ。我慢しろよ」
隣の同僚から通信機越しに窘める声が聞こえてきた。
「へいへい、長い1週間だよな。」
ヴェンは、この基地が、更に言えばこの中央山脈北部の環境にうんざりしていた。
後1週間で、ここよりマシな基地に配置換えになる―――――それが、彼の唯一の希望だった。
故郷の冬が温かく感じる程の寒さ、変化のないレトルトと缶詰中心の食事、中々眠れない硬いベッド、退屈で緊張感だけを無駄に強いられる日々。
唯一の救いは主戦場から比較的離れている為、敵との遭遇を気にしなくてもいいという事であった。
だが、中央山脈の戦闘が北へと移るにつれて辺境の1拠点に過ぎなかったこの基地も戦いとは無縁ではなくなりつつあった。
2週間前から、帝国側勢力圏に侵入した共和国軍の遊撃隊が小規模な基地や輸送隊を襲撃する様になったことで基地の司令官は、警戒度を上げていた。
これは、基地のパイロットや兵士がいらぬ緊張を強いられ、仕事が増えるという事も意味しており、不平に思う兵士もそれなりにいた。
ヴェンも不平を感じる兵士の一人だった。彼は、これまで敵が来なかったのだから、これからも攻撃は来ないだろうと考えていたのである。
雪の積もる中央山脈の峰の連なり以外何もない場所に共和国軍も貴重な戦力を割く意味は殆どない。
それが彼を含む第122基地に駐留する兵士の多くの想いであった。
「後2時間でマックスの奴と交代か。」
コックピットの正面に集められた幾つかの計器類に混じったタイマーの時刻を確認したヴェンは、休憩時間をどう過ごすか考えていた。
彼は、いつも通りの単調で平穏な日々が続くと疑っていなかった。
その時、2機のイグアンの間を1発の砲弾が駆け抜けた。その数秒後、基地の一角で爆炎が立ち昇った。
「………なっなんだ!」
ヴェンは、何が起こったのか理解出来なかった。
「ヴェン!基地が燃えてるぞ何が起きたんだ!一体!」
同様に僚機のパイロットも混乱し、事態を把握できていなかった。
「敵襲!敵襲!」
2機のコックピットを警報音と基地から通信が満たした。
「敵襲だって!」
ヴェンは狼狽した。
こんな小さな、重要性も低い拠点に敵が来るとは考えていなかったからである。混乱する彼らの前に出現したのは、鋼鉄で出来た白い狼の群れであった。
「コマンドウルフ!」
ヴェンの僚機のパイロットが叫んだ。
その数は、少なく見ても6機。更に3機が白い雪を被った稜線から出現した。
2機のイグアンとパイロットが迎撃に移るよりも早くコマンドウルフは攻撃を開始した。5機のコマンドウルフの背部の2連装ビーム砲座がヴェンのイグアンの僚機のイグアンに向けて発射される。
10条にも及ぶ細い光線が全高8.2mのイグアノドン型歩兵ゾイドのボディに浴びせられた。
そのイグアンのパイロットは咄嗟に回避に努めたが、それは無駄な努力であった。発射された10発のビームの内、イグアンに命中したのは、7発。
2発は、それぞれイグアンの頭部コックピットと胴体内に収められたゾイドコアを貫いていた。7発ものビームを浴びたイグアンは、内部機関から小爆発を起こして炎を上げて横倒しとなった。
残されたイグアンは1機。
目の前で僚機とそれに乗っていた同僚が斃されるのを見たヴェンは、ただ茫然と、地面に倒れたイグアンの残骸を凝視した。
2発のビームが通過した頭部コックピットは、完全に破壊され、頭部右側面の小口径加速ビーム砲だけが残っていた。
胴体は、いくつもの穴が開き、炎に包まれていた。
その無残な姿はパイロットが生きていないことを見る者に雄弁に教えていた。
燃え盛る鉄屑と化した僚機の無残な姿は、ヴェンを恐慌状態に追い込むのに十分であった。
「ちくしょおおっ!!当たれ!あたれ!!糞!」
ヴェンは目の前の敵に向けて左腕の4連装グレートランチャーを乱射する。
イグアンの左腕に束ねられた4つの銃口が一瞬マズルフラッシュで輝き、一連射でゴドスを破壊可能な砲弾が次々と吐き出される。
だが、それらの攻撃は、コマンドウルフに命中せず、空しく地面の雪と土を吹き飛ばすだけに終わった。
1機のコマンドウルフがヴェンのイグアンの右の空間を通過した。
「わっわぁあっ」
敵機が間近を通り過ぎたのを見たヴェンは、悲鳴を上げた。直後、コックピットが揺さぶられ、強い衝撃が彼を襲った。
その衝撃が収まる間もなく、視界が傾いた。
次の瞬間、イグアンは、雪の積もる大地に横転した。
計器類に表示された機体のコンディションと悲鳴の様にコックピットに鳴り響く警報音で、ヴェンは、先程直ぐ横を通過した敵が自機の右脚を食い千切っていたことに気付いた。
2足歩行ゾイドが片脚を喪えば、固定砲台と変わらない。脱出の二文字がヴェンの頭を過った。だが、その判断は些か遅かった。
別のコマンドウルフがヴェンのイグアンに飛び掛かった。
「こんなところで……」
ヴェンが最後に視界に捉えたのは、電磁波を帯びて青白く煌くコマンドウルフの金属の牙であった。2機のイグアンを撃破したコマンドウルフ部隊は、散開しつつ、基地へと突撃した。
迎撃態勢に入ったAZ砲を初めとする基地の防衛火器が彼らを迎え撃つ。AZ砲が火を噴き、旋回式の45mmビーム砲座が敵機に向けてビームを吐き出す。
どちらの火器もコマンドウルフを撃破可能な破壊力を有していた。
だが、高速ゾイドであるコマンドウルフを捕捉する誘導性能と命中率は持ち合わせていなかった。8機のコマンドウルフは、砲撃を掻い潜り、反撃の一撃を叩き込んだ。
45mmビーム砲座は複数のコマンドウルフからのビームを受け、穴だらけになって爆発した。AZ砲陣地も次々と懐に入り込まれて破壊されていった。
砲台は短時間で沈黙を余儀なくされた。
しかし、砲台の砲手たちは、基地の守備隊の発進までの貴重な時間を自らの命と引き換えに稼ぐことに成功していた。
「サイカーチスを発進させろ!」
基地司令官の命令を受けて3機のサイカーチスが基地から空に舞い上がる。
サイカーチスは、この基地唯一の航空戦力であった。一般的に飛行ゾイドの戦力は、地上ゾイドの3倍に相当すると言われている。
特にこのサイカーチスは、対地攻撃能力に優れ、投入時は、上空からホバリングしながら行うビーム砲による掃射で多数の共和国地上ゾイドを一方的に破壊した。
ZAC2042年に対抗機のダブルソーダが出現してからはその脅威度は下がったが、現在でもまともな対空火器を有さない地上部隊には脅威となる存在だった。
「サイカーチスとは、厄介なのが居やがる」
コマンドウルフに乗る共和国兵の一人が忌々しげに吐き捨てる。
サイカーチスの機体後部に格納されたマグネッサーウィングが磁気反発とゾイドコアから流れ込むエネルギーによって独特の唸り声を撒き散らす。
地球の航空機の一種 ヘリコブターのローター音に似たその喧しい音は、投入当初、共和国兵士から死神の羽音と恐れられた。
3機のサイカーチスが地上を駆けまわる群狼達にビームの雨を上空から一方的に浴びせるよりも早く、地上から発射された砲弾が1機のサイカーチスを撃ち抜いた。
「何!」
隣を飛んでいた味方機が彼方から放たれた炎の矢に貫かれるのを見たサイカーチス隊の指揮官は驚愕した。
通常型のコマンドウルフに対空火器や空を狙える長射程兵器は装備されていない。
高度を上げて距離を取れば、十分に戦えると彼らは考えていた。
だが、それは間違っていた。
このコマンドウルフ部隊には、1機だけ、長射程兵器を装備した機体がいた――――――それは、指揮官機であった。
「まずは一匹……」
第6高速中隊 隊長 エリック・バーンズ大尉は、上空にいた標的が炎に包まれて墜落するのを見て口元に笑みを浮かべる。
彼のコマンドウルフは、他の機体と異なり、背部に大型砲を背負っていた。それは、彼の愛機……コマンドウルフLC(ロングレンジカスタム)の最大の特徴であった。
このカスタム機は、背部に2連装ビーム砲塔の代わりに機体の全長に匹敵する大型砲………ロングレンジライフルを搭載している。
騎兵用の長槍を思わせるこの火器は、元々は、ゴジュラス用に研究されていた火砲をコマンドウルフ用に改造した装備である。
その大きさに違わず、大型ゾイドを撃破可能な威力を秘めている。
この装備を搭載することによってコマンドウルフは、中型ゾイドの常識を超えた射程距離と破壊力を得ることになる。
反面、重量のある装備自体がデッドウェイトとなることで機動性、運動性、そして格闘性能は、通常型よりも低下していた。
その為、この装備を搭載したコマンドウルフのパイロットには、高度な技量が要求された。
「バーンズの旦那!助かりましたぜ!獲物を取られたのが残念ですがね」
コマンドウルフ4番機のパイロット アンドレアス・キーファ少尉の大声がバーンズの機体のコックピットに響き渡った。
その口調と言葉使いは、指揮官相手には余りにも不適切だったが、バーンズがそれを指摘する事は無く、愛想よく言葉を返す。
「それはすまなかったよ。グリーンヘア」
グリーンヘア……緑色に染色された髪のパイロットは、濃い青いバンダナを額に巻いていた。濃紺のバンダナは、隊長であるバーンズを含め、この部隊の全員が着用していた。
青は、白と並んで、ヘリック共和国で多数派を占める民族 風族の勝利を願う儀礼的なペイントパターンであり、バーンズは部下達の連帯感を強める目的でこのバンダナを部下に着けさせていたのである。
部下達もそれについて特に不満を抱く者はおらず、全員が青いバンダナを着用していた。というのも、それ以外の事に服装や髪形についての事に関しては、比較的緩やかだったからである。
この部隊は、髪型は完全に自由で、軍服の着用にしても、軍服を着崩したり、改造しているものも少なくない。
彼に限らず、ヘリック共和国軍の高速戦闘部隊は、創設されてから日が浅い事もあって服装や髪型といった規則に比較的甘い傾向があった。
更に言えば、バーンズは、個人的な趣味や酔狂でこんな事をしているわけではなかった。
バーンズが、部隊の隊員に青いバンダナを着用させたり、服装や髪形についてとやかく言わない事にしているのには、彼ら、共和国軍高速部隊の置かれている過酷な状況があった。
機動性に優れる高速部隊は、デスザウラーによる共和国首都陥落後、帝国側勢力圏に侵入し、敵の重要拠点に対する偵察やパトロール部隊、輸送部隊、中小基地に対する攻撃といった危険な任務に従事してきた。
彼らは、今日まで祖国 ヘリック共和国の勝利に貢献してきた。だが、その代償として損耗率は高く、部隊が壊滅することも珍しくは無かった。
その為、各部隊の指揮官達は、様々な工夫と対策で隊員の士気の低下に対処する事に苦慮していた。
バーンズの場合は、その対策として部隊の気風を比較的自由にするとともに、青いバンダナを全員に着けさせて連帯感を高めようとしたのである。
部下の命を預かる指揮官として彼は、自分なりの手段で地球人の技術導入以降、戦士のロマンチズムが悲惨さに敗北しつつある戦場の現実に抗っていたのである。
残り2機のサイカーチスも、コマンドウルフLCのロングレンジライフルを受けて撃墜された。
小うるさい上空の敵が排除されたのを確認したコマンドウルフ部隊は、炎上を続ける基地に突入した。
「勝ったな」
最後のサイカーチスが火球に変じたのを確認し、バーンズは1人呟く。無根拠に言ったわけではなく、部下の実力と数、敵の予想戦力を勘案しての事であった。
彼の愛機の正面モニターには、バーンズの部下の操縦するコマンドウルフの群れが格納庫から慌てて出撃してきた守備隊の帝国ゾイドと交戦していた。
唯一の航空戦力であるサイカーチスが全機地面に叩き付けられた今、帝国側に勝ち目は無かった。
コマンドウルフの1機がイグアンの首筋に食らいつき、捻じ切った。別のコマンドウルフは、ツインホーンの突進を持ち前の運動性能で回避し、左側面に回り込み、後足を電磁牙で噛み千切る。ツインホーンは悲鳴を上げて雪の降り積もる地面に倒れ込んだ。
「これで止めだ。」
ビームががら空きの脇腹に叩き込まれ、直後ツインホーンは爆発炎上した。
守備隊の戦力は、ゾイドだけではなく、歩兵部隊も含まれていた。
彼らは、小銃や手榴弾だけでなく、無反動砲や対ゾイド火器を保有していたが、コマンドウルフの機動性に翻弄されて短時間で壊滅を余儀なくされた。
「あぶねえっ」
1機のコマンドウルフが突如、攻撃を受けた。
コックピットにロックオンアラートの警報が響くと同時にコマンドウルフのパイロットは操縦桿を倒した。コマンドウルフが伏せると、ほぼ同時に首筋の上の空間を炎を吐き出しながら銀色に輝く鉄の矢が駆け抜けた。
それは、歩兵が運用できる対ゾイドミサイルであった。
機動性の低いゾイドなら一撃食らってしまっていただろうが、軽快なコマンドウルフは、容易くそれを回避する。
瓦礫の影に潜伏していた歩兵は、必殺の一撃を容易く回避されたことに驚いた。
直後、彼の網膜が最後に見たのは、先程彼の攻撃を回避した敵機と僚機から放たれた無数の光弾だった。
数機のコマンドウルフが背部の2連装ビーム砲を、ミサイルが発射された瓦礫に向けてビームを叩き込んだ。十数発のビームを受けた瓦礫は、蜂の巣になっていた。
その中に潜伏し、先程ミサイルを発射してきた敵歩兵は、骨も残っているか怪しかった。
コマンドウルフ部隊の連携のとれた攻撃の前に、第122基地の守備隊のゾイドは、数分で数機にまで激減していた。
バーンズは、まるで一つの生物の様に連携のとれた動きを見せる部下達に感心していた。その表情には、誇らしさが感じられた。
もしも重たい背部の装備が無ければ、彼とその愛機がこの群狼達のリーダーとして〝狩り〟に参加していたところであった。
「隊長、帝国の奴ら逃げようとしてますぜ。」
部下の1人から通信が入った。
中肉中背のこの男は髪の色を青に染め、他の同僚と同じく頭に鮮やかな青に染色されたバンダナを巻いていた。
「逃がすなよ!」
バーンズは部下達にそう言ったが、敵を取り逃がす心配については、殆ど考えてはいなかった。
この基地に配備されていたゾイドの内、コマンドウルフの機動性から逃れられる者はいないからである。事実、生き残った守備隊の帝国ゾイドは、完全に包囲されていた。
彼らには、コマンドウルフのビームに撃ち倒されるか、あるいは電磁牙の餌食になるかのどちらかの運命しか残されていなかった。
「遅い!」
あるハンマーロックは、2機のコマンドウルフによって追い詰められていた。そのハンマーロックは長い腕を振り回すが、胸部にビームを数発受けて倒れた。
その横では、イグアンがコックピットを噛み砕かれていた。
最後に残ったヘルキャットは、数機のコマンドウルフに包囲され、追い詰められた挙句、ビームの集中射撃を浴びる羽目になった。
史上初の高速ゾイドは、幾条もの細長い光線に貫かれ、地面に倒れた。
いかに優れた隠密性能とコマンドウルフに匹敵する速度を誇る機体でも数と性能の差、そして突如敵に襲撃されたという不利な条件が揃った状況では何の意味も持たない。
未熟なパイロットが性能を活かせないのなら尚更である。
「よし、敵のゾイドは全部叩き潰したな?仕上げはいつも通り俺がやる。危険だから、お前らは下がってろ。」
「了解です」
「承知しました!」
「はいよっ」
「わかりましたボス」
守備隊のゾイドが全滅したのを確認すると、バーンズは、部下に指示を出す。部下達の機体が敵の基地施設から十分に離れたのを確認し、彼は仕上げの準備にかかる。
基地襲撃任務のフィナーレを飾るこの仕事は、彼とその相棒にしか出来ない仕事であった。
コマンドウルフの白い機影が黒煙を上げる基地施設の付近からいなくなったのをモニターと機体のレーダーで確認し、山羊の様な顎鬚を蓄えた男は、トリガーを引いた。
「これで……終わりだ!」
直後、彼のコマンドウルフLCの背中の大型砲が火を噴いた。
ロングレンジライフルの砲身から吐き出された赤熱化した砲弾が、冷え切った空気を引き裂く轟音と共に目標に命中した。
大型ゾイドの装甲をも撃ち抜く一撃が仮設基地のゾイド格納庫に撃ち込まれた。
プレハブの様な灰色の建物の扉に大穴が開けられた次の瞬間には、紅蓮に染まった爆炎が基地施設の中心部で吹き上がっていた。
5分にも満たない僅かな時間で、ゼネバス帝国軍 第122基地は壊滅した。