スクストZ!-memory of hydrangea - 作:ドットフロント
青いボールに吸い込まれ、意識を失っていたサトカ。意識が戻り、ハッとなって目を開くと、サトカは辺り一面真っ白な、何もない空間に立っていた。サトカはあまりに急なことが次々起き、状況が飲み込めずにいた。
サトカ「ここは、どこ・・・?」
自分に起きたことを一つ一つ確認しながら周囲を見回していると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
?「サトカっちを吸い込んだ、青いボールの中なのだ」
サトカ「っ!?アコさん!!」
サトカは慌てて振り返った。そこにはいつもの変わらぬ表情でサトカを見つめるアコが立っていた。
サトカ「どうして、ここに?アコさんはあの時・・・」
アコ「アコっちが持ってきて、サトカっちに託したあの青いボール、「ステラボール」に、アコっちの記憶をデータとして保存してたから、今ここでサトカっちとお話しできるのだ」
サトカ「ステラボール・・・」
サトカはアコの話を唖然としながら聞いていると、ふと自分の右手があの鮮やかな青いボール、ステラボールが握っていることに気付いた。ステラボールを少し見てから、サトカは泣きそうな表情でアコに質問をぶつける。
サトカ「アコさん、どうして私を庇ったんですか?本来ならあそこで犠牲になるべきは、私だったはず・・・!」
アコ「それは、ごめんなのだ。サトカっちの思いを無駄にするようなことをしたとは思ってるぞ。それでも、あたいはサトカっちが行くべきだと思ったから、あの場所に戻って、サトカっちを助けたのだ。まぁ、本当は2人でステラボールを起動して移動するはずだったんだけどなぁ・・・。それでも、生きて助けを呼ぶのは、サトカっちじゃないとダメだと思ったのだ。」
サトカ「私が超エテルノ人、だからですか・・・?」
アコ「それもあるけど、一番の理由は・・・「ともだち」だからなのだ」
サトカ「ともだち・・・?」
アコ「そう、ともだち。ともだちを助けたい、ともだちに生きていてほしい。そう思ったら、なんだか身体が自然に動いてたのだ」
アコが照れながら頭をかく。それを見てサトカはあきれたような表情を見せた。
サトカ「自分が死んでしまったというのに、変わらないですね・・・アコさん」
アコ「サトカっちだって変わらないのだ。超エテルノ人でも、なんでも、サトカっちはサトカっちなのだ!」
サトカ「ふふ、ありがとうございます。」
アコの言葉に、サトカは小さく笑む。それにつられてアコも笑顔になり、ほんの少しの間穏やかな時間が過ぎた。そのあとで、アコが告げる。
アコ「時間、なのだ。サトカっち、これで本当にお別れなのだ」
サトカ「アコさん・・・」
サトカにとって、あまりに短すぎる時間だった。サトカはアコの顔をしっかりと見つめ、その目から大粒の涙を流しながら涙声で別れを告げた。
「アコさん・・・うっ、ぐす・・・。本当に・・・うぅ・・・!ありがとう・・・ございました・・・!あなたの分まで・・・生きて・・・いきたい・・・!」
アコ「アコっちの方こそ、ありがとうなのだ。サトカっちが生きていてくれれば、きっとモルガナだって倒せる!」
サトカにエールを送るアコも、その目に涙を浮かべる。そして、アコは最後にもう一つサトカに伝えるべきことを言う。
アコ「最後に、サトカっちにステラボールに内臓されている、最後の切り札を教えるのだ」
サトカ「・・・最後の、切り札?」
アコ「それは・・・」
アコはうなずいた後、サトカにステラボールの最後の機能について伝えて、光の中に消えていった。それと同時に、サトカの意識も消え、再び深い眠りにつくのだった。
それから、いくらかの時間をサトカは眠り続けていた。そしてある時、サトカはかすかに意識を取り戻す。
サトカ(ここは・・・?私はどうなった・・・?)
目を開けることができずにいたが、サトカは自身の状態を一つ一つ確認する。
サトカ(冷たい・・・頭から足まで、冷やされているようだ。それに、何か身体がふわふわして・・・)
まず感じたものは寒さ、そして体が浮いて、波にゆられるような感覚だった。そして耳には水の中にいるような音。
サトカ(私は水の中にいるのか・・・?しかし、息はできる・・・そうすれば、水面か・・・)
サトカは自分が水の上に浮いていることに気付いた。そしてサトカはやっと目を開ける。眼前は一面まぶしいほどの青い色に染まっている。
サトカ「空・・・」
それは雲一つない空だった。そしてゆっくりと首を曲げ、まず右を見ると、遠くに森が見える。続いて左を見ると、そこにも木が立ち並ぶ森が見えた。サトカはここが森に囲まれた湖であることに気付いた。
サトカ「湖に、落ちたのか・・・」
そのとき、湖の波が大きくなり、サトカの身体を大きく揺らす。そのあとに遠くからエンジン音が聞こえてくる。ボートが近づいてきているのだ。
サトカ「誰だ・・・?敵ならば、泳いででも逃げねば・・・がっ・・・!」
サトカは体を動かそうとした。しかしその身体は重く動かすことができない。モルガナとの戦いでの負傷と、ステラボールによる無理な境界移動の弊害によりダメージを負った身体は、せいぜい手足の指を動かすことしかできなかった。
サトカ「ダメ、か・・・」
ボートがすぐそばまで近づき、サトカは諦めかけたが、ボートから聞こえてくる声に驚愕する。
???「これは・・・!」
??「と、とにかく引き上げるのだ!!」
サトカ(あ、ああ・・・?こ、これは・・・?!)
本当に聞きなれた声を聴いた後に、ボートから顔を出す2人の人物を見た時、サトカは唖然とした。
サトカ「アコさんと・・・私?」
ボートに乗った2人の人物、アコともう一人のサトカに引き上げられ、湖の岸に横になるサトカ。その後もう一人のサトカはアウトドア用のストーブを付けてサトカを温め、アコはそのそばでスープの缶を温めている。
サトカ(アナザーチーム、本当に実在していたとは)
自身とは別のチャンネルにいるストライカー、アナザーチーム。サトカは存在自体は聞いていたが、実際に出会うのは初めてであった。
サトカ「・・・あなた達はどこのチャンネルのストライカーですか?どうしてここへ?」
サトカは横になりながらもう一人のサトカに聞いた。
Zサトカ「私たちは他のチャンネルから、Zチャンネルと呼ばれる所にいるストライカーです」
Zアコ「そしてアコっち達は、この場所で観測された強烈なエネルギーの調査に来たのだ」
サトカ「・・・それは恐らく私のことかと思います」
Zアコ「えぇ?!そうなのだ?!」
強烈なエネルギーというのは、自身のことであろうことはすぐに分かった。そしてステラボールに導かれここにたどり着き、この2人に出会った事は偶然ではないと確信した。
Zアコ「スープが温まったのだ。これを飲むといいぞ!」
サトカ「ありがとうございます・・・」
サトカは起き上がり、缶からマグカップに移し替えられたポタージュスープを一口飲む。口の中に広がるスープの風味と温かさにサトカはふっと息を吹いた。
サトカ「温かい。ありがとうございます・・・」
Zアコ「当然のことなのだ!それで、そっちのサトカっちはどうしてここに来たのだ?」
アコに聞かれ、サトカは全てを話す決意をした。
サトカ「実は・・・」
そしてサトカはZチャンネルの2人に、超エテルノ人としての自身に起きた変化、自身のいたチャンネルで行われていた実験のこと、そして自身と戦ったモルガナについてをすべて話した。Zチャンネルの2人は終始驚き、時にうなずいて話を聞いた。
サトカ「こんな話、信じられないでしょうけれど。頼みがあるですよ、私をあなた方のチャンネルでかくまってほしいのです。私の中にある力が本当に未知数のものであれば、それを高めてあのモルガナに勝つこともできるかもしれないです・・・」
Zアコ「そんなの聞かれるまでもないことなのだ!ね、サトカっち!」
Zサトカ「はいです!苦しい戦いを超えてここまでたどり着いたあなたを見捨てるなんてことは、できないですよ!」
Zチャンネルの2人は笑顔で答えた。それにサトカは喜びと安心から、その目に涙を浮かべる。
サトカ「あぁ・・・!本当にありがとうございます!」
Zアコ「にしし♪それじゃあ早速帰ってこのことをみんなに報告・・・」
アコが湖から撤退しようとしたその時だった。突如小さな地響きが起き、この場にいる3人は強い空間の歪みを感じ取った。
Zサトカ「な、なんですか?」
サトカ「まさか・・・!」
Zアコ「とてつもない空間の歪みを感じるのだ!」
3人が周囲を警戒していると、突如湖の中心の空間に紫色の穴が開き、その中から真っ黒な炎の塊のようなものが現れた。
Zサトカ「な、なんなのですかあれは?」
サトカ「モルガナ・・・!」
アコ「えぇ?!これが?!」
サトカは黒い炎の塊から感じる気配で、すぐにその正体がモルガナであることに気付いた。そして黒い炎の塊が消えると、その中からモルガナが現れた。しかしその姿は全身が赤黒くなり、全身に赤く光る亀裂のような模様が浮かんでいる。
モルガナ「まさかチャンネルひとつ丸ごと爆破してまで私を消滅させようとしてくるなんて、高嶺アコも味な真似をする・・・」
サトカ「境界の爆発に巻き込まれて生きているとは・・・!」
モルガナ「澄原サトカ、やはりここにいましたか。どうやら助けもいるようですが、まぁどうでもいいことです」
モルガナはすぐにサトカ達を見つけ、湖の水面を歩き近づいていく。それを見てサトカはすぐに立ち上がろうとするも、身体に力が入らずバランスを崩して膝をつく。
サトカ「うぅっ、くっ・・・」
Zアコ「その身体じゃ無理なのだ。ここはアコっちに任せるのだ!」
サトカ「ア、アコさん・・・?」
Zサトカ「もう一人の私は、私が見ています・・・」
動けないサトカを自身のチャンネルのサトカに任せ、アコも水面を歩きモルガナに近づいていく。
モルガナ「ほう、私に立ちはだかるというのですか?境界の爆発に巻き込まれたことで、気のリミッターが外れ自分でも制御できないほどのパワーが溢れるこの私の姿を見ても・・・。たいしたものですね?」
Zアコ「にしし♪アコっちだってお前なんかに負けないと思ってるから、こうして自分から来てやったのだ」
モルガナ「なに?」
モルガナはアコの自信が理解できなかった、しかしそれはすぐに理解できるものとなった。
Zアコ「はぁぁぁぁ・・・!」
モルガナ「これは・・・!」
アコが全身に力を込め、気を高め始める。すると足元の水面から何重もの波紋が広がり、空気が激しく震えだす。
サトカ「これは・・・!」
サトカはアコの放つ気が自分のものと似通っていることに気付いた。そして・・・。
Zアコ「はぁぁぁっ!!!」
アコが一気に気を解放し、周囲に爆風を放つ。モルガナと2人のサトカが咄嗟に顔を庇う。そして風が止み、顔を上げると、全身が緑色の炎のような気を纏い、すさまじいエネルギーを放つアコの姿が見えた。
モルガナ「こ、この力は・・・?!」
Zアコ「これが、「超エテルノ人NT(ニュータイプ)」なのだ」
モルガナ「まさか!純粋な超エテルノ人!!」
サトカ「あ、ああ・・・!まさか!」
サトカはアコの姿に見覚えがあった。そしてサトカはアコの纏う炎の気が、あの時湖で見た緑色の彗星と同じものであると気づく。それと同時に、サトカは自身の胸にあの彗星を見た時と同じ気の高まりを感じていた。
サトカ「やはり、この場所に落ちて2人に出会ったのは偶然ではない・・!あなたが、導いてくれたのですか・・・?」
サトカは自身の手にあるステラボールを見る。その脳裏には自身のチャンネルのアコの姿があった。
モルガナ「は、ははは!これは素晴らしい!まさかこのような場所で超エテルノ人、いや、そのさらに上の領域にたどり着いたものに出会えるとは!あなたが相手ならばこの私も全力で戦えるというものです!」
Zアコ「そりゃよかったのだ。じゃあその全力も粉々に砕いて、お前を倒す!」
Zチャンネルのアコとモルガナの戦いが、ついに始まろうとしていた。