【完】垣根「婚約者出来た」心理定規「とうとう頭の方も常識が通用しなくなったのかしら」 作:吉田さん
垣根からネット結婚という画期的なシステムを聞き及んだ猟虎は、早速そのシステムを自身に応用する術を実践していた。
(ああ……なんて、なんて素晴らしいシステムなのでしょう……)
垣根に教えられたアプリのインストールを終え、猟虎は心臓をバクバクと鳴らしながらおそるおそるアプリを開くべく指を画面に近づける。
(ど、どどどどどうしましょう。もしこれで、友達がひゃ、ひゃひゃひゃ百人達成出来てしまったら!)
猟虎はその光景を想像し―――一瞬だが、幸せすぎる光景に気を失いかけた。
(――ハッ! い、いけません!)
なんとか意識を強く保ちながら猟虎は考える。
友達が百人。
もし、その百人に同時にお誘いを受けたら……。
(―――ッ! ど、どどどどどどうすれば!?)
なんということか。
世の憎むべきリア充達はどのような完璧なスケジュール管理をこなしているというのだろうか。
幼稚園の時に歌っていた歌のフレーズにあるハンドレッドから成り立つ友人の集団なるものはどういった綿密な予定から成り立つ絶技だというのだろうか。
想像するだけで、それをこなせる者は『
(あの
想像し、あり得ないと断言する。
あのリア充に聞くことだけは許されない。それだけは、猟虎の確定事項だ。
(ふふふ。いまに見てなさい
それはある意味本当の意味での友人が一人いる事を暗に示しているのだが……ぼっちもとい暗殺術を極めた猟虎が気づくことはない。
(……さて、)
指を震わせながら、彼女はアプリを起動させた。
途端に広がる新世界。
これで白亜の理想郷へと自分は訪問出来るのだ―――と、そこまで考えた時だった。
(……ネット友達って、どうやって……作るんでしたっけ?)
枝垂桜学園に通うお嬢様系仕事人少女、弓箭猟虎。
そもそも、彼女はネット友達はおろかコミュニケーション系アプリの使い方を知らなかった。
◆◆◆
「……あの、
「本気よ。さっさと彼の婚約者とやらを探し出しなさい。そういうの、得意でしょ?」
凄まじい剣幕で「彼の婚約者とやらの特定をしなさい」と言い放った
頭を覆うゴーグルに付けられたプラグらしきものから伸びるケーブルを、室内のあちこちに存在するコードに繋げ、誉望はため息を吐く。
彼の能力は『
それこそ、自分は『
そんな彼が得意とするものの一つに、情報の抜き取り・転写が存在した。
この能力を用いて、
「表の人間も使うネットワークだろうし、セキリュティランクはD……せいぜいCでしょう」
「……本当にやるんですか? 俺としては、垣根さんを応援したいんですが……」
「本気で言ってるの、あなた?
「……分かりました」
誉望は彼女の言葉に従い、能力を行使する。
「セキリュティランクC〜D情報より、垣根帝督及び常識が通用しねえ及び第二位及びネット結婚との関連が疑われる会話、アカウントを抽出……」
誉望がそう告げると、すぐさま機械は反応を示した。
『四百五十件あります』
「「……」」
……少しだけ彼らが垣根に引いたのは、仕方のないことだろう。
まあなんにせよ、この中から情報を照らし合わせていけばいいだけの話だ。
――と。
「あれ?」
「……? どうしたの?」
突如上がった声を疑問に思って尋ねると、何処か言い淀みながら誉望が答える。
「いや、それが……一部セキリュティランクに引っかかる部分があったんスよ……」
「引っかかる……?」
「ええ……それでAランクまで引き上げて抽出してみようと思ったんスが……」
「……」
「……それでも、変化なし。おそらくこれは――」
「――窓のないビル……」
いろいろ察した彼らから生み出されたなんとも言えない沈黙が、この空間を覆った。
沈黙を破るため誉望が目をそらしながら口を開く。
「……猟虎を向かわせますか?」
「それ死ぬわよあの子。いろんな意味で」
◆◆◆
「どういうことだアレイスター! なんだネット結婚って! なんだってそんなものが学園都市の一部に蔓延している! ふざけているのか!?」
窓のないビル。
そこで一人の金髪サングラスの少年――土御門元春が叫びながら歩を進めていた。
彼の視線の先には巨大な生命維持装置が鎮座していて、その中には男性にも女性にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える『人間』がいた。
『人間』――アレイスター・クロウリーは土御門の言葉に「ふざけてなどいないさ」と笑みを浮かべながら嘯く。
「これは『
「嘘だろ……」
アレイスターの言葉に、土御門は思わず絶句する。
いやいやいや、ネット結婚がどのように『
そしてもし本当に影響を及ぼすのなら自分が様々な現象やアレイスターの言葉、『虚数学区』という新たな界、『
いや、土御門の耳には
「嘘などではない。何事も使いようだ。セフィロトだろうとクリフォトだろうと、使い方を間違えなければ人間に知識を授けるのと同様でな」
いや、その理屈はおかしい。
従来とは意味の異なるであろうネット結婚なんてイロモノを利用して、どうやって『
「時に土御門元春。今回のネット結婚が、どのような影響を及ぼしたと思う?
(……こいつ、『
まあ正確に言うなら、彼らの会話に限らず学園都市の中なら全てを把握しているのだろう。
『
学園都市でそういう意味合いで安全地帯と言えそうなものは、第三位の付近くらいのものだろう。
「……さて、オレにはサッパリだ。この場合ネット上で結婚なんてもんは、妄想にすぎん。頭の中で思い浮かべた理想像をネットの相手を座標と仮定し現実に落とし込めるなど―――」
待て。
頭の中で思い浮かべた理想像……つまり、頭の中で思い浮かべたモノを現実に引っ張り出す。……それは、
「……錬金術、だと?」
「さてね。それはそちらの領分だろう」
シラを切るアレイスターだが、土御門は取り合わない。
第二位の能力の特異性と、錬金術の異常さを組み合わせてしまえば、それは――――。
「『
土御門の至った世界を文字通り震撼させかねない結論を、しかしアレイスターはつまらなさそうに否定した。
「今回はあくまでも実験段階に過ぎんよ。高位能力者の作り出した虚像とはいえ、
それにその程度の事で単騎で虚数学区の全容を掌握できるのなら、第一位と第二位の順位はとうの昔に逆転している。
第一位と第二位の区分分けがある以上、そこには明確な『壁』が存在しているのだ。
アレイスターの言葉に、渋々ながら土御門は納得する。
確かに、ネット結婚など回りくどいし確実性がない。そこは信用たり得ると判断した。
「……だが、なぜネット結婚なんだ? いや、それ以前に垣根帝督は高位能力者だ。強力すぎる自我を持つあの男の行動や価値観を操るなど……。お前のアレを使えば可能だろうが、なら何故こんな……」
「―――時に土御門。『
……。
いきなり何を言いだすんだろうか、この『人間』は。
ヤンデレ? その手の分野は青髪ピアスにして欲しいところだ。……いや、もちろん自分も把握済みだが。
ついこの前も、ヤンデレ属性を持つ義妹のソフ――――違う違う、違う違う違う違う違うッ!!
なんて恐ろしい『人間』だろうか。思わずスパイとしての土御門元春ではなく、上条当麻のクラスメイトとしての土御門元春が現れるところだった。
この空間でにゃーにゃー言いながら逆さまでビーカーの中で浮いている不審者とヤンデレ談義ってなんだそのホラー。
「これはひとえに、高位能力者の自我が強すぎるが故に持つ素質と言える。一見平和な第三位とて、これを起点にした場合に限るが何かしらの
この『人間』は『
だが、実際彼らはヤンデレの素質を持っているだろう、そこは土御門も同意する。
「そしてここに、
サラッと出てきた暗部でも深い位置にいる組織の名前と、最近知った学園都市でもかなり闇の深い一族の名前からは想像もつかない資料に、土御門の顔が引き攣る。
これらがネット結婚に集約されていると考えると、なんだか様々なことがバカらしく感じてしまう。
だが、それより土御門は尋ねないといけないことがある。
アレイスターが今言った、「可能性さえあれば落とし込める」これはつまり、
「……なあ、アレイスター」
「なにかね?」
「第二位……垣根帝督のネット結婚の相手、それはまさか―――」
「…………さて、なんのことやら」
この瞬間、土御門元春は確信した。
垣根帝督のネット結婚相手、それは即ち―――
(……おいおいおいいくらなんでもレベル高すぎるというか業が深すぎるぜい。オレは取り敢えず舞夏を連れて、何処か遠くに行っとくべきかにゃー)
「……土御門元春。なにやら勘違いしていないかね?」
地味にアレイスターへの風評被害が起きたが、まあそれは栓なきことだろう。
もしここにとあるダンディなゴールデンレトリバーがいたならば、「自業自得だ。……だがまあそれも、『人間』らしい」と言っただろうから。
第三位と
因みに今回の文字数は4666です!そう!アレイスターの魔術名の666にかけました!
(追記:システムのエラーで666は幻術だったようです。すまない、すまない…)
独自解釈ですが錬金術と一番相性がいいのは多分
雑に説明すると禁書における錬金術の本質はこの世の全ての法則を全て解析把握してその後脳内でシュミレーターして現実を歪めるなので、
まあ魔神と絶対能力者が似たようなもんとすると、現段階で『安定』して絶対能力者に至れるらしい唯一の存在である彼がそうなのは必然なわけですが。
この三人が魔術に近いのは多分そういうことですね。