(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

12 / 31
冒険者編です。




冒険者編第一章(1/4)

 「ヨオオオオオシッ勝ったあぁぁぁぁッ!!」

 「クソオオオオオオオ!!エレティカとキャッキャウフフ冒険ライフが出来る絶好のチャンスだったのにいいいいいッ!!」

 「はぁ……バカばっか。」

 

 いや、ね、そりゃあさ、これから冒険者として活動するにあたって、至高の方が3人も居るけど皆で行くの?それとも誰か一人を選んでいくの?その場合誰が行くの?と思ってはいたよ?けどさ……。

 

 

 ジャンケンってあなた……。(呆れ)

 

 突然呼ばれて何事かと思ってドアを開けようとしたら、中から「ジャンケンポン!!あいこでポン!!ポン!!ポン!!!」と聞こえて来たからまさかと思って覗いてみたら、これですよ。

 

 「……<ガチャリ>エレティカ=ブラッドフォールン、君命に従い、ただいま参上しました。」

 「おお、丁度良いタイミングだ、エレティカ。」

 「(でしょうね。)丁度良いタイミング……とは?」

 「これから私は直接王国という場所で冒険者として活動し、情報収集に努める事にした。やはり聞くのと実際に見聞きするのでは違うと思ってな。」

 

 ……といいつつ実は冒険がしたいだけなんでしょう?知ってるんだからね?

 

 「で、今まさに、至高の3人の中で誰がその任に就くかという会議が終わった所なんだよ。結果として、モモンガさんがその役目を担う事になったわけだけど。」

 「そうですか、これから先を考えた、良い方法だと思いますが……私はどうして呼ばれたのでしょう?」

 

 そうだよ、よく考えたらまだ私何もしてないんだよね。

 本当だったらプレアデスのナーベが呼ばれるところだったんじゃないの?

 

 むしろ、ひょっとしたら私は先に出たシャルティアと行動を共にすることになるのではないかとさえ思っていたんだけど……。

 

 「うむ、実はな、最初こそ、私一人だけで行くのはよろしくないだろうと考え、プレアデスの中から供を連れて行こうと思ったのだが、なかなか決まらなくてな……そこで、ペロロンチーノが「だったらエレティカを連れて行けば良いのではないか」と案があったのだ。」

 

 ペロロンチーノ様……?うーん、何故そうなったかは分からないけど、とにかく説得する手間が省けたと思えばいいのかな?

 というか、ちょうどいいから後でペロロンチーノ様にあの件について話しておこうかな、この人なら私が頼まずともやってくれそうだけど。

 

 「分かりました、至高の御方からのご期待に沿えるよう、全力をもってモモンガ様をお守りする任を遂行しましょう。」

 「うむ、よろしく頼む。それでは早速、冒険者として活動するにあたっての打ち合わせと行こうか。」

 「はい、ですがその前に、ペロロンチーノ様と別件でお話がありますので、今から少しよろしいでしょうか?」

 「えっ?俺?なんだろ?デートのお誘いかな?」

 「弟、黙れ。」

 

 

 

 

 

 ー王国のとある宿屋ー

 

 <バタンッ!!>

 

 宿屋にも酒場にも見える場所の扉を開けて入ってきたのは、全身を漆黒の鎧(めちゃんこ硬い)に身を包んだ二対の大剣を背負う戦士、漆黒のモモン。

 身長は177cmと大きいほうだし、黒い鎧がそれを助長させていた。

 顔は同じく漆黒のヘルムによって覆われ、一切が判断できない。

 

 そして、その傍らに居るのは、細剣(サラマンダーより速い)を帯刀した革(魔獣製)や布(もはや良く分からない素材)で作られた身軽な格好の少女……漆黒のティカ。髪は白くどこまでも透き通っており、肌もまた透き通るような色をしているが、決して病的な程白い、ましてやヴァンパイアと見間違える程ではなく、健康的な顔色をしている。身長は144cm程度、しかしその身長に見合わないたわわに実った胸が特徴的。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 「おい、見ろよ」

 「なんだ?あの鎧……。」

 「ヒュー、ちっと若ぇがいい女じゃねぇか。」

 

 おーおー、真昼間だってのにパカパカ酒飲んじゃってまぁ……彼らはちゃんと仕事をしているのだろうか?

 

 「宿だな?相部屋で一日五銅貨、飯は……」

 「二人部屋を希望したい、食事は不要だ。」

 「……お前さん、カッパーだろう?だったらここは……。」

 「先ほど、組合で登録してきたばかりなんだ。」

 「……一日7銅貨!!……前払いだ。」

 「それで構わん。」

 「……部屋は二階の奥だ。」

 

 はぁ~もう、ただ宿を借りたいだけなのにこんな扱いなんて。

 <ドン>……って、あ。

 

 「おいおい!イテェじゃねぇか?どうしてくれんだよ?あ?」

 

 こいつのこと忘れてたなぁ……。

 んー……どうしよっか。

 ……ほっとこう。

 

 

 「こりゃ、そっちの女に優しく介抱してもらうしかねぇなぁ?」

 

 え?嫌ですけど?(真顔)

 

 「フッ……いやすまん、あまりにも雑魚に相応しいセリフに笑いをこらえきれなかった。」

 「ああん?……<グイッ>っぉ、うおおっ!!?」

 「お前とならば、遊ぶ程度の力も出さなくて良さそうだな。」

 「う、うわああああっ!!?<ガシャーン!!>」

 

 あぁ、えっと、モモンガ様?あれ打ちどころ悪かったら死んでますよ。

 いや別に死んだとしても同情はしないけれども……。

 

 「さぁ、次はどうす……」

 「ほぎゃああああああーーーーーっ!!?ちょっとちょっとちょっとちょっと!!アンタ何すんのよ!!アンタのせいで私のポーションが割れちゃったじゃない!!弁償しなさいよ!!!」

 

 来たな……えっと……なんて名前だっけこの人……あっブリタさんか、思い出した。思い出した、主人公並に不幸な事に巻き込まれる割に生き残る運の持ち主だよね。

 

 「ポーション?そこの奴らに請求したらどうだ?」

 「いつも酒に呑んでくれてるだけのあんたらに払えるわけないわよね?……あんたさ、ご立派な鎧着てんだから治癒のポーションぐらい持ってんでしょ?現物でも構わないからさ。」

 「ふむ……。」

 

 とここでナーベだったら思わず切ろうとしてしまうんだが……。

 

 「<モモン様……その女の言うポーションですが、恐らくですがこの世界特有のポーションかと思われます。>」

 「<何?>」

 「<今その女が割れたというポーションを確認したところ、こちらではポーションが青い色をしており、こちらの持っている治癒のポーションとは何かが異なるようです。>」

 「<ふむ、であれば……>」

 

 

 

 「悪いな、さっきも言ったが、私達は先ほど街に着いて冒険者として登録したばかりでな、丁度今から調達しに行く所だったのだよ。」

 「なによそれ、仕方ないわね、じゃあいいわ、その今から丁度調達しに行く所について行ってあげるから、そこで弁償して頂戴。」

 「……分かった、では少しここで待っていろ。」

 「私もここで待ってます。」

 

 

 ……うーん、とっさに回避させてしまったけど、ンフィーくんに出会うのなら渡しちゃってたほうが良かったのかな?いや、であればこちらからコンタクトを取ればいいのでは?不慮の事故で交流が出来るのとこちらから交流を持ちかけるのとではわけが違うよね。

 

 

 「……聞いておきたいんですが、このあたりで最も質の良いポーションを提供してくれるのはどこの店になるのでしょうか?」

 「最も質のいい?となると……リィジーバレアレっていうこの国最高の薬師の人がやってるって所が1番評判いいんじゃない?ちょっと値は張るけど。」

 「では、そこに行きましょう。それと……申し訳ございません、仲間が大切なポーションを割ってしまって、お怪我はありませんでしたか?」

 「え?ああ、大丈夫大丈夫、ポーションも、弁償してくれるっていうなら別に。……あんたはあっちの黒い鎧のやつと違って感じ良いじゃない?」

 「モモンさんも、ああ見えて普段はとっても優しい人なんですよ。」

 

 うん、まぁ冒険者としての人と接するときの加減はこんなもんでいいかな?

 ちょっと……いや全然、まったくナザリックのNPCっぽくないけど……いやそもそもNPCじゃないし!!中に人入ってますから。

 

 「なんだティカ、早速こっちの冒険者と仲良くなったのか?」

 「あんたと違ってすっごく良い子じゃないのこの子!なんであんたら二人で冒険してんの?」

 「生まれが同じ国なんですよ、ね?モモンさん?」

 「まぁそんな所だ。(ごめんエレティカ……助かるわ~。)」

 

 「<モモンガ様申し訳ありません、このあとは準備を進めつつ宿屋でお休みになられる予定でしたのに。>」

 「<気にするな、こちらとしても、ユグドラシルのポーションとこちらのポーションが異なるというのは少し気がかりだ。元より何か差し迫った用事があったわけではない、あと、お前が見つけてくれたこのアイテムの具合も見ておきたかったからな。ゆっくり行こう。>」

 「<かしこまりました。>」

 

 それに実は資金はカルネ村を襲ってた騎士とニグンさんの部下とかから剥ぎ取った装備を若干手直ししたり直したり法国製の物だとバレないようにした上で盛大に売ってやったので、それほど大した額ではないが、懐は暖かい。

 「もしもの時のためにとっておけ」とお小遣いまでもらっちゃったしね~。

 

 「ここだよ。」

 「ほう……(店と工房が連結して一つの建物になっている……かなり本格的な場所のようだな。流石はこの国で1番と言われるだけのことはある。金には今のところ余裕が有るし、ナザリックへ持ち帰る用にいくつか多めに購入していくとするか。)」

 

 「いらっしゃいませ、何をお求めですか?」

 「治癒のポーションが欲しいのだが、見せてもらってもいいか?」

 「ええ、どうぞ。」

 

 やはりというか、わかってはいたけれどポーションは全て青い色をしており、瓶の中に詰められている。

 ブリタさんの反応を見る限りとても上質なもののようだ。

 

 「ここは先輩であるブリタさんに選んでもらいましょう、ね?モモンさん?」

 「ああ、そうだな。」

 「えっ!!?あ、そうかそういう話だっけ……っと、それじゃあ……私は、これで。」

 「では私も同じものをください。」

 「ふむ、これを五つ頼む。」

 「分かりました、こちらお値段になります。」

 

 金貨40枚、か。一つ金貨8枚。

 でも、こちらが持っている赤い治癒のポーションであれば1個で金貨30枚はするんだっけ?ううん、うろ覚えだな、流石にそこまで覚えてないや、何年も前だし。

 

 「これでいいか?」

 「はい、確かに。」

 

 「あの、本当に良かったの?私が持ってたのよりだいぶ質がいいし、なにより値段が、さ。」

 「いいんですよ、迷惑料と、このお店を紹介して頂いた情報料だと思って下されば。」

 「そう?じゃあ、お言葉に甘えて!」

 

 そう言ってポーションを受け取ると、ブリタは嬉しそうにポーションをいろんな角度から眺めたり頬ずりしそうになって、ハッと気づいたようにこちらを見ると照れたように頭を掻いた。

 男勝りしてそうなイメージだったし実際その通りだったのだが、まぁこうしてみれば悪い人では無いんだろうな。

 

 「じゃあ、私はこれで失礼するよ、あんたらの武運を祈ってる、また何かあったら声かけてね。」

 「はい、さようなら。」

 

 「……ティカはナザリックの者の中では一番といっていいほど人間とのコミュニケーションに向いているかもしれんな……。」

 「え?」

 「いや、なんでもない。ところで……ンフィーレア、と言ったか、ここでは頼めばアイテムの解析も行ってくれると聞いたのだが。」

 

 ああ、赤いポーションの解析もここで済ませちゃうんですね?

 

 「はい、銀貨3枚になります。」

 「ああ、では代金と……解析してもらいたいのは、これになるんだが……。」

 「えっと……これは……赤い、ポーション?ちょ、ちょっと待ってくださ、いや、奥の工房に来てくれますか?おばあちゃんに話を聞いてみますので。」

 「ああ、いいとも。」

 

 

 ……結局ここで赤いポーションの持ち主がモモンだとバレるんだったら最初から渡しても良かったのかな?……あと、ブリタさんに赤いポーションを渡しそびれちゃったけど、後のシャルティアと戦う時の影響はどうなるんだろう?

 あれがないと彼女は……。

 

 ……まぁ、彼女がデザートになってしまうかどうかはともかくとして、シャルティアが支配される件については、既に手は打ってあるんだけどね。




ブリタさんと仲良くなり、ンフィー君には自分からコンタクトを取ることでストレス軽減を図りました。

ていうかもうほんとエレティカはモモンガ様のストレス軽減用NPCか何かなのではなかろうか……。




更新再開して早速で申し訳ないんですが、
今回から更新頻度低くなるかもです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。