(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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もはや好きすぎてクレマンティーヌ編にしてもいいかもしれないまである。

でも動かしやすさとか喋らせやすさだとルクルットが一番喋らせやすいんですよねぇ……。


冒険者編第三章(1/2)

 「この森の賢王、殿に仕え、共に道を歩む所存。皆々様にはご迷惑をおかけするようなことはせぬでござるよ!」

 

 「こ、これは……!!凄い!!なんて立派な魔獣なんだ!!」

 「強大な力と叡智を感じるのである!!」

 「私達だったら、皆殺しにされていましたね……。」

 「これだけの偉業を成し遂げるたぁ……流石、ティカちゃんを守っているだけのことはあるわー!」

 

 思わずモモンはその言葉に「ハァ!!?」と聞き返しそうになった。

 その言葉はモモンが森の賢王、と何故か呼ばれてる伝説の魔獣らしい(まぁ確かにこの地のモンスターにしてはちょっと強いかも知れない、魔法も使えるし)見た目は完全に巨大なハムスターでしかない存在だったが、従属させたことを知らせないわけにも行かず、いっそ堂々とそれを見せた。

 その魔獣に対するニニャの答えは、「なんて立派な魔獣なんだ!!」というものであり、モモンは顎が落ちそうになる程驚く。

 

 「え、エレティカはどう思う?」

 「強さはともかくとして、目に力と叡智を感じさせますね。(まぁ、アウラが使っている魔獣に比べればその強さは雲泥の差ですが、きっと彼らにとっては伝説の魔獣なのでしょう。)」

 「そ、そうか……(う、うーん……そういうものなのだろうか。)」

 

 ティカがいつものように胃腸薬っぷりを発揮させたところで、モモンは納得したようないかないような心情であった。

 

 「モモンさん、その魔獣を連れて行った場合、縄張りがなくなった事でカルネ村にモンスターが襲いかかったりしませんか……?」

 

 確かにその考えは最もな事である。

 つい目の前の偉業を見て忘れてしまっていたがそもそも殺さずに退けるように言ったのはその縄張りが無いとナワバリが消え、カルネ村がモンスターに襲われる可能性があるからだ。

 

 「どうなんだ?」

 「その可能性はあるでござろうな。」

 

 しれっと答える魔獣。

 ナザリックも大概だが、この魔獣は人間をどう思っているのだろうか。

 流石に「ゴミ同然の虫けら」とは思っていなさそうだが、今の物言いから察するに、魔獣にとって人間たちの村が襲われようと、大した事ではない、と考えているようだ。

 

 「そんな……。」

 

 その答えに対しンフィーレアは動揺を隠しきれない。

 ここからナワバリが消えたらカルネ村が危ないのだが、だからといって魔獣を、モモンを、自分ひとりの力で説得する事は極めて困難であると思う。

 漆黒の剣もその偉業を讃えているわけだし、折角モモンの従属した魔獣となり、人に危害は加えないと言っているのに、それを元の生活に戻らせたらまた危険な魔獣に逆戻りなのではないか、という懸念があった。

 

 やがて、ンフィーレアは決心したように、それでも、前々から考えてはいた、という風に口を開いた。

 

 「で、でしたら、モモンさん……!僕を、貴方のチームに入れてくれませんか!?」

 「は?」

 

 ここでいうチーム、とは、冒険者としてのチームではない。

 ンフィーレアは、以前カルネ村を救った【アインズ・ウール・ゴウン】という組織の名を知ってしまっている。

 

 実はこの時点でンフィーレアはモモンが王国戦士長に匹敵する戦士であるという事実しか知らないのである。

 さらにその上、英雄級のマジックキャスターである事はンフィーレアは知らなかった。

 つまり、ここでいうチームとは漆黒ではなく【アインズ・ウール・ゴウン】の事であり、ンフィーレアはモモンがそのチームの中の誇り高き戦士だと思っていたのである。

 

 「僕は、エンリとカルネ村を守りたい!僕に、モモンさんのその強さを、欠片でも教えて欲しいんです!!」

 

 続けて薬学に知識があり、荷物運びでもなんでもするという覚悟もあるという旨を伝え、「お願いです!!」と真摯に頼み込むンフィーレア。

 

 「つまり、マジックキャスターとして、強くなりたいという事でしょうか?」

 「はい。」

 

 至って真剣な少年の眼差し。

 漆黒の剣の面々も固唾を飲んでそれを見守る。

 そしてモモンの答えは……。

 

 「フッ……ハッハッハッハッ……いやすまない、君の決意を笑った訳ではない。……気持ちは十分に分かった。覚えておこう……。だが、君を私のチームに加えることはできない。」

 

 少年の向上心や、決して勇敢とは言えない性格、しかし底なしの人の良さと、愛する人の為に、英雄級の人物に対してここまで言える少年、そしてその真剣さ、それは確かにモモンの心に響き、先程の魔獣がハムスターでガッカリ事件での沈んだ心を明るくさせた。

 しかし、それとこれとは話が別である。

 

 そもそも秘匿するべきことが多すぎるチームだ。

 ンフィーレアが、モモンとティカの二人のチームに入りたかったのか、アインズ・ウール・ゴウンに入りたかったのかは分からないが、どちらにせよ、彼を加えることはいくら真摯に頼まれても首を縦に振る事は出来ないだろう。

 

 「しかし、あの村を守るという点については、少しばかり力を貸すとしよう。もしかしたら、君の協力も必要になるかもしれないが。」

 「是非、是非やらせてください!」

 

 ……こうして、カルネ村付近の森への薬草採集、その警護任務は終わりを告げたのであった。 

 

 

▼△▼△  ▼△▼△

 

 

 

 それから、随分と時間が経過した。

 

 丁度エ・ランテルに帰還した時、辺りはすっかり夜になっており、森の賢王がさっそく騎獣としていい働きを見せようとしたのだが、結局彼……いや、彼女が活躍出来たのはモンスター避けという点でしかなかった。

 

 「ではモモンさん!私達は先に、ンフィーレアさんのお宅で荷下ろしを済ませておきます。」

 「分かりました。私も組合で魔獣の登録が済み次第向かいます。」

 

 さて、ここだ。

 ここで動かなければ運命は変わらない。

 私はここで彼らを彼女の襲撃から守らなければならない。

 

 その理由?目の前で人が死ぬというのに助けないとどうなるか、と考えればわかるだろう。

 ……そう、私の良心が傷つく。

 つまりは私は私の心に後味の悪い物を残さないように、彼らを救う。

 

 しかし、事はそう簡単ではない。

 まず、彼らについて行くという事は、イコール、モモンから離れなければならない。

 絶対の支配者であるモモンガの護衛を担っておきながら、良く分からない動機でその御方の傍から離れ、あろうことかモモンガの警護より虫けら同然の人間の冒険者の救助を優先した。

 

 ……と、ここまで軽く考えただけでも、階層守護者としてあるまじき行為。

 下手したら首が飛ぶ、投獄される、追放される等の極刑を受けることになりかねない。

 

 ティカはそんな条件の中「上手い事彼らを守りつつ、モモンの護衛を続ける方法」を考えた。

 その結果。

 

 

 「(モモン様、念のため、ンフィーレア君のお宅にシャドーデーモンを先行させておきます。特に、ンフィーレア君は、まぁ無いとは思いますが……いえ、警戒をしておくに越したことはないと愚考します。)」

 「(フム……まぁ、いいだろう。)」

 

 

 というやりとりをメッセージで行う。

 ここでの重要な点はシャドーデーモンは彼らの警護ではなく、あくまでンフィーレアの家で彼らの監視を命じるというだけの事。

 

 モモンからしてみても、彼はいくら人が良くて真摯に強さを求め薬師としての才能が有るとは言っても、特殊なタレント持ちで、かつアインズ・ウール・ゴウンの存在、その一端を知っているという警戒すべき相手だ。

 「片時も目を離せられない」という気持ちも分からないでもない、と思ったので、少し迷いつつそれに許可を出した。

 

 

 故にティカの目的は薬師ンフィーレアを警戒して、なんてことは一切無い。

 既にンフィーレアの家に潜んでいると思われるクレマンティーヌとカジットを事前に発見し対処する。

 その為に自分が動けないのであれば別の者に任せればいい。

 

 

 確実にシャドーデーモンからメッセージが入る。

 悠長にモモンがハムスケの絵を書いている時にでも、あるいは街で凱旋している時か。

 そこでティカが直ちに現場へ向かって助けるまでが作戦である。

 

 

 実際、ここまでやる必要はないかもしれない。

 ンフィーレアの店で襲撃があった後、モモン達と一緒に途中で合流した、祖母であるリィジーバレアレが同行したのを覚えているだろうか。

 その時、ンフィーレアがその場に居ないと知って狼狽した彼女に対し、モモンは「守ってやれ」とナーベラルに命令したシーンがある。

 

 この為、極端な話、彼が「行け」と言えば、警護する任務を一時的に解除してでも行かなければならない。

 

 今回の作戦で上手いように話が進めば、【シャドーデーモンがクレマンティーヌを発見】【シャドーデーモンから指示を仰ぐ通信が入る】→【モモンから彼らを守る任務を受ける】→【目的を達成。】

 

 さて、上手く行くだろうか……。

 

 

 「……うん?」

 「……?どうかしまし……どうかした?モモン?」

 「いや、何……少し思ったんだが……」

 

 「(ま、まさか……なにか勘付かれたか!?)」

 

 

 

 「ハムスケに跨るの、お前の方が似合うんじゃないか?(巨大ハムスターな魔獣に跨るのがおっさんか美少女だったら美少女の方がいいと思うんだよ。うん。すみません嘘ですこの罰ゲームもう勘弁して代わってエレティカ!!)」

 「……では、その……(御方だけを歩かせるわけには行きませんし)二人で乗りましょうか……?」

 「いや、それは流石に……。」

 「むむ!某は二人でも大丈夫でござるよ!!」

 「あら、だそうですよ、モモン。」

 「……仕方ない、言いだしたのは私だしな……。(せめて注目がエレティカに集まることを祈ろう。……そうだよ、夜の街に溶け込みやすい漆黒の鎧だし行けるって、うん……だから全然恥ずかしくない……クソォ……。)」

 

 

 その夜、エ・ランテルの街では伝説の魔獣、森の賢王に跨って凱旋する二人の冒険者が居たという。

 その様子はさながら父と子のようにも、冒険者仲間のようにも、恋人にも、王族と従者にも見えたという。

 だがそれは彼らにとって大した問題ではない。

 

 問題は後に、エ・ランテルで彼らを題材とした物語が流行った時に、このシーンが「ティカがモモンに対しての恋心を自覚するシーン」として有名になり、それを守護者統括様の耳に入り、大騒動が巻き起こったのだが、それはまだまだ先の話である。




ティカ役「あぁ、私、やっぱり貴方の仲間として相応しくないわ。」
モモン役「どうしてだ、ティカは私のパートナーとして最高の……。」
ティカ役「違うの……モモン、貴方とこうして二人きりになれるのなら、私、祖国を滅ぼしたヴァンパイアなんて、どうでもいいって気持ちになってしまうの。」
モモン役「なら、ヴァンパイアを倒した後も、ずっと二人で旅を続ければいい。
ずっと共に行こう、ティカ。」

ティカ役「モモン……。」
モモン役「ティカ……。」

アルベド「なんだこりゃあああああああーーーーッ!!!」

エレティカ「どうどう」
モモンガ「落ち着くのだアルベド」



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