(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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感想欄が荒れはじめた位に現実の方でも色々と辛いことが重なり始め、
「もうやめようかなぁ」と思いましたが、

そんな中暖かいメッセージをくれる方が居たり、
こんなに荒れてるのにお気に入り数だけは見るたびに少しずつ増えていたり、
評価してくださる方が居るので、

ここでやめてしまうのはあまりに無責任だと思い、
ひとまず、区切りをつけてしまおうと思います。

今回から最終章となります。


追記:
(あ、あれぇぇぇ!!?確認したとき消したはずなのに……!?)

すみません正しくは今回から最終章、ではなく、
今回の決戦前~からは、最終章まで毎日1話ずつ、というのが正しいです。

ちなみに、この決戦前を3話、次章、屍山血河の戦乙女が2話、
最終章が1話、あるいは2話という構成になっています。
決戦前に話が終わるとかではないです、すみません;;;;

最後の最後までやらかす馬鹿な作者で申し訳ない限りです(恥


あと、多くて6日、少なくても5日……。

こんな馬鹿な作者ですが最後まで楽しんでいただけると幸いです。


決戦前(1/3)

 「姉さま……私のせいで姉さまが……」

 

 ナザリック地下大墳墓の第一、第二、第三守護者の片割れ、シャルティア・ブラッドフォールンは今、後悔と悲哀、罪悪感で胸が張り裂けそうなほど落ち込んでいた。

 

 原因は言うまでもない。彼女の姉であるエレティカ・ブラッドフォールンが自らを精神支配から解放する為に、自らの体を持ってその支配を肩代わりし、精神支配された状態、ナザリックに敵対している状態にあるからである。

 

 「……落ち込んでてもしょうがないでしょ」

 

 そこを慰めてくれるのが、普段険悪な雰囲気ではあれ、本心ではお互いそれほど悪く思っていない、同じナザリック階層守護者で、またその中でも姉弟で一つの階層を守護するというシャルティアやエレティカと似た境遇のアウラ・ベラ・フィオーラだった。

 

 マーレとは一時的に別行動である。

 

 「でも……」

 「心配しなくても、ペロロンチーノ様やぶくぶく茶釜様、モモンガ様と三人も至高の御方が居るんだもん。きっとなんとかしてくれるって。私達は私達に出来る事をするだけ」

 「(チビ助……)そう……そうでありんすよね……」

 「(なんとか持ち直したか……まったく世話の焼けるヴァンパイアね)」

 

 こうして、奇しくも創造主である御方であるペロロンチーノとぶくぶく茶釜のようなやり取りをした後、シャルティアはどうにか、一応任務に差し支えはない所まで持ち直す。

 元より精神支配等、精神に対するダメージは強い方だ、余程の事がない限り、一つきっかけさえ与えれば落ち込んでいても回復は早い。

 

 「(私がしっかりしないでどうするの、今度は私が姉様を助けるでありんす!)」

 

 しばらくしてそう決意したらしく、ふんすと息巻くシャルティアを見てアウラは「本当に大丈夫だろうか」と思ったが、そういえば元々大丈夫ではなかったと思い返し、自分の任務に戻っていった。

 

 

 

 一方、モモンガはというと、現在はエ・ランテル近郊の森に居た。

 冒険者組合で出現したヴァンパイアについての対策会議に呼ばれていた冒険者、イグヴァルジと呼ばれる「モモンの事前の警告も虚しく、高レベルのヴァンパイアによって見るも無残に散っていった」男を横目に、血のついた杖を持つマーレやアルベドに指示を出していた。

 

 「(冒険者の方はひとまずこれでいいだろう)後は……そうだな、マーレはハムスケをナザリックまで帰還させてやってくれ」

 「と、殿……某は大丈夫なのでござろうか、食べられたりしないでござるか?」

 「……当然よ、モモンガ様のペットであるなら、許可もなしに食べられたりしないわ」

 「よろしくおねがいするでござるよ……」

 「うむ……では行くぞ、アルベド」

 「ハッ」 

 

 そうして一通り指示を終え、モモンガとアルベドはそのまま森の奥……エレティカ・ブラッドフォールンが待つその場所へと足を運んだ。

 

 

 そうしてその場に居たのは、虚ろな目でだらんと手をぶら下げたエレティカの姿。

 

 

 「……エレティカ」

 

 

 当たり前だが、モモンガが呼びかけたところで反応するわけもない。

 思わず「エレティカ!」と激昂しそうになるアルベドだったが、事前にモモンガから彼女の精神支配はワールドアイテムによるものだと知らされており、またどういった経緯でこうなるに至ったかも知っていた為に、唇を噛んで、かろうじてそれ以上の言葉を出すことはなかった。

 

 

 「(ここで、ワールドアイテムを所持する謎の団体とシャルティアが戦ったんだよな……?まず、精神支配の使い手が相打ちで致命傷を負ったにしろ、それで連れ去られたにしろ、何故それだけの戦力を持ちながら隙だらけのシャルティアを見逃したのか、仮に反撃やワールドアイテム何らかの効果を恐れたとしても、ペロロンチーノさんから聞いただけの頭数があれば、どうにでも出来たはず。にも関わらず、何故?……)」

 

 その捕まえた老人は死にかけだったが、そこはナザリックのアイテム。

 不可能などありはしないということで完治済みなのだが、前回の陽光聖典の時もあるのと、エレティカの件が重なり、すぐには拷問ないし情報の収集には移れないでおり、そういう意味で既にクレマンティーヌという絶好の情報源を手に入れているのだが、まさか彼女が敵の裏切り者だとは考えておらず、現在彼女に下されている処置は、「保留」である。

 

 モモンガはしばらく思考し、「(いや、今はそんなことを考えている場合ではない、か)」と考え直す。

 

 「……戻るぞ、アルベド」

 「え?は……はい」

 

 今回はひとまず戦場跡から何か探れないか、あるいは伏兵が潜んでいるのならとアウラ達に調査をさせ、防御担当のアルベドとこの地へ訪れたモモンガだったが、そのアウラからたった今「周囲に人影や異常は見受けられません」との報告が上がり、結果はただの無駄足だった。

 まぁ、エレティカが無事にシャルティアの精神支配を肩代わり出来たあたり、そのあたりの事を証明してくれたも同然だったのだが……。

 

 アルベドはというと、てっきり今ここで始末するつもりかと思い、エレティカからかつて「いつでも最高の装備で出撃出来るようにしておいたほうがいいよ」という助言を元に、彼女が今出来るフル装備で訪れていたが、どうもそんな様子ではないモモンガの後を追ってゲートの中へ消えていった。

 

 

 

 その後、ものの数時間でナザリックに所属する全NPCに、警戒レベルを最大限まで引き上げるようにとの知らせが伝達された。

 

 

 「現在ナザリックは最大限の警戒を要しているでありんす……お前たちも、行動を持って、至高の御方々への忠誠を示せ!!」

 「ハッ!」

 

 本来のルートと違い第一、第二、第三階層はマーレとコキュートスの管理ではなく、心なしかいつもより目が赤い(というか泣き腫らしたように見える)気がするシャルティア・ブラッドフォールンによって、滞りなく警備体制の構築が進む。

 

 その他の階層も、階層守護者によって警護を厚くしており、ナザリックは今、かつて人間の軍団が進行してきた時以上の堅牢さを見せている。

 

 ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜も至高の御方である三名で話し合った結果(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、今はナザリック内で待機している。

 

 

 そんな中、モモンガ、アルベド、ユリが、ナザリック地下大墳墓のどこにも隣接していない孤立した空間である、宝物殿へと足を踏み入れていた。

 

 

 「二人は宝物殿は初めてだったか?」

 「はい、アインズ・ウール・ゴウンの指輪が無いと入れませんから」

 

 そして少し歩き、大量の金貨の中でそこだけが異様な存在感を放つ、真っ黒で巨大な結界のような場所に向かって、あらかじめ設定されていた合言葉を口にする。

 

 

 「”アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ”」

 

 

 すると続けて応えるように文字が表示される。

 かなり長いパスワードを言わないと入れない場所だが、モモンガは難なくそれを記憶から探り当てた。

 

 

 「(確か……)”かくて、汝、全世界の栄光を我が物とし、暗き者は全て、汝より離れ去るだろう”……だったか?」

 

 

 言い終えると黒い壁が一瞬にして収縮し、大きな通路が顕になる。

 モモンガはアルベドに「行くぞ」と視線で伝えるとその先へ足を進めた。

 

 

 通路に足を踏み入れ少し進むと、その通路の壁にはディスプレイのように飾られた数々の武具やアイテムがあり、一つとして同じものが無いあたり、コレクター魂で出来たような人の性格が伺えるものになっている。

 

 

 「この先の霊廟が目的地になっている」

 「霊廟、でございますか……?」

 「ん?……お前たちは知らないのか?では、パンドラズ・アクターは?」

 

 「会ったことは御座いませんが、管理上把握しています」と応えるアルベド。パンドラズ・アクターとは、この宝物殿を管理するNPCで、階層守護者や守護者統括と同等の実力と頭脳を持ち、ナザリックの財政面の責任者でもある。

 

 「そして、モモンガ様の御手によって作られた者です……」

 

 心底羨ましそうにそう言うアルベドの迫力に気おされるものの、「う、うむ……」と態度に現れる事はなく、そのままその先へと足を進めた。

 

 

 そこで辿り着いた少し広い部屋。中は殺風景で長テーブルが一つに高級そうなソファが2つ。

 そしてそのソファに腰掛ける者が一人……。

 

 それはこちらに気が付くとぬるりと立ち上がり、モモンガ達と対面する形になる。

 

 

 「なっ……!!?」

 

 その姿を見た瞬間アルベドは驚愕する。

 立ち上がった者の気配、姿がある者と酷似していたからである。

 

 「タブラ・スマラグディナ様!?」

 

 そう、それは、アルベドを含む、ニグレド、ルベドの3人を創造した至高の御方々が一人。

 タブラ・スマラグディナ。この場合、アルベドにとっては父親にも近い存在と言えるだろうか。

 ……が、だからこそ分かる。

 

 「そんな……いや、違う!一体何者……!?たとえ姿や気配を真似ようとも、創造してくださった方までは間違ったりしません!!」

 

 そう捲し立てるアルベドだったが……目の前の異形の者は首を傾けるばかりで何も答えようとはしない。

 そう、答えるつもりが無いのね、とアルベドが結論を出し、ユリに指示を下す。

 

 「……殺せ」

 「で、ですが……」

 

 「もうよい、パンドラズ・アクター」

 

 が、指示を出した直後に、モモンガがその名を呼ぶと目の前の異形の姿形が流動的に動くスライムのように、色まで変化していき、やがて一つの……その者本来の姿へと戻っていく。

 

 「ようこそ、おいで下さいました」

 

 それは黄色い軍服……ナチス親衛隊制服に酷似した軍服を身に纏っており、顔が埴輪のような、つるりとした顔になっている異形。

 カツカツと足音を立てながら前に進み出たその者は恭しく頭を下げ……るのではなく、足並みをカツッと揃え、ビシッとした姿勢で右手を頭に掲げるような形……いわゆる、軍隊における敬礼のような形で忠誠の意を示す。

 

 「私の創造主たるモモンガ様!」

 

 「お、おう……」と、パンドラズ・アクターのやや高め……いやかなり高めのテンションに押されてつい「お前も元気そうだな……」等と言ってしまうが、それに対して「はい!」と覇気のある声で答えられ、続けて、「ところで今回は…………どう、されたのでしょうか?」とかなり溜めながら、大袈裟に問われる。

 

 「ワールドアイテムを取りに来た」

 「おおっ、ワァールドアイテムッ!!世界を変えれぇる!!……強大な力……ッ!!至高の御方々の偉大さの証……!!ナザリックの最奥に眠る秘宝の数々が………………ついに力を振るう時が来たと……?」

 

 言いながら、「お前はそれ一体何回ポーズを変えるんだよ」と言いたくなる程、大袈裟かつダイナミックに言うパンドラズ・アクター。

 モモンガは内心「うわあ……だっさいわぁ……」と身悶えしていた。

 何故ならパンドラズ・アクターを作った本人だからである。

 

 しかしそれも一瞬の事。

 

 「……うむ、『強欲と無欲』『ヒュギエイアの盃』『幾億の刃』『山河社稷図』を持っていくつもりだ」

 「ハッ!承知しました、モモンガ様」

 

 そして、ビシッ!と敬礼をし続けるパンドラズ・アクター。

 ……それを冷たい目で見守るアルベドとユリ・アルファ……。

 

 「(やめてくれ……そんな冷たい目で俺の黒歴史を見ないでくれ……!!

 そうだよ!!服装も言動も皆カッコイイと思って俺が作った設定だよ!!

 ……いや軍服は?今でもカッコイイと思わなくも無いんだけどさあ?)」

 

 あまりの羞恥に、内心で誰に向けているのか勝手に言い訳を始め出すモモンガ、そしてその視線を疑問に思ったパンドラズ・アクター。

 

 「いかが!!なさいましたか!?」

 「(ハァァァァァァ)」

 

 思わず手で顔を覆うモモンガ。

 いや、パンドラズ・アクターは悪くないのである、「そうあれ」と設定された通りの事をしているだけなのだから……。

 そう思い直し、とにかく用事を早く済ませてしまおうと思ったモモンガは「ではいくぞ」と歩を進める。

 それに続くアルベドとユリ・アルファに、パンドラズ・アクターが声をかける。 

 

 「いってらっしゃいませ、モモンガ様、そして……お嬢様方(・・・・)。」

 「お嬢様……?」

 

 思わずその言葉にピクリと反応してしまうアルベド。

 いや、ここでの反応というのは嬉しいという意味ではなくむしろその逆であったが。

 

 「私は守護者統括、ユリはプレアデスの副リーダーです。そのような軽々しい呼び方は慎むよう」

 「私からも是非お願いします」

 

 と女性二人から極寒の冷たい目線と反応が返ってくるが、パンドラズ・アクターはほとんど応えたような様子を見せず……「おお、これは失礼しました……薔薇のように美しくも、可憐なお姿に、つい」「おいちょっとこっち来ーい」

 

 そのままモモンガはパンドラズ・アクターを引きずって壁に追いやった後、いくつか説教……いや、この場合頼みとかお願いという類なのだろうか……。

 

 ともかくその敬礼はやめろ、うん、今のドイツ語だったか?それもやめような!うん!

 

 ……というやり取りを行って、ようやくモモンガとアルベドは宝物殿へと足を進めるのだった。

 

 

 

 ……「っとその前に、アルベド、ユリにリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを預けておけ」


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