(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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前回の追記でも書きましたが、前回のこれが最終章っていう一文は作者の消し忘れです!!

もうほんと…………どうせなら美少女に生まれてドジっ子として確立したかった……(血涙


正確には、
【決戦前】~【屍山血河の戦乙女】~【最終章】

となっております。
重ね重ね申し訳ありません。

では本編へどうぞ。


決戦前(2/3)

 「ギルドの指輪で転移しないと入る事も出来ない宝物殿……しかし、この部屋に指輪をつけたまま入ると、ゴーレム達に襲われる……と言う訳だ」

 

 モモンガは事前にアルベドに指輪を外させた訳を話しながら歩みを進め、アルベドは説明を聞きながらある疑問を抱き、それを口にした。

 

 「……このゴーレム達は、至高の方々を(かたど)ったものでは?」

 「よく気がついたな……これらは私がかつての仲間達を模して作った物だが……かなり不格好な形だろう?」

 「とんでもございません」

 

 そう、ここに置かれているゴーレムは全て、かつてこの地に居た仲間達を模してモモンガが作った物、そのゴーレム達の体には、その仲間達がモモンガへ「売り払っても構わない」と言って遺していった装備品が持たされている。

 ……ただし、ペロロンチーノのゴーレムとぶくぶく茶釜のゴーレムだけは、転移した初日に装備品を取りに行ったので、今はなにも付けられていない。

 それを見てモモンガは「やはり売り払わなくて正解だった」と内心で笑みを浮かべていた。

 

 「……しかし、霊廟という名前といいこのゴーレムといい……もしや、他の至高の方々は、お亡くなりになられたのですか?」

 「それは……正解ではないな」

 

 正解ではない、と言葉を濁すものの、内心ではそれこそが正解なのではないかと思っていた。

 だがこうしてペロロンチーノやぶくぶく茶釜のように、成り行きではあれ戻ってきてくれた仲間も居る。

 それに、心のどこかでは……かつての仲間もこの世界に来ているのでは、と考えてしまう自分も居る。

 

 そう思っていると、ふとアルベドの悲しそうな目線に気づく。

 

 「どうした?」

 「いえ、何も……」

 

 そんな顔で何でもないと言われてはそれ以上聞く事も出来ない。

 とりあえず話題を変えようと思ったモモンガは、空席の場所を指しながら言葉を紡ぐ。

 

 「空席の場所があるだろう?あそこに、私の像が置かれる予定なのだよ」

 「そのような事はっ……仰らないで……!言わないでください!!」

 

 言い切って、そう返って来てからモモンガは自分の失敗に気づく。

 ああ、今の選択はミスだったと。

 

 「モモンガ様……最後にお残りになられた慈悲深きモモンガ様……どうか、いつまでも私達の上に君臨してくださいますよう、心より、お願いいたします!!」

 

 今の話の流れでは、まるで自分もいつかはここを去ってしまうようではないかと思う。

 ペロロンチーノやぶくぶく茶釜が戻ってきたとは言え、彼らはアルベドにとって「一度はこの地を離れた身」であるという意識が拭えなかったのと、書き換えられた「モモンガを愛している」という設定も相まって、アルベドにとってモモンガこそが至高の方々の頂点に君臨する存在であり、唯一忠誠を誓う相手であった。

 そんなアルベドにとって今の話はあまりに酷な物である。

 

 彼女ら、ギルドのNPCにとって自分の存在意義とは、至高の方々に仕え、僅かでもお役に立つ事、それが成せない存在など存在する意義はない。

 またそれは忠誠を誓う相手が居なくなった場合にも同様、自分たちは「要らない物」だと認識し、絶望に暮れるだろう。

 

 そこまで理解してかしていないのか、モモンガは無言でアルベドの顔を上げさせ、その頬に伝う涙をローブで拭き取った。

 

 「……許せ」

 

 そして、そんなアルベドの悲痛な訴えに返って来たのは謝罪の言葉だった。

 それは、泣かせた事に対して?そんな訳はない。

 自分はいつまでもここに君臨する存在ではないと言われたのと同義だった。

 アルベドはそれを認めようとはせず、「モモンガ様!お約束下さい!私達をお捨てになって、この地を去らないと!」と、悲痛な叫びはより具体的に訴えられた。

 

 「すまんな……しかし」

 「何故!?何故約束して頂けないのですか!?何がご不快なのでしょう!?仰ってくだされば、その要因を即座に排除致します!!もし私が邪魔だと言うのであれば、すぐに自害を!!」

 「違う!!」

 

 叫ぶアルベドに対し強い主張を持ってそれに応え、落ち着かせるように両肩に手を乗せながらモモンガは「聞いてくれ」と続ける。

 

 「ワールドアイテムの効果は絶対だ。その効果を防ぐには、こちらもワールドアイテムを所持する必要がある」

 「だ、だからこそ、ここのワールドアイテムをお取りに来られたのですよね?」

 「そうだ。だがそれは今回の件と、今後件の敵と思われる部隊。ひいては、もしもその大元と戦闘する事があった際に守護者たちに持たせる(・・・・・・・・・・)為だ。」

 「えっ?」

 「実のところ、エレティカを救う手段はあるのだ!」

 

 モモンガはアルベドの肩に手を置いたまま叫ぶように事実を告げる。

 そのことに動揺するアルベドを放って、話が進んでいく。

 

 「ワールドアイテムの中でも、破格の効果を持つ『二十』と呼ばれる二十個のアイテム……その中の一つがこの奥にある……だが、二十は強大な力であるが故に、一度使えば失われてしまう。この世界でもワールドアイテムが存在し、敵と思われる存在ないしこれからの活動において遭遇するかもしれない未知の存在がそれを所持している可能性があると分かった以上、今その切り札を使うのは躊躇われるのだ。……まったく、情けない主人だ」

 「そ、そのような事はありません!ワールドアイテムは、至高の御方々の労力によって集められた物……その価値は、私共よりも高いと思われます」

 

 モモンガの情けない主人だという言葉に対するアルベドの主張も、最もである。

 NPC達は一度失われたとしても、蘇生すれば済む話だ。

 それを抜きにしたとしても、一度使えば無くなってしまい取り返しがつかないワールドアイテムに比べ、その価値を同じ天秤に乗せたとしたら、蘇ることができるNPCと二度と蘇らないアイテムとでは雲泥の差があるだろう。

 最も、モモンガはそうは思っていなかったが。

 

 「アルベド、先のお前の言葉に沈黙で返した理由を聞かせよう。……お前が至高の方という私、そしてペロロンチーノさんとぶくぶく茶釜さんと三人で話し合った結果……”私が単騎でエレティカと戦う”という結論に至った。その為、生きて帰れるかは分からないからだ」

 

 アルベドは驚愕した、そして即座にその言葉に待ったをかける。

 

 「エレティカと戦うのは分かります!放置は最も愚策だということも!しかし!であれば、数で押しつぶせば良いではないですか!!何故御身一人で戦われるというのですか!?」

 

 最もな意見である。しかもモモンガにはかつての仲間であるペロロンチーノやぶくぶく茶釜も居るのだから、余計に一人で戦う理由がわからない。

 その二人がその決断に至った理由も。

 

 モモンガは「違うんだ、アルベド……」とどこか悲しげに呟く。

 この後話そうとしていること、それは本来必要ないことかもしれない。

 それはほとんど愚痴や弱音を言っているのと同義だと考えているからかもしれない。

 だが、理由はなんだと言われては……

 

 「そうだな……理由は4つある」

 

 話さない訳にはいかないだろう。

 

 「一つは、私がお前たちの主人として相応しいのか、疑問を抱いたからだ」

 

 それはアルベドを再度驚愕させるに十分な一言だった。

 他でもない、絶対なる支配者の口から出た言葉とは到底思えない。

 だがモモンガはそんな思考をよそに更に言葉を続ける。

 

 「冷静にユグドラシルプレイヤーが居る可能性について考えるのならば、ワールドアイテムの存在についても考慮すべきだった……こんな抜けた者に、支配者としての資格があるだろうか?」

 「モモンガ様はここにいらっしゃるだけで価値があります!それに、及ばずながら、私共が補佐をさせていただきます!」

 「二つ目の理由だ」

 

 ここに居るだけでいい、そう訴えるが、モモンガはそれに答えることなく次の理由について語った。

 

 「二つ目の理由は、敵の正体が未だ不明であるという点だ。

 そもそもエレティカが単騎でシャルティアの精神支配を肩代わりした際も、エレティカは無事だった、例えばシャルティアが囮であり、周囲に伏兵が潜んでいたなら、何故エレティカは無事だったのか?」

 

 そう、もしもあれが罠だったら何故敵はエレティカを襲わなかった?

 一人で行ったから伏兵を警戒された?

 だとしたらエレティカを追い、そしてシャルティアを回収したペロロンチーノは?

 突然の出来事に動揺したシャルティアとペロロンチーノは隙だらけだった、エレティカの攻撃も相まって、襲撃するには絶好のタイミングだった筈だ。

 

 よって、罠であるという可能性は低くなった。

 だがそれも、低いというだけで、考えられる最悪のケースならいくらでもある。

 

 例えば既にナザリックの位置がバレている場合。

 

 ここでもしエレティカの討伐に人員を割いて大人数で向かったら、その隙をついてナザリックに攻め入られる可能性はないだろうか。

 そうなってからでは遅い。瞬時に敵の襲来を伝達し、エレティカの件を置いて転移するにしても、転移を妨害する魔法だって存在するのだ。

 

 であるならば、エレティカの討伐へは単騎で挑み、敵に伏兵の存在を警戒させ、その上でナザリックの守りは健在であるという可能性も警戒させなければならない。

 

 「三つ目に……この事は既に、現在居る私、そしてペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さんの三人で話し合いを行い、多数決で私に決定したからだ。故に、私が単騎で行く事はもう変えることは出来ない」

 

 アインズ・ウール・ゴウンは元々多数決制だ。

 元より癖の強い者達が集まったギルドであるし、衝突は一度や二度ではなかった。

 その為、ギルドでもしそういう事があったなら、多数決で決めるのが定例となっていたのである。

 

 そして多数決で決まった、とはいったが、三票揃ってモモンガで決まったわけではなく、当然反論はあった。

 1票はペロロンチーノ自身が自分に、残り2票はモモンガとぶくぶく茶釜とでモモンガに決まったのである。

 

 ペロロンチーノの主張は「俺はあの子の親だ、子が道を違えたなら親がそれを正すのが道理だろう」というものだったが、逆にぶくぶく茶釜は「親子で殺し合う奴があるか」という主張で、ただし自分ではエレティカを倒せるほどの決定打が無いという事と、立場というか気持ちの上で彼女……エレティカの叔母であるので、自らの主張の上で、自分が殺すというのはおかしいという気がした。

 

 なので、実力と実績を知る限りでは確実に倒せるであろうモモンガだったのだ。

 

 「そして最後に……エレティカを殺すからだ」

 

 「ならば!!ならば私が行きます!!私がエレティカを殺します!!」

 

 アルベドはそう訴える、が、モモンガはそれに対して冷ややかに、「お前に勝算はあるのか?」と問う。

 

 「それは……」

 「……エレティカは強い。一騎打ちでエレティカに勝てるのはナザリックで私だけだ」

 「確かに、モモンガ様の武装ならば勝てるかもしれませんが……」

 

 アルベドとエレティカは同じ100レベルだ。

 だが、勝算はほぼ無いと言っていいだろう。

 ……だがそれはモモンガにも言えることだ。

 例え武装で固めても性能差が開いていては同じことなのではないだろうか。

 

 「エレティカはシャルティアと同様、戦闘用に特化された構成であり、素早さに特化した『シャドー・ロード』、肉弾戦でいうならシャルティアよりも上……。つまり、単騎で戦った場合、MPが切れたら戦えなくなる私の方が不利、そう言いたいのだろう?」

 「恐れながら……」

 

 幸いなのは、姉妹で一つの層を守護するということで、シャルティアはアンデッドに特化した信仰系マジックキャスターであるのと反対に、エレティカは対人間種用に特化した滅びの姫(プリンセス・オブ・フォール)という職業を持っているという点だ。

 

 そう考えるとシャルティアより脅威度は落ちるかもしれない。

 

 残る脅威を考えるとするならば、彼女はギルドのNPCで無いからか普段から他のNPCに無い行動を良く取ることがあり、また彼女のキャラクターとしての設定を知らないという点であるが……。

 

 「その考えは正しい……しかし間違えてもいる……お前たちの知識は与えられたものにしか過ぎないのだな……」

 「えっ?」

 

 「ナザリック最高の支配者とお前たちが呼ぶ存在が……

 

 

 

 伊達では無いことを教えてやろう

 

 

 

 性能差だけで私に勝てるものか。そして何より、私とペロロンチーノさんは仲が良い!……戦闘は始まる前から終わっている……という事だ」

 

 

 それは、強い意思を持った、勝利の宣言。

 不利だからなんだというのだ、性能に差があるからなんだというのだ、お前の親であるペロロンチーノさんとは今でも(・・・)仲が良いんだぞ、と。

 

 その強い力を持ち、赤く揺れる瞳に、アルベドはもはやそれを止めようとは思わず、不敬にもその力を疑ってしまったことを恥じている程であった。

 

 「最早お引き止めはしません、ですがお約束下さい……必ずこの地に帰ってくると」

 

 アルベドの顔にもはや涙は無く、対するモモンガの心にも、もう迷いはなかった。

 

 

 

 

 「約束しよう……私はエレティカを倒し、友の待つこの地に……再び戻る」





概ね原作の流れと同じ感じになってしまいましたが、ここは変に変えないほうがいいかな、と、ちょっとした補足だけつけた感じにしました。

(前回残り二人の至高の方が出なかったのはここのゴーレムの装備を売らなくてよかったとかそういう下りとかがやりたかったからです)

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