(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

30 / 31
戦闘ラスト。



屍山血河の戦乙女(2/2)

 「ひとつ言っておくことがあるとすれば……PVPにおいて重要なのは、相手にいかに虚偽の情報を掴ませる事だが……お前の場合それが大変やりづらかった、とでも言っておこうか。スキルを知らないという言葉を信じたのかどうかはわからんが、結局スキルを温存せずに使ったのは確かだしな……一重に、油断大敵、という事だ」

 

 「…………」

 

 エレティカとしては言いたい事はあったが、こらえることにした。

 最初から最後まで騙されてなどいなかったが、それでも原作にないルートに行って予測不能な行動をとられるよりは対処がしやすいと考えた為である。

 

 だが、次の瞬間にはそれを後悔することになったので、やはりどこかで油断はしていたのだろう。

 

 「《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》」

 

 次の瞬間、モモンガが残り僅かなMPで発動させた魔法の名を聞いて、エレティカは驚愕と、恐怖……いや、恐ろしいというよりは、血の気が引いていくような……そう、「何故今までこの魔法があることを考慮しなかったのか」という事について。

 そしてこの先に待ち構えている”展開”の、その片鱗のようなものを味わっていた。

 

 「さぁ、最終ラウンドといこうじゃないか、エレティカ」

 

 そう言いながら、ローブを脱ぎ捨てるように装備を変更する。

 

 そこに現れたのは、銀色の鎧を着込んだ戦士の姿のモモンガであった。

 

 

 

 「コ……コンプライアンス・ウィズ・ロー……、それは……たっち・みー様……!!」

 

 「そうだ、今お前の目の前に立っている男は、もはやモモンガではない。

 ……アインズ・ウール・ゴウン41人の力が結集しているものであると。

 そして知るがいい、お前に端から勝機など皆無であったと!!」

 

 

 戦士化の魔法。

 それは、本来魔法職では装備出来ない、あるいは出来たとしてもある程度のペナルティを受ける戦士職の装備を、ペナルティ無く装備することが可能になるという、文字通り戦士と化する魔法、それが《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》である。

 

 だが、一体誰が思っただろう。

 

 まさかその戦士化の魔法で、大会で優勝しなければ手に入らない、ワールドチャンピオンの鎧まで装備することができるなどと。

 

 そうして、方や、猛々しい声を上げながら”ある武器”を手に斬りかかる戦士。

 方や、恐怖と、次々と蘇る記憶(げんさくちしき)で絶叫し、手に持つハルバードを全力で振るう戦乙女。

 

 「きゃあああああああああああああーーーーーッ!!!」

 

 その”ある武器”によって、赤黒く染まった鎧の防御をいとも簡単に通り抜け本体にダメージを与え、エレティカが金切り声のような絶叫を上げながら大量の血を吹き出す。

 

 そして、振り抜かれたそれを見てエレティカは目を瞠って絶句する。

 いや、エレティカだけではない。

 モモンガと、このことをなんとなく察していたぶくぶく茶釜、そしてペロロンチーノ以外の、この戦いを見ている者全てが、この剣を見て目を瞠った。

 

 

 そう、今まさにエレティカにダメージを与えた、雷を纏うかのようにバリバリと音を立てる剣、いや、刀の名は……

 

 「建御雷八式…………!!?」

 

 「相応しくないかもしれないが、ここは「いくぞ」と言わせてもらおうか。

 安心しろ、代わりに死ぬな(・・・)なんて無理は言わないとも」

 

 そう言い終わる前にエレティカが後ろへ飛んでその刀の攻撃範囲から遠ざかる。

 それは攻撃範囲を見極めてのものか、あるいは恐怖からくるものか。

 

 

 「アインズ・ウール・ゴウン41人の力をその体に刻み込むがいい!!」

 

 「くっ……!!」

 

 エレティカも負けじとその禍々しい凶刃を振るうものの、大きなダメージを与えるには至らず、逆にカウンターの体勢を取られてしまい、その刃は思わず防御をしようとした左腕を易易と切り飛ばす。

 

 「ぐっ!!……カハァッ……隙あり、ですねぇ!!」 

 

 だが、その大振りの、腕を切り飛ばす程の一撃はエレティカにとって一瞬ではあるが隙を突くのに十分な間を取らせた。

 その間を縫うようにハルバードが振るわれる、が、既にその時モモンガの手には刀はなく、代わりに二本の対となる月のような静けさを持った小太刀、月詠とその反対に明るい日の出のような輝きを放つ天照と呼ばれる小太刀を握っていた。

 

 そして、その二本の小太刀でもって、易易と攻撃を受け止める。

 

 「どこに隙があるというんだ?」

 

 「そ、れは……!!弐式炎雷様の……!!」

 

 そして、ハルバードを軽くいなすと、小太刀の届く範囲、エレティカの懐に飛び込み、その刃が突き立てられる。

 

 「がぁぁぁっ……これは……神聖属性のぉっ……!!離れろ!!」

 

 「ふ、であれば手伝ってやろう。目一杯距離を取るといい」

 

 「なっ……!!」

 

 この一瞬で、一体どれだけ武器を入れ替えるというのか……今度は、巨大で刺の生えた凶悪なガントレットを装備し、その一撃を振るおうとしていた。

 エレティカは突然の事に防御を取るしかない。

 

 だが、そのガントレット……元々はやまいこ様の装備である『女教師怒りの鉄拳』の巻き起こす衝撃波によって、エレティカは短い悲鳴を上げながら後方へと吹き飛んでいく。

 

 そして、空中で体勢を立て直して地に降り立ってモモンガの方向へ目を向けると、そこには信じ難い物を持ったモモンガの姿があった。

 

 それは、一言で言えばスナイパーである。

 ただし近代でいうところのそれではなく、ひたすらに黒塗りで光の一切をも反射しない程の、漆黒と呼ぶ相応しい長身の銃であり、構えている右肩から腕をすっぽり覆って固定する形になっている持ち手が特徴的な物。

 

 まるで腕自体が銃になっているかのような形である。

 

 だが本来であればここでは、ペロロンチーノの武器が使われるはずである。

 が、それは今、帰還しているペロロンチーノの手の中にある。

 

 

 「そ……それは、テンパランス様の、『俺の後ろに立つな』……!!?」

 

 

 ここに来て、始めてエレティカは既視感を感じない光景を目にするが、しかしそんな事に構っていられるほど余裕があるわけでもない。

 

 「それを一体、どこに……!!?」

 

 「答えを教えておこう……『課金アイテム』だよ」

 

 「(まさか……あの木の棒が……いや、そうだ……そうだった。私はどうして、こんな事まで忘れてしまっているの?…………アレは、貫通力が高く、スキルか魔法で強化した防壁でもない限り防ぐことも出来ない!不浄衝撃盾が使えれば……いや、違う、か……)」

 

 そして、モモンガが引き金を引くと、銃口から赤い閃光が走り、ドパンという弾ける音と共に、一瞬でエレティカの右胸に大穴を開け、鮮血を飛び散らせる。

 普通なら即死でもおかしくない重症であるが、この程度で死んでくれる程、エレティカは甘くない。

 

 「がっは……!!ごのまま、では……!!」

 

 そして、その距離が酷く不利であると理解したエレティカは、一気にモモンガとの距離を詰める。

 

 「いい覚悟だ」

 

 そして、手に取り付けられていたスナイパーは消え、代わりに大きく真っ赤な戦斧。

 奇しくもハルバードとバトルアックスという似たような武器がぶつかり合う。

 名前も「血で血を洗う」と「血を啜り肉を喰らう」と、「血」が入った文章が名前の武器シリーズでもあるのかと思うほどの偶然であった。

 

 

 「……モモンガ様ノ勝利、ダ」

 

 「何故だね?私からすれば、まだ勝敗は遠いところにあると思うのだが……」

 

 「……エレティカが防御を捨てて攻撃に特化したからよ、デミウルゴス。

 もし私がエレティカの立場だったら同じことをすると思うわ」

 

 「……成る程……モモンガ様が武器を次々と交換していく、つまり他にどのような武器があるのか不明のため、情報が欠如している現状では、距離を取るという行為が愚行になるという可能性があると考えたのでしょう。

 あの銃器を見せられればそう思うのも無理はないでしょうね。

 だからエレティカは、せめてあのハルバード「血デ血ヲ洗ウ」……血で血を洗うの届く距離で戦うしかない、という事ですね?」

 

 「流石はアルベドだな、おそらくその通りだ」

 

 「成る程……私にもなんとなく理解できました。

 つまり防御を捨てたエレティカに対して、モモンガ様はあの斧「血ヲ啜リ肉ヲ食ラウ」……ありがとうコキュートス、その、血を啜り肉を食らうを持ち出された。

 見ての通りその血を啜り肉を食らうはバランスが悪く命中性能に乏しいが、防御を捨てたエレティカにならば問題はない、という事ですね?」

 

 「そう、全てはモモンガさんの考えているとおりに進んでいるというわけだ」

 

 「……しかし、相手はあのエレティカ。

 妹であるシャルティアよりも肉弾戦闘に長けた構成である彼女と、戦士化したとはいえ本来魔法職であるモモンガ様とでは些か分が悪いのでは?」

 

 「心配する必要は無い。

 ここまで全てはモモンガさんの思惑通り、そして、あの腕につけた時計……ここから考え出される答えを導き出せば、おのずとモモンガさんの勝利への道が見えてくるはずさ」

 

 

 

 「ハァァァァーーーッ!!!」

 

 「ヌグッ!!」

 

 ここに来て、怒涛の勢いでハルバードを振るうエレティカ。

 彼女はもはや何の知略も策略も関係なしに、ただ目の前の敵を屠る事だけを考えてハルバードを振るっていた。

 

 でないと、死ぬ。

 

 原作知識がもたらしてくれる”嫌な予感”がそう言っているからだ。

 

 正直勝てる気もしない。

 

 だからといって、逃げるわけにも行かない。

 

 先程のスナイパーで射抜かれてはいくら遠くへ行っても同じことだ。

 

 そんな彼女の必死の攻撃は、この世界で言うところの武技というものの動きをも超越するほど洗練され、磨きぬかれ、モモンガとの戦いにおいてもこれ以上ないほどのヒット数を叩きだしていた。

 

 が、同時に、死神の、着々と自分に歩みを進めているような足音が聞こえてくるような気さえしてくる”嫌な予感”に、焦りは募る一方であった。

 

 そして、モモンガの持つ武器が消え、代わりに盾が現れる。

 それによって、スキルではないにしろ、タイミングを見計らって攻撃を弾き返す事で体勢を崩し、パリィに近いような事をすると同時に少し距離を取る。

 

 すかさず距離を詰めようとするエレティカだったが、その瞬間聞こえてきた声に、思わず足が、思考が、ピタリと止まってしまう。

 

 

 

 『モモンガおにいちゃ~ん、予定した時間が経過したよ~!』

 

 

 

 「ぶくぶく茶釜……様……」

 

 「……なぁ、何の時間が経過したと思う?」

 

 

 エレティカは、思わず身構えるが、それを無視してモモンガが続けて話す。

 

 

 「今までの……魔法戦でお前のスキルを全部消費させたのと、その後、ギルドメンバーの装備を使い、蘇生後のお前の体力を削ったのと……そして、今、予定した時間が経過したというものが全て、私の計算の内だったとしたら、この時間の経過は何の意味を成すと思う?」

 

 「ま、さか……いや、そんな馬鹿な……」

 

 エレティカには覚えがある。

 このあとに続く言葉を覚えている。

 あれだけ何度も何度も読み返し、小説で、アニメで、漫画で聞いて見て読んだのだ。

 

 覚えていない、ハズがない、なのに、どうしてか霧が晴れない。

 頭の中の霧が……。

 

 

 「決着だよ。

 勝負の終わり、ということだ」

 

 「私は、まだ……!!」

 

 「エレティカ……俺はペロロンチーノさんと仲が良い。

 ここに来る前にお前の持つ蘇生アイテムの事も、お前の持つスキルの事も、装備の事も聞いたさ。

 そして、だからこそ、ここまで手の込んだ作戦を立て、わざわざギルドメンバー達がかつて使っていた武器などまで持ち出した。

 何のためにだと思う?

 ……超位魔法一回では、HPが満タンのお前を屠ることができないからだ、エレティカ」

 

 「ぁ……」

 

 「……ならば、一回で倒せるくらいまで、HPを消耗させれば良い。

 ……そう思わないか?」

 

 「ぁ、ぁ……ぁぁぁああああああああっ!!!うあああああああああーーーーー!!!!」

 

 エレティカはなりふり構わず、という風でハルバードを振るった。

 いや、これはもはや、そんな可愛いものではない。

 半狂乱。

 

 狂ったようにハルバードを振るう。

 

 だが、そのいずれもモモンガの持つ盾によって防がれ、尽くを弾かれてしまう。

 

 それでも攻撃は止まない。

 

 渾身の一撃が、盾に振り下ろされる。

 

 

 

 その時であった。

 

 

 

 

 エレティカの振るったハルバードから、何かが折れるような、割れるような、崩れるような、そんな音が鳴る。

 

 見れば、ハルバードの刃にあたる部分に一筋、稲妻に打たれたかのように分岐するひび割れがあった。

 

 そして、絶句する間もなく、ハルバードの刃はどんどん割れが酷くなっていき、最終的に、バリンッというガラスを叩き割ったかのような音が鳴り響き、ハルバードは見る影もなく……いや、その姿形すらもうどこにもなく。

 

 欠片となり、塵となり、砂となり、キラキラとした粒子となり、エレティカの手を離れ、消えていった。

 

 

 

 「……あぁ……」

 

 

 そういうこと(・・・・・・)か、とエレティカは納得した。

 

 

 

 つまり「私」は、最初から……。

 

 

 

 エレティカは、呆然とするように、自分の相棒の散っていく姿を見届けた後、キッとモモンガに構え直し、残った方の腕を大きく振るい上げる。

 

 

 「その意気は良し!引導を渡してやろう、これが本当の最後だ!エレティカ!!

 《フォールンダウン/失墜する天空》!!」

 

 「!!……なぜここで発動まで時間がかかる超位魔法を?」

 

 エレティカはそうモモンガへ問うが、対するモモンガは何も答えず、手にした砂時計のようなアイテムに亀裂を入れる。

 

 

 

 「……それも、課金アイテム……!!!」

 

 殴りかかろうとしたところで、やめる。

 あれは恐らく割る事で効果を発揮するんだろう。

 拳が当たった拍子に割れたとしても同様かも知れない。

 

 エレティカは、最早負けを確信したように、地に膝をつけ、ただ超位魔法の発動を待つことにした。

 モモンガも内心でそれに少し驚いたものの、ユグドラシルでも実力の差を知り、自暴自棄になったり、降参したりするプレイヤーを何回か見てきた。なので大して動揺することなく、威厳ある口調で最後に言葉をいくつか紡ぐ。

 

 

 「…………私の勝ちだ、エレティカ」

 

 「えぇ、貴方の勝ちです、モモンガ様……貴方こそ正に、ナザリック最強の御方……」

 

 

 そして、何秒たっただろうか、あるいは一瞬だったかもしれないが、本日二度目の超位魔法が発動し、その光の中にエレティカとモモンガが飲み込まれていく。

 

 

 その光の中で、エレティカは何か見た気がした。

 

 遥か遠くに居るはずで、今ここで、視界に映るはずもない、妹の姿を。

 

 命を賭けて守ったというには少し主張が我が儘過ぎる気がするけれど、それでも、例え後で生き返ると知っていても、貴女が死ぬのを見たくなかった……。

 

 けれど、それは貴女も私に同じことが言えたかもしれない。

 

 貴女は私が死んだら例え後で生き返ると知っていても悲しんでくれるだろうか?

 

 

 段々と意識が遠くなっていく。

 

 

 あぁそうか。

 

 

 

 一度体験した事はあるが、あれは痛みも何もないゲームの中だったもんなぁ。

 

 

 

 つまるところ、これが死か……これが逝くという事か……。

 

 

 

 これが……

 

 

 

 

 ……この地を去る

 

 

 

 という事……

 

 

 

 何とも、悲しい…………

 

 

 

 ……そして、寂しい……

 

 

 

 ……”彼ら”もきっと……

 

 

 

 

 

 こんな気持ちだったのだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……エレティカ……」

 

 「……お姉ちゃん……」

 

 「……帰るよ」

 

 「え?でも、勝負は……」

 

 「モモンガ様の圧勝!!!」

 

 アウラは腹が立っているような、泣いているかのような、そんな声で返し、ズンズンと帰路を進んでいき、その後ろをマーレが慌ててついて行った。

 

 そして思い出したかのようにアウラが戻ってくると、呆然とその場に立ち尽くしたシャルティアの首根っこを掴み、ズルズルと引きずっていった。

 

 

 

 

 「ペロロンチーノ様……アレは……今のは一体……エレティカの持つ武器が割れて、崩れて、消えたように見えましたが……」

 

 「……アレは、武器が耐久値の限界を超えたときに、起こる現象だ……消えたわけではなく、インベントリに強制的に仕舞われてしまい、ああなると、一度専用のスキルとアイテムで修理しなければ二度と装備することができない」

 

 「ですが、耐久値のチェックは私達下僕は皆必ずやっている事です……エレティカともあろうものがそれを怠るハズは……」

 

 口で言っていて、アルベドはその答えに行き着く。

 いや、行き着いてしまった。

 

 

 「……武器は、自分で使う以外に、専用のアイテムを使う、強化にわざと失敗する、シャルティアのカースドナイトのような特性を利用する等の方法で、”あえて”耐久値を減らす事が可能だ」

 

 「それは、つまり……」

 

 「……俺は最初から不思議で仕方なかったんだ。

 そもそもエレティカは何故、武器や防具を装備しているのだろうと。

 妹を想い、精神支配を肩代わりし、代わりに命を差し出すというのなら、装備は邪魔でしかない。

 シャルティアに万が一反撃されたときのことを考えたとしても、エレティカの足なら十二分に逃げ切ることが可能だ。

 なのに、何故だろう、と。

 

 ……まったく、わが娘ながら末恐ろしいよ。

 

 一体どこまで考えて行動していたのだか……」

 

 

 この場に居た守護者全員がそう思った。

 ここまで考えていたのか、と。

 

 

 

 そう、全ては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に!! 

 

 

 

 元よりあの場所には敵部隊が居た場所である。

 多少の装備はして当然であるし、それもシャルティアを支配したともなれば一層、装備を固めなければならないだろう。

 

 だが、本当に完全なフル装備では、洗脳状態である自分が、まかり間違って至高の御方を殺してしまうかもしれない。

 

 

 

 だからあえて耐久値を減らした武器を持った。

 

 

 こうすれば、例え洗脳状態である自分が敵部隊と戦うことになっても、ひとまず私達が応援に来るまでの時間は稼げ、その後弱った自分はめでたくあの御方の御手によって華々しい最期を飾れるというもの!!

 

 そして例え敵部隊との戦闘が無く、最初から至高の御方と戦うハメになったとしても、ギリギリの所で武器の耐久値がなくなって丸腰に、そうしたら後はあの御方の御手によって、(至高の御方にお相手をしてもらえるというおまけ付きで)最期を飾れるという事!!!

 

 なんて……っなんて羨ましいッ!!

 さては最初からそれが目的だったのでは!?

 

 (無論、シャルティアだけはそうは思っておらず、「もしもの時のためにあんな策まで用意しておくなんて姉様はすごいなあ」ぐらいに考えている)

 

 

 無論流石のナザリックダークサイドな皆様も、自分の目的のために同僚、ましてや妹までもを危険に晒してまでやり遂げたい事などありはしないので、今回のことは「たまたま条件が揃ってそういう風になってしまっただけで、エレティカにそのような意思は無かっただろう」という事にされた。

 表向きは。

 

 

 ちなみにその支配者、至高の御方である三名は、今更ながらに、「ひょっとすれば、自分達はエレティカに実力を疑われてしまっていたのかもしれない」と思った。

 

 

 それはペロロンチーノに関してだけ言えば正解である。

 

 

 実を言うとエレティカ本人ですら、こうまで念入りに……シャルティアにペロロンチーノを同行させたり、もし洗脳されたときの為にトーテムを持たせたり、そしてそうなった場合の為に武器の耐久値をわざと減らしたりと計画を立てたものの、それを全て使うハメになるとは思っていなかったのである。

 

 まず初めに、シャルティアにペロロンチーノを同行させた事。

 

 ここでエレティカは「うまくいけばここでシャルティアの洗脳は回避できる筈だ」と考えていたのである。

 

 そう、ペロロンチーノが愛する娘にデレデレになってうっかりシャルティアの先行を許してしまうなんてことにならなければそもそもの話シャルティアは洗脳されなかったのである。

 

 しかしまぁ、そこは結果として傾城傾国を持ち帰ったのとついでにBBAをもって帰ってきたので、まぁ、うん……セーフにしておこう。

 

 

 

 

 しかしその後私に何も連絡がないっつーのはどういうこっちゃねん!!!??

 

 

 

 そう、実はエレティカ、部屋でずーーーーーーーっと、ペロロンチーノが「エレティカが部屋に閉じこもっている」と知って泣いている間も、そこから立ち直って「じゃあシャルティアどうしよっか?処す?処す?」となっている間も!、ずーーーーーーーっと待っていたのである。ペロロンチーノ本人がメッセージあるいは直接謝罪の一言、ひいては……

 

 

 「シャルティアは必ず俺が取り戻す(キリッ」

 

 

 位の事は言ってくれるのを待っていたのである、娘として。

 本人からすれば「めっちゃ落ち込んでるだろうし今はそっとしておくか」というだけの話なのだが……慰めるかそっとしておいた方がいいか、実際にそれを決めるのはペロロンチーノではなくエレティカである。

 

 そしてもしそんな事を言ってくれようものならわざわざ自分から死地に飛び出すなんて真似はしなかった。

 

 結果としてエレティカはガチ装備(ただし死なないように耐久値を削って)で精神支配を受け、その牙を剥くことにしたのである。

 

 

 ぶっちゃけた話、そうでもなければ装備なんて防御力皆無のネグリジェでも着て、トーテム以外の持っているアイテムを全て自室に置いていき、手ぶらで洗脳を肩代わりすればよかったのである。

 

 それを事前にモモンガやぶくぶく茶釜に言っておく事もできた。

 

 

 ……ちなみに、この後無事にエレティカは蘇生され、そして事の顛末、自分が洗脳されていた間の話を聞き、エレティカを殺したのがペロロンチーノではなくモモンガだと知り大層いじけるのだが、それはまだ、先の話で……いや、あえて語ることもあるまい……。




エレティカ「ところで『俺の後ろに立つな』とかいう武器が出ましたが後々何かしらの機会でテンパランスさんの武器が出てきたらどうするつもりなんでしょうねこの作者は……(呆れ)」

作者「それはお前アレだよお前別の世界っつーかパラレルワールド的なお前アレだよお前これ二次創作だしって事でカタがつくんだよお前これお前」

エレティカ「(駄目だこいつ)」


番外編として、もしもエレティカと戦うのがペロロンチーノだったら、とか、エレティカ自身がシャルティアと戦ったら、というのも、いつか書いてみたいです。いつか、ね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。