(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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とりあえず、集まりました。


カルネ村まで(1/3)

 「では皆、至高の御方々に忠誠の儀を」

 

 アルベドがそう口を開き、各々の姿勢が正される。

 私はその聞き覚えのあるセリフに脳内で確かこのシーンは、と記憶を探る。

 

 あっ、あのシーンか!まさか自分がやる羽目になるとは……!!

 ……っていうかひょっとして順番的に私からやるのでは……?

 

 「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア=ブラッドフォールン、御身の前に」

 

 おおっとその前に妹ちゃんがやってくれたぜ!

 それに続く感じでいいんだよね?

 

 「同じく、第一、第二、第三階層守護者、エレティカ=ブラッドフォールン、御身の前に」

 

 「第五階層守護者、コキュートス……御身ノ前ニ……」

 

 渋ぅい!!説明不要ッ!!

 

 「第六階層守護者、アウラ=ベラ=フィオーラ」

 「同じく第六階層守護者、マーレ=ベロ=フィオーレ」

 「「御身の前に」」

 

 あっ!!私たちもそうやれば良かった!!

 ま、まあいいもん別に、息の良さとか羨ましがってねーし????

 むしろ私たちのほうが合って……合ってるよね?合ってない?

 

 「第七階層守護者、デミウルゴス……御身の前に」

 

 キャー!デミえもーん!

 

 「守護者統括、アルベド……御身の前に。

 ……第四階層守護者ガルガンチュア、及び第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平服したてまつる。

 ご命令を、至高なる御身の方々よ、我らの忠義全てを、御身に捧げます」

 

 思わず感嘆の声が出そうになる。

 それ程に、完成された……お前ら実はついさっきまで裏で練習していたのでは?と思うほどの綺麗な動きに感動していた。

 

 ひぇー!かぁーっこいいーっ!

 

 そして、そんなNPC達が忠誠を誓っている当の本人のモモンガ様は何故か真っ黒な絶望のオーラが滲み出ている……んだけど何故ペロロンチーノ様やぶくぶく茶釜様まで絶望のオーラを纏ってるんですかね……?

 

 「「「面を上げよ」」」

 《サッ》

 

 あそれ三人同時に言うんだっ!?

 

 

 「よく集まってくれた。感謝しよう」

 

 「感謝などもったいない!我ら至高の御方々にこの身を捧げた者達……!至高の方々にとって、とるにたらない者でしょう。

 しかしながら、我らの造物主たる思考の御方々に恥じない働きを誓います」

 

 「「「誓います」」」

 

 うへぇ~~~っこれは……すっごい忠誠度だ!

 逆に、よくここまで育て上げましたね……。

 さすがにギルドのNPCとはいえ無条件でここまで従ってくれるものでもないだろうに。

 

 「……素晴らしいぞ!守護者たちよ!私達は、お前たちならば、失態なく事を運べると強く確信した!」

 

 「「「おお……!!」」」

 

 「さて、本来ならば私達は、ギルドメンバーである二人の帰還を盛大に祝いたいところなのだが、そうも言っていられん……というのも、現在ナザリック地下大墳墓は、原因不明の事態に巻き込まれているのだ」

 「すでにセバスに地表を捜索させているんだけど……」

 「丁度帰ってきたようね」

 

 ……あの、恐らくメッセージでやりとりしてるんだろうけど、リレーして喋るのね?それ……いやまぁ、いいんだけどさ……。

 

 

 「「「……草原?」」」

 

 そうして帰ってきたセバスから告げられたのは衝撃の事実であった。

 それこそ、もはやなにがなんだか、と頭を抱える程の。

 私も事前に知っていなかったら少なからず動揺しただろう……か?

 アンデッドによる精神の沈静化が働いているから大丈夫な気もする。

 

 「はい、かつてナザリック地下大墳墓があった沼地とは全く異なり、周囲1kmに人口建築物、人間などの知的生命体、モンスターの類の存在は、一切確認できませんでした」

 

 「ご苦労様、セバス」

 「どうやら何らかの原因でどこか不明の地に転移してしまったという事は間違いないようだな……」

 「と、こんな状況になったから……アルベド、そしてデミウルゴスの両者で、階層守護者内の情報共有システムをより高度にし、警備を厚くしてくれ」

 

 「「ハッ!」」

 

 

 これって、結局どうなってるんだろう?

 あとでちゃんと教えてもらえるといいんだけど……っていうか私、難しい仕事とか出来るかな……?

 

 

 「マーレ、ナザリックの隠蔽は可能か?」

 

 「幻術といった類の、魔法といった手段では難しいと思います……ですが、例えば土をかけて、そこに植物を生やした場合とか……」

 

 「栄光あるナザリックの壁を土で汚すと?」

 

 おっと、ここは止めればいいのかな?いや、モモンガ様が止めてくれるからいいか。

 

 「……アルベド、私がマーレと話をしている。お前がここを大事だと思っているのは理解しているが、今は余計な口出しは無用だ」

 「ハッ、申し訳ありません」

 「それにナザリックが土にまみれたとしても、我々と、貴方達が無事ならそれでいいのよ、ナザリックはあくまで器でしかないのだから」

 「で、マーレ、土をかけた場合、隠蔽は出来そうかしら?」

 

 「は、はい、お許し頂けるのでしたら……ですが……」

 

 「土の盛り上がりが不自然、か……」

 「セバス、周りに山や丘のような場所は?」

 「いえ、残念ながら……」

 「だったら、ほかの場所にも土を盛り上げて、ダミーを作った場合等は?」

 「それなら、さほど目立たなくなるかと」

 

 トントン拍子で話が進んでいくなー……っさっすがー……でもちょっと退屈かな……ちょっとくらいなら口を挟んでもいいかしら?

 

 「……ダミーという言葉で思ったのですが、ついでに、ナザリックそのもののダミーを作ってしまってもいいかもしれませんね。模造品という言い方をしたら気に入りませんが、作るのが私達であるなら問題はないかと」

 「ふむ……そうだな、いずれ必要になるかもしれん、それについては後日また考案するとしよう」

 

 やっべ!!モモンガ様と会話しちゃったやったーうへへ!!!

 

 「上空部分には、幻術を展開させればいいかな……?」

 「じゃあマーレ、あなたはそれらの作業にあたってくれる?」

 

 「は、はい!かしこまりました!」

 

 

 「最後に」

 

 おっこれはまさか……

 

 

 「各階層守護者に聞いておきたい事がある」

 

 来るか……?来るか……?

 

 

 「まずはシャルティア、お前にとって、私、ペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さんは一体どのような人物だ?」

 「ちょちょ、ちょっと待ってください!!シャルティア!も、モモンガさんだけでいい!!」

 「ええ?何で?」

 「い、いいから……!」

 

 うわぁぉ……ほんとにこの質問するとは……。

 いや、まぁモモンガ様からしてみれば「NPCの忠誠心がマジなのか分からない。」「裏切る?裏切る?」と不安、不確定要素であり、解決すべき確執の一つである為、まぁ仕方ないといえば仕方ないのだろうと思う。

 

 「モモンガ様は……美の結晶!まさにこの世界で最も美しい御方でありんす!ペロロンチーノ様は、我が造物主であり、再びこの地に戻ってきてくださった慈悲深き御方だと、ぶくぶく茶釜様は、そのペロロンチーノ様のお姉様であり、同じくこの地に再び舞い戻ってきてくださった、慈悲深き君でありんす……」

 

 「……次はエレティカ、長くなるので私に対してだけd」

 「我らがナザリックの王、全ての頂点に君臨する御方だと存じています。

 そしてペロロンチーノ様は、記憶を失い、離れ離れになってしまった妹、シャルティアと再会させて下さった、命をもってしても返しきれない御恩のある御方、私の全てを持って、永遠に忠誠を誓うべき御方だと思っています。ぶくぶく茶釜様は、そのお姉様であり、私にも大層優しく接して下さった思い出があり、同じく永遠の忠義を捧げるべき御方だと……」「も、もういい、もういい!」

 

 えっ?モモンガ様に対してだけで良かった?ごめんなさ~いてへぺろ☆彡

 

 

 「……次はコキュートス、お前は私をどのような人物だと思っている?」

 

 

 

 【以下原作と同じなので割愛】

 

 

 

 

 「……そして私の愛しい御方です!」

 

 あっ、ペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様が居るのに結局モモンガ様大好きっ子になってたんだ、アルベド……じゃあうちの妹共々、応援してあげなきゃね!(ゲス顔)

 

 「なっ、成る程……」

 「各員の考えは十分に理解しました」

 「「「今後共忠義に励め!」」」

 

 

 「「「ハッ!!」」」

 

 《シュンッ……》

 

 

 

 ……んー……今頃、「あいつら、マジだ!!」ってやってんだろうなー、ふひひひ。

 

 本来知りえないハズの事を知っている、というのは割と気分がいい。

 それに、モモンガ様はあの骸骨の顔だから表情などほぼ皆無に等しい。

 だからその心情は彼のみが知るところなのだが、生憎私も大体どういう事を考えているのかは知っている。

 

 その上で「今頃こんな事を考えているんだろうな」とか「実はめちゃくちゃ焦ってるんだろうな」とか考えるのはちょっと楽しかったりする。

 既にいくつかモモンガ様をからかう手段をいくつか考えつく位には。 

 

 

 「ふぅ、凄かったね、お姉ちゃん……」

 「うん、心臓がギュッ……てなったよ」

 「あれが支配者としての器をお見せになった至高の方々の本来の姿なのね……」

 「ですね……」

 「我々の忠義に応えてくださッたという事カ……」

 「ね、私達と居た時の3人は全然何も感じなかったのに……」

 「そうなのカ?」

 

 おっと、アルベドの様子がそろそろおかしくなってくるかな?

 

 「そう!すっごく優しかったんだ~茶釜様なんて、疲れたでしょう?って、お水まで出してくださって!」

 「やっぱり支配者としての本気になった至高の方々って凄いんだね!」

 

 おや?アルベドの様子が……

 

 

 「全くそのとおり!!!」

 

 も、もどして……。

 元のアルベドに戻して……。

 

 

 「我々の忠義に応えて下さり、その支配者としての器をお見せなるとは、さすが私達の造物主……!至高なる41人の方々の中でもこの地に残り、そして帰還成されて下さった、この世の頂点に立つ方達……!」

 

 「……では私は、先にモモンガ様の元へ戻ります」

 

 「そう、セバス、もしもモモンガ様が私に(以下略」

 「分かりました、では階層守護者の方も、これで失礼させていただきます」

 

 

 ふぅ~っようやくお仕事始められ……ないんだよなぁ。

 この可愛い可愛い愚妹のせいで……。

 

 「ん?どうしましたシャルティ……」

 「いえデミウルゴス気にしないで今シャルティアはそっとしておいてあげてほらアルベドもほかの階層守護者に指示を出しておいてね私はシャルティアを見てるから(早口)」

 「あ、あぁ、うん、確かに、女性の事は女性に任せるべきだし、姉妹である君が適任だろうね、うん」

 「えっと……分かったわ、エレティカ」

 「え?ええ?姉様?」

 

 ふーっ、これで二人がキャットファイトをして時間が長引く事もこれ以上両者がヒドインになることもないね!うん。

 っていうか「姉様」って!!さっきも言ってたような気がするけど姉様って!!!

 はぁ、まぁでも、うん、らしいっちゃらしいよね。

 シャルティアに「おねえちゃ~ん」は似合わないよね。

 

 「で、突然どうしたでありんすの姉様?」

 「どうしたもこうしたもないわよ……シャルティア、あなたモモンガ様の気に当てられて濡れてしまったのでしょう?ほら、隠しててあげるから今すぐこれに履き直しなさい。一刻も早く」

 「どっ、どうしてそれが……わ、分かったからあまり急かさないでほしいでありんす……!」

 

 見るからに赤くなった頬を見るにやはり私の記憶は正しかったように思える。

 そしてこれがアルベドにバレるとちょっと面倒なので先に回避させておいた次第だ。

 

 「……あの二人は何をしているの?お姉ちゃん?」

 「……さぁ……?どうせシャルティアがなにかやらかしたんでしょ~?」

 「(ひょっとすると……あれが文献にあった、「百合」、というものなのでは……?二人はそういう関係!?……いや、まさか。考えすぎでしょう)」

 

 ふぅ、これが終わったらデミえもんの男の娘に対する知識を正しくしないといけない……いけないこともないけどね?

 

 

 「履き直したでありんす。……姉様はいいんでありんすか?至高の方々から、あれだけ強い気……ご褒美を頂いたのに」

 「私?私は……え~と……(濡れてないと言ったらこの子を怒らせるんだろか?)私はここに来る前にその手の欲求の処理を済ませてしまったから」

 「なるほ……え゛っ!?いつの間に……?」

 

 「だってあの至高の方々と会うんですよ?もし万が一その鋭い観察眼で持って至高の方に性的な興奮を覚えてしまったとバレてしまっては……二人きりの時ならともかく、こんな非常時にまで発情していると知られてしまっては「見境の無い者」だと思われてしまっても反論出来ませんもの」

 

 「成る程……で、でも……ペロロンチーノ様なら……。」

 

 「確かにあの心優しい御方に限ってそれはないと、支配者としての器を見た今なら思えますけれど。あなたも次からは気をつけるべきだと思いますよ?至高の御方々は決して全員が全員ペロロンチーノ様のようにお優しいという訳ではないのですから」

 

 「な、なるほど……!分かったでありんす……!(姉様……恐るべし!!)」

 

 ここまで言っておけばさすがに会う度に濡れるなんて事ないだろ……多分……。

 いや無理か、無理だな(確信)

 

 さて、これでようやく仕事の話を……。 

 

 「マーレ、ところで君は何故女装を……」

 

 「ええと、これはぶくぶく茶釜様に着せられたんです。男のコと言っていましたから、僕の性別を間違えてではないと思います……」

 

 「ふむ……であれば……!?」 

 「あああああああ待ってその説明は私がするからああああああああ!!!」

 

 仕事の話をするはずだったのになぁ……。

 

 

 

 

 「……ということなの、分かった?」

 

 「……成る程、エレティカ、君は詳しいんだね」

 

 「すごーい!流石、守護者の中で唯一外で暮らしてた事があるだけのことはあるね!」

 「男の娘って、そういう意味だったんだね……///ああ、もう、茶釜様、そうと分かったら、なんだか、すごく恥ずかし……」

 

 「ヌゥゥン……至高の御方々によって決められた服装を恥ずかしいなどと言っては、不敬になるやもしれんゾ……!」

 「や、でも……」

 

 「まさかぶくぶく茶釜様がせっかく用意してくださった服装を恥ずかしいなんて言わないわよね???」

 「はぃ」

 

 

 フー、これで男の娘の件は大丈夫だね……別に修正しなくても良かった気がするけど……。

 ……あれ?本当になんで修正したんだろ?

 別に男の娘のままでも……まぁでも、間違った知識を植え付けたままにするのもなんだかなーって感じだし、いっか。

 

 ……そういえば前の前の……私がまだJKだった頃に、良く友人の勉強を見てあげていた時に片っ端から間違った所を「それはそうじゃなくてこうこう、こういう事でね?」と教えるたびに「お節介を焼きすぎ」と小言を言われたっけなぁ……。

 

 「(エレティカ……守護者の中では唯一、外部から拾われて来て、ナザリックで育ったという、異例な存在……ひょっとしたら彼女は、私達よりも至高の方が使う言葉に詳しいのかもしれないな……)」

 

 ……ん?えっ、なんかすっごいデミウルゴスに見られてる、怖い!

 

 「どうかした?」

 「いぃえぇなんでもないですよ。

 ”今は”仕事の話をしないとね……アルベド、揃ったようだ、そろそろ仕事に移ろうか?」

 「そうね、分かったわ」

 

 

 ついにお仕事かー……何すんだろ私?結局この時はシャルティアも何してたんだっけ?……ていうか、待てよ?この時ってモモンガ様はお忍びの格好で外に行って……星を見て、うっかり世界征服なんて言葉を滑らしちゃって、デミウルゴスが本気にするんだっけか?

 

 

 

 えーと……その後は、ミラーオブリモートなんとかで周囲について調べて……。

 あっ!!カルネ村!!!!

 

 エンリちゃんにもネムちゃんにも会いたいし、モモンガ様達には「その格好は人間には刺激が強すぎるのでは?」とか言いたいし戦士長さんとはあわよくば一緒に戦いたいし、ニグンさん?えっと……そんなモブいましたっけ?

 

 ど、どうしよ、すっごい行きたい……行きたいけど……どうやったら行けるだろうか……。




エレティカ:「い゛ぎだい゛ッ!!!私も一緒にカルネ村に連れてって!!!」
ペロロチーノ:「ほいきた」

エンリ:「え……?(困惑)」
ネム:「え……?(困惑)」

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