(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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エレティカ、ついに念願のカルネ村へ!


カルネ村まで(3/3)

 「シャルティア、ここの警備をあなたに任せてもいいかしら?私は、至高の御方々に、他に手伝えることがないか聞いてきます」

 「えっ?……何故突然?」

 「ここを守る位、あなた一人で十分でしょう?であるなら私は他に仕事が無いかを探しに行くのも一つの手だと思うの」

 「ですが、与えられた命を放棄しては不敬になるのではありんせんか?」

 「与えられたことを忠実にこなすのも大事だけど、時には自分から動くのも必要だと思わない?」

 

 シャルティアは一つ「成る程」と呟くと首を縦に振って肯定の意を示した。

 

 「じゃあ、行ってくるわね、何かあったら報告をお願い」

 「わかったでありんす」

 

 

 

 

 「……そして私達の元に来たというわけか」

 「勝手に持ち場を離れてしまい申し訳ないと存じていますが、この非常時ですから、他にやるべきことがあるならば指示を伺いたいと思ったのです」

 「うん、自主的に仕事を探すのはいい事だよ、ね?モモンガさん?」

 「えっ、あぁ、そうだな……(NPCが自主的に与えられた仕事以外の仕事を取りに来ること自体おかしいんだけどなぁ……でも来たのがエレティカ一人って事は、彼女が特殊ってことなのかな?)」

 

 「でも、今はやることはないわね……」

 「……モモンガ様、それは?」

 

 「うん?これは、ミラーオブリモートビューイングだ。周囲の状況の確認に役立つと思ったんだが……いかんせん、転移する前と操作方法が変質しているらしく上手く操れないのだ」

 「もしお許し頂けるのでしたら、失礼してもよろしいでしょうか?」

 

 「うむ、許そう」

 

 そう言って、ミラーオブリモートなんちゃらをこちらに渡しつつ、その様子を覗ける位置に至高の方々が集まる。

 ちょっと……アニメの動作を真似するだけだっていうのに、緊張するな。

 

 「まず、もっと遠くから景色を見たいのだが、ズームアウトやズームインの方法が分からないのだ」

 「成る程、ええと、確か(あの時は、腕をこうやって……)」

 

 私が腕を広げるような動作をすると、ミラーオブリモート……ええと?は、映し出す光景がズームインし、またその逆をすればズームアウトした。

 

 「お?おおお、あーなるほど、タッチパネルを操作する時みたいな感じか!」

 「流石エレティカ!いやー助かったよ!ずっと片手で操作しようとしてたのが間違いだったんだな~……」

 「お役に立てたようで何よりです」

 

 思ったより操作が簡単で良かった、やったことないし。

 でしゃばった真似をしたかな?とセバスを見るが、特に問題は無かったらしい。

 ウンウンと頷きながら手を叩いて「流石はエレティカ様です」と賞賛してくれている……一応立場的にはそんな様なんてつけられる程の上下がある関係ではないと思うんだけど……。

 

 「……あら?エレティカ、今、何か村のようなものが見えなかった?」

 「……ええと、はい、そのようです」

 

 だが、まぁ、思ったとおり、その村は今、なにかの事件に巻き込まれている真っ最中ですという感じだった。

 成る程、これがカルネ村か……。

 

 「……祭りか?」

 「いえ、これは違います」

 「……殺戮……それも一方的な……」

 「チッ!」

 

 こっちではぶくぶく茶釜さんが舌打ちを……今どうやって舌打ちしたの?

 いや、そんな事言ったらモモンガ様とかペロロンチーノ様はどうやって喋ってるんだって事になるけども。 

 

 「どうなさいますか?」

 

 「…………」

 

 

 ……おお、原作では迷わずに見捨てる、と切り捨てたモモンガ様だったけど……。

 今は仲間が二人もいるから、人間性が若干失われずに済んでいるんだろうか?

 それなら助かるんだけどな~……。

 

 

 「僭越ながら、意見してもよろしいでしょうか。これ以上は口を挟むなというのであれば……」

 「良い、許可する」

 

 「はい、モモンガ様は恐らく、この者達が、転移する前の地での常識の通用する相手ではないという可能性を案じているのかと。そのような危険を冒してまで、この村を救うメリットが無いとも。しかしそれでも今迷われているのは、いずれ外の人間とは接触することになる、その時に後手にまわるような事は避けたい、なるべくなら早いうちに懸念材料は無くしておきたいという思いもあるからだと思われます」

 「うむ、続けよ」

 

 「ハッ……そういった要素を考えた上で申し上げますと、私はこの村を救うべきだと愚考します。」

 「ほう?」

 「エレティカ、どういうこと?」

 

 「先ほど申し上げたとおり、いずれはこちらの常識の通用する相手なのか知る必要があります。そのためにいつかはあちらの人間と戦わなければならない……であるならば、この状況は好機です」

 「というと?」

 

 「ええ、まず、この状況で無ければ私達は人、あるいは国を襲うモンスターという形、あるいはいつ来るか分からないナザリックの敵に対抗するという手段でしか、相手の戦力がどれほどなのか知る機会はありません、ですがこの状況、この村を襲う人間共と戦闘をする場合であれば、この村にとって私達は村を救った恩人として扱われ、うまく交渉を行う事に成功すれば、自ら進んで情報提供に応じてくれる可能性があります。もし言葉が通じずとも敵対的な関係になることは避けられるかと」

 

 「なる程な、お前の考えは理解した。……セバス、各階層守護者に通達、警備レベルを最大まで引き上げよ、私達はこれよりこの村を救いに行く」

 

 よし、作戦成功!ここまでは……。

 で、これからどうやってカルネ村に行くのかだが……。

 

 

 「であれば、私もお連れになってください」

 「セバス、貴方には情報を通達するという役目があるわ、貴方が私達とここを出てしまっては誰がその役目を果たすというのかしら?」

 「……ハッ、出過ぎた真似をしました。」

 「であれば、私、エレティカ=ブラッドフォールンをお連れください。状況を存じております故、スムーズに事を運べると強く確信しております」

 

 「モモンガさん、俺からも頼みます、エレティカは元々俺の雇った傭兵N...ですから、こういう時にはもってこいの役目を持っていると思います」

 「ウム、分かった。エレティカはゲートを超えた先ではペロロンチーノを守るようにせよ。……だが一応……セバス、アルベドに完全武装で来るように伝えておけ。ただしギンヌンガガプの所持は許さん。では、ペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さん、エレティカ、行くぞ。《ゲート/転移門》」

 

 

 

 

 

 ……あっ、姿……まぁもう時間ないしどうせ記憶を弄れるから、いいか……。

 っていうか私が居るから私が率先して動けばいいだけの事だよね。

 

 

 

 《ズズズズ・・・・》

 

 「なっなんだ!?」

 

 そしてゲートをくぐった先に居たのは……おー居た居た、エンリとネムだ。

 若干遅くなっちゃったから生きてるか心配だったけどちゃんと生きてるね、うんうん……。

 

 「《グラスプ・ハート/心臓掌握》」

 

 「ぐげっ!!!?」

 

 あっ、もうモモンガ様ったら雑魚相手にそんな強い魔法を使って……。

 

 「ば、化物!!」

 「どうした?女子供は追い回せても、毛色の変わった相手は無理か?……せっかく来たんだ、実験に付き合ってもらうぞ」

 「(ウワーモモンガさん完全に悪役っぽい……)」

 

 とりあえず後ろでライトニング撃っている間にこっちの二人の治療をしておくか……。

 

 「大丈夫?……傷が深いわね、このポーションを飲みなさい。大丈夫、落ち着いて、もう大丈夫だから……」

 「ぐすっ……お姉ちゃん、だあれ?」

 「え、ええと、分かりました」

 

 一瞬赤い色のポーションに戸惑ったようだったが、私のにこやかスマイルでなんとかスムーズに受け取ってくれた。

 恐る恐るそのポーションを口にしたエンリは、飲んですぐに自分の背にあった痛みが消えたことに気付き、「嘘……」とつぶやきながら自分の背中をペタペタを触っていた。

 

 「……<中位アンデッド創造><死の騎士(デス・ナイト)>」

 

 おっと、それはちょっとこの子達に刺激が強いですよモモンガ様!

 死体がガタガタッと動き出したところで、とりあえず私は二人に「見ちゃダメ」と目を伏せさせながらその様子を見守る。

 

 「……(?なんでそんな見てはいけないもののような反応を……?まぁいいか。)デスナイトよ、この先の村を襲っている騎士を殺せ。」

 《グオオオオオオオオオオ!!……ガッシャガッシャガッシャ……》

 

 「「「えぇ……?」」」

 

 ブフゥッ!!?ちょっと!!吹きそうになったじゃないですか!!

 その気の抜けた声×3は、反則ですよ!!!

 何とか姉妹を抱き込み背を向けているからバレてはいなさそうだが、肩が震えているかもしれない。

 

 「盾であるはずの者が守るべき主人を置いていってどうするのよ……。」

 「や、でも命令したのはモモンガさんだし……。」

 「……とにかく、まずはそこの二人を……ところでどうして眼を伏せさせているんだ、エレティカ?」

 

 あー……ええと、どういったもんかな。

 流石に「その姿じゃ怖がられるだろ!!」とは言えんしなぁ。

 

 「……モモンガ様、ペロロンチーノ様、ぶくぶく茶釜様、失礼を承知で申し上げますが……人間にはあなた様の姿はあまりに、その……刺激的と申しますか、冒涜的と申しますか、子供には見せられない、と申しますか……。」

 

 一瞬「?」という顔を(しているのかどうかは分からないが)したモモンガ様だったが、すぐ私の意図に気づいたのか、例のマスクを被り、手をガントレットで隠し始め、それを見たペロロンチーノ様やぶくぶく茶釜様も察したらしい。

 

 ペロロンチーノ様は元々バードマンという種族で形だけみれば人間種の亜人、ハーピィにも似た姿だったのでもしかしたら、と思ってはいたが、やっぱり、人間に擬態するスキルも持っていたらしく、今はオレンジ色の髪をした弓兵の姿の好青年に。

 

 ぶくぶく茶釜様も、ソリュシャン同様、人間に化けるスキルか、化ける為のアイテムを持っていたのか、今は桃色の長い髪を持つ騎士風の女性の姿になっていた。

 ……ひょっとしてエロゲのキャラだったり?

 「くっ殺せ!」とか言いそう。

 

 ……モモンガ様……宝物庫にアンデッドが人間に化けられるアイテムが無いか探しておきますね。(すっかり忘れてた)

 

 「うむ、これなら問題ないだろう」

 「はい、お手間を取らせてしまい申し訳ありません」

 「エレティカが謝ることじゃないよ、俺達もちょっと考えれば分かることだったね、危うく現地の人を怖がらせるところだった、むしろ迅速な判断と行動を評価しよう」

 

 ホッ、良かった。

 まぁ優しい人たちなのは知ってたから処罰なんてされないだろうとは思ってたけど、それでもね~。

 そしてエンリとネムが顔を上げて困惑していると、またゲートが開き、そこから全身を黒い鎧に包んだアルベドが現れる。

 

 「準備に時間がかかり、遅くなって申し訳ありません」

 「いいや、実に良いタイミングだ、アルベド」

 「ありがとうございます、それで……」

 

 そのヘルムを通してでもみるみるその目線に敵意がこもっていくのが分かる。

 おいおい、ちゃんとしてよ。

 せっかく事前に「準備しておいたら?」って言っといたのにさ。

 

 「……アルベド、話を聞いているので知っているとは思いますが、彼女達はこの地の人間、この先にある村を救って情報を提供してもらう、いわば協力者です。敵となる人間達はあそこに転がっている鎧を身にまとった連中です」

 

 「(やべっ、そうだったの?……あぶねー!!!助かったわエレティカ!!)」

 「エレティカの言ったとおりだ、そして……ひとまず傷はポーションによって治ったようだな。であれば、そうだな、お前たちは魔法というものを知っているか?」

 

 「はい、村に時々薬草を採りにやってくる、私の友人が魔法を使えます」

 

 おっ、ンフィー君の事か……彼ともできれば会いたいんだけど、うーん……ナーベの役を取っちゃうのは流石にどうかと思うし、一緒に連れてってもらう事は出来ないだろうか……。

 

 「ふむ、であれば話は早い、私はマジックキャスターだ。《アンティライフ・コクーン/生命拒否の繭》《ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ/矢守りの障壁》」

 

 モモンガ様がそう唱えると、彼女らを中心に、緑色の膜のような結界が二重に展開された。……これってどのくらいの強度なんだろう? 

 

 「守りの魔法をかけてやった、そこにいれば大抵は安全だ。……それと、念の為にこれを渡しておこう。吹けばゴブリンの軍勢がお前に従うべく姿を見せるはずだ」

 

 これが原因でエンリは将軍になるんですねわかります。

 

 

 「これ以上は過保護かな?」

 「そうね、先に向かったデスナイトを見に行きましょう」

 「「お供いたします」」

 

 うぉ、ハモッた。

 

 

 「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」

 「ありがとうございます!」

 

 「……気にするな」

 「お名前は、貴方達のお名前は、何と仰るんですか!?」

 

 

 あっ、そういえばここでモモンガ様ってアインズ・ウール・ゴウンに名前を変えるんだっけ……?どうなるんだろ、ここでは?

 

 

 「私達は、いや、我らこそが、ナザリック大墳墓の絶対なる41人の支配者、アインズ・ウール・ゴウン!」

 

 あっ、これは……団体名、アインズ・ウール・ゴウン様になりました。

 なりましたっていうか元からそうだから変わらないね。

 モモンガ様はこのままなのかな?




我ら、アインズ・ウール・ゴウン!(背後で爆発)

……えっ私もやるんですか?

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