とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉   作:skav

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遠い記憶

突然大きな物音がリハビリ室内に鳴り響いた。

音の主は一人の少年。どうやら手が滑って手すりからずれ落ちてしまったようだ。

「はぁ…はぁ…くそっ」

少年は玉の汗を浮かべながら必死に手すりを支えにして起きあがろうとした。

だが、全身の筋肉が落ちているのかなかなか上手くいかない。

筋ジストロフィー。

それが彼の持つ病気の名前だ。彼だけでなくこの病院にいる全ての患者がその病気にかかっている。

全身の筋力が低下するこの病気は未だ治療方法が確定していない。こうして毎日運動することで筋力を極力低下させないことが唯一の延命措置だった。

「うぅ…ぐすっ…」

なんで普通に生まれて来られなかったんだろう?なんで僕達だけこんなに辛い思いをしなくちゃいけないの?

「…泣いてるの?」

不意に少年の目の前に同じ年ほどの少女が立っていた。

「君は…?」

 

 

「待っててね…もうすぐ…」

 

そのとき少年はこの少女の笑顔に救いを感じた。うれしさを感じた。

 

 

 

 

「どうして、どうして僕だけが生きているの?なんでみんな動かないの?」

「すまないね…キミが唯一の成功体なんだ。絶対に死なせるわけにはいかんのだよ。」

「そんなのおかしいよ…だってみんな頑張ってたのに!」

「何度も言わせないで欲しい…本来ならばキミは死んでいた存在なのだ。」

「だったらいっそ死んだ方がましだ…こんな思いをするくらいなら」

「恨むならあの電撃使いを恨むが良い。彼女がいたからキミはこの状況に絶望しなければいけない。」

「彼女って…まさか」

「そうだキミはあの少女によって救われた。おめでとうキミはまた生きる権利を得たのだ。彼らを踏み台にしてね」

 

やめろ!僕は…ぼくはこんなの望んでない!

 

「いい加減認めたらどうかね?キミは…この院内全員を踏み台にして殺した。生きるために。

 

違う僕は殺してない殺してない殺してない殺してない殺してない…。

 

そのとき、かろうじて頭だけ動く患者がぎょろりと目だけ動かして、少年を見つめた。

「ねえ、どうしてキミは立っているの?どうして僕は立てないの?歩けないの?」

「ちがう違うチガウ…僕はこんな…こんな…。」

「ねえ…どう…し…」

最後の一人もついに息を引き取った。残ったのは少年ただ一人。

 

 

「う、うぅ…」

少年の焦点は定まっておらず、その場に崩れ落ち肩を震わせていた。

 

「うわあああああああああ!!」

 

頭の中で何かがはじけた感触があった。もう何が何だかわからずただ闇雲に手当たり次第能力で破壊していった。

 

少年が正気に戻った時、目の前には地獄絵図が広がっていた。

 

壁は剥がれ、穴が開き。天井は崩壊していく。少年少女の死体に火がつき異臭を放ち始める。

破壊された電気機器から火花が迸り、でたらめな表示を始める。

研究者達も一人残らず原形をとどめないほど四肢をまき散らしていた。

 

そしてその光景を作り上げたのは自分自身だと気づく。

「ああああああああああああああ!!!!」

のどが裂けるかと思うほど叫び、少年は自分自身に能力を使った。

 

少年は一切の記憶を自分の手で封じた。

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