とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
「なあ、白井さん。なんで俺は朝から書類整理をやっているんだい?」
「それはわたくしが風紀委員で、仕事があるからですの。」
「はい、言われた分は済ませたよ。」
「でわ、次はここからここまでお願いできます?」
「俺の見間違いじゃなければ段ボールが10個ほどあるんですけど?」
「ええ、お願いいたしますの。」
黒子に監視というよりは、半ば強制的に風紀委員の手伝いをしながら瀬那は午前の時間を過ごしていた。
「それで事件について何か進展はあったのか?」
「全くですの・・・遺留品を読心能力で調べても何も分かりませんし。」
「負傷者ってどのくらい出てるんだ?」
「予兆がはっきりしているので被害は最小限・・・ですが8件中同僚が9人負傷してますの。」
「9人っていくら何でも多すぎないか?それじゃあまるで風紀委員が標的みたいじゃないか。」
「・・・それですわ!」
その時ブザーが激しく鳴り響いた。
「重力子の加速が観測されましたわ!」
「場所はどこだ?」
「場所は第七学区の洋服店、セブンスミストですの!」
「ちょっと距離があるな・・・。」
瀬那は急いで部屋から出ようとした。
「どこに行くつもりですの!?」
「俺のアリバイは証明されただろ、今からあっちに向かう!」
「遠すぎますの!普通に走っただけでは10分は掛かりましてよ!」
「大丈夫、絶対に間に合わせるから。お前は自分の仕事に集中してなさい!」
「木山さん!お待ち下さ・・・ああ、もう!」
黒子は投げやり気味に電話を操作し始めた。
瀬那は電磁筋肉の出力を最大に上げて、屋根を飛び移り壁を蹴りながら目的地まで急いだ。
「・・・あそこか!」
今も尚次々と人が避難している建物が目当ての場所だ。
「よし、誰も近くにいないでくれよ・・・。」
窓に突っ込む瞬間、瀬那は一瞬にしてガラスの温度をを沸点まで上昇させて蒸発させた。
その余波で、周囲の壁や天井が黒こげになった。
運動エネルギーを減少させ、傷一つ負うことなく瀬那は着地した。
「え・・・あんたどこから現れたのよ!?」
「よう、美琴。アリバイが証明されたから手伝いに来た。」
「御坂さん、全員の避難完了しました。」
「いや、まだあの子が見あたらないんだけど。」
「お姉ちゃーん」
するとかえるのぬいぐるみを持った小さな女の子が駆け寄ってきた。
「・・・あのぬいぐるみ。」
「お兄さんがふうきいいんのお姉ちゃんに渡してだってー」
その瞬間、真っ黒な球体が出現しぬいぐるみをいびつな形に変え始めた。
「下がって下さい!あれが爆弾です!」
レールガンで爆弾ごと吹き飛ばす!
美琴はスカートのポケットからメダルゲームのコインを取り出した。
しかし、手が滑ってしまいコインは空中をさ迷う。
マズった・・・間に合わ・・・・・・。
ドゴオオォォン!!
大地をゆすがすもの凄い爆発音が周囲を支配した。
その爆発音を背にして、細身の少年は路地裏へと入っていった。
いいぞ・・・今度こそ逝っただろう。
「スゴイ、スバラシイぞ僕の力!徐々に力を使いこなせるようになってきた!!」
路地裏に少年の笑い声が低く響く。
「もうすぐだ!あと少し数をこなせば無能な風紀委員の奴らもまとめて吹き飛ば・・・!!」
途中で少年は何者かによって背中から吹き飛ばされた。
派手な音を立てて少年は無様に転げ回った。
「はあ~い♪」
背後には満面の笑みを浮かべた美琴が立っていた。
「用件は言わなくても分かってるわよね、爆弾魔さん?」
「な、何のことだかさっぱり・・・。」
「まあ確かに威力はたいしたもんよね・・・けど残念。アンタのターゲットはかすり傷一つ付いてないわよ。それに死人もでてないわ。」
「そ、そんな馬鹿な!?僕の最高出力だぞ!!」
「ほう・・・」
「あ・・・い、いや・・・外から見てもスゴイ爆発だったんで。」
そう言いながら少年は背中の鞄からアルミ製のスプーンを取り出した。
その瞬間、右手に持っていたスプーンは圧倒的な威力の何かによって吹き飛ばされた。
美琴が放った超電磁砲だ。
「と、常盤台の超電磁砲!?」
美琴は無駄のない動きで少年を地面に組み伏せた。
「暴れても良いけど今の私に手加減をする余裕はないわよ?」
「は、今度は常盤台のエース様か!いつもそうだ、僕はいつもこうやって誰かに地面に顔を押しつけられて・・・。殺してやる!お前達みたいな奴が悪いんだ!」
すると美琴はすっとその手を離した。訳が分からないといった表情をする少年に向かって今度は電撃で周囲を破壊した。
「ひぃ・・・!」
「知ってる?常盤台の超電磁砲は最初はレベル1だった。それを必死に努力してレベル5と言われるようになった。けどね、私はレベル1のままでもあんたの前に立ちふさがったわよ。」
一歩ずつ近付いてくる美琴に少年は底知れぬ恐怖を覚えた。
「アンタのやったことは許せないし、なによりも力に依存するアンタも弱さに腹が立つ。悪いけど相談に乗る前に一発殴らせてもらうわよ。」
路地裏に大きく鈍い音が響いた。
「全く突然飛び出したかと思ったらこんな無茶をして・・・」
ストレッチャーに乗せられた瀬那は自嘲気味に笑った。
「ははは・・・確かに無茶だったな。」
あの時美琴の横を通り過ぎたのは瀬那だった。
瀬那は爆発寸前の人形の目の前に立ちふさがると爆発の衝撃を強制的に曲げた。
ほとんどの衝撃は後ろにいる初春達を避けるようにして通り過ぎていった。
しかし爆心地の至近距離にいた瀬那は爆発の余波を受けて右太ももが大きくえぐれてしまった。
早々と駆けつけてきた警備員のおかげで大事に至らなかったが、しばらく入院生活が続きそうだ。
「犯人の少年を確保しましたー」
「ご苦労様ですの・・・あ、お姉様どちらへ行ってらしたのですか?」
「あー・・・ちょっとね。」
そう言って美琴は瀬那の方へ近付いた。
「ごめん・・・私のせいでアンタに怪我負わせちゃって・・・。ホントに・・・ごめんなさい。」
うつむいているので彼女の表情は分からないが、小さく震える肩を見て瀬那は優しく笑った。
「別に一生歩けなくなる訳じゃないんだから・・・そんなに泣くなよ?」
「な、泣いてないわよ!」
「目元こすりながら言われてもなぁ・・・。」
「うるさいわね・・・いいからさっさと病院に行きなさいよ。」
「じゃ、そうするかね・・・たまには見舞いに来てくれよ?入院生活って結構退屈なんだよ。」
「はいはい、分かった分かった。」
しっしっと手をヒラヒラさせる美琴を見ながら瀬那は救急車に搬送されていった。