とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
「君もあの少年も随分と病院に縁があるんだね?」
「いやぁ・・・ははは。」
「全く・・・ただでさえ君の身体は特殊なのに。」
「・・・・・・すみません。」
「ところで毎日君を見舞いに来ているあの子はコレかい?」
カエル顔の医者は小指を一本突き出した。
「違いますよ、そんなんじゃないです。」
「じゃあ、そろそろあの子が来る時間だからお邪魔虫は早々に退散させてもらうよ。」
「だーかーらー、違いますって。」
病室を出て行く医者と入れ違うようにして美琴ではなく、木山春生が入ってきた。
「久しぶりだね、瀬那君。」
「久しぶりと言うほど時間は経ってないと思うんですがね。」
「そうだったかな・・・?まあ良い。」
木山春生は用が済んだとばかりに病室を出ようとした。
「本気でアレを実行するつもりなんですか?」
「もちろんだ・・・そのために私はここにいる。」
「そうですか・・・。」
木山春生の背中を見送った後、瀬那はもう一眠りすることにした。
深夜の病室で瀬那は不意に目を覚ました。
誰かに名前を呼ばれているような気がしたからだ。
松葉杖を握りしめて病室を出た。
何かに吸い寄せられるように瀬那は病院の屋上に来た。
「・・・春生さん?なんでここに。」
「少し君について話そうと思ってね」
その言葉を聞いて瀬那は背筋に寒いものを感じた。
「・・・俺について?」
「ああ、君は君の能力についてどこまで理解しているつもりかな?」
「どこまでって、全ての波を干渉する能力ですよね?」
「その波を君はどれだけ理解しているかな?」
「どういう意味ですか?」
「君はもう少しその能力の自覚を持った方が良い。君は誰よりもレベル6に近い存在だ。」
レベル6。7人しかいないレベル5の上を行く存在。研究者達がこぞって手に入れようとしている存在。
「そのために俺を利用したんですか?」
「まさか・・・その手の研究者達にとって君はさほど貴重な存在ではないのだよ。」
「どういう意味です?」
「神に近付くためには神に等しい存在が必要。そう考えた研究者がいた。そして彼らは神に等しい存在のレベル6を作ろうとした。そこまでは理解できるかな?」
「・・・はい」
「君が貴重な存在ではない理由。それは彼らが望んでいるようなレベル6には進化しないからだ。」
木山春生は白衣からメモリーチップを取り出した。
「コレを使えば君は間違いなくレベル6と呼ばれる存在になるだろう。」
「・・・・・・」
瀬那は黙ったままじっと木山春生を見つめた。いま目の前に立っている人物の真意が読めなかったからだ。
「ふっ・・・まあ君は普通を望むだろうからコレは不要だったかな?」
メモリーチップを再びしまおうとする彼女を瀬那は止めた。
「待ってください・・・春生さん。」
「どうかしたのかい?」
「確かにコレを使えば俺の望んだ普通は砕け散るでしょう・・・でも。」
瀬那は木山春生の手からメモリーチップを抜き取り、自分のポケットにしまう。
「俺を救ってくれたこの町やあなたに恩くらいは返させてください。」
「君らしいといえばそれまでだが・・・ありがとう。」
木山春生は瀬那を置いて屋上から姿を消した。
一人取り残された瀬那は夜中なのに薄明るい空を見ながら呟いた。
「そのためにはまずあなたから救わないと・・・春生さん。」