とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
入院から三日後に瀬那は退院出来た。
病室を出ると恐ろしい熱気に身体を包まれた。どうやら病棟以外は停電のようだ。
原因が気になったが特に気にする必要もないので、瀬那は能力を使って周りの空気を冷やすことにした。
準備を済ませてロビーまで行くと、瀬那はとんでもない光景を目にした。
木山春生が公衆の面前で上半身を下着一枚にしていたからだ。
「何やってるんですかアンタは!?」
近くまで行くと、白井黒子と御坂美琴の姿も確認できた。
「あれ、もう怪我は大丈夫なの?」
「ああ、一応な。それよりも春生さん、早く服を着てください!」
「・・・熱いじゃないか」
「公共の場で脱ぐなと何度言ったら分かるんですか!?」
「・・・これで5度目だったかな?」
「いちいち数えなくて良いんですよ!早く服を着る!」
瀬那は木山春生の手からシャツを取り、着させる。その時さりげなく彼女の周りの空気も冷やした。
「あの~木山先生と木山さん・・・いや、瀬那さんはどういった関係ですの?」
「春生さんは俺の保護者的な関係かな?」
シャツのボタン止めを手伝いながら瀬那は答えた。
「・・・これじゃあどっちが保護者なんだか。」
黒子のつぶやきに苦笑いしながら瀬那は尋ねた。
「ところで御坂達はどうしてここに?」
「前アンタを怪我させた犯人が原因不明の昏睡状態になったのよ。」
「それで大脳生理学を研究している私が招集されたわけだ。」
「ああ・・・なるほど。」
「あの、それでお尋ねしたいのですけど。幻想御手というものをご存知ですの?」
「・・・とりあえず場所を移動しよう。ここは熱いだろう?」
先ほどとは打って変わってあせ一つかいていない木山春生に疑問を感じつつ、美琴と黒子は了承した。
「瀬那くん君も来ると良い。」
今の言葉を翻訳すると『外はもっと熱いから冷やし続けてくれ』という意味になる。
「・・・分かってますよ。」
瀬那の言葉にますます疑問符を浮かべる二人だった。
近くの喫茶店で黒子の話は再開することになった。
「つまりネット上に幻想御手なるものがあり、ソレが昏睡した学生と関係があると君たちは考えているのだね?」
「はい、ただ実際に確認された存在でもなく合ったとしてもその情報を開示するわけにもいかないですの。」
「なるほど、噂の一人歩きを防ぐには妥当な判断だな。」
「ところで気になったのだが・・・そこにいる彼女たちは君たちの知り合いかね?」
大きな窓の外には顔を押しつけてにぱーっと笑う長髪の女子生徒と頭に花の飾りを施した女子生徒がいた。
二人はそのまま喫茶店に入ると真っ直ぐこちらのテーブルに座ってきた。
長髪のほうは佐天涙子と、花飾りのほうは初春飾利と名乗った。
「こちらの方が木山春生さんといって、大脳生理学を研究している方ですの。」
「そんな方とどうして白井さんがお茶を?白井さんの脳に何か問題でも?」
人畜無害そうな顔をして結構な毒をはく飾利に若干瀬那は身じろいだ。
「それは後で説明しますわ。そしてお隣の殿方が木山瀬那さん、初春は写真で見ましたわね?」
「はい、8人目の人でしたよね。御坂さんが気になってたって言う・・・。」
「ぶっ!」
美琴は飲んでいたミルクティーを盛大に吹き出した。
目の前にいた瀬那は多少だがその被害を受けた。
「・・・おいコラ」
「ご・・・ごめん。初春さん、突然何を言い出すのかしら?」
「え、まさか御坂さんこの漫画に出てくる二枚目のチャラ男みたいな人が好みだったんですか!?」
涙子の発言で今度は瀬那が動揺して謝って気管に少量の水が入ってしまった。
俺ってそんな風に見えるのか?
確かに瀬那は赤に近い茶色の地毛を後ろで小さく結んで前髪をヘアピンで留めている。
そして首にしているチョーカーがそう思わせている要因かも知れない。
「佐天さん、人を見た目で判断するのはおよしなさいな。瀬那さんは虚空爆破事件で傷つきながらもお姉様達を助けてくださったのですの。」
「へ~・・・そういえば瀬那さんもレベル5なんですよね。どんな能力なんですか?」
「絶対波動っていうんだけど。要は波を操る能力だよ。」
そう言いながら手にしたコップの水を凍らせたり沸騰させたりしてみせる。
「それで相談って何ですか?」
飾利の言葉で本題に戻った。
「幻想御手の件で相談してましたの。」
瀬那はここでトイレに行くために席を立った。
しばらくして戻ってみると木山春生がスカートを脱いでいた。
どうやら涙子が謝ってアイスティーをこぼしてしまったようだ。
「だぁぁぁかぁぁらぁぁぁ!!」
再び瀬那の説教が始まり、子供のように木山春生はしゅんとしていた。
「今日はお忙しい中ありがとうございました。」
「いやいや、こちらこそ色々迷惑をかけて済まなかった。いろいろ楽しかったよ、教鞭をふるっていた頃を思い出してね。」
「教師をなさっていたんですか?」
「昔・・・ね。」
美琴の問いに懐かしそうな微笑を浮かべた。
「さ、帰りますよ春生さん。どうせ俺がいない間はコンビニ弁当かカップラーメンだったんでしょう?」
「私を見くびっては困る。カレーの残りとレンジで温めるタイプの白米でなんとか・・・。」
「ニンジンは食べたんでしょうね?」
「・・・・・・。」
「よし、今日はピーマンの肉詰めにニンジンを入れましょう。」
「ピーマン?なんだソレは。学園都市は新しい野菜でも開発したのかね?すまないが私は実験する側であってされる側では・・・。」
「じゃあ、ナスのみそ汁も追加ですね。」
「・・・ゴメンナサイ。」
そんな会話をしながら離れていく二人の陰を見送りながら4人は同じことを思っていた。
「あれじゃあどっちが保護者なのよ」
「完全に保護の立場が逆転してますの」
「瀬那さんなんかお母さんみたいですねー」
「見た目と違って全然チャラくないんだ~」