とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
姿を消した状態で施設内に潜入した瀬那はおかしな光景に首を捻った。
人の気配が全くない。監視室に向かうとそもそも施設の電源が落とされている。
ケーブルに触れて施設内のネットワークに進入すると最下層に別から電力を供給している場所があった。
おそらくここに子供達が隔離されている。
後続隊を誘導するためにマーカーを設置しながら地下へと進んでいく。
3階まで下がったところで瀬那は人の気配を感じた。
正面の曲がり角に誰かがいる。
そう思った瞬間天井がいきなり崩れ始めた。
電磁筋肉の出力を上げ、その場をギリギリで離れる。
すると今度は導火線のようなものが足下を襲う、再び跳躍して回避すると火はその先の人形に達する。おそらく爆発物か何かだ。
瀬那の予想通り人形は爆発する。襲い来る衝撃波を瀬那は相殺し熱を奪うことでその爆発を無効化する。
続けざまに壁、床、天井を縦横無尽に導火線がはい回る。火の向かう先には全て爆弾が仕掛けてある。
同時爆破、先ほどとは比較にならないほどの爆発が連続して起こる。
しかし瀬那には傷一つ付いていない。
「で、そこにいる君。コレは君がやったことかな?」
瀬那の目の前に金髪の少女が現れた。すると少女は舌を出し、挑発しながら走り出す。
「はぁ・・・面倒だ。」
瀬那も同じように走り出す。丁度階段にさしかかったところで少女はリモコンのようなものをとりだしスイッチを押す。
「残念無念また来週~♪」
すると瀬那の立っている階段が崩れ天井も崩壊した。
重力を感じながら瀬那はポケットの中の磁石を取り出す。そしてその磁力を操作して壁にくっついた。
「何ソレ、ずるいんですけど!?」
「はっはっは~ごめんね~」
逃げる少女を余裕の笑みで瀬那は再び追いかけた。
しばらく鬼ごっこを続けていると、いつの間にか広い空間にたどり着いていた。
「あれ、どうしたのフレンダ?・・・って、ああ~そういうことね。」
「フレンダさん超使えないですね・・・」
「大丈夫そんなフレンダを私は応援してる・・・。」
そこには新しく3人の少女達がいた。
「これで全員か?」
「ええ、私たちは学園都市の暗部組織”アイテム”よ絶対波動さん?」
長身の女を瀬那は見たことがある。麦野沈利、元4位のレベル5だ。
「悪いが君たちとやり合う暇はないんだけど、通してくれないか?」
「そうはいきません、あなたを施設に超近づけるなというのが今回の依頼ですから。」
フードをかぶった少女がそう告げると、いきなりその拳を瀬那にたたき込もうとする。
すんでの所で回避した拳は後ろの壁を簡単に崩壊させる。
「話し合いの余地は無しかよ・・・。」
不意打ちで再び足下に導火線が走る。
「悪いけどそれはもうネタが割れたよ。」
瀬那は導火線を踏みつけて火を消失させた。
「はい、フレンダはそこで見てなさいアンタはもう用済み。」
「うぅ~・・・」
「大丈夫、そんなフレンダを私は応援してる・・・。」
麦野の実力は明白だが先ほどの怪力少女とジャージの少女は未知数だ。何をするか分からない。
「今回は私と絹旗でやるわ。アンタ達はそこで待機。」
「・・・分かった。」
「さて、あなたは確か木山瀬那と言ったかしら?」
「ああ、そういうお前は麦野沈利だな?」
「ええ、あなたのおかげで5位に落とされた”原子崩し”覚えておきなさい。」
原子崩し、それは電子を不安定なまま照射することで全てを原子に返すいわば殺人光線だ。
「ちなみにあなたを撃破すればボーナスが出るんだけど、殺しちゃって良いかしら?」
猛獣のような目をした麦野に対し、瀬那は至って普通に返した。
「まあ、殺せるものならどうぞご自由に。」
すると、光線のようなものが瀬那の顔面すれすれを通過した。
後ろを振り向くとその光線が通過した分が根こそぎ消失していた。
「・・・うげぇ。」
改めてその威力に感心した。感心しすぎて瀬那は変な声が喉から漏れだした。
瀬那はさりげない仕草で首元のバッテリーを交換した。
ここでこの女を黙らせる為には根本的なところから自身を消失させる必要がある。
彼女たちは施設防衛が依頼と言われた。つまり間違っても子供達を撃つ真似はしないはずだ。
いや、そもそもここに子供がいるとは知らされていない可能性の方が高いか。
「今のは最後通告よ。次からは躊躇無く当てるから覚悟しなさい。」
「はいはい、分かりましたよ!全力で戦わせていただきます。」
瀬那は隅に置いてあった蒸留水のタンクを破壊する。
膨大な量の水が噴き出し周辺をあっという間に水浸しにさせた。
「それじゃあ、君たちに波の恐ろしさを教えてあげよう。」
瀬那は膝をついて水浸しの床に触れる。
するとあっという間に床が凍り付き始める。ただの氷ではない摩擦係数を極限まで零に近づけた氷だ。
少し身動きを取るだけで簡単に転んでしまうだろう。
「ち、妙な真似を・・・」
麦野は自身の能力で足下の氷を破壊し始める。
その横を絹旗が器用に滑りながら瀬那に接近していく。
先ほどと同じように拳を作る。たたき込んだのは先ほどまで瀬那がいた場所、しかし瀬那はバックステップでやり過ごす。
「絹旗さんは確か窒素装甲って能力だっけ?」
「そうですが、何か?」
「窒素の良いところはどこにでも存在するところだけど、それって何にでも取り込めるって意味なんだよね。」
そう言って瀬那は絹旗の腕を直接掴んだ。
「!!」
「空気中の水蒸気に窒素を溶かせばその装甲は意味をなさない。」
「・・・くっ」
すると瀬那は反撃もせず絹旗の腕から手を離した。
「何を・・・。」
「別に俺の目的はあんたらじゃないからな。詰ませたらそこで終了だ。」
「ふ・・・超甘いですねあなたは。」
「ただし、また抵抗したら次は・・・・・・殺す。」
ぞくりと絹旗は得体の知れない恐怖に駆られ、その場にへたり込んでしまった。
「あっははは、良いわねその目。だからこそ潰しがいがあるわ。」
全ての氷を破壊し終わった麦野が高らかに笑った。
「言っておくけどお前の流れ弾で他の奴らを殺すなよ?」
「はん、そんなの当たった方が間抜けなのよ。」
麦野は早速レーザーを撃つ。
「うおっと・・・危ねえな。」
「ち、外したか・・・けど一発しか撃てないとは言ってないわよ。」
今度は4発同時にレーザーを放ってきた。
それを瀬那は跳躍して回避する。だが、そこで自分のミスに気が付いた。
身動きのとれない空中ではただの良い的だ。
「残念♪」
寸分の狂い無く麦野の放ったソレは瀬那めがけて跳んでくる。
原子崩しの正体は不安定な電子だ。つまりちょっと刺激を与えてやるだけで安定した物質に変わるはず。
瀬那はレーザーを”掴んで”電波に”変換”して相殺した。
「・・・・・・あぁ?」
とたんに麦野は不機嫌な顔をした。それもそのはず自分の代名詞を相殺されたのだから。
「はっ、無敵のレーザーと言ってもネタがばれたら興ざめだな。」
「図に乗ってんじゃねぇぞクソ餓鬼!!」
一瞬にしてぶち切れた麦野は続けざまにレーザーを放つ。しかし瀬那は避けようともせずその攻撃を受け止めて相殺する。
「おい、やめろ!このままじゃ本当に仲間に当たるぞ!?」
「関係ねぇよ!今はお前をぶち殺すのが目的なんだからよぉ!!」
そして恐れていたことがついに起きた。狙いも曖昧に打ち続けたレーザーは瀬那を通り越して絹旗めがけて放たれた。
「・・・・・・くそっ!」
最大出力で跳躍しその小柄な身体を抱き留める。運良く絹旗の顔面数センチのところで相殺することが出来た。
「な、なぜ助けたのですか?超意味不明です。」
「だから言っただろ、殺すことが目的じゃないって。」
「は、余裕だな3位様はよぉ!おらさっさと消し炭にしてやるからかかって来いよ!」
「・・・ったく。おい、絹旗だっけか?」
「は、はい・・・!」
「今からアイツを仕留める、そうしたら4人で離脱しろ。」
応答を待たずに、瀬那は目を閉じて集中する。
干渉するのは麦野が認識している光と音。
「なあ麦野・・・。」
瀬那は自分の姿を見せることで光を干渉し、声を聞かせることで音を干渉した。
麦野は構わず原子崩しを放ってきた。
「脳を直接いじられる感覚って想像できるか?」
対象者の脳波パターン解析完了、AIM干渉開始。
「ぐ・・・あああぁぁぁ!!!」
原子崩しは途中で消失し、代わりに麦野の絶叫が響き渡った。
今の麦野は脳波をでたらめに乱されてている。
見えない物が見え、聞こえない者が聞こえ、触れない者が触れ・・・。
「止めろぉぉぉ来るな・・・来るなぁぁぁ!!」
先ほど脳波パターンを解析した時点で彼女の最も恐怖を感じる波形を直接ながしている。
彼女が何を認識し、何に対して絶叫しているのかは瀬那にしか分からない。
「あ・・・あぐぁ・・・・・・」
ついに麦野は気絶してしまった。
・・・これでしばらくは反省するだろう。
「おい、絹旗。早くここから離脱しろ。」
「・・・・・・。」
絹旗はもだえ苦しむ麦野を見てすっかり戦意を失い、半泣きの状態になっていた。
所詮は10代の少女というわけか。
「聞こえなかったのか?」
「ご、ごめんなさい!」
絹旗以下二人は気絶した麦野を担ぎ上げてその場を去っていった。
「・・・くそ、やっぱり良い気分じゃないな。人の脳をいじるのは。」