とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
再び、巨大生物のいた場所に戻ると地面に倒れる美琴の姿があった。
「お前・・・どうしたんだ?」
「で、電池切れ・・・。」
文字通りの意味で疲労困憊の彼女は電撃を飛ばす気力もないらしい。
「終わりましたね、春生さん。」
「ああ、もう一度最初からやり直しだ。」
「そうですか・・・それはそうと春生さん、ちょっと付いてきて欲しいところがあるんですけど。」
そう言って瀬那は警備員の護送車に乗り込んだ。木山春生もそれに続く。
「あなたの拘束命令は先ほど解除されました。”善良な市民の告発”によってね。」
揺れる車内の中で瀬那はまるで他人事のようにそう告げた。
「それで、これからどこへ行くつもりなんだい?」
「第十三学区です。あ、その前にちゃんと着替えてくださいね。そんなボロボロの格好じゃみっともないですから。」
「・・・・・・?」
「だから、着いたらの話ですよ!ここで脱がないでください!!」
目的地の小学校に着くと、瀬那は真っ直ぐ教室に向かった。もちろんかつて木山春生が赴任していた教室だ。
ここに来るまで瀬那は木山春生に目を閉じさせていた。
ガラガラガラ・・・。
「あ、木山センセーだ!」
「あ、本当だー!」
「・・・・・・え?」
目を開けた木山春生は訳が分からない様子で入り口前に立ちすくんだ。
「驚きましたか?今日は何の日か覚えています?」
木山春生は黙ったまま首を横に振った。
「よし、みんな・・・せーの!」
瀬那の合図で子供達は一つの言葉を発した。
「「木山先生、お誕生日おめでとう!!」」
そして一斉に木山春生の元へ駆け寄っていく。
「木山せんせー!」
「会いたかったよぉ」
「瀬那くん・・・これは、現実かい?」
「はい・・・だから言ったじゃないですか。あなたを助けるって。」
「警備員を動かしたのは・・・。」
「はい、やっぱりこの日じゃないと駄目だったんで。」
「・・・・・・。」
「ほら、ちゃんと生徒達に言うべき事があるでしょう。」
唖然とするその背中を瀬那は後押しした。彼女はゆっくりと教卓の前に立つ。
「君たち・・・あんなことになってしまい、本当に・・・済まなかった。簡単に許されないのは覚悟している。本当に・・・済まなかった・・・。」
「ううん、私信せんせーをじてたもん。先生なら絶対に助けてくれるって。だからね・・・私怒ってないよ?」
「僕も・・・ありがとう、せんせー。」
木山春生に送られたのは罵声でも、怒りの声でもなく、感謝の言葉だった。
「きみたち・・・うぅ・・・ぐっ・・・。」
「せんせーなんで泣いてるの?」
「大丈夫・・・泣いて・・・ないから・・・っ。」
言葉と反対に彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「はい、せんせーこれ使って?」
一人の男の子が青いハンカチを差し出してきた。
「ありがとう・・・・・・ありがとう・・・・・・あり・・・がとう・・・」
そのハンカチを受け取り涙を拭くが、しばらくの間その涙が止むことはなかった。
その様子を見つめていた瀬那はゆっくりとその場から離れ、屋上に出てみた。
扉を開けると蒸し暑い空気と騒がしいセミの鳴き声を感じた。
「・・・あっついなぁ。」
しかし瀬那は少しだけ心地よく感じた。