とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
不幸
「ねえ、知ってる?最近八人目がでたらしいよ?」
「知ってる知ってる。けどちゃんとした情報無くない?」
「それなんだけどね、その八人目どうやら曰く付きみたいよ~」
「え~どんなどんな?」
「色々説はあるよ~能力測定中に人を殺しちゃったとか、どっかの施設の強化人間なんて噂もあるよ~」
「ふふっ…なにそれ?漫画の読み過ぎでしょ?」
「ほ、ホントに聞いたんだってば~」
そんな会話を耳にしながらツンツンヘアーの男子生徒は安物のうちわを片手に街中を歩いていた。
「なあ瀬那(せな)さんや。どっかコンビニでアイス買わないか?」
ツンツンヘアーの男子生徒。上条当麻は隣を歩く木山瀬那に提案した。
「……」
瀬那は黙って首を縦に振った。
本格的な夏はまだ来ていないとはいえ、学園都市はアスファルトやコンクリートの反射熱で蒸し風呂のようだった。
暑さと寒さに弱い瀬那はとっくにしゃべる気力を無くしていた。足取りも何となくおぼつかない。
「よし、俺が買ってくるから瀬那はそこの日陰で休んでろよ。」
「…すまん」
言うが早く瀬那は木陰のベンチに崩れ落ちるように腰をかけた。
バキ!
その瞬間何かが割れるような音が鳴り響いた。
瀬那は恐る恐るポケットの中を探った。すると見るも無惨に破壊されたバッテリーが出てきた。
困った…予備は家に行けばあるが、今ので持ち合わせが無くなった。能力測定で早帰りだと甘く見ていた。
バッテリーの残量を確認。最悪なことに五分の一ほどしか残っていない。
悪いときにはとことん悪い方向に転んでしまう友人の体質が一時的に移ったのか、いつの間にか柄の悪いお兄さん達に囲まれていた。
「…え~と、なにかご用で?」
「ちょっと金貸してくれねえかなぁ?見た感じ結構持ってるだろお前?」
こう言うときに限ってとある事情で結構な額を持っているのである。
「額は持ってますよ。だけど…」
瀬那は自身の能力を使い、自分を取り囲んでいる男達一人の三半規管を一瞬だけ狂わせる。
「…うお!?」
姿勢を崩した瞬間を狙い素早く足払いをかけてその場を脱出。
「「てめぇ…待てオラァ!」」
当麻に簡単にいきさつをメールで伝えた後、全力で走り出した。
路地裏に入り、でたらめに角を曲がる。
ピ、ピ、ピ…ピー…。
小さなブザー音と共に、瀬那は電池が切れた人形のように地面に倒れた。
「…くそ、時間切れか。」
「へへへ…どうやらここまでのようだな。クソ餓鬼。」
何人か巻いたつもりだったが、まだ不十分だったようだ。すでに臨戦態勢を整えた4人が近付いてくる。
「まずは一発…受け取れ!」
バキ!
「がはっ…!」
身体強化系の能力なのか、異様に重い一発が瀬那の脇腹を直撃。
確実に骨を砕いた感触を感じ、男は嫌らしい笑みを浮かべた。
「おい、お前ら殺るぞ」
リーダー格の男以外は近くに落ちていた鉄棒等を拾った。
瀬那の身体は首から下が切り離されたかのように指一本も動かすことが出来なかった。
やべぇな…これはちょっと…いや、相当マズイかも。
「なにやってんのよアンタ達。」
女の声が路地裏に響いた。そして瀬那の目の前に常盤台の制服を着た少女が現れた。
…って、コイツは御坂美琴か?なんでこんな所に?
「はっ、何しに来たんだいお嬢ちゃん。」
「どうだって良いでしょそんなこと!」
そう言ってリーダー格の男を雷撃で行動不能にした。
「て、てめぇ!」
一斉に美琴に向かって男達が襲いかかる。
「ふん…」
軽く鼻を鳴らした後、容赦なく同じように雷撃で男達を沈めた。
「…大丈夫?見たところ動けないようだけど。」
美琴が瀬那の方に振り向いた瞬間、美琴の死角になる方向から今まで隠れていたらしい仲間が飛び出してきた。
どうやら火操作系の能力らしく。腕に炎をまとっている。
「くらえぇ!」
「…くそ」
瀬那はとっさに残りの力を振り絞って、能力を行使した。
「…え、なんで?」
男の腕にまとっていた炎は姿を消し、後は動揺をあらわにした男が残された。
「肝心なときに演算ミス?それじゃ意味無いじゃない」
「ぐぎゃあああ!」
よし、全員行動不能になったか。…でも、俺も限界だ。口も目も動かせねえや。
「…改めて聞くけど大丈夫?」
(ああ、何とか大丈夫だ。)
「え、何コレ?頭に声が…」
(ごめん、声を出す力も残ってないんでね。能力使わせてもらってる。)
「それってかなりヤバイんじゃ…」
(大丈夫だ。そうだ、危ないところを助けてくれてありがとう。)
「礼言ってる場合じゃ無いでしょ、今だって充分ヤバイでしょ!?」
(ついでと言ったらおこがましいが、一つ頼んで良いか?)
「え…?うん、まあ別に良いけど。」
(チョーカーの所にバッテリーが付いてる、充電できるか?)
「こんな時に充電?バカなの?」
(良いから早く)
「…分かったわよ。」
美琴はダークブルーのチョーカーに手を触れて、目を閉じた。
バッテリーが蓄電されていく感覚が自身の体を通して感じられた。
「はい、充電終わったわよ…。」
「風紀委員ですの、さあ大人しく拘束…って、お姉様?なんでここに?」
「ああ、黒子?この人怪我して動けないみたいだから送ってあげて。じゃ!」
黒子と呼んだ少女を置き去りにして、美琴はそそくさとその場を去っていった。
「あ、お姉様!またやっかいごとに首を…はぁ、まあ良いですわ。そこの方、お怪我は?」
「あばらを数本折られたみたい…」
「では、すぐ仲間を呼ぶので少々お待ち下さいな」
こうして病院送りにされ、尚かつ風紀委員の事情聴取により介抱されたのは夕飯時だった。
「…不幸だ」
思わず友人の口癖が出てしまった。