とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
「それじゃ行ってきますよ春生さん。」
「ああ、愚問かもしれないが余り無理はしないように。バーってリーが切れそうになったら・・・。」
「春生さん随分と母親みたいになってきましたね。」
「む・・・君と私はそこまで年は離れていないのだが。」
「でも姉と弟というのもおかしくありませんか?」
「そもそも君は私の年を知っているのかね?」
「・・・そう言えば。」
「ふむ・・・では自分の役割をこなすことが出来たら教えてあげよう。行きたまえ、時間だろう?」
何とも煮え切らない気分で指定された研究所に向かった。
「ぐぅ・・・がは・・・!」
「言え、お前達の組織の名前は?何が目的だ?」
研究所の地下で怪しい集団がうろついていたので瀬那はその一人を捕らえて、事情を吐かせていた。
「ぶ、部外者に言えるわけ・・・痛い痛い痛い痛い!言う、言うから!」
瀬那は頭を掴んだ手を少し緩めた。そして男の服を拘束振動させた鉄パイプで壁に固定してから周りに音を伝わらせないようにする。
「まずはお前達の組織の名前を言ってもらおうか。」
「・・・アイテムだよ。まあ、俺はただの使いっぱしりだけどな。」
その組織は少し前瀬那と交戦したあの四人組と同じ名前だった。
「もしかしてリーダー格は麦野って名前のレベル5か?」
「な、なんでそれを知ってるんだ?」
すると瀬那は男の腹部に拳を打ちはなった。
「うぐふっ・・・!」
「俺が質問している。もう一度聞く、リーダーは麦野沈利か?」
「ああ、そうだ。」
「お前達アイテムがここにいる目的は?」
「正体不明の能力者を撃退、もしくは殺害すること。そうか・・・お前がその能力者か?」
「いや、俺はこの施設の防衛を依頼された。」
「つまり俺たちと同じ目的なんだろ?だったら早く解放しろ!」
「・・・・・・。」
瀬那は解放するばかりか壁を加熱し液状化させて男を沈め始めた。
「おい、何のつもりだよ!やめてくれ!熱い、熱ぃぃぃ!!」
「目的が変わった。ただそれだけだ。大人しく壁の一部になれ」
「やめろ・・・熱い熱い熱い熱い、いやだ・・・いやだいやだ嫌だぁぁぁぁぁ!!」
男は必死に叫び声を上げるが、瀬那の能力に阻まれてその声は誰にも届かない。
男が壁と同化したのを確認した瀬那は鉄パイプを引き抜いた。
そして瀬那は床に落ちていた通信機を拾い、声色を変えて話しかけ始めた。
「聞こえるかアイテムの皆様方。」
すると聞き覚えのある声がスピーカーから発せられた。
『その声、超聞き覚えがありませんね一体誰ですか?』
「あんたらとはまた別の依頼された人間だよ。」
『その助っ人さんがなぜ私達の通信機を?超嫌な予感しかしないのですが。』
「今から俺は自分の目的のために動く、その過程で正体不明が死のうがお前達が全滅しようが全く気にしないコレはその忠告だ。」
『超構いませんよ、その言葉そっくりあなたにお返しします。それでは。』
交信を切った瀬那は通信機を放り捨て、前に進み始めた。
「・・・とまあ、このような通信が入ったのですが。」
「へえ、私達アイテムに喧嘩売るなんて良い度胸じゃない。」
「どうしましょうか、部隊を再編成しましょうか?」
「その必要は無いわ、私達の目的はあくまで正体不明の撃墜。助っ人の目的なんて知った事じゃないわ。それにその助っ人がうっかり正体不明を撃墜してくれたら儲けもんでしょ?」
「分かりました、引き続き第三者の超警戒を行います。」
麦野に報告を終えた絹旗は再び持ち場に戻り始めた。
「ふふ、それで正体をくらましたつもりですか?木山瀬那さん。」
通路に絹旗の小さな含み笑いが響いていた。
可視光を屈折させて姿を消した瀬那は慌ただしく走り回る研究者で行き交う施設内に潜入していた。
「急げ!もう襲撃者はすぐそこまで来ているんだぞ!」
どうやら資料やデータを運び込んでいる最中のようだ。
「これはこれは、こんな所までご足労いただかなくても・・・。」
一瞬気付かれたと思ったが、声のした方を見ると白衣を着た十代くらいの女が部屋に招き入れられている所だった。
ここの研究室の人間では無さそうだが、あの研究に関係のある者だろうか。
「おい、あれが噂の天才少女ってのか?」
「だろうな・・・だがどうしてここに?」
「分からん・・・しかし何かあったらアレに全てかぶせれば問題ないだろう。」
どうやらあの女子生徒は何か目的があってここに来たようだ。
すると慌てた様子で男が先ほどの部屋から飛び出してきた。
「た、大変だ!ちょっと目を離したすきに例の女子生徒が消えた!」
よし、あの女子生徒の後を追おう。
慌てた研究者が開けっ放しにした部屋に入ってみる。
そこは応接室らしく、ガラス製のテーブルの上に手つかずのミルクティーが残されていた。
「・・・あそこか。」
奥の部屋に陰を潜めるように存在する非常通路への出入り口。
とってにつもった埃がついさっきぬぐわれたように綺麗になっている。おそらくここからどこかへ向かったのだろう。
しばらく使われていない通路のおかげで容易にその足跡を見つけることが出来た。
通路を抜けるとこの研究室の心臓部とも言える施設にたどり着いた。
妹達の培養施設。
その中で黙々と作業を続けるあの女子生徒の姿があった。
「よし・・・これで・・・!?」
ガン!
なにやらプログラムを打ち込んだらしい女子生徒がフードをかぶった少女に組み伏せられた。
・・・絹旗か。
ここはあの女子生徒を助けた方が良いな。
瀬那は手にした鉄パイプを思い切り絹旗に投げつけた。
ガァン!!
瀬那の投げつけた鉄パイプは絹旗に直撃したかのように見えた。
カランカラン・・・。
しかし、彼女の能力に阻まれ鉄パイプは大きくひしゃげて床に落ちた。
「誰です?・・・いえ、やっぱりあなたでしたか。瀬那さん。」
「よお、久しぶりだな絹旗。」
「また私達の超邪魔をするつもりですかあなたは。」
「そっくりそのまま君にお返しするよ絹旗。前に言っただろ?今度邪魔したら殺すと。」
「てめえ何モンだ!?」
拳銃を構えた男二人が瀬那を狙っていた。
瀬那は電磁筋肉の出力を最大に上げて一気に一人の背後に回った。
そして男を蹴り上げると同時に性格に鳩尾を殴った。
もの凄い勢いで飛んでいったもう一人の男の真横の壁にめり込んだ。
「う、うわあああああ!!」
パニックを起こした男は尻餅をついてその場で震え始めた。
瀬那は指先にプラズマを作り出し、密度を上げていく。
指先に集まったプラズマが放電し輝き始める。
「・・・・・・バァン」
指先から放たれたプラズマは男の顔面をかすめ後ろの壁をいとも簡単に融解させた。
その余波をまともに受けた男は気絶し倒れていた。
「それで、絹旗。俺の頼みとしてはその女性を引き渡して欲しいんだけど?」
「それは超できません。私の役割は第三者の警戒と排除ですので。」
「そうか、だったら簡単だ。」
瀬那は女性とを掴んでいた絹旗の腕に触れた。一瞬びくっと絹旗の腕が震えた。
「な、何をするつもりですか!?」
「ふ~ん、ちゃんと肌の手入れはしているんだな。」
「いきなり何を言ってるんですか!離してください!ヘンタイですかあなたは!?」
瀬那をふりほどこうとして女子生徒から手を離した隙の逃さず瀬那は女子生徒を絹旗から解放した。
「あ・・・・・・しまった。」
「ちょっとの間眠っててくれないかな?」
トンと首筋に手刀を受けた女子生徒は眠るように気絶した。
「見事な手腕ですね・・・超さすがです。」
「ここに侵入者は誰も来なかった。絹旗は努力むなしく一人寂しく時間まで待っているのでしたー。」
そう言いながら瀬那は逃走を始めた。
「あ、ちょっと超待ちやがれです!・・・・・・もう。」
電磁筋肉を最大出力で使用している瀬那にはさすがに少女一人の身体能力では不可能だ。
そのことを悟った絹旗はその場に立ち止まった。そして先ほど触れられた右腕を左腕でさすった。
まだそこは熱を帯びているような気がした。
「なぜでしょうね・・・胸の辺りが超苦しいです。」