とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
「んー・・・どうしようかなこの人。」
ひとまず敷地外にでた瀬那は肩に担いだ女子生徒をどうするかで迷っていた。
「・・・朝まで起きなかったら良いんだけどな。」
「well・・・途中でおきたら何か都合が悪いのかしら?」
「うお!?」
どうやら目を覚ましていたらしい。瀬那は慌てて地面に降ろした。
「これは感謝すべき所なのかしらね。ありがとう、助かったわ。私は布束よ。」
「俺は木山瀬那。どうしてあなたはあんな所に?」
「詳しく説明するのも面倒だわ・・・簡単に言えば計画の妨害と言ったところかしら?」
「それで暗部組織に感づかれて捕まりそうになったと・・・。」
「righit・・・その通りよ。あなたはどうしてあんな所に?関係者なのかしら?。」
「俺は御坂美琴の施設襲撃を防衛するために依頼されたんです。」
「それでなぜ私を助けたのかしら?」
「俺の目的は御坂美琴を守ことだ。そのためなら依頼主なんて簡単に切り捨てる。」
「答えになっていないわ。」
「ひとまず今日は真っ直ぐ帰ってください。明日木山春生の研究所まで来てください。」
そう一方的に告げて瀬那は再び戦場に戻っていった。
「great・・・素敵な人に守られてるじゃないあの子。」
瀬那が再び施設に潜入すると内部はかなり派手に破壊されていた。
その上今も尚爆発音が鳴り響いている。
「・・・まだ戦ってるのか。」
ここまで長引くと御坂美琴自身の体力が限界に近づいてくるはずだ。
長引けば長引くほど彼女にとって不利な状況に傾いていく。
ひとまず彼女の破壊目標である中枢施設に向かった。
「これは・・・随分と派手にやったな。」
モニターはほとんど照明を落とし、火花や煙が立ち上っていた。
しかし完全には破壊されていなかった。よほど急いでいたのかそれほど消耗しているのか・・・。
どちらにせよあまり良い状況では無さそうだった。
「それじゃあ仕上げと参りますか・・・。」
瀬那はプラズマを作り出して生き残っていた機材を全て破壊してから爆発音を追うようにして走り出した。
目的を果たした御坂美琴は脱出に必死に脱出を試みていた。
後ろからは原子崩しの麦野沈利が執拗に追いかけ回している。
先ほどの戦闘で一時的でも戦闘不能にされたのが相当頭に来ているらしい。
「逃げるな売女ぁ!弾が切れたとたんケツ降りやがってよォオ!!」
御坂美琴は残された逃走ルートの内足場の少ない開けた空間目指して少ない体力を振り絞って突き進んだ。
目的の場所までたどり着くと迷わず最短距離を選ぶ。磁力を使って空中を渡りパイプを滑り降りる。
「・・・・・・!?」
その時、拡散支援半導体を用いて放射状に放たれた原子崩しが足場を貫いた。
たまらず御坂美琴はパイプから落ちてしまう。
何とか磁力で細い足場に留まったものの、とっくに体力の限界など振り切っていた。
しかしそんなことは相手にとってはどうでも良いことだ。構わず原子崩しを照射してくる。
「ぐぅ・・・!」
「はっ・・・所詮はお嬢様だなぁこんな殺してくださいって言ってるような場所に逃げ込みやがってよぉ。」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
「もう立ち上がる体力も残された無いってか?無様だな超電磁砲!」
電撃を飛ばす体力も残ってない・・・そもそも立ち上がるのだって・・・。
あと、あともう少しで終わるのに・・・。
「安心しろよ超電磁砲、ゆっくり跡形も残さず消してやるからよぉ。」
麦野沈利は舌なめずりをして、原子崩しを一発はなった。
その光景が御坂美琴はスローモーションの様に見えた。
私、死ぬの・・・?このまま無抵抗で、消されちゃうのかな?
覚悟を決めて様に御坂美琴はそっと瞳を閉じた。
その時瞼の裏に移ったのは必至な顔で自分を反射された超電磁砲から守ろうと走る男の姿だった。
ははは、なんでアイツのことを真っ先に思い浮かべちゃうんだろ・・・他にもママとか黒子とかいるのに。
これから消されるというのにも関わらず微かに彼女は笑みを浮かべていた。
ドガガガガ!!・・・・・・。
間近で凄まじい音が鳴り響いた。しかし覚悟していた感触は一向に訪れない。
ゆっくり殺すと言っていたのだから激しい痛みがどこかに走ってもおかしくはないのに。
そっと目を開けると目の前には信じられない光景が広がっていた。
「はぁ・・・はぁ・・・よお、大丈夫か?」
「うそ・・・なんで、どうしてアンタが・・・ここにいるのよ?」
見覚えのある背中が彼女と麦野を遮るように立っていた。
「て、テンメェ・・・私の邪魔するんじゃねえ!!」
よほど癇にさわったのかいつぞやの植え付けられたトラウマを一時的に麦野は忘れていた。
このとき瀬那は珍しく怒っていた、何に対してかは分からないがとにかく何かに八つ当たりしたかった。
そして丁度目の前にいいサンドバッグが突っ立っている。
「なあ、麦野何も言わずに一発だけ殴らせてくれないか?」
「なに調子に乗ってるんだよ絶対波動!たかが小便臭ェ餓鬼一人だけのためによお、なんならまずはお前から消してやろうか!?」
その一言で瀬那の頭で何かが吹っ切れた。殴る気も失せた。その代わり目の前の人間を虐めたくなる衝動に駆られる。
俗に言うSっ気だ。
「・・・・・・気が変わった。」
瀬那は麦野の目をじっと見つめる。その瞬間麦野はあのトラウマを思い出した。そして激しく後悔した。
「あ・・・ああ・・・・・・」
「なあ、麦野・・・また思い出させてやるよとびっきりの恐怖をなぁ!」
視覚情報と聴覚情報を介して麦野の脳に直接干渉する。
以前干渉したので脳はパターンはまだ覚えている。
「や、やめろおおおおおおおおお!!!!」
御坂美琴はにわかに信じられなかった。あれだけ苦戦していた麦野沈利が絶叫を上げて苦しんでいるのだ。
しばらくもがき苦しんだ麦野はやがて失神し、崩れ落ちた。
「よし、行くぞ。歩けるか?」
瀬那の言葉で足に力を入れようとするがまるで棒きれのように言うことを聞かない。
極度の疲労と、さっきので緊張が切れたせいだ。
「はは、・・・・・・駄目みたい。」
「じゃあ、ほら・・・乗れよ。」
瀬那はしゃがんで彼女に背中を差し出す。背負って行くらしい。
御坂美琴はしばらく悩んだが、やがて諦めたようにゆっくりと瀬那の背中に身体を預けた。
「・・・・・・重くない?」
「いや、軽いよ?」
「そ、そう・・・・・・うぅ・・・。」
「大丈夫か?どこか痛むとか・・・。」
「だ、大丈夫だから!」
突然うなり始めた彼女を心配した瀬那は振り向こうとしたがそれを阻止された。
「早くしなさいよ・・・いつまでもここにいるのは・・・ね?」
「分かった・・・っと、その前に。」
瀬那は一応バッテリーを交換して、出来るだけ急いでこの研究所から去った。
「・・・お帰り瀬那クン。それは・・・あーあれか、俗に言うお持ち帰りという奴か?」
「どこで仕入れるんですかそんな情報・・・今更学生寮に連れて行っても怪しまれるだけでしょ。」
「ふむ・・・まあ入りたまえそれとお帰り、瀬那クン。」
「・・・ああ、ただいま春生さん。」
道中で疲れ果てたらしいぐっすりと寝てしまった御坂美琴をソファに寝かせて、瀬那はひとまずシャワーを浴びてきた。
「なるほど・・・別の暗部組織かそれは大変だったようだね。」
「それと布束とかいう女子生徒が捕まりそうになったので助けました。」
「ほう・・・あの子かそれで、今どこに?」
「とりあえず帰しました、明日春生さんの研究室に来るように言ってあります。」
「それは、嬉しい知らせだね。彼女とは一度話をしてみたかったんだ。」
「・・・んん、ここは?」
目を覚ました御坂美琴は少しとまどった様子で辺りを見回した。
「おや、目を覚ましたようだね。」
「木山春生!?アンタ捕まったはずじゃ・・・。」
「俺が証人になって釈放されたんだよ。」
「そ、そうなの・・・?」
話が面倒になりそうなので瀬那は話をでっち上げて無理矢理納得させた。
「ここは私の家だ無論瀬那クンの家でもあるのだが。なに、心配はいらない、」
そう言って木山春生は着替とバスタオルを差し出した。
「君には少々大きいかも知れないが我慢したまえ。そんな格好では恥ずかしいだろう?シャワーでも浴びてはどうだ?」
「ありがとう・・・ございます。」
もう夜遅いこともあり、就寝することにした。
御坂美琴は最後まで遠慮したが結局瀬那の部屋で寝ることになり瀬那はソファで寝る事になった。
「私がソファでも構わないのだが?」
「あなたはちゃんとした場所でしっかり睡眠とってください。昨日も徹夜したでしょう?何度言ったらちゃんと寝てくれるんですか。」
「いや、寝る時間が惜しいだろう?」
「だめです。しっかり睡眠時間は6時間確保してください。」
「・・・・・・分かった。」
「あんたら本当に中が良いわね・・・。」
「・・・だめだ寝付けない。」
身体は疲れているはずなのに、妙に目が冴えて一向に眠気がやってこないのだ。
水でも飲もうかと思い、御坂美琴は下のリビングに降りた。
「・・・・・・ぷはぁ」
軽くコップを洗い、また二階に戻ろうとしたところで異変に気が付いた。
ソファで寝てるはずの瀬那の姿がない。
「何やってるのよ・・・アンタ。」
瀬那は窓を開けて座っていた。
「おう、御坂か。ちょっと寝付けなくて外の空気吸ってた。」
「やっぱり私がそっちで寝た方が・・・。」
「いや、ただ単に目が冴えて眠れないだけだから。そう言うお前も寝付けないのか?枕が違うと寝られない?」
「そんなんじゃないわよ・・・ばか。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
しばらくの沈黙、夜中になり少しだけ気温が下がり心地よい風邪が吹いていた。
「あのさ・・・・・・今日は、ありがとう。ううん、アンタにはそんな言葉じゃ表せないくらい感謝してる。」
御坂美琴は瀬那の隣に静かに腰を下ろした。
「俺は自分の目的の為に動いただけだよ。」
「だとしても、アンタ来なかったら私・・・今ここにいなかった。」
「まあ、そうだな・・・確かにそうだ。」
「アンタにはすっごく感謝してる。でも私はこれ以上巻き込みたくない。今度はアンタが私みたいになるかも知れない・・・。」
「・・・・・・。」
「だから・・・さ、もう私に関わらないで。」
「・・・・・・御坂?」
「アンタに危険な思いはして欲しくない・・・誰も巻き込みたくないの。これは、私の問題だから。」
「御坂・・・それは・・・。」
「じゃあ、お休み・・・・・・。」
慌てて引き留めようと振り返ったが、すでに彼女は二階に上がろうとしているところだった。
手を掴もうとして伸ばした腕がむなしかった。