とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
いつもの放課後、瀬那は当麻達とゲーセンで時間を潰しスーパーのタイムセールスに向かう当麻に付き合った。
「ふ~まさか卵がこんなに安いとはな。ついでに牛肉も買えたし。」
いつになく上機嫌な当麻の前を歩く瀬那はある光景を発見した。
薄暗くなりつつある路上で、女の子がいかにも柄の悪そうな男達に囲まれている。
「おい、当麻…あれ見てみろよ」
「ああ、やっぱここは助けに…」
「はい、ちょっと待てー」
困った人を見つけたら即行動に移す馬鹿の首根っこを掴んで引き戻した。
「ぐぇ…なんで止めるんだよ!?」
「お前は知らないと思うけどな。あの女の子ははレベル5だ。ちょっとやそっとじゃまず負けねぇよ。」
「…そうなのか?」
「ああ。それに下手に近付くとまたお前の不幸スキルで肉が炭になりかない。」
「だけどこのまま素通りもどうかと思いませんか?」
瀬那はため息をついて、お人好しの権化の肩をぽんと叩いた。
「安心しろ。幸運なことに俺はあの子と面識がある。上手く引き離すよ。」
「…分かったよ。じゃあ後は任せて良いんだな?」
「任せておけ。」
渋々帰って行く当麻の背中を瀬那は見送った。
「君可愛いねー。うひょーしかも常盤台の制服じゃん!」
「今から俺たちと遊び行かない?」
「帰りは俺たちが送ってやっから」
「まっいつ帰れっかはわかンねーけどさ」
ヒャッヒャッと下品な笑い方をする男達を目の前にしながら彼女、御坂美琴は面倒くさそうにため息をついた。
私に声をかけてくるなんてバカな連中ね…まぁ適当に電撃で追っ払えばいいんだけどさ。
そう思いながら美琴は連中の隙間から見える通行人を観察した。
道を通る人々は見事に目線を合わせないようにしながら早歩きでその場を去っていく。
目が合うと、逃げるようにして走り去っていく始末。
みんな薄情って訳じゃないのは分かっている。ただ無駄な厄介ごとは巻き込まれたくないし、怪我もしたくないだけだ。
誰だって自分が一番可愛くて一番大事。ソレが普通だ。
もしこの状況で助ける奴がいるとしたらソイツはただのバカか、それとも……
「よぉ探したぞ~何やってたんだよ。」
男達を割って入ってきたのはいつぞや路地裏で助けたあの男だった。
「…あ、あの時の」
「しー…」
(話を合わせろ。ここで余計な能力を使っても意味無いだろ?)
前と同じように脳内に直接話しかけてきた。たぶんこの男は精神操作系の能力者だ。
(ま、そんなところだろうね)
わ、私の考えてることも分かるの!?
(少しはね。普段はやらないけど今回は状況が状況だからな。)
そう頭の中で言いながら男は美琴の手を掴んで連中から引き離そうとする。
「おい、ちょっと待てやコラ」
まあ、普通はこうなるよな…。
瀬那の予想通り、男達は道をふさぐようにして目の前に立ちふさがった。
「俺たちはこの子に用がアンだよ。テメェは引っ込んでろ。」
「引けといわれて引く男はいないよな…この場合」
「アン?何か言ったかコラ」
「なんでもございませんよ…っと」
「うおっ!?」
ロン毛の男と瀬那の眼が合った瞬間、ロン毛の男は突然その場に崩れ落ちた。
以前瀬那が不良グループから逃げるために使ったのと同じ方法だ。
瀬那は美琴の手を掴んだまま跳躍し、集団から脱出に成功した。
「へぇ、面白い能力ね。」
「…そりゃどーも」
「…で、この後はどうするのよ?」
せっかくのカモを奪われた男達は目の色を変えて、瀬那に向かい合った。
「テメェ…覚悟はできてンだろうな?」
「あー…うん、じゃあ後ろに下がってて。」
「大丈夫なの?アンタ前すっごいボコボコにされてたじゃない。」
「あれは、運がなかっただけだ。」
「ふーん…ま、大丈夫なら良いんだけど。」
美琴はニヤニヤ笑いながら数歩後ろに下がった。
瀬那は慣れた手つきで首元のバッテリーを交換した。
大丈夫…今回はあの時みたいなヘマは絶対しない。
「ほら、かかって来いよパチンコ頭」
一番近くにいたスキンヘッドの男と目線を合わせて挑発した。
「てめえ、ぜってーぶっ殺す!」
バレバレなオーバーアクションで殴りかかってくるスキンヘッドにタイミングを合わせて顎を素早く殴る。
「……っ」
スキンヘッドは白目を向いて崩れ落ちた。
「テメェ…なにしやがる!お前らコイツを生きて返すな!」
瀬那は全身の電磁筋肉の出力をさらに上げ、男達が仕掛けるよりも先に攻撃した。
顎、後頭部、鳩尾…様々な急所を性格に射抜かれた男達は為す術もなく倒れていく。
「…あとは、お前だけか?」
「調子に乗るなよ?」
最初に瀬那が能力で倒した男が再び立ち上がっていた。
「俺は超音波を指の先端から発生させることが出来る、意味は分かるよな?」
男はそう言ってコンクリートの壁に指を突き立てる。すると抵抗無く指が壁に埋まっていった。
「へへへ、コンクリでこれなんだ…ひ弱なテメェの肌なんざ一発で貫通だぜ」
「分かったから早く殺って見せろよ。ご自慢の能力でよ」
全く恐怖の色を浮かべない瀬那に多少驚きつつ、男は「バカが…」と呟いて抜き手を瀬那に放った。
「…なっ」
「どうした?ご自慢の必殺技が不発か?」
いつもなら何の抵抗もなく貫通していくはずの相手の身体が貫けない。代わりに強靱な相手の腹筋に阻まれてこちらの指が変な方向に折れ曲がっていた。
何度も能力を発動しようとするが、妙な感覚に襲われていつものように上手くいかない。
まるで暗算をしている最中にでたらめな数字を言われているようだ。
「お前がやろうとしてるのはこんな能力か?」
そう言って瀬那は男の懐から取り出したナイフを壁に向かって放り投げた。
ナイフは高周波のカッターがモノを切断するような音をたてながら、深々と壁をえぐっていった。
それは男が制御できる出力をはるかに超越した威力だった。
「お前…何もnぐふっ」
言い終わる前にに瀬那は男の腹部を殴って気絶させた。
「ふいー、終わった終わった。」
電磁筋肉の出力を通常に戻し、瀬那は美琴とのいる場所へ戻った。
「へぇ~意外とやるじゃない」
「じゃ、この前の借りは返したと言うことで。」
くるっと反対方向を向いて歩き出そうとしたとき、がしっと瀬那は右肩を美琴に掴まれた。
「待ちなさいよ。アンタの能力に興味が沸いてきたわ。」
「・・・・・・どういう意味でしょうか?」
「私と勝負しなさい。」
…やっぱりそうなるか。でも駄目だモノは駄目なんだよ。まだ俺の能力は誰にも知らせるわけにはいかないんだ。
知られたらせっかく手に入れた普通の日常が失われてしまう。
「俺と勝負?無理だって。俺はレベル2の読心能力だぞ、勝負にすらならないよ。」
「嘘よ、じゃあさっきのナイフは何なのよ!?」
あ…ヤバイ。久しぶりに戦ったから加減を忘れた。あんなことするもんじゃ無かったなぁ…。
「ごめん、言えない。」
「え…?何コレ…うわっと」
そう言って瀬那は美琴に能力を使用。
三半規管が狂ってふらついている間に電磁筋肉の出力を再び上げ、建物の屋根を跳びながらその場を離れた。
「ちょっと、待ちなさいよー!」
待てと言って待つバカはいないんだよ。中学生。