とある科学の絶対波動〈アブソリュートウェーブ〉 作:skav
「う~ん・・・」
パソコンを睨みながらうなっているのは第三位の超能力者御坂美琴。
現在彼女は風紀委員のパソコンを使って、書庫にアクセスしていた。
「見つかりましたか?御坂さん。」
彼女の友人である初春飾利が麦茶の入ったコップを横に置いて画面をのぞき込んだ。
そこには一人の能力者のデータが映し出されていた。
「木山瀬那・・・この人に何かあったんですか?」
「コイツの能力・・・レベル2の精神伝達って間違いじゃない?」
「それは無いですよ。学園都市の書庫は常に更新されてますから。間違えは即修正されますから。」
「そうよね・・・う~ん。」
「で、この方がどうしたんですの?お姉様。」
美琴と同じ常盤台中学の制服を着た少女が突如何もない空間から現れた。
空間移動が彼女の持つ能力だ。普段見慣れているせいなのか二人は何事もなかったかのように会話を再開した。
「あ、黒子。アンタも見たでしょ?アイツの能力。」
「ええ・・・あれは絶対、精神伝達などではありませんでしたわ。」
「具体的にどんな能力を使ったんですか?」
「私が見たのはナイフを振動させて壁をケーキみたいに切り裂いてたわよ。あとバランスを崩す能力。」
「わたくしは確かプラズマを使った能力でしたわ。」
「ああ、そうそう。アイツ何か身体に電気的な補助をしてるらしいわよ。」
「ちょっと待ってください・・・ああ、御坂さん。それはたぶんこの人の病気が関係してますよ。」
「筋ジストロフィー・・・また厄介な病気を患っていらっしゃるのですね。この方は」
すると美琴の様子が先ほどとは違い、その画面を真剣な眼差しで見ていた。
「・・・お姉様?」
「い、いや・・・別に何でもないわよ。あれ?初春さん、何か端っこが光ってるけど?」
「ああ、今見ている情報に更新があったんですよ。ちょっと良いですか。」
飾利は慣れた手つきで更新データへ上書きした。
すると先ほどとは全く違う情報が画面に映し出されていた。
木山瀬那・・・レベル5、絶対波動。序列第三位。
「レベル5・・・?」
「しかも第三位って・・・あ、御坂さんが四位に下がってます!」
「なんで・・・すって?」
すると部屋の中でけたたましいブザーが鳴り響いた。
「初春、何事ですの?」
「えーと、重力子の急激な加速を観測しました!」
「今すぐ近くの風紀委員に連絡を!」
腕章を腕に付け直した黒子は一瞬にして姿を消した。
初春も司令室に走り出していった。
部屋の中でぽつんと取り残された美琴は呆然と画面を見つめていた。
「木山瀬那・・・アンタ一体何者なの?」
同時刻、瀬那は木山春生の研究室でいつもの用に観測の手伝いをしていた。
「春生さん、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが。」
「なんだね瀬那くん」
瀬那は出来るだけ平静を装って持っていた小型端末を木山春生に見せた。
「今日新しく書庫の俺の情報が更新されていたんですけど・・・」
「ああ、それか。すまない上がうるさくてね。」
「そう言う問題じゃないでしょう・・・。協力する代わりに俺がレベル5だと伏せておく約束ですよね?」
「ああ、今日付で私の研究は終了する。だからもう君が超能力者だと伏せる必要もなくなった。」
「そう・・・ですか。」
「随分とあっさりしているじゃないか。」
「こうなることはずっと前から覚悟してましたからね。それが今日になっただけです。」
瀬那は端末の電源を切り、研究室を出ようとした。
「待ちたまへ、瀬那君。」
「・・・なんですか?」
「いま巷で重力子を使った事件が勃発しているのは知っているかな?」
「確か虚空爆破事件でしたっけ?」
「あれは論理上君にも可能な現象だ。疑われないように気をつけると良い。」
「・・・ご忠告ありがとうございます。」
「それと・・・しばらく帰宅しない日が続くかもしれない。覚えておいてくれ。」
その言葉で瀬那は確信した。
木山春生はついに実行に移すつもりだと。