想いのカタチ   作:新茶

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早く投稿する(1ヵ月)の新茶です。
テスト期間に入る前に書き上げれればもっと早く投稿できたんでしょう。

今回は彼氏彼女でもないのにイチャイチャしてる感がある珍しい回な気がします。それではどうぞ。


第10話 初文化祭2日目

「浴衣班準備できたー?」

 

「おーけーでーす」

 

「待ってください!まだ心の準備が」

 

「お披露目ー」

 

 

 

「「「おぉ〜」」」

 

「恥ずかしいです…」

 

「俺も大分恥ずかしいぞこれは」

先輩達が可愛いとか似合ってるを連呼するせいで顔を赤くなっていないか心配で仕方がない。

 

「いやー浴衣カップルはいいよね」

 

「カップルじゃないんですけど」

 

「そんなこと気にせずね?気分って大事だよ?」

 

「はいはい、分かりましたよ…」

 

「もうすぐ始まるからちゃんと接客しておいてねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

1週間ほど前にファミレスに行き、研究したおかげかスムーズに案内はできている。

 

 

 

次へ次へとお客様が来られるためこちらも嬉しい限りだがあまり来て欲しくない奴らが来た。

 

「いらっしゃいま…せ」

 

「へっへっへっ、浴衣似合ってんな和也」

 

「1枚写真を…」

 

「撮らせてたまるか」

陸斗が持っていたカメラのレンズを塞ぐ。

 

「やっほー和也くん!」

 

「昨日の…園田の親友さんか」

 

「そうそう、高坂穂乃果です!穂乃果って呼んでくれて、か、構わないので?よ、よろしくお願いします」

 

「なんか固くないか?別に崩した話し方でいいんだぞ?」

 

「あ、そうなの?海未ちゃんといることが多いからてっきり海未ちゃんみたいな普段からギチギチした人なのかと思っちゃった」

 

「穂乃果ちゃんそれは波野君に失礼だと思うよ?」

 

「園田にも失礼な気が…」

 

「何が失礼なんですか?」

 

「「「えっ?」」」

 

「あ"…海未ちゃんだ」

 

「何か聞こえたように感じたのですが気のせいでしょうか?」

 

「な、何も言ってないよ」

うーん、助け舟を出してやるか。俺が出すのも謎だけど。

 

「別に何も言ってなかったぞ?ただ園田の浴衣姿が可愛いねって話をだな」

陸斗にアイコンタクトを送りあとはお願いする。

 

「近づいてきてくれたんだからツーショット写真を…」

 

「見ないでください!恥ずかしいです!」

 

「遅れたけど私は南ことりです。ことりって呼んでください」

 

「ああ、よろしく」

軽い挨拶を交わして振り向いた瞬間シャッター音がした。

 

「ツーショットいただき!」

 

「な!?」

園田も驚いているようだ。

 

「2人とも油断しすぎなんだよ!」

 

「陸斗!あとでその写真くれ」

 

「穂乃果にも!」

 

「私も!」

 

「陸斗君、大人しくそのカメラを渡しなさい」

半ば諦め気味で交渉してみる。

 

「もし返さないのであれはば私が強引にでも奪う必要がありそうですね…」

 

「そ、園田?」

周りから明らかに悪そうなオーラを出している園田はニコニコとし始めている。

 

「海未…ちゃん?」

これは只事ではないと親友の2人も焦り始めたようだ。

 

「海未ちゃーん?波野くーん?」

岡城先輩の声が聞こえ、スッと意識を現実に戻した。

 

「ハッ…し、仕事があるので戻ります」

 

「あー先輩のお呼びだわ、あとでちゃんと返せよ」

スタスタと去って行く俺たちとは裏腹に唖然としている4人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、抹茶プリン2つ、抹茶ティラミスと」

 

「わらび餅、抹茶ラテです」

4人は同じ席でニコニコしながら話している。

 

「美味しそうだね」

 

「うん!」

 

「結構本格的なんだ」

 

「はぁ〜美味そう…」

 

「それは何よりだ」

 

「嬉しい限りです。ではこれ以上仕事をサボるわけにもいきませんし戻りましょう」

 

「そうだな、じゃあまたあとで」

 

 

 

 

 

 

キッチン付近に戻ると岡城先輩がとある提案を出して来た。

 

「ねぇ、弓引いてる姿を披露する話覚えてる?」

 

「…それがどうかしたのですか?」

 

「海未ちゃんと今やって欲しいんだけど。君達のお友達もいるようだしいいかなと思って」

 

「浴衣でですか?」

 

「うん、浴衣で」

 

「普通やっちゃダメじゃないですか?」

 

「まぁ文化祭なんだし多少はね?」

 

「それで全部丸め込めるんですね…矢は何本程度で?」

 

「うーん一手でいいか、あんまり長く見ててもつまんなくなりそうだし」

 

「了解しました。園田にも伝えておきます」

 

「流石わかる男は違うね」

 

「そういうもんなんですかね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、只今より1年生2人に演武をしていただきまーす」

 

「どういうことですかこれ」

弓と矢を2本持ち入る準備をしつつヒソヒソと園田が話しかけてきた。

 

「それは岡城先輩に聞いてくれ。俺も突然だったんだ」

 

「…ですがやるからには穂乃果とことりには無様な姿は見せられません」

表情が真剣そのものに変わる。

 

「あぁ、涼輝と陸斗が俺の射を見るのは久しぶりだ。驚かせてやる」

 

「「…お願いします」」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を先頭に上座に向かい勇をし、射位に入る。

 

矢をつがえ取懸ける。

 

「ふぅ」

一息ついたあと打起し、大三、引分け1つ1つの手順を明確に丁寧にそして会で狙いをつける。

 

 

 

 

10秒と少し同じ状態が続き…離れを出す。

 

 

 

 

 

 

的から響く音は矢が的中したことを刹那に表した。園田も同様に的中させ、その後もブレることなく的中させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果としては2人の合計である4本は全て的中した。

 

 

「あー変に疲れた」

 

「浴衣での違和感が尋常でなかったです」

 

「大して変わらないものだと思ったんだけどなぁ」

 

「いやいや、流石だね2人とも」

パチパチと拍手をしながら登場した…何様なんだよ、あんた。いや分かるけど。

 

「岡城先輩だけど岡城先輩と思うと腹が立つ」

 

「なによ!先輩よ先輩」

胸をバシバシと叩きながら誇らしそうな顔をしている。

 

「そうだよねうんそうですね」

 

「あまり先輩を舐めていいもんじゃないよ?」

 

「そうですよ。仮にも先輩なんですから言葉遣いに気をつけてください!」

 

「海未ちゃんまで…」

 

「今何か悪いことを言いましたか?」

 

「言ってないんじゃないかな。そうですね先輩?」

 

「…いや、もういいよ。叱る気力も無くなったわ…じゃあこのあとも頑張って」

しょんぼりとして帰っていく先輩の後ろ姿がなんとも虚しく見えて仕方なかった。

 

「ははは…恐ろしや」

無意識に出した棘が刺さった岡城先輩御愁傷様です。

 

 

 

その後涼輝達が座っていた席から親指を立てグッジョブとサインをされていたので手を振り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもこの格好で接客はしんどいなぁ」

演武後、奥のキッチンの部分で休憩させてもらっていて中途半端に注いであった抹茶ラテをパクって飲んでいる。

 

 

 

「波野君そろそろいける?」

 

「もちろんです。すぐ行きます」

残っていた抹茶ラテを飲み干し向かう。

 

 

 

 

 

 

「すみません、もう自分の担当なんで休んでもらっていいですよ」

 

「もうそんなに時間が過ぎてたのね。ありがとうゆっくりさせてもらうわ」

 

「お疲れ様です」

先輩に一礼したあとお客さんが来た時のためにスタンバイしておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーどこも盛り上がってるね」

 

「今のところ何もトラブルのようなことは起こっていないようだし」

 

「それで、ここが弓道部の和風喫茶かな?」

 

「そうみたいね。和菓子楽しみだわ」

 

「うちもや、結構賑わってるみたいやし評判もええんやろな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっつ…とか言ってる場合ではないか」

9月とはいえ快晴でかつ風がない日はまだまだ暑い日が続く今日この頃、前から2人組が向かって来ていることに気づいた。だが普通のお客さんではないっぽいみたいだ。

 

「いらっしゃいませ、絢瀬先輩、東條先輩」

 

「へ〜覚えてくれてたんや」

 

「先輩方は普通に目立つ立ち位置の方ですし余計に覚えやすいです」

 

「まぁ波野くんなら普通に覚えてそうやね」

 

「文化祭でもやっぱり生徒会の活動ですか?」

 

「一応レベルのことやけどな」

 

「水を差すようで悪いけど波野くんは仕事しないのかしら?」

 

「…立ち話をするのが仕事ではないですね。案内します。こちらへどうぞ」

 

 

 

注文を取り、品を持ってテーブルに向かう。その時に俺は生徒会に指名したという話が本当なのか聞こうと考えていた。既に絢瀬先輩に釘を刺されているので聞きづらいがな。

 

「どうぞ」

注文された品を置いたあとスッと座った。

 

「先輩方、一つ聞きたいことが有るのですが」

 

「ん?どうしたん?」

 

「まだ話すの?でも大切な用事みたいだし、何かしら?」

 

「次期生徒会で自分が指名されたと聞いたのですが?」

 

「あぁ〜先生に誰かいない?って聞かれた時に言ったね」

 

「あの時は名前もまだはっきりしてなくて1年の弓道部の賢い男子って言っただけで1年生の先生はすぐに反応してくれたわ」

 

「そういや弓道場の裏で話した時には言ってなかったですね。手間をかけさせてしまって申し訳ないです」

 

「いや、こちらも良い人材の発見に繋がったからお互い様や」

 

「それでなんだけど、先生に言ってもらったとはいえ直接頼まないのは失礼ね」

 

「波野君も突然のことで戸惑ったやろうしな」

 

「…私は生徒会長として波野和也君に生徒会に入ってもらうことを強く希望します」

 

「…こんなの断れないに決まってるじゃないですか。波野和也は生徒会として恥じぬ行動を心がけ一生懸命頑張らせていただきます…こんな感じで大丈夫ですかね?」

 

「十分十分、ありがとな入ってくれて」

 

「これで以前よりは仕事が楽になるかしら?」

 

「浴衣でこんな発言するとは思いませんでした。では仕事があるので、また今度生徒会役員として会いましょう」

 

「そうやな、そろそろ返したらんとね」

 

「楽しみにしてるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒会って何やるんだろうなぁ…」

なんだかんだで生徒会が気になって仕方がない俺はぼんやりしていた。もちろん仕事をサボっていた訳ではない。ふと、時計を見れば3時頃になっていた。

 

そんなボケーッとした状態だったが後ろから背中をチョンチョンと突かれた。

 

振り向いたところにいたのは上目遣いにインパクトがありすぎる園田だった。現に今も振り向いた瞬間少しドキッとした…

 

「岡城先輩がもう私達は上がっていいそうです」

 

「え?マジで?いやまだ働く気満々なんだが」

 

「『いやー朝からフル回転でやってもらってるし2人で最後くらいどこか遊びに行ってきなよ』と言われてしまって…もちろん私も否定はしましたよ?でも、押されてしまって」

 

「じゃあお言葉に甘えて行くか。…もう浴衣のままでいいか?」

 

「はい、遊び終わってからまだ働きますし、構いません」

 

「さーてどこに行こうかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、パンフレット持ってくるのを忘れました」

 

「見事にカバンの中だな…」

パンフレットは表紙や案内図は美術部、紹介文その他諸々は新聞部の担当でありちょくちょく陸斗のコメントが挟まれていたりする。彼曰く嘘は書いていないと言っていた。

 

「今から戻るのも時間かかるしある程度把握できているだろ?」

 

「無くてもいけるんじゃないですかね?」

 

「ねねね、そこの浴衣カップルさん」

話を遮るように急に声をかけてきたと思ったら…誰やねんこいつ…関西弁も急に露出しましたけども。

 

「浴衣カップルじゃないんですけど」

 

「え?…まぁいいやちょっとチャレンジやっていかない?」

 

「お話くらいなら…」

 

「ではでは説明させていただきます!えー今から用紙をお渡ししますのでそこに書かれている複数のお題をクリアしてハンコをもらってくるというシンプルなものです。景品もあるので頑張ってください。はいこれ用紙です」

 

「どうも」

 

「んじゃ頑張ってねー」

 

「やる?もうあの人どっか行ったけど」

 

「折角ですからやりましょう。やることも特になかったんですからいい暇潰しにはなると思われます」

 

「そうこないとね。まず1つ目のお題がえーと『バスケ部の超シュートゲームで良いところを見せつけろ!』か…」

初っ端からめんどくさそうなのが出てきたな。久しぶりにやるけどどこまで通用するか…

 

「バスケできるんですか?これは波野さん宛に近いような気がしますけど」

 

「可もなく不可もなくと言った感じか。とにかく時間もないし、体育館行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受付はあそこか…」

体育館とは逆方向にいたため時間がかかった上にしんどい。

 

「あ、あそこの紙持ってる?」

 

「ど、どうぞ」

 

「よし、バスケのやつだね。誰かカゴ持ってきてー」

 

「頑張ってください。ルールとしては1分間に規定のラインからどれだけシュートを入れられるかとのことでした」

 

「あーあとボールの受け渡しは女子がやることになっているのでその点もお忘れにならないようお願いしまーす」

 

 

 

 

 

「それでは位置について…よーい…ドン!」

掛け声の直後できるだけ時間のロスを無くすために最速で飛びシュートする。一応シュート方法は自由でジャンプしようが片手で投げようが自由、ただ入ればそれでよし。まぁ俺は普通にやるけど…

 

「どうぞ」

着地とほぼ同時にボールを渡しすぐにシュートする。

 

「この子たち連携凄くない?」

 

「無駄な時間を作ってないよね。こんな人材欲しいかも…今までのシュート全部入ってるし。あとさこの子達浴衣だよね」

 

「ほんとこんなところでこんな人材見つける羽目になるとは…」

 

 

 

 

「やっと残り10秒」

 

 

 

「浴衣動きづれぇ。くっそ、園田!残り3秒になったら俺の頭上に2つ連続でボールを投げてくれ」

 

「え!?そんなこと…やってみます!」

 

「4、3…」

 

「今だ!」

俺はまず手に持っているボールをジャンプして放つ。着地寸前に頭上から降ってきたボールをシュートフォームのまま受け取り着地と同時に少し左に倒れながら放つ。放ったボールとすれ違うように落ちてきた最後のボールを取り、右足に体重をのせ片足で軽く飛び放った。状態が不十分だったからかボールはリングをぐるぐると回るがそれも徐々に収まりリングに吸い込まれた。

 

「しゅーりょー!!!」

 

「はぁ…結構疲れた」

 

「君!何者なの!?シュート25本中24本成功でかつ新記録で2位とは5本差あるし」

 

「そして浴衣と…と、とにかくスタンプを押してあげないとね」

 

「「ありがとうございました」」

 

 

 

 

 

「久しぶりの割りに結構うまくいったもんだ」

 

「よくあんなに連続でシュートが入りますね」

 

「一時期やってたからな、もっとも今は涼輝達と遊ぶ程度だけど。ま、そのうちそんな昔話もするよ。じゃ次はどんなお題なんだ?」

 

「続いてのお題は『たこ焼き屋に行ってたこ焼きを食べさせてもらえ!』ですか…」

 

「そんなのありですか」

 

「どう考えてもカップル向けのやつだったんだろうな。とりあえず行こう」

 

「はぁ、なぜこんなことに…でもそうしないと始まりませんもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい!らっしゃい。その紙はそういうことだね!!」

 

「いや、どういうことなんですか」

 

「味は何がいいんだ」

 

「あの…もういいや、俺はなんでもいいから園田が決めてくれ」

 

「ではえっと…ポン酢とトッピングにネギでお願いします」

 

「ネギぽん入りましたー」

 

「「「はいよー」」」

ラーメン屋を思わせるような連携ですぐにアツアツのたこ焼きが出てきた。

 

「あのーここのお題はどんな感じでやればスタンプを押してもらえるんですか?」

 

「そこの飲食用のテーブルで1つずつのたこ焼きを食べさせるところを俺たちが見る、ただそれだけだぞ」

 

「「え」」

2人ともの思考が止まったのは言うまでもない。カップル向けに作られたものを無理やりカップルでない2人が突っ切ってきたが…流石に恥ずかしい気もする。

 

「ほら、せっかくアツアツなんだからさっさと食べちゃってよ」

あの人絶対これを見てニヤニヤするためにこの企画に協力しただろ。現にニヤつき始めてるし。

 

「まずは席に座るか…」

 

「そうしましょうか」

 

 

 

「で、どうする?」

 

「どちらにしても食べるところを見られるのは回避できませんよね」

 

「あぁ、この際ジャンケンで勝った方が先に食べさせるでよくないか?」

 

「別に構いませんが…」

 

「別にスタンプさえ貰えればいいだろという精神なんだ!」

 

「では」

 

「「最初はグー、ジャンケン、ポン!!」」

 

「あ、勝った」

これ結局食べさせる側も緊張するよな。

 

「ほら、口開けてあーん」

園田は手で長い髪を耳元に添えながらたこ焼きと口を近づかせていく。パクっと爪楊枝からたこ焼きを抜き取りもごもごとしていて…

 

 

 

 

 

「あちゅいです」

!?…不意打ちにも程があった。自分でも思うくらい顔がにやけてる。うん今のは分かったわ。只今の気分は半分彼氏で半分お兄ちゃんである。店番のお兄さんも心情を理解してくれたかのようにうんうんと頷いている。

 

「次私が食べさせるんですよね?…波野さん?」

 

「すまんすまん考え事してた。そうだな」

舞い上がってる気分を抑える。

 

「どうぞ、あーん?」

 

「あーん?…熱いね」

やはり出来立ては熱い。お兄さんはここで『2人の仲もアツアツに決まってるよなぁ!』とか言うのかもしれない。今のは我ながらしょうもないか…

 

 

 

 

 

そんなお兄さんはニヤニヤが止まらないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーとこれで最後だといいのですが」

 

「いやあと2枚みたいだぞ。えっと『被服部&美術部で絵を描いてもらえ』だそうだが」

絵を描いてもらうなら美術部だけで良さそうなものだが、なぜ被服部も一緒なんだ?

 

「今度は合同開催のものですか」

 

「やってたかそんなの」

 

「私も憶えていません。こんな時にパンフレットがあればと思いますね」

 

「絵を描いてもらうなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、この紙なんですけどここで合ってますか?」

 

「ええ、合ってますけど…衣装どうしよ。少々お待ちください」

何か呟いたあとにそそくさと別室戻っていった。その後別室からは『そのままでいいじゃん。お似合いなんでしょ?』とかよく分からないことが論議されていた模様。

 

 

 

「お、お待たせしました。本来なら衣装を色々チェンジして似合っているものを着せて写真を撮ったりするんですが2人とも浴衣がお似合いなのでそのままでいいかなぁーと…」

 

「あーうんいいんじゃないかな」

断ると逆にめんどくさくなりそうで適当な返事をついついしてしまった。

 

「他の衣装はどんな感じだったんですか?」

園田が問いかけるとクローゼット状になっていた教室の一角のカーテンが開き衣装がその姿を現した。

 

「これは…」

大方は女性の服と思われる。いかにもお嬢様☆といった感じの服もあれば男装に近いようなものまでバリエーションは豊富だ。俺は浴衣を着てきてよかったなと思った。園田はこんな服着れるのか…大体わかるけど。

 

「ありがとうございます…浴衣でいきます」

やっぱりな。

 

「じゃあこっちに来てもらって何枚か写真撮りますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっとニッコリしてくださーい」

言われるがままにニッコリとしてみる。

 

「はい、良い感じです」

シャッター音が何度か響き終了した。

 

「ふぅ、お疲れ様」

 

「お疲れ様です…」

 

「あとこれ撮影中に描き上げたものとスタンプ押した用紙」

 

「ありがとうございます…へぇ、は?」

俺が気の抜けたような反応を示したのには理由があって

 

「こんなのいつ描いたんだよ…」

色紙は俺が園田をお姫様抱っこしている絵が描かれていた。しかも色鉛筆でうっすらと色付けまでされている。この教室に来てお姫様抱っこをしたこともないのに…その想像力は凄まじいものだ。パタパタと俺の後ろを追いかけて来た園田は横から顔を出して見ようとしたらしいがすぐに顔を引っ込めてしまった。

 

「な、なんですかこの絵は!」

 

「写真撮ってる間に描きあげたんだとさ」

 

「すごいですけど、これどうしましょうか。普通に持って帰ったら間違いなく見つかって騒ぎですよ?」

 

「ドンチャカ騒ぎコース一択だよなぁ…胸らへんに入れておくか」

 

「それバレません?」

 

「俺の胸板が厚いんだと言えば」

 

「厳しくないですか?」

 

「その通りでございます。あとこの写真な」

最初の何枚かは写真撮影とか言うから結構緊張して引きつってるけど、その後はニコニコしてるな…よかっただろうか、いやよくないだろう(反語)

 

「…帰る直前に考えよう」

 

「はい」

半分諦めた2人は最後のお題に目を移すことにした。ここまで続いたカップル用のお題旅もやっと終わりだ。楽しかったけどね、疲れ方は半端じゃない。

 

「『ラストはのんびり2人の時間を!!』だってさ」

最後は単純で楽そうだ。ここまで色々やったしその反動なんだろう。

 

「場所は屋上ですね」

 

「行こう」

 

 

 

 

 

 

 

「結構屋上まで来るのってしんどいな」

なんだかんだでこれが初めての屋上だったりするわけで。

 

「初めて登りましたがこんな景色だったんですね」

 

「ザ都会って感じの景色だけど…」

鉄筋の建物である高層ビルが立ち並ぶ景色。これだけでも昔からこの街が大きく変わったんだろうなと想像できた。だからこそかけ離れてしまった…

 

「山とか行って自然の景色みたいな…親と小さい頃に近くの山に登って弁当食べて遊んだわ」

 

「山…今度行きませんか?」

 

 

 

 

それは予想外の言葉で…

 

 

 

 

「いいのか?山なんかで」

 

「『山なんか』じゃありません!というか波野さんに聞いているんですからどうなんですか?」

 

「あぁ、いいよ。もう秋になるし紅葉でも見に行こう」

 

「ふふ、いいですね。最近は一緒に行ってくれる人がいなかったので」

 

「約束だからな」

 

「忘れると思いますか?」

 

「忘れないでしょもちろん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ戻ろっか」

 

「はい、あそこにあるのはスタンプでは?」

 

「確かに」

昇降口のとなりにひっそりと備え付けられたスタンプ台。近くまで行き朱肉にスタンプをつけ紙に押す。そのスタンプには『これからもお幸せに」と書かれていた。

 

「これからも幸せでいたいもんだ…」

心の中でそう誓えた想いを握りしめた。

 

「何か言いましたか?」

 

「いーや、さっさと景品取って部活に戻ろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浴衣カップル擬きの方々!」

景品の受け取り場所と書かれていた2年2組に来てみたところ最初に紙を渡してくれた人がいた。

 

「堂々と言わないでもらえますかね。詐欺ったみたいじゃないですか」

 

「まあまあ、見事に全てのお題をクリアしてきたようですね。それで景品なんですが…それは思い出です」

カッコいいことを言われたかと思ったがよく考えると景品ではなくないか?

 

「あの物品はないんですか?」

 

「ないことはないよ?はい写真」

手渡された写真は2年2組スタンプラリー記念と書かれたフレームの中に入った写真で2人は最高の笑顔をしていた。

 

「結論から言うと景品云々よりもここまで一緒に巡って来たことが大切だと思う。話して笑って喜んでそうやって楽しんでもらえたらとこの企画を思いついたからね」

 

「そうだったんですか…なんかありがとうございました」

いいことを教えてもらった。この出来事は俺にとっては楽しい思い出になったから。

 

「いやいや感謝される筋合いはないよ。ほらっ文化祭もあと少しなんだしやりたいことやってきな!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今戻りました」

 

「お帰りー、楽しめた?」

 

「もちろんです。ありがとうございます」

 

「荷物だけ置いてきますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

その後は文化祭が終わるまで接客を続けた。終わったとなるとドッと疲れが出るが片付けを済ませるまでが文化祭であってテーブルをなおし始める。テーブルを置いたのが昨日とは思えないほど懐かしく、この2日間がどれだけ長かったかが感じられた。

ある程度片付けた後は岡城先輩による文化祭のまとめ的なもの。そして、その後はあっさり解散したのだがLINEsで飯を食べに行くことになった。

 

 

 

「この写真やらはどうする?一人暮らしの俺が預かっておいた方がいいか?」

 

「そうですね。私の場合だと見つかった場合が面倒です」

 

「だよな、俺が預かっとくわ」

 

「何預かっとくの?」

 

「いや、景品の写真を…ってなんで岡城先輩がいるですか」

 

「あっ、それ私の友達がやるって言ってたやつじゃない?私は相手がいないから行かなかったんだけど」

 

「「え…」」

完全に☆フルハウス☆もとい事故った瞬間だ。2人は凍りつき次の一言が出てこない。

 

「やっぱり2人は…」

 

「だー違いますから!」

 

「特にやることもなかった時に廊下で紙を渡されてなんとなくやっただけなんです」

 

「そりゃ男女が浴衣で文化祭の廊下歩いてたらそうなるわ。はーうらやま」

この後の打ち上げの場でも散々弄られるハメになったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ただいまー」

別に誰かがいるわけでもない家に対して玄関から言う。今思えば結構寂しいのかもしれないけど慣れてしまってはその感情すら危うい。

 

「これは自分の部屋の引き出しにしまっておこう」

写真と色紙は机の引き出しにしまい荷物は机の上にドサりと置く。

 

「今日はもうこのまま寝ちゃえ」

色々あったがそれは全て明日に整理することにした。ベッドに入るとすぐに眠気に誘われていく。

 

 

 

 

 

 

ただ楽しかった。こうやって笑えて過ごせる時間がとても楽しかった。いつまでもそうしていたいんだと瞳を閉じた。

 




今回も読んでいただきありがとうございます。
この文化祭で和也と海未の関係も進んだような進んでないような…うーん難しい。
そこらへんの書き方がイマイチ分かってなくて手探りな状態です。こんな稚拙な文章ですが、読者様それぞれで改変していただいても全然大丈夫なので楽しみやすいように読んでください。

次回はあの世界を代表する(?)アイドルの登場かもしれません。お楽しみに。



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