なんとか1カ月以内に間に合いましたので…。続きなんで前は短めに。
では、どうぞ。
「…どういうこと?」
「私達袋をあまり見つけられてなくて海未ちゃんが探しに行ってくるって言ってからずっと帰ってこなくて」
全身の体温が下がる感覚がした。11月とはいえ夜は冷える。一晩中森を彷徨い続けたりしたら彼女の身が保証できない。…もしかすると怪我をして動けなくなった可能性もある。
「周囲は探したんだけどいなくて」
「何時くらいに出たんだ?」
「2時間前くらいッ」
「既に暗くなり始めてたってことか」
「先生には言ったの?」
「まだ言ってない。すぐに見つかると思って」
…どうする。まず2人を探すことに動員するのを間違ってるのは分かる。考えろ1番被害の少ない方法はなんだ。
「とりあえず涼輝と陸斗は穂乃果とことりをテントまで送ってほしい」
「「なっ」」
「テントに帰ってくる可能性もある。その時に2人がいないとそれこそ最悪なパターンだ」
まず2人の安全を確保しないと元も子もない。2人の気持ち痛いほどわかる。俺がその立場なら間違いなく探すと1番に言ってる。
「だけど!」
「俺に任せろ、必ず見つけてみせるから」
「僕だって協力するよ!」
「…2人は送ったあと周囲の探索をしてほしい。あくまで周囲だ。2人で連絡が取れる範囲で探してくれ。絶対に圏外にだけはいくな。バッテリーも渡しておく…頼む」
わがままなんだろうな、許してくれ涼輝、陸斗。
「自分のスマホのバッテリーはあるから、和也もう一個持っておいて。頼むから本当にダメだと思ったら連絡して」
「おい!陸斗もそれでいいのかよ!」
「…和也はこうなると聞かないけどそうなった時信頼はあるから大丈夫だと思うよ。和也の目は本気だから」
「チッ、無理すんなよ」
「できる限りな」
俺は最高の親友を持った。その瞳だけで真意を分かるなら。そして真に心配してくれるから。
「じゃあ行ってくる。そっちもよろしく頼む」
「…ごめんね私達しっかりしていないから」
「謝らなくていい。最初園田はどちらに行ったんだ?」
「川の上流の方だと思う」
「了解、あともし夜が明けるまでに連絡がなければ先生に連絡を」
*
「はぁはぁ、どこにいった。園田!いたら返事しろ!」
ライトを照らし声を出しながら森を進む。園田が進んだのは多分エリアの集合場所とは真逆の奥。
少し立ち止まって考えてみよう。
連絡すらついていないということはこの奥がスマホの圏外である可能性、または気を失うなどの理由でスマホに反応できない状態にあるか。どういう留守番電話の音声が聞こえたか聞いておくべきだった。
「電波の届かないところ」という言葉が出れば1発なんだが。
過ぎたことを悔やんでも仕方がない。ライトで照らしながら地図を開く。
今は川に沿って上流に向かっているがここで川は曲がっている。地図でもそれはよくわかるため現在位置は曲がる付近だ。しらみつぶしに探すか?いや効率が悪すぎるし鍵がなさすぎる。
賭けに出るか?だがまだ9時だ。賭けに出るには少し早いだろう。細い道が何本か続いてるからそこを中心に探そう。思考は渦を巻いて複雑化していくのがよく分かったし次何をするべきかもとても迷ってる。
月明かりがなんとか道を照らしていた。周囲を探しても誰もいない。だが1つ視界に入ったものがあった。
「…袋!」
そこには補給物資の袋が木の根元に置かれていた。動かされた感じもない、中身も漁られた形跡がない。要するにここは通ってない。時間ロスにはなったが確実に範囲は狭まった。
道を引き返し合流地点から別の道に進む。
「どうなってるんだよここ、まるで迷路のように周りが同じように見えて仕方ない」
スマホのコンパス機能を起動し、地図は写真を撮って可能性のないであろう場所は編集で×を打ち範囲を縮めていく。
コンパスによって迷路から迷走することはなんとか避けているがそれでもこの辺は整備があまり行き届いていないのだろうか、それともここにテントを立てる人が少ないか。とにかくごちゃごちゃしてる。
草木はさっきよりも少しずつ揺れが激しくなっている気がする。俺の心の動揺を表しているのか何かの予兆かはわからないが。のんびりしてるとあっという間に今日が終わってしまう。
「急がないと…走ろう」
*
「じゃここで待っていて、こちらからも動きがあれば連絡するから」
「でも!」
「大丈夫和也が見つけてくれる。あんな顔弓道と勉強以外で久しぶりに見たから」
「そう…」
「ちゃんと待っとけよ?」
「ん、じゃあね」
「…陸斗はあの時なんで和也を信じれた?」
「さっきも言ってたけど和也があんな顔をするのはそれほどに深刻な事態に陥っているということにつながる」
「うん、それくらいはバカな俺でも分かってる」
「僕たちが和也と中学時代に出会ってから、和也は頼んだこと、任されたこと、自分から言ったことは全て何かしらの方法でこなしてきた」
「そうだったな、ってことは今回も」
「…僕は救ってくれると信じてる」
「救ってくれる…か。じゃ俺たちも出来ることちゃんとしとかないとあいつに協力してないな」
「そういうことだね。よくよく考えてみたら、多分和也は周辺の探索を涼輝と僕に任せたんだと思う。1番危険な森の奥には俺が行くからって」
「とんだいいとこ取りだな」
「いいとこでは全然違うけど。どちらかといえば悪いとこ取りじゃん」
「だからあいつとは付き合ってられるんだよな!俺たちには俺たちの出来ることを!」
「うん!」
*
「だいぶ奥の方まで来たか…」
地図にGPSで位置情報を表示しながら進んでいるが先程からそれを示す青丸の動きがおかしい。
スマホも一応ちゃんと動いているけど…電波マークが消えてる…ッ!
「陸斗!」
急いで電話帳を開き陸斗に電話をかける。
『電波の届かないところにいます。再度掛け直してください』
ついに電波の届かないエリアに来た。これより奥に園田がいるとするなら深刻な事態だ。あの2人なら周囲の捜索は徹底してくれるはず。わがままを言って頼んだんだから俺だって徹底する。
「ここまで来てるやつはそれこそ極致のサバイバル好きだな」
月は薄雲によってぼやけていて地上に射し込む光は確実に弱くなってる。早くしないと本当にこの森が暗闇に包まれる。今は10時過ぎ、もう3時間近く探しているのか。早く見つけないと。
ここまでくると草むらも候補に入れるべきか…とりあえず歩かないと見つかるものも見つからない。
先程の川の水音は聞こえなくなり相当歩いたんだろうなと思ったけど足の痛みは全く感じないが足場は徐々に悪くなりつつある。怪我の可能性も頭に入れておくべきだな。
*
『そっちはどう?』
『見つかんねぇ、和也にも連絡つかないけどこれは想定通りか?』
『うん、大丈夫のはずだけど。現在地分かる?』
『大丈夫だ。テントの場所にはピン打ってるし』
『涼輝にしてはよく頭働いてんじゃん。けどもうそろそろ範囲的には戻った方がいいと思う』
『そうか?ここまで来て帰るのもなんだかな』
『それより穂乃果ちゃんとかの方が心配だよ』
『…急いで戻るわ』
『うん、切るね』
「和也心配だけど引き返すか」
歩を180度反対に向けたところでまた電話が鳴った。
『もしもし』
『…穂乃果だけど』
『どうした?』
『海未ちゃん見つかった?』
俺でも流石に分かる落ち込んでる声色だ。
『残念だけどまだ、大丈夫和也が見つけてくれると思う』
『でももう待てないよ!』
そうだよな…ごめん、約束を守れる人間じゃないわ。
『じゃあ…俺がそっちに今から行くから一緒に探さないか?』
『…うん』
『じゃ速攻で向かうから』
「ごめん、和也。放っておけないんだ許してくれ」
1つ空を見上げてからスマホを見ながら走って森に消えた。
*
「…水音?」
あれから何も頼りにならない中ひたすら奥に進んでいるはずだ。その中で水音が微かに耳に入ってきた。時間は11時半を過ぎていてもう少しで日を跨ぐと思うと焦りが滲み出てくる。
水音が大きくなる方向へ駆けていく。躓くこともあったけどなぜか足が走ることを求めた。
「あっちだ、うお!?」
踏み出した一歩はつくであろうところにつくことはなかった。バランスを崩し身体が傾き修正は不可能であることは自分が1番よく分かった。
坂を漫画のように転げ落ち全身に痛みを感じる。
「いってぇ、けど動けなくはなさそうか」
落ち葉に全身が叩きつけられて俺は止まった。切り傷や打った箇所もいくつかあったが気にするほどでもなかった。
「あれが水音の正体か」
転がり落ちたところには小さめではあるが遠くに滝があった。地図にこんなもの載ってたかは定かじゃない。しかし、夜に滝を見るのは初めてだ。だが、絶景ではあるが感情に浸れるほど余裕はない。
まずはここから登って元の場所に戻ることに専念しないと。
滝のそばから上がれるだろうかまずはそっちに進んでみよう。
「ここも無理そうだよなぁ…」
ずっと岩場の斜面が続きこの暗闇だとまともに登れそうにない。岩場の岩壁に手をつきながら沿って歩いて行く。
「あれは…?」
しばらく進むと滝はもう近く。そこで自然とは離れた何かの姿が見えてきた。光を照らすとそこにはよく見知った人がいた。
「園田!!」
「脈は、大丈夫だな」
彼女の首に手を当て精神を宥める。よかった生きていてくれて。外傷は切り傷くらいしか見られないけど何かしら怪我をしてる可能性の方が高いだろう。
スマホを覗くと相変わらずの圏外という文字と0時という表示があった。
「よいしょっと」
園田を背負い少しずつ歩みを進める。彼女は軽かった。重ければ地獄だったのは間違いないだろうな。
近くまで行った結果滝の方に登れる道はなかった。背負っている分更に無理に登ることはできなくなったが、眠ったままの園田は背中で息をしていて、その息を一息感じるたびに俺はホッとしてしまう。
「ここからなら…ッ!」
足元がおぼつかないながら彼女のだらんとした手足を擦らずになんとか斜面を登る。落ち葉で滑りやすく膝をつきバランスを崩しそうになるけど園田だけは絶対に落としてはいけない。
時間はかかったが登りきりコンパスを開く。GPSは無理だとしても地図は開ける。テントの場所にはピンを刺したが肝心のどこにいるかが分からないためどの方角に向かえばいいのか…。まずはスマホの繋がる場所に行くのが先決か。
「もうちょっとだからな」
「う…、か………や…」
返事か何か寝言なのかも分からないけど園田の声は安心できた。
出来るだけ急ぎたいが園田の怪我の具合なんかも分かっていないから変な焦りは禁物だ。
草を掻き分け道無き道を進んで行く。なぜこんな道じゃないところを?そりゃコンパスの方向によるとそうみたいだし最短ルートだからな…。
「流石にしんどいな…ごめんダメだ休憩させてくれ」
園田を背負って1時間くらいが経ったか。人の身体をずっと持ち上げてるということは足に普段の2倍程度の力がかかることになる。
倒れることはなくともフラつき近くの木によりかかることもさっきより増えてる。無理してやって園田を地面に…なんてことは1番やってはいけない。
「今どこなんだろ…」
正直どこに行けばいいのかも分からず彷徨ってる。コンパスと地図からいえば方向は分かるが目の前は崖になっていて回らないといけない。
園田を無言で見つめてた。あれほど必死になって自分で行くって言ってこんな結末許されないだろうな。…雨が少しパラついてきた。周囲には俺のライト以外真っ暗、これは希望の光か絶望の闇か。
「とりあえず被っといてくれ、力不足でごめん。もう行こう。日の出までの時間も迫ってくるからさ」
パラついた雨に少しでも当たらないように着てた2枚の上着を園田に着せる。背負うから基本的に園田が雨に打たれる。これくらいはしてあげないとな。
ちゃんと被ってるな。まずは崖の上に登れる場所を探そう。
*
「海未ちゃんまだなのかな…」
「…和也がきっと見つけてくれてるはずだよ」
「でもさっきから連絡つかないって」
「それは和也がスマホの圏外にいるからじゃない?」
「…海未ちゃんもそうだと思うからそうだと思うけど」
「分かってる。でも思い詰めちゃダメだよ。これでもし見つけてなかったら僕、和也殴ってるかもしれないから」
「陸斗くん…」
「僕だってそりゃ自分から真っ暗な森に行くなんて悪く言えば自殺行為してる親友のことは心配。でも、和也がちゃんと海未ちゃんを連れて帰ってきてくれることの方が信じれる」
「…そうだね、信じてあげないと」
「僕たちも探そう、近場にいてくれるなら好都合だから」
「でも、和也さんは…」
「さっきも言ったけどあいつは帰ってくるって信じてるから。ほら、探しにいくよ」
「…うん」
「無理してるなら言ってね?」
「ううん、大丈夫信じてるから。陸斗くんこそ…」
「僕は大丈夫、森に入ってるより余程ね」
*
降り続く雨は少しマシになった。月光は暗闇と割に合わない弱さで照らしてる。コンパス通りに進んでいて進展したことが1つある。それは水音が聞こえたこと。
滝とは違って穏やかな流れの音。見つける前の行きに通った川の近くじゃないか。
「ん…あれ」
「起きたか?」
「はい…ここは?」
「よかった。今テントに向かって帰ってるから」
あとはここからテントまで帰れるかどうか、俺次第だ。スマホとライトも充電の消耗が激しい。園田を背負いながらライトを充電して歩くなんて俺にはできないし。光は失われるばかりだ。
「私は滝の近くで…」
「大丈夫、もう移動してる。この水音は別の川」
「申し訳ございません。自分で歩きますから下ろしてください」
「…左足首が少し青くなってた。俺と同じで崩れているところに気付かず落ちたんだろ?その時に足首をぐねったか捻ったかは知らないけど無理はしてほしくない」
「ですが」
「絶対下ろさないから」
「…お願いします」
俺の首元に顔を埋め腕を前に回してくることによって薄着の俺は彼女の温かみのある体温をほとんど直で感じていた。
「あ、そうだ電話しないとな」
早く安心させてあげないとね。俺も一安心だけど。
『もしもし、2人ともいるか?』
それぞれにかけるのはめんどくさいから手短にグループで回した。
『おうよ、やっと繋がったか』
『どうしたの?』
『園田見つかったし、意識も回復したよ』
『よっしゃー!!!やったぁぁぁ』
『流石だよ!やったぁ!』
涼輝の方からは穂乃果の声が陸斗の方からはことりの声が聞こえてきた。あいつらやっぱり一緒に探してたか。
『今順調に帰れてるから、テントで待ってて。最悪電話する』
『気をつけてね』
『頑張れよ』
『じゃ代わるよ』
『もしもし…』
『海未ちゃん!!心配したんだよ?』
『怪我してない?』
『はい、ご迷惑をおかけしました。少し足を捻ったくらいですから平気です』
『ちゃんと帰ってきてよ?』
『また2人に会いたいですからちゃんと帰ります』
『うん、和也くん任せるからね?』
『了解、無事に会わせてみせるよ』
『じゃ切るよー』
「よかったな」
「はい、本当にありがとうございます」
「まだ帰れたわけじゃないからそれは帰ってから言ってくれ」
「帰ってから何かお願いを聞かせてもらえないですか?」
「…うーん弓道の一件もあるし俺も園田に何か奢ろうと思ってたんだけど」
「そんな波野さんは何も悪くなんて…」
「いいんだ、じゃあ園田が場所を決めて俺が奢るそれでいいじゃん」
「それで…いいのでしょうか?」
「いいよ。じゃ、これも約束だよ」
「はい!」
後ろの顔の様子は分からないけど明るい返事が返ってきた。これからの約束が俺の動力になる。1歩1歩着実に進んでる。雨はもう降ってない、月が顔を出し始め、星が広がっていく。
少し開けた場所に出たからか星が季節外れの天の川のようで鏡のように逆転した道が俺たちの進むべき道筋に沿っている気がして顔を上げ足は自然に天の川を追ってる。
「綺麗ですね…」
「追っていこう!」
どこまでも駆けて行けると思う。
「わ、速いですよ和也さん」
「大丈夫!この星の続くところまでならどこまでも行ける!」
歩みは速くなるけど疲れてる気はしない。闇をも切り裂き光に溢れていく。
駆けることどれくらいだろうか空は藍色から淡い青色へと変わっていき星も煌めきが見えずらくなってきた。
「もうこんな時間か」
スマホとライトのバッテリーはとっくに切れたが空の明るさは視界の確保には充分だった。
「あれはテントじゃないですか?」
「火が見える!戻ってこれた…」
歩き続け何時間か分からないけど日の入りから日の出までずっと探してたことは想像がついた。
「帰ってきたぞ!!」
「「海未ちゃん!!」」
「和也!!」
「…お疲れ様」
「あぁ、ちゃんと帰ってきたよ」
「やってくれると思ったぞ」
「最初は否定してたくせに」
「うっせぇ、確認だ確認」
「よかったぁ無事で」
「もう会えないかと思って…」
「そんな…申し訳ないです。私はここにいますからもうどこへも行きません」
「そうだよね、よかったぁ」
「とりあえずテントに海未ちゃん運びなよ」
「そう…だな」
みんなに会ったからかなホッとして力が抜け始めてる。あともう少し頑張らないとな…。
「いける?」
「はい、ありがとうございました。このお礼はまた後日に」
「はいはい、じゃ安静にしてなよ?」
「こんな時くらいはちゃんと和也さんの言うこと従いますよ」
「うん、よろしい」
この一夜で何かが変化した気がした。
「一件落着だな」
「…あぁ、途中滝があったんだ」
「滝?地図にそんなのなかったよね」
「おう」
「俺もそう思ったんだけどさ、あれは間違いなく滝だったしそこに園田が倒れてた」
「…なんだか怖い話だね」
「更に言うとさ…」
「わー僕もうお腹いっぱい先帰ってるー」
「まだ朝飯食ってないのに」
「そう言う意味じゃないでしょ」
「あ、飯!」
「俺はもういいよ、流石に疲れたわ…」
「そりゃな」
「はは、あんなサバイバル初めて…」
「改めて」
「「お疲れ様」」
「うわぁ身体だっる」
自分のテントに行くまでの道のりすら歩いたのかも覚えてないし目は覚めても金縛りとは違う身体的な疲れが身体を襲ってて起き上がるのがキツい。
「おはよう、でももう時間だよ?」
「マジっすか、さっさとテント出ます」
こんなのトチ狂って弓道やってた時でもなかった。なんか全身ジンジンするし。荷物は元々固めていたしなんとか這いずりながら外に出る。
このテントもう一晩お世話になってるはずだったんだけども…まぁ今となってはいい思い出になるのかな。
「俺が速攻でぱぱぱっと片付けてやるぜ」
「なんか頼りになるねー」
「おうよ」
俺が体育座りしているだけでどんどんテントが片付いていく。
「いっちょあがり」
「さっすがぁ」
「じゃ集合場所まで行くぞー」
「はーい」
約3日ひたすらにサバイバルをし続けたこの場所とももうお別れだ。
*
「来たやつから順に乗っていけー」
「F班全員揃ってます」
「F班だな…乗っていいぞ」
「和也帰り寝るの?」
「あぁ一旦休むわ」
「そう、ならあの窓側座っておきなよ」
「て言ったってあれ別の人の席だろ」
「もう許可は取ってるから、それに僕達の隣じゃうるさくて寝れないだろうし」
「…ごめん恩に着るよ。といっても陸斗達の前の席だろ?」
「そうそう、また起きたら騒げばいいよ」
「だな、おやすみー」
「おやすみー」
陸斗に言われた席に座り上着を被り視界を暗くする。すぐに眠るだろう、そう思い目を瞑れば周りの話し声は次第に聞こえなくなった。
*
「え?ここですか」
「うん、海未ちゃん帰りのバスで寝るってさっき言ってたし、ことりは別の席あるから大丈夫だよ?」
「そうですか…あの、隣に座ってるパーカーをフードから丸ごと被っている人は?」
「あー穂乃果ちゃんの席も寝る人に譲ってほしいってさっき陸斗くんにお願いされたから。でももう寝てるみたいし何かされることはないんじゃないかな…」
「ですよね、わざわざ気遣いありがとうございます」
「海未ちゃんこそお疲れ様」
「行きは4時間ほどかかりましたし十分睡眠は取れそうですね」
「うん、サービスエリアの休憩の時にまた起こすね」
*
「んーと?あれ今どこだろ」
なんというかこういう疲労が溜まりに溜まった状態でも俺は簡単に起きれるみたいだ。東京どころか時間も1時間半ほどしか経っていない。そして、首が痛い。窓にもたれて寝ていたため道路の段差の振動で首がイカれた。
首をなんとかしようと首を1、2回曲げる。全く良くならなかったけど。バス内は非常に騒がしい。みんな意外と元気なのな…
が、俺にそれ以上の衝撃を与えることが起こるとは予想だにしなかった。
「…えぇ」
隣に座っているのはまさかの園田。彼女は同じ規則で寝息を立てスヤスヤの眠っていた。席移動激しすぎるんだよな。涼輝達は涼輝達で楽しそうだしもう一眠りしよう。今度は椅子にもたれる形で、そうしないと首がもたない。
「ん…いつのまにか寝てしまったみたいで…す」
「……すぅ」
「へっ?え、あ、やはり相当疲れていたんでしょうね」
海未がそう思った理由は1つ。和也さんが私にもたれながら寝ていたから。
起きた瞬間にもぞもぞと動いたことの後悔と内心異性がこういう体制で寝ることもないに等しい海未にとっては新鮮というか衝撃だらけというか…顔が赤くなってるのが自分でもわかるし心臓も鼓動をいつもより感じる。相手に鼓動が響いていないかそれが1番の心配であったりする。
「起こすのもどうかと思いますし…そのままにしておきましょう」
彼の顔は真横と言っていいほど近い。頭を撫で…なんてことはやめておく。私を探すために夜通し捜索を続け更には歩けなかった私をおぶってテントまで戻ってくれた。多大な迷惑をかけてしまったけど…
「ありがとうございます。私の…」
その声はバスの騒音で消えた。
今回も読んでいただきありがとうございました。
なんとなくもうちょっと話を詰めれた気もするんですけどね。他の小説様よりも進行スピードが早くなりがちなのが少し課題になっているかなと感じ始めてます。
次回についてですができれば2月上旬には投稿したいと考えております。色々すっ飛ばすかある程度日常回になるかは未定ですが気を長くしてお待ち下さい。
最後にルーミアは可愛いさんお気に入り登録ありがとうございます。