想いのカタチ   作:新茶

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お久しぶりの新茶です。
2月予定とはと大抵の方がお思いになっていると思われます。大変申し訳ございません。
もうこの謝りが薄っぺらいものではないかと感じ始めています…

あと、海未ちゃん誕生日おめでとう!特別なことはしないけど。

では今回も、どうぞ。


第15話 反響

寝たあとは大変だった。

起こしてもらったと思ったら俺は園田にもたれてるし、園田は園田で顔を赤らめながらもジッとして起こさないようにしてくれていたみたいだ。

 

「海未ちゃーん、サービスエリア着い…たけど」

 

「ん?…」

ここで目が覚めたんだよ俺は。何が何だか分からなかった。

 

「え?あっ、えっと」

 

「そういう…関係?」

 

「ち、違いますよ!」

横で否定している彼女にもたれる俺は寝ぼけながらも態勢を椅子の背もたれにもたれるようにする。

 

「海未ちゃん顔真っ赤ぁー」

 

「えーなになに?」

 

「和也君がね海未ちゃんに」

 

「き、気のせいです!!」

気のせいってなんだ…一応加害者?だからカバーはしとくか。

 

 

 

「そうそう気のせいだって」

ごめん、寝起きすぎて正直浮かばんかった。

 

 

 

まぁ必死に説得して無理やり言いくるめたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く…とんでもない目に遭った」

俺が悪いとはいえまさかあんなことになるとは…。で、だ。今日から弓道部に復帰だ。思った以上に密度の濃い1週間でかつ身体は休んでないんじゃないかな。今も足に少し違和感があるけど。主にふくらはぎと首が。

 

 

 

先輩への挨拶も済ませ久しぶりに袴を着て弓を持つ。

 

 

 

「あれ?どうやって引いたんだっけ。なんか気持ち悪いな」

以前の感覚が何一つ残っておらず矢を番えずに素引きを繰り返すものの吹き返さなかった。弓道は1日休むとその1日を取り戻すのに3日かかると誰かが言ってた。

とりあえず矢を1本持ち引いてみることにした。うん、知ってたけどこれは外しすぎだろ。まるで中たらん。

 

仕方なく弓を弓立てに置き、見つめて考えに耽る。

 

 

 

「どう?久しぶりの弓道の調子は?」

 

「分かったことを…」

いつも楽しそうにする岡城先輩の顔はニコニコとしていた。

 

「そりゃそうよねー。でも、ここからだからね。君がそうして再スタートしてくれるならそれでいいよ」

 

「…先輩」

 

「私だって謹慎命令出した張本人だし、それなりの責任は取らないといけないかなーとか」

 

「はぁ…責任は要らないです。自分は目標がある限りは必ず達成してみせます」

 

「その言葉期待してるよ?」

 

「達成した時には何か奢ってくださいよ」

 

「うーん考えとく」

 

「そこはキチッと言ってくださいよ」

 

「冗談、ちゃんと何かしら奢ってあげる」

 

「なら、頑張らせていただきます」

改めて思うけどいい先輩だよなぁ。こんな先輩がいてくれて良かったもんだ。今日はもう終わりにして切り上げよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「和也さん、調子はどうだったんですか?」

俺と園田はスタスタと帰路を進んでいた。元々この辺に住むのは2人だけだから基本的にお互いの用事がない限りは一緒に帰っている。ここらも何かと物騒だからな。この前だって不審者情報の連絡用紙が配られたくらいだし。

 

「何となく予想はついてるんだろ?」

 

「はい、今日の様子からしても大体」

 

「ま、矢が的まで届いてたし1週間ぶりにしてはいい方だと思うよ。今までできていたことがほぼ全てできなくなってるけど」

 

「弓道に関してはこれからオフシーズンですしゆっくり進めていけばいいと思いますよ?」

 

「あぁ、ありがたいことにオフシーズンだからな。あと、明日って奢りの件行けるか?」

 

「明日は確か午前練習でしたね。午後からもとくに予定はないですし私は構いませんが」

 

「ならよかった。でも明日昼から生徒会の仕事あるから…3時前には終わらせるつもりだけど」

 

「大丈夫ですよ。食べに行く場所も遠くないですし、連絡さえ取ればいつでも食べに行けると思いますが」

園田が望む場所はそれほどに園田は常連なのか?連絡ひとつで…なんてのも言ってるし。

 

「…なるほど」

話が急展開過ぎたかと思いつつも約束を取り付けれたのでオッケーだ。今から楽しみにしている自分の顔もなんか想像できてしまう。

 

「では、ここで。いつも送っていただいてありがとうございます」

 

 

「ああ、明日楽しみにしてるよ」

 

「はい、私もです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーやっべぇ」

家に帰り復習用のノートを開き教科書とにらめっこをしていたが時間とはにらめっこしていなかったようで晩飯の買い物も準備も何もしていなかった。そんな中俺はドタドタとうるさく階段を降りていた。

 

部屋着を脱ぎ既に沈みかけの日を窓の外に見据えながらハンガーにかけていたコートをハンガーが落ちるのも気付かず着ているとインターホンが鳴った。画面を見るからに配達みたいで返事をすると快い返事も返ってきた。

 

 

 

「はい?」

 

「えーとお届け物です。優しい両親ですね」

 

「ん?…はい、ありがとうございます」

正直なんのことかわかってないけど。なぜ俺の親を知ってるのかも分からないし。

 

「では、失礼します」

 

「ありがとうございました。お仕事引き続き頑張ってください」

 

「そちらもいい一年を。後で伝票の確認もしておいてくださいー」

最後まで発言がイマイチ不思議だったけど何かあるのか?ステキな配達業者が返ったあとリビングの机に薄型ながらも両手で抱えるくらいの配達物を置いた。

伝票を確認して欲しいと言われたのでとりあえず捲ってみると伝票の裏側には『息子の誕生日なんで軽く祝ってあげてください』と書かれていた。

その字体はよく見たことがある字で、

 

「父さん…」

紛れもなく父の字だった。そう確信した瞬間サンタさんからプレゼントを貰った翌朝のように配達物をドタバタと開けた。梱包を丁寧に外しダンボールを開けると光に反射し保護シートで見づらいものの、ノートパソコンが入っていた。そして、その近くには1つの封筒。

 

どちらから開けるべきか迷いはしたが封筒を手に取り丁寧に開けていった。

 

『和也へ

元気にしてるか?その歳で一人暮らしさせてしまうのは本当に申し訳ないと思っている。まずはすまん。

だからと言ってはなんだが今年はサプライズ的なノリで母さんと相談した結果ちょっとだけ早い誕生日プレゼントとしてノートパソコンを送らせてもらう。お前も一人前の人間になろうとしている時期なのだからこれくらいはしてやって当然だと思っているからな。この機会に新調してまた一つ成長してほしい。次に会うときにはとても逞しい姿をしていることを期待しているからな。また遊びに行くぞ。

父より』

 

 

 

「はぁ…しんみりするなぁ」

こういう手紙を見るとやはり自分の家から自分以外の声が聞こえないのは寂しいものだと思う。それでも俺は生きていかないといけないし、絶対真っ当な人間にならなければならない。

 

「ありがたく使わせてもらうよ、父さん」

封の空いた封筒を端に避け中身をどんどんと出していく。ノートパソコン以外にも色々ソフトウェアだったり外部コンテンツやら付属品も山ほど出てきて何から手をつけるべきなのかよく分からなくなった。

 

「だけどこれ時間かかるやつだぞ…」

1つ1つ動作を確認しながらソフトをダウンロードしてみたり色々やってみる。

これは忘れていることだが晩飯は脳から消えていた。

 

 

 

 

結局俺はこの夜高度な電子機器との熾烈な勝負を繰り広げた。その勝負は日付が変わるくらいまで続きやっと終わった。

 

その時に気づいたんだ。

 

「あ、飯食ってない…コンビニ行こ」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「では、これより生徒会活動を行います」

午前中に練習をした後、弓道場を後にし今は生徒会室だ。試験的な導入も兼ねてノートパソコンも持ってきてみた。

 

「先に確認しとくわ…そのパソコンは、何?」

 

「作業用だったりメモや議論を纏めるなら便利かと思いまして」

 

「もうエリート会社員やん。生徒会でそういうの使えるのは助かるよ?」

 

「そりゃありがたいですけどここの面接官には通るかは怪しいみたいですよ」

絢瀬先輩は渋い顔を浮かべていた。この手の機器が苦手なのだろうか。本当のところ東條先輩を味方につけた時点で俺の勝利は決まっている。

 

「そうよね、希の意見も一理あるわ。これから先はこういう作業波野君に任せようかしら」

あの言い方からするに否定されると思ったがそうでもなかったみたいだ。許可も頂いたしこれで暴れまわってやろうと思う。もちろん良い方向に。

 

「いつものように脱線したがるから進めるわよ」

 

「今日のお仕事は何ですか?」

 

「まず意見ボックスを開いてみましょう」

箱型で上に紙をいれるところがあって…簡単に言えば学校生活を良くするために意見をくださいってことだな。

 

底のロックをかけていた部分を外すと大小の大きさと形はあるものの十数枚の紙が長机の上に少し散らばり落ちた。

 

「手分けして見ていきましょう。何かあればすぐに言って」

 

「ふむふむ…」

近くにある何枚かを攫い順番に見ていく。半分ふざけた内容もあったが…絢瀬先輩は付き合っていますか?って意見に書いちゃダメだろ。名前までご丁寧に…ってこれ俺の隣の席の奴じゃん。

 

「あの、こんなのが」

 

「何かしら?」

さっきの紙を机越しに渡してみると白い肌に対して顔が赤くなっているのもわかった。

 

「なんてもの渡してくれてるのよ…」

 

「えっ?エリチが付き合っていますか?ってー。近頃はこんな大胆な男子もいるんや」

 

「そ、そういう問題じゃないわよ!この紙は処分します!」

 

「夢破れたり」

 

「あーあ会う前からフラれるとはかわいそうに」

 

「全く、男子ってみんなこんな感じなのかしら」

 

「いや、違いますというか男子で一括りにしないでもらえますかね」

 

「あーあ波野君も被害者に」

 

「はぁどっと疲れたわ、少しお茶でも淹れようかしら」

 

「じゃ自分はまた作業に戻りますね」

 

「うちと波野君の分のお茶ももちろん淹れてくれるやんな?」

 

「もちろんよ」

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜やっぱり落ち着くわね。お茶は」

 

「美味しいですね」

 

「最高やねぇ〜」

 

「そういえばこの学校って体育祭ありましたっけ」

何故俺が今そんな質問をしたか、それは手元に握られたよく見慣れた気もする字が教えてくれた。

 

「うーん、ないね」

 

「言われてみればって感じだけど、その通りではあるわ。他の学校なら普通に有ってもおかしくない行事だし」

 

「じゃあやらないんですか?」

 

「今までやった記録はないみたい」

お茶を啜る役員と記録簿をペラペラとめくる副会長、そして今の話に俯き加減に考えに耽る会長のよく分からない立ち位置の三角形。俺は2人を視界に入れるように広くとっていた。

 

「この際やってみましょうか、だけどそれ以上の問題もあるわ。それを解決してからにしましょうそれでも遅くないわ」

 

「その問題というのは?」

 

「この学校の入学希望者が年々減っていることよ」

少し落ちたトーンから発せられた言葉はこの部屋の空気を凍らせるのには十分だった。敢えて視線を机の少し陥没し壊れている穴に目を向けていた。

 

「現にうちらの学年は3クラスやけど、波野君たちの学年は2クラスや」

 

「来年1クラスになってもおかしくはない…と?」

 

「ええ、現時点ではそれも覚悟してるわ。しかし、私達生徒会はこれを阻止しなければならない」

会長の目はその先を見据えていた。冷酷ながらも希望を燃やしていた。会長としての責任、この学校を背負う者としての覚悟、全てを肌で感じた。

 

「最終に…いえなんでもありません」

 

「波野君、その可能性も十分にあるよ」

 

「人の心を読まないでもらえますか」

 

「…だけど、事はうまく進んでいないわ」

3人とも前にそれを察していた。先月、今月に行われた学校見学会は正直良い収穫があったとは言えなかった。

まず、来る人が少なく思えた。興味があって音乃木坂に見学に来ているならまだしも見学にすら来ていないならこの学校への進学はほとんど望めないと言っても過言ではない。

見学に来ていてもそれは何校かの1つであって確実に来るとも限らない。人数が少なくなればなるほどドツボにハマるのはこちら側だ。

 

この学校が歴史があるにも関わらずここ何年かで人数を減らした理由、それは

 

 

 

「UTX…」

そうポツリと呟いた。

 

UTX学院、最近になってできた俺の家から音乃木坂への通学路と真逆の方向にある学校だ。校舎が近代の会社のオフィスビルのようになっていて設備も最先端を進んでいる。。

更に追い討ちとなったのはA-RISEというスクールアイドル。涼輝から散々話を聞かされたので知らないわけではないが、あの学校には追い風が吹いていることは確かだ。

 

「波野君、それは一種の正解であって一種の不正解でもあるわ」

 

正解は相手の方が長所が多い結果時代とともに廃るのは当然だということ。

不正解はただの言い訳でしかなく、自分達の努力不足またはそれ以外の分かっていないことが判明すらしていないこと。

 

完璧な答えでは絶対にない。俺も見つけ出せていないのが現状。

 

 

 

「考えすぎても仕方ないわ。また家で考えましょう」

強引に話を打ち切った絢瀬先輩の顔には笑顔なんてものはなかった。こんな時にどうすることもできない自分が悔しくて腹が立つ。

 

「あとは切れ気味の蛍光灯が多いのと資料室の管理が少しできてないってことくらいかな」

 

「体育祭はアンケートを実施してやるやらないの方針を決めるべきだと思うのですが」

 

「報告しておくわ」

 

「後程文書をつくって先生に印刷してもらえるようお願いしておきます」

 

「早速そのノートパソコンの出番やね」

ある意味試験的導入を兼ねてこういうことをやってもいいだろう。先生にやってもらうと何かと自分達が思っていることと違っていたりするし。

 

「じゃあお願いするわ、また後日確認させてもらいましょう」

 

 

 

確認を取り大体意見もまとまったところで放送が鳴った。

 

『生徒会役員は理事長室に来てください』

 

 

 

「色々まとまりましたし行きましょうか」

お茶が残っていた湯呑みを顔にかかるくらいにまで傾けて一気に飲み干す。今からよく話すことになりそうだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

「わざわざお呼び立てして申し訳ないわね。今回呼んだ件だけれど」

 

「入学希望者数のことですか?」

絢瀬先輩が即答、一瞬絢瀬先輩を見ることはあったがすぐに理事長の眼を見る。

 

「ええ、今の調子ならかなりの定員割れは覚悟しないといけないわ」

 

「…そうですか、お力になれず申し訳ありません」

淡々とした言葉が刺さる。努力したところで解決しない問題なんて世の中にはいくつもある。今俺は現実と唇を噛み締めている。

 

「いえ、謝って欲しい訳ではないんですよ?あなた方にはここまで進んで学校を助けてもらい感謝しています」

 

「もう一度チャンスをもらえないでしょうか」

 

「…今くらいが潮時じゃないかしら」

 

「いえ、まだやらせてもらえませんか。…お願いします」

生徒会が学校をより良いものとして活動することの意味は何だろうか。まだまだ知らないことばかりだ。

絢瀬先輩は頭を下げ、くくられたブロンドの髪が重力に従って垂れる。俺も頭を下げた。何ができるかは分からないけど助けにならなければならない、そんな気がした。

 

「そう…また頑張っていただけますか。あなた方がそう言ってくれることに私はとても嬉しいです」

 

「ありがとうございます」

 

「別件ですが、絢瀬先輩」

 

「そうだったわ。理事長、生徒の意見から自分の学校には体育祭がないのかというのがありまして」

 

「それを実施したいかというアンケートを行いたい…かしら?」

 

「はい」

 

「構いませんが好ましい結果になるとは限らないことを前提においてください」

 

「ありがとうございます」

 

「これくらいかしら、わざわざ集まってくださりありがとう。これからも生徒会として実りある行動を心がけるよう頑張ってください。あと波野君は少し残ってもらえますか?」

 

「…?分かりました」

 

「では私達は先に失礼します。波野君、もう自由解散にするからそのまま帰って大丈夫だから」

 

 

 

 

 

 

 

「何かありましたか?」

心当たりが何もない中で相手との心理戦を行うというのがどれだけ難しいことか。ましてや相手はこの学校の根幹を支える人物、比べ者にならない天上の人だ。

 

「生徒会とは関係がないのだけれど娘の友人がお世話になっているみたいだから」

…娘の?理事長の苗字は南。そしてベージュの髪の色と髪型から予測できるのは。

 

「まさか、ことりさんの母親…ですか?」

 

「ええ、本人もあまりバラしてはいないようだけど」

そう思えばますます似ているようにみえてきた。雰囲気だって…いやもう本人が大人になった時こうなるんだろうなと思える。

 

「そうですか、自分は大したことはしてないですよ」

 

「ことりが海未ちゃんが弓道部で男子と親しくなってるからビックリしたなんて言ってたから」

 

「ああ…今では1年の部員は園田と2人ですからね。頼らせてもらっています」

意外ととんでも発言されているし、しているのかもしれない。

 

「ふふ、弓道部の活躍を期待してるわよ」

妖艶な笑みは俺の心を鷲掴みされているようで吸い込まれそうになったが踏みとどまった。これほど近くで大人の女性を見るのも案外久しぶりなのかもしれない。

 

「園田にも伝えておきます」

 

「関係ないことで引き止めてごめんなさいね」

 

「いえいえ、わざわざありがとうございました」

平気で話していた人が理事長の娘とは。恐ろしいこともあるんだな。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「待たせたっ」

案外時間に余裕がなくドタバタしたものの約束の3時には園田の家に着いていた。

 

「大丈夫ですよ、時間には間に合っているんですからそんなに焦らなくても」

 

「そう言ってくれるならありがたい」

 

「じゃあ、行きましょう。晩御飯が食べれる程度に食べますからね」

 

「存分にどうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「和也さん生徒会やってますけど、どんな感じなんですか?」

ほぼ通学路をいつもとは違う私服で歩いている手前いつもとは感覚も雰囲気も違う。はたから見てみればどう思われるのかは俺自身よく分からないから放っておくことにする。

 

「うーんどうと言われてもなぁ。別にそこまで難しい仕事を求められているわけでもないし先輩方も優しいよ?」

 

「絢瀬先輩もですか?」

 

「やっぱりそうなるか。確かにあの人は何もない状態から接しに行くのが1番難しいかもな」

 

「怖がっている人も噂では多いようなので」

生徒会長って威厳があってどこでも恐れられる対象なのか。それか、絢瀬先輩が自分からその圧倒的なオーラを発しているか…俺は後者だと思うけど。

 

「何かと責任ある立場だからなぁ、先生との信頼関係もそこそこに重要かもな」

 

「責任感ですか…私では生徒会に入ることはないでしょうね」

 

「そうか?園田ならできそうなものだけど」

何か嫌な魔が差した。雀の囀りだろうか、遠くから聞こえる。少しの静かな間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「私にとってあなたはあまりも出来すぎた人です」

 

 

 

 

 

 

「…そう、か」

先程と同じ言葉を発していることに俺は多分気付いてない。その意味も否定しているのかよく分からない受け入れをしているのかまるで違うのに。言葉は伝えれば全てが簡単に脆く崩れるのに。

 

その言葉が俺の身体に重くのしかかった。肩に呪いのように取れない重いリュックを背負っている気分。俺には重すぎる言葉だ。

 

「それほどできた人間ではないよ。多分…いつか脆く崩れると思う」

園田は黙ってた。納得なんてしてないだろう、褒められているのに俺はまだ下手に出そうとしている。

相手からしても印象は悪くなるけど、否定したい部分はちゃんとしないとのちに関わってくるから…

 

「俺にとってみれば園田は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやなんでもない」

結局はこの言葉で済ませてしまうんだ俺は。今だってお互いが思っていることは刺し違えてる。一方的に刺さったままだ。己の刃は手元から動かない。いや動かそうとしなかったんだ。

この関係が破綻することは絶対に今は避けなければならない。

 

「そうですか」

園田は少し目線を外した。空を眺め飛ぶ鳥を微かに眼が追いかけていた。

 

「湿っぽい話になりましたね。奢ってもらう場所はここですよ?」

 

「ああ、って穂むらなのか」

予想外で若干無視しかけたものの反転し扉の近くに戻った。

 

「ええ、それがどうかされましたか?」

 

「いや、早く入ろうぜ」

 

 

 

 

「いらっしゃいませ…エッ!?」

割烹着姿でお客さんを迎えていた雪穂ちゃんが営業スマイルから一転、驚きで顔が歪んでいたけどかわいそうだからそれ以上は言わないでおこう。

 

「雪穂どうかしたのー?」

 

「あーなんでもないからー」

 

「お久しぶりですね、雪穂」

 

「そうですね海未さん」

 

「いつの日かぶりだな」

 

「はい、和也さん」

 

「「「………」」」

なんか気まずい。何だろうこの空気これが俗に言う修羅場というやつなのだろうか。陸斗に聞けば違うと言われそうだけど。

 

「ええええええ!!!???」

また雪穂ちゃんが叫んだ。脳内で推理が固まったのかな。

 

「あ、うん…。弓道部で一緒なんだ」

 

「いつも和也さんにはお世話になっていますから」

 

「そう見るとチャラくも…あ、何も」

なんだろう、初対面が馴れ馴れしかったかな。隣にいる人といればそう思われることもないだろうけど。

 

「どういう態度をとっていたのですか…」

 

「さぁ?園田のお陰でイメージを払拭できたことは感謝してる」

 

「あはは、お姉ちゃん呼んできましょうか?」

 

「いえ、今回は穂乃果に会いにきたわけではありませんので。どうせ早めに出された炬燵で寝ているのでしょう?」

やはりここは高坂穂乃果の家だったか。そう見ると確かに似てるなぁ…あれ?これさっきのデジャブじゃね?

 

「流石海未さんですね…その通りでしたよ」

店の奥の多分居住スペースを見て渋い顔をして帰って来たことで大体は察することができた。

 

「実は今もお姉ちゃんの勤務時間だったりして」

 

「なんで全てを見透かしてるんですか。和也さんは」

 

「また穂乃果は…」

 

「じゃあ、手柄を横取りされる前に注文させてもらうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外久しぶりのほむまん…買いすぎましたかね」

 

「俺の分もあるし。あとは」

 

「ええ、雪穂この中から好きなものを選んで取ってください」

少し奥の方で整理を行っていた雪穂ちゃんを呼び出し、勤務時間外の労働としてのご褒美的なことを俺が提案した。といっても饅頭が広がるばかりだが。

 

「悪いですよ、仮にも店番任されているんですから」

 

「俺が買ったんだしどうするかは自由だろ?」

 

「…ぐうの音も出ないです。お姉ちゃんが試食して気になってたこれをいただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、今度の日曜のオフ空いてますか?」

 

「空いてるよ。何か用か?」

 

「ええ、山に紅葉をと思いまして。文化祭の時に言っていたではありませんか」

そうだったなと俺自身も結構忘れていた。もう紅葉の季節もほぼ終わりかけだ。行く時間がなかったにしろもうダメかとは思っているけど。

 

「次の日曜っていったらほぼほぼ12月になるけど…紅葉見れるのか?」

 

「今年は紅葉の時期が例年よりも相当遅くて今週の日曜くらいまでなら楽しめると言っていましたよ」

そういや朝のテレビの特集でも時期をずらしてゆっくり紅葉狩りなんてのもやってたしいけるか。でもあれもっと東北の方じゃなかったっけ?まぁいいや。

 

「じゃあ行くか。山はまた連絡して決めよう」

 

「楽しみです!」

饅頭を食べながら幸せそうな顔を浮かべる園田を見ながらお茶を啜っていた。

 

「あーあ俺も妹か弟がほしかったかなぁ」

雪穂ちゃんを見ていると思うけどあーいう人が1人いて欲しい気持ちになる。

 

「和也さんはお姉さんが1人でしたよね。私のところには雪穂と同い年の中2の弟が1人いますよ」

 

「へー弟いるんだ。姉ってどういう気分なんだ?」

 

「うーん、あんまり気にしたことはありませんね。喧嘩をするわけでもないですし、普段関わるかと言われると特には。ですが、あの家は私が守らなければならないという自覚が湧きましたね」

 

「そうだよな。俺もその立場なら辛い思いをしてるのかも」

 

「私の弟…優雨(ゆう)と言いますが園田という家系に生まれたことを彼自身どう思っているかは私は分かりません」

日舞は女性が行う。その家系に生まれたということは演者としては生きていけないし、肩書きを生かすこともできない。俺が弟なら多分姉さんへ劣等感を抱くと思う。

 

将来を見据えた人間と見据えていない人間、行動に移しやすいのは自然とわかる。

彼は路頭に迷い考え続けるんだろうな。この家にとって自分がどういう存在なのかってのを。中学2年生が持つ悩みとは到底思えない。

 

「俺なら…いっそ家出してるかもな」

 

「和也さん…私は優雨が何か言われようものなら庇い守ることを胸に置いています。それが私の1つのしてあげられることだと思っていますし、姉としても継承者としても代わりは私以外いませんから」

薄っすらと笑みを浮かべた園田がどれほどの苦労を隠しているか俺には計り知れなかった。いや、俺の器では元から計れないんだ。

 

先ほどのことを訂正しよう。将来を見据えた人間はその将来を勝ち取るために行動をし続けてなければいけないということ。見据えていない人間よりもずっと走り続けなければならない。

 

「何も背負うこともない俺は目標ありきなのかも」

 

「目標、ですか?」

 

「ああ、多分な。目標がある限りは頑張れると思う。期間が短ければ短いほど余計にな」

 

「私と和也さんは全く違うところにいますが、結論は似ているようですね」

 

「俺もそう思っているよ、お互いに高め合えば更に強くなれる。そういう意味ではこれからも頑張ってよ?園田」

 

「負けてられませんね。和也さんも日頃の行いを怠るなんてことはしないでくださいよ」

 

「もちろん」

最後の1つの饅頭を食べ、熱いお茶とは言えなくなったお茶を飲み席を立った。

 

「では、雪穂長居してしまって申し訳ありません」

 

「お仕事頑張ってな」

 

「いえいえ、お客さん全然来ませんし楽ですよこれくらい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…優雨、無…して……かな」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「なんでもない、です。部活も頑張ってください」

帰り際扉を閉める時に雪穂ちゃんが何か言った気がして聞き返したけど俺のことじゃないみたいだから気にしないことにした。

 

 

 

「久しぶりにこれほど食べた気がしますね」

 

「やっぱここ美味しいよな」

 

「いつまでも食べていたい味です。今日はありがとうございました」

 

「こっちも楽しませてもらったし。今度は日曜かな?」

 

「はい、楽しみにしています。山登りは楽しいですよ!」

 

「お手柔らかにね」

 

 

 

 




今回も読んでいただきありがとうございました。

自分が何か伝統の家系だったなんて聞いたら正直滅入りますね。歌舞伎とかそういう部類の方々は本当に凄いと思います。今の自分に何故か感謝しようかなんて考えました。

ついでにですがこの小説を投稿し始めてから1周年が経ちました。1年でこんなけかよ、的なことは自分がよく理解していますしめちゃくちゃわかりやすかったです。ペースを上げていけるよう頑張ります。

最後にあかり4さん、優しい傭兵さん、蒼瑪瑙さん、chobi9829さん、邪帝真眼さんお気に入り登録ありがとうございます。

引き続け感想なども募集しております。どんなことでも気軽に書いてみてください!
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