想いのカタチ   作:新茶

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なんと言いますかお久しぶりです。
新学期から私生活のほどが忙しく執筆時間を確保できないままズルズルとずれ込んでしまいました。ある程度は一旦落ち着いたため、どうにか投稿できました。
大変申し訳ございませんでした。


では、今回は紅葉狩りに行くところからですね。どうぞ。


第16話 晩秋の紅山に2人は映える

「たまにはこういう長閑な感じもいいよなぁ」

 

「都会から離れるというのも時には大切ですね」

俺と園田はローカルな電車にゆられつつ目的地まで移動している。今から山登りますよオーラ全開の格好とお前はにわか登山者か?と言われそうな格好。この対極図は頭を悩ませるものがあった。頭痛が痛い、その程度のことなのだけれど。

 

いやまさか7時集合とは思わなかったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どこ行く?』

 

『あまり知られて無さそうなスポットはないのでしょうか?』

 

『パパッと調べてみるわ』

これだけで場所は簡単に決まるかもしれない。調べてみれば結構出てくるもんだな。名前の聞いたことない山ばかりで少し心配だが。

 

『この山、良さそうだけど結構標高高いな』

適当にスクショしたものをURLと一緒に何回か貼り付け反応を伺っていた。

 

『いいじゃないですか』

 

「え?マジ?」と画面の前で言ってしまったのちに文字の訂正がないかをちゃんと確認した。ホームページには山頂までロープウェイで気軽に行けます!って書いているしこれのことか。

 

『ああ、ロープウェイ使うのね』

 

 

 

 

『え?山を楽しむんですから歩くに決まっているではありませんか』

 

『あーごめんごめん』

あ、これガチのやつだと確信した瞬間だった。別に俺も求めてない訳ではないけどまさか園田が山ガールタイプだとは思ってなかった。何度でもツッコまれただろう。なぜ海未が山と…?

 

しょうもない話は置いておくとして大体のことは決まった。あとは持ち物とか、向こうの方がスペシャリストだからなんでも聞いてみる、これがある意味間違いだった。

一覧を書き出してくれたのだが紅葉を見に行くのにこれほどまでに荷物が必要なのだろうか。

 

『そんなにいる?』

 

『要りますよ。まだ足りてないくらいです』

どれだけ荷物あるんだ…。青いキツネの異次元ポケット的なのがないと入らないだろ。

 

『今回は本格的にな山登りじゃないんだしテレビで見るあのストック?みたいなやつも多分いらないし』

 

『そうでしょうか』

 

『うん』

 

『…リュック1つで済むように検討します』

 

 

 

 

 

 

 

のはずだったのにそのリュック1つがめちゃくちゃデカい。俺の2倍から3倍くらい容量のあるものを持って来やがった…別に言ったことは破ってないし何も言わないけどさ。

 

「よく背負えるね」

 

「ええ、これくらいは必要最低限かなと」

なんだろう。よく芸能人とかである離婚の理由で価値観の違いみたいなことがうっすら分かった気がした。この程度のことではバッサリいくほどピリピリとした性格はしていない。

 

「よければ持つけど」

 

「いえ、いざという時に自分の持ち物が分からなければ意味がありませんから」

相変わらずどこまでも徹底してるなぁと思いながら窓の外を眺めていた。高層ビルなんてものは見当たらず、遠くにぼんやり高速道路が見える程度。電車の駆動音が心地よかった。

 

こうやって知らない土地に来た時に何か人や物で知っていることがあると安心するな。景色から目を逸らし隣に顔を向けるとゴムを手に通し髪を結う園田がありがたく思えた。

俺に気づいたのか少し顔を向け視線を向けてくれている。

 

「ありがとう、一緒に来てくれて」

 

「こちらこそありがとうございます。今日1日楽しみましょう」

 

「ああ、楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「写真よりも綺麗だな」

 

「これは当たりを引いたみたいですね」

指定の駅を降りると山の全貌が駅舎からすぐに見えた。山は暖色で染めており都会とは違った雰囲気だ。ホームページの写真と見比べても現実に見たほうが彩りも鮮やかにみえる。

 

入山届け?とか言うものをすらすらと書く。鉛筆を持ったなんていつぶりだろうか。懐かしさに触れながらも登山道に足を踏み入れた。

 

 

 

しばらくは木が生い茂りあまり紅葉の景色の感覚はなかった。まだ見せるのは早いと勿体ぶっているのか木は空を塞ぐようにしてその姿を大きく表していた。

しばらく登ればそのうち開けた場所に出るだろうとのんびり考えつつ幾分か前に舗装されたのかは知らないがぼろぼろになり始めている道を進む。

 

園田が前、俺が後ろで歩いているが荷物の差を感じさせない速度で歩いていく。

 

「そんなに飛ばして大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ。やはり空気が澄んでいて気持ちいいですね」

 

「ああ、少しひんやりとしているくらいがちょうどいいな」

いつも人間の繁栄を支えてくれていると思うと自然には頭が上がらない。鳥のさえずりも心地よく日頃の都会の騒音がいかにうるさく種類のあるものか知らされる。

今のところは遊歩道を通っていて、足元には紅葉の特有の整った形があちらこちらに広がっている。家にこういう絨毯欲しいかもと頭によぎったがすぐに合わないなとその考えを切り捨てて遅れないように足を動かすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかに険しくないか」

せっせと登って行くと舗装された道が姿を消し始め切り開かれたであろうところが無理やり道として脳内変換している気がする。

ゴツゴツとした岩肌が姿を見え始めていて、そこを器用に登っていく園田を景色の中の1つとして後ろを追いかけていた。

 

「これくらいならっ、平気です」

いつもとは違う一面を含んだ笑顔が俺の気力を増長させた。ニコニコとしながら周りを見渡していて園田の瞳は空気が澄んでいるからかいつもよりも美しく見える。瞳の景色の世界に吸い込まれてしまうのではないかと思うほどくっきりと映っている。

 

「何か顔についていますか?」

 

「なんでもないよ」

笑顔で首を振り岩場に立つ姿をまた見つめていた。

 

「そうですか」

 

「本当になんでもないから。ほら、先進まないのか?」

岩場をリズムよく登ってすぐに園田の隣に来る。

 

「全く、そんな登り方危ないですよ?」

 

「そうだな。気をつけるよ」

言葉を受け入れながらもこの気分は抑えられないでいている。悪く言えば口先だけってことだけど今は許してほしい。

こういった時間ってのは人間の感じ方的に早くなるものだ。ずっと続けばいいのにって思うほどに時間は早送りされているように感じる。気がつけば日も相当昇り、あと半日だぞと呟いているようにも見えた。

 

「あそこから景色見えるんじゃないですか?」

園田が指を指した場所は同じ位置に到着した時俺も同じ気持ちになった。

 

「え?ああ、空が広がってる…」

今まで紅葉で青色の空はあまり見えていない。その隙間から何が見えるのか、気になって仕方なかった。

 

「行きましょう!」

この景色が見たくて俺と園田は来たんだ。まだ頂上って訳ではないけれど足が自然と早くなった。

大きいリュックが小刻みに揺れながら進み続け、ついに林道から外に出た。

 

 

 

「…綺麗だ」

こんな景色いつ以来だろう。そして園田と見ているとは思ってもいなかった。

 

ここら辺の山は小規模ながらも紅葉が群生していて山から互いの山の景色を観れるようになっている。

今登っている山は口コミでは登山者が1番少ない。原因としては山の標高が高く登りづらいとか景色を紅葉で埋めることが出来ず他の山の新緑の色をした葉が混ざるからとは書いていた。あとは…ロープウェイの本数が少ないくらいかな。

まぁ本数云々以前に俺と園田は歩いている訳だがいいことはこちらにもあることを景色を見て理解した。

 

ロープウェイと違うところは自分が良いと思う景色に遭遇した時に立ち止まり好きなだけ景色を見れることだ。対称に見える山が燃えるように紅い。

ここまで登山者とは出会っていない。多分ロープウェイを使う人が大半なのだろう。この景色を共有できないというのも悲しい話だけど自分だけが得をした気分が高揚感がこの紅葉狩りの楽しさに拍車をかけていた。

 

「まだ途中ですからね?」

 

「分かってるよ、早く頂上が見たくなってきたな」

頂上の方へ身体を向けると1つの疑問が浮かんだ。

 

「ええ…あそこに見えるのはお寺?でしょうか?」

 

「あれか?」

確かに木が生い茂る中で明らかに加工された木材を使用した雰囲気の違う木造建築の建物が見えた。道端の表記などをみるにもう頂上までそこまで距離はないし、時間的にも昼食も取りたいところではある。

 

「気になるし行ってみようよ」

 

「このまま帰る気にはなれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

現在地よりも少し上の方に建物が見えたため見失わないようにしながら道なりに沿って登って行く。

徐々に姿を現していく建物はやはりお寺のようだ。だが、ネットで検索してもあまり良い結果は得られなかった。強いて言うならオカルトっぽいことぐらい。

 

「このお寺はなんなんだ」

 

「あまり話には上がっていませんもんね」

 

「だよなぁ…結構怪しい感じだし」

 

 

 

少しだけ道を逸れて進むとお寺は目と鼻の先にあった。なんとも古めかしい感じで夜に来ると妖怪が湧いてそうな怖さがある。

 

「これは…」

 

「ああ…ヤバめなやつだ」

本堂?に続くであろう木製の両開きの扉には鍵や封印らしきものが…

 

 

 

 

 

 

 

かかってない?

 

 

 

 

 

「まさか、人が住んでる?」

 

「やめてくださいよ」

俺と園田の距離は近くなっていた。彼女は無意識だろうけど俺の腕を掴んで隠れるようにしていた。

 

 

 

「ああーよいしょっと」

 

「ヒッ…」

更に背中に温もりを感じると同時に中から出てきたおじいさんと目が合ってしまった。

 

「ああ、どうもお邪魔してます」

 

「お客さんなんて珍しい」

最小限に開けた扉をゆっくりと閉めようとする時に中が箒とちりとり、バケツに雑巾を柱に固めて置いているのが見えた。

 

「珍しいんですか?」

園田は顔を恐る恐る俺の肩から出し小声で問いかける。

 

「最近ここらに寄る人も少なくなりましてね」

 

「…ロープウェイができたからですか?」

俺はおじいさんの感情が知りたかった。自分達の興味本位で深入りすればおじいさんを怒らせてしまうかもしれない。

怒っているというより不思議な感じのおじいさんの顔はなぜそれほどに興味があるのか訳が分からないと言っているようにみえる。

 

「はて、どうしてだったかな。あんな機械仕掛けのものができる以前に足を使って登る者が少なくなったからじゃないかの」

おじいさんは溜め息を出すことを拒否するように目を瞑った。

 

「ではなぜこの場所を掃除していたんですか?」

 

「…わしはただの通りがかりじゃ」

 

「嘘は言って欲しくないんですが」

 

「はぁ、こんな客人を迎える羽目になるとはな。もう一度言う、あんたら珍しいぞ」

おじいさんは呆れるように中へ戻ろうと背を向けた。

 

「まだ終わって…」

 

「飯は食ったのか?」

 

「…いえ食べていません」

 

「なら裏庭を利用するといい。わしはまだやることがあるのでな、少し失礼するよ」

手を伸ばしおじいさんの背中を捕まえようとしたがやめてその手は太ももに沿うように垂れた。

 

「使わせていただきます。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

「結局ここって大丈夫なんですか?」

 

「ああ、多分あのおじいさんがキッチリ管理してるから問題ないと思う。裏庭行って昼食取らせてもらおう」

寺の横の人1人通れるくらいの脇道をするすると抜けていく。草むらから生えこのスペースを侵食するであろう草木は見られない。適当に枝先を触れてみるとやはり剪定されている。

 

「和也さんが言っていた通りみたいですね」

俺が枝に触れているのを見た園田が確信したみたいで俺に問いかけた。

 

「あともう少しで分かる…あのおじいさんの残したい想いってのが…」

寺の角を曲がる。少し足取りは重くなったもののすぐに速度を取り戻し目を向けると

 

 

 

 

 

 

 

「すごい…」

 

「ああ…言葉にならないな」

縁側から左右の木々に対してクッキリと空いた中央部は奥の広大な景色をさらに映し出している。その景色から目が離れずゆっくりとした足取りで歩いていく。

縁側にはおじいさんが用意してくださったのだろう。縁側の一部に2人が座れるくらいの大きさの赤い布が敷いてあった。

 

「確かにこの景色を捨てるのは勿体無いな」

縁側に腰掛け荷物を下ろす。床に触れると掌にサラサラとした感触を感じる。

 

「ええ、私もそう思います」

 

「折角だし昼食食べようか」

2人ともリュックを漁り出すが荷物が多い園田に対してなぜか弁当を出すタイミングは一緒だった。

 

「お〜ぷん〜」

楽しげな気分が抜けないまま弁当の蓋を開ける。

今日は弁当を作ってくることになっていたため、蓋を開けて中身が楽しみなんてことはない。その代わりといってはなんだが相手の弁当が気になる。

 

「…彩り豊かだなぁ」

気になったから見てみた。やっぱり最近の女子高生ってこれくらいは作れるものなのかな。中身は勿論、バランや串に至る細部にまで拘られてる。うさぎさんカットのりんごってやっぱりかわいいなぁ。

 

「和也さんだって」

 

「うーんそうだなぁ」

やはり俺は細部にまで拘る気はない。バランは緑のガチの草っぽいやつでいいし、何かと爪楊枝も使い勝手がいい。弁当に可愛さを求めてないなら普通に完成形を迎えているはず。

 

「満足いってない顔しないでくださいよ。シンプルながらにいいお弁当でしょう、卵焼きいただきましたからね。美味しかったです」

言われて弁当箱に目を向けると卵焼きのスペースに空きができていた。ニコニコとした笑顔をこちらに向けしてやったりといった感じ。

 

「んな、いつの間に」

 

「ふふ、いつ食べても美味しいですね。和也さんの卵焼きは」

 

「俺もいただいたからな卵焼き」

 

「へ?」

俺は俺でやられたらやり返すタイプだ。でも、こういうのってやっぱりいつでも楽しいものだな。

 

「園田家の味付けって他の家と少し違う気がする。どこか落ち着く味なんだ。真似をして味付けしてみるけどいつもなんか上手いこといかないんだよなぁ」

 

「そうでしょうか?私からしてみれば和也さんの味付けが気になりますね」

 

「人の家の料理って新鮮だよな」

 

「ええ、また食べさせてくださいね」

 

「それくらいなら全然いつでも」

 

「じゃあ明日に」

 

「明日?ふっ、別にいいけど」

 

「今なんで笑ったんですか!」

 

「別になんもないって。下りのこともあるんだしさっさと食べちゃおうぜ」

ただただその瞬間が楽しくて笑みが零れた。僅かにレンズが曇った気がする。視界が軽くぼやけたのは本当に今を楽しめている証だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おじいさんに挨拶をしてこの隠れた桜の絶景を後にした。最後の最後までおじいさんは俺と園田を不思議な目で見ていたが最初とは違って顔の表情は少し明るかった。

 

 

 

 

「人が多くなってきたな。登山道ではまともに見かけなかったのに」

ロープウェイの駆動音が徐々に聞こえ始め、麓の駅は見えなくなった。もう100mほど登れば頂上だろう。

 

「こちらの道は本当に人を見かけませんでしたね」

 

「ああ、おじいさんの言うこともよく分かる」

やはり時代には逆らえない…か。隣にいる山好きに聞いてみれば多分『自分で登らない山なんてそんなの山登りじゃありません』なんて返ってきそう。俺はどっちでもいいんだけどな、良さはどちらにもあるし。

 

「あー綺麗だな、うん」

正直この風景に見慣れてしまった自分がいる。あのお寺の方がなぁとか思ってしまう。

 

「さっきの方が落ち着きますね」

 

「園田もそう思うか?」

 

「あそこは静かでしたから…ゆっくりと過ごせました」

 

「…どうかしたか?」

風で揺れる草木だけが騒めくあの静かな空間がやはり1番しっくりきた。一瞬園田の不自然な言葉の引っ掛かりを覚えた気がしたが多分気がしただけ。

 

「いえ、なんでもありません。少し写真を撮って下りますか」

 

「あまり遅くならないうちにな」

 

「前のキャンプみたくはならないので安心してください」

ああ、そういうこともあったな。あの時は最初こそ焦ったが途中からは楽しかったし結果オーライな気もする。

 

「ん、俺もそうしてほしい」

しかし、もう一度体験したいかと言われると口は開かないだろう。

 

「貴方達は今ロープウェイできたの?」

 

「ん?あ、いえ、歩いて登って来ました」

 

「やっぱりそうね、乗り場なんかで見かけなかったもの」

つばの広い帽子を被った如何にもなマダムに声をかけられ、咄嗟に返事をするが最後、完全にマダムペースで話が進む。

 

「それがどうかしたのですか?」

 

「特に意味があるとかじゃないの。でも、登ってきたのなら古ぼけたお寺を見かけたかしら」

…?先程の名所のお寺は古ぼけたといった程ではなかった。かといって他に見かけた覚えもないし…。

園田と顔を合わせるも首を横に振って返すだけだった。

 

「途中で1箇所お寺を見ましたが古ぼけたお寺という程ではありませんでした。整備も行き届いていて綺麗でしたし」

 

「あー…そう?ならいいわ。私の勘違いみたい」

 

「な、何かあるんですか?」

 

「本当に寂れていなかったのね?」

『本当に』という言葉がなぜか心をかき混ぜるような不安にさせるような気持ちにさせた。

 

「…ああ、管理をしているであろう人にも会った」

 

「そう…私も若い頃は毎年のようにこの山を登っていてね、最近は歳のせいもあってロープウェイ通いになっているけれど、若い頃に立ち寄ったお寺の景色が絶景だったの」

そう言って近くの木を撫でながら話を続ける。

 

「この子ももっと小さかったのにね、私は衰えていくばかり。

それで1年前に息子に数年行けていなかったお寺の様子を見に行ってもらったんだけれどボロボロで寂れていたって聞いたのよ。だから1年経った今に登ってきた人に声をかけているの」

 

「どんな様子だったかを聞くため…」

マダムが話す延長線上の言葉を被せる。1つの疑念が浮かぶのは必然なはず。

 

「ええ、でもあなた達は今何か迷いが生じ始めた」

 

「…ッ!、よくお分かりですね」

 

「和也さん、確かめに行きませんか」

 

「ああ、どのような姿だったか話すのは1年後になると思うが」

 

「そうね…話すまでもない気もするけど」

 

「何か仰りましたか?」

 

「いえ、また1年後に会いましょう。お邪魔しました。デートのほど楽しんでくださいね」

 

「残念ながらデートでは…。わざわざお声がけいただきありがとうございました」

 

「失礼します」

 

 

 

 

 

「さて、行くか」

 

「…はい」

 

「怖いか?」

俺もそうだが嫌なことばかりが脳を過ぎる。突っかかりが取れない。

 

「そう、ですね」

 

「行って見なければ何も分からない。日の入りまでに山を降りるためにも少し急ごう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジか」

 

「…嘘、ですよね」

午前に訪れた時とは全てが違っていた。どこもかしこもが荒れていて草が生い茂っている。お寺はところどころ木がボロボロと腐食している部分もある。人が住んでいるとはとても思えない。

 

「少し行ってみるか、裏庭」

『あの景色』はどうなったのか、現実を見たい。この様相を突きつけられて俺は無意識に何が『本当』なのかわからなくなった。

真実はどこにあるのか、マダムの発言から『あの景色』は予想できてしまう。

 

本当だった。

 

 

 

本当…だった。

 

 

 

 

 

 

「俺の後に付いて来るなら来てくれ」

 

「はい、私も決心がつきました」

お寺の脇道の草むらを分けながら進んで行く。そこまで生い茂っているわけではないがやはり管理されている状態じゃないのは確実だ。

 

俺はどう声をかければ良いのか分からず2人とも無言で何か察したかのように進む。

午前と同じように角を曲がるとそこは一層草むらが生い茂っていた。

 

「やっぱりか」

 

「私たちは…」

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ちゃんと来たらしい」

縁側には赤い布が敷かれていた。しかも、この空間から切り離されていたように真新しい状態で。

 

「この布…」

 

「はぁ、俺もよく分からなくなってきた。あのマダムが言ってたことが正しかったのは事実だ」

 

「何を思ったんでしょうねあの方は…」

 

「さぁな、俺たちが分かることじゃない。少し急がないと日が暮れそうだ」

あと1年後にまた機会があるかもしれない。その時までこの想いは閉まっておくことにした。

 

「また、来れますか?」

 

「ああ、俺達が望むならな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝とは違う沿線の景色を見ながら電車が揺れる。乗っている人はあまりおらずほぼ貸し切りのような状態だ。そんな中聞こえるのは電車の駆動音だけだった。

 

何かを話すこともなく、ただ目を閉じる訳でもなく時間が過ぎていくばかりでその空間は普段1人で生活しているとは思えないほど息苦しい。

ふとした瞬間に横から身体に圧力がかかる。

 

「…寝たのか、そっとしておこう」

肩をなるべく動かさず身体を捩り楽な体勢にもっていく。彼女の制汗剤の匂いがうっすらとして眠くなってきた。

 

電車の揺れが徐々に心地の良いものに変わっていき、疲労感からか瞼が重くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、おじいさん」

 

 

 

そう思いふと山の方が気になったがただ山は遠ざかり流れていくだけだった。

 




今回も読んでいただきありがとうございました。
謎が謎を呼ぶこの低クォリティ的な何かをよく分からない方向に持っていってしまったのは正直困っていますがどうにかします。(笑)
時間があるうちに書き溜めたいところですが書きたいこともまだ決まっておらず普通に時間がかかると思われます。気長に待っていただけると幸いです。




最後にみーとさん、ツナマヨ大佐さん、宇治末千さんお気に入り登録ありがとうございます。



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