大きな丸いテーブルのたくさんの席でたった2人?の骨と粘液が会話をしている。
いや、最初は微妙なぎこちの無い会話だったのだが、途中から粘液の側が一方的に愚痴を流しだし骨はそれを聞く方に回りだした。
しばらくの時間が経ち粘液の声が落ち着いたものに変わる。
「あちゃー申し訳ないです。なにやってるんだろ俺、初対面の方に愚痴なんか聞かせちゃって。」
「気になさらないでください、ヘロヘロ様。ギルドメンバーの方のお話を聞くのはギルドマスターとしての当然の役目です。」
「・・・・・・様付けは落ち書かないですね。モモンガさんの顔で言われると。」
「おおっと、失礼しましたヘロヘロさん、ですが最後の日にギルドマスターっぽいことができたのはモモンガさん的にもきっと嬉しいことだと思いますよ。本当にありがとうございます。」
粘液の声が少し感情がこもったものに変わる。
「ああ、モモンガさんならそう言ってくれそうですね。あの人はホントにいいギルド長でしたから・・・・・・」
「はい、私もそう思います。」
「・・・・・・あっ。」
粘液の体が微妙にぐにゃりと傾く
「どうかされましたか?」
「すいません、モモンガさんの為にも最後までと思ってたんですけど体がちょっと・・・・・・」
「そうですか。残念ですが無理をして頂いてヘロヘロさんに体調を崩されたりしたら余計にモモンガさんに申し訳ないです。すぐにログアウトしてゆっくり休んでください。」
「・・・・・・貴方はこの後はどうされるんですか?」
骨は少し考え込むようなポーズを取る。
「えーと、私はえーと、『極悪にして偉大なるギルド≪アインズ・ウール・ゴウン≫の長、モモンガとしてユグドラシル終焉の刻を玉座の間にて迎える。』のが役目です。」
「そうですか、それではモモンガさんをよろしくお願いします。」
「はい、本日は『来ていただいて本当にありがとうございました。』」
「『モモンガさんがギルド長で本当に良かったです。ありがとうございました。』」
骨と粘液が互いに頭を下げ合い、そして粘液が掻き消える。
・・・・・・
粘液=ヘロヘロの掻き消えた後の空間に向けて、骨=モモンガが語り掛ける。
「『今日がサービス終了の日ですし、せっかくですから最後まで残っていかれませんか』」
当然ながらその声に反応するものは無く、モモンガは続けて独り言をつぶやく
「あれだけ疲れてる人にはちょっと言えないよなー。たとえ依頼人の台詞でもなー」
ヘロヘロ氏が非常に疲れているのは画面越しで初対面だった今のモモンガ(の中の人)にすら理解できた。
表情の動かないユグドラシルのゲーム内でも会話内容や声でそういったものを感じ取ることはできるのだ。
「初対面にも関わらずアレだけ愚痴を延々と話すってことはメンタル的にもかなり疲労キテるっぽいし」
ただ初対面といえども外見上はヘロヘロの長年のゲーム仲間であるモモンガのものと同一であるから、そこに釣られて(さらに極度の疲労もあって)本物のモモンガに対するようについつい愚痴をこぼしてしまったという面はあるかもしれない。
「まぁたぶん本物のモモンガさんがギルメンの話の聞き上手で人望のある人だったって事だろうなー」
・・・・・・・
そう現在のモモンガは本物では無い。
いやプレイヤーキャラクターとしては紛れもなく本物ではあるのだが
元々の中の人である鈴木悟は既に死亡しており、今の中の人は別人となっているのだ。
このまともなゲームなら絶対にあり得ない異常な処理がなされているのは
ユグドラシルにある≪ワールドアイテム≫というユグドラシル独特の極めて特殊なシステムによる。
現在から半年前にユグドラシルのサービス終了予告がされた時に当時余命3か月の宣告を受けていた鈴木悟が運営にお願いができるタイプのワールドアイテムを使用して願ったのだ。
『たとえ自分が死亡してもアインズ・ウール・ゴウンのモモンガにはユグドラシルの最期を見届けさせたい。』と
これがユグドラシル運営に認められユグドラシル世界のサービス終了までの3か月間
本物の中の人がいなくなったモモンガは中の人を交代して存在することとなった。
・・・・・・・
「さて、では最後の仕事へと向かいますかー」
現在のモモンガの中の人の雇い主、今は亡き鈴木悟氏の最後の要望はサービス終了の刻をギルドメンバーと一緒に玉座の間で迎えることだった。
最後のギルドメンバーであったヘロヘロ氏がログアウトした以上、残念ながらギルドメンバーと一緒にという部分の要望には応えれないがそれでも可能な部分の要望に応える為に玉座の間へと向かおうと円卓の部屋を後にー
「おっと、そのまえに」
部屋を出る直前にモモンガは足を止めて向きを変える
そして鈴木悟が遺したメモをコンソールから呼び出しそれに従い装備を付け替える。
それは最高の悪のギルド長の最期の姿に相応しい衣装として鈴木悟が選んだものだ
「あとはコレかな?」
円卓の間に飾ってある、ギルド武器というらしい杖を手に取る。
これは鈴木悟のメモには無いがヘロヘロ氏の前に来たギルドメンバーに「モモンガとして玉座の間に行くなら是非とも持っていって欲しい」と言われたものだ。『もしギルドメンバーからなにか要望があれば出来るだけ応じてほしい』という鈴木悟の言葉を思い出しこれも装備する。
「ずいぶんと禍々s・いやぁスゴイ杖だな・・・・・・」
あまりユグドラシルに詳しくないモモンガでも普通の武器とは全く別物であると判る杖
少々いやかなり不気味でなんか呪われそうでやはり外すべきかとも思ったが、よく考えてみれば
このモモンガも禍々しい骨の異形種、化け物であり化け物たちの長でもある。お似合いだなと思い直し
そして今度こそモモンガは円卓の部屋を後にした。