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「0・・・・・・あれ?」
数を数え間違えたのかとをも思いモモンガはチラリと時計を確認する。
00:00:12
時間は確かに0時を過ぎている。まぁ何らかの事情で2,3分ほどズレるということは十分にあり得るだろう
鈴木悟氏のメモに書かれていた『極悪にして偉大なるギルド≪アインズ・ウール・ゴウン≫の長、モモンガとして相応しい姿勢』を維持しながら終焉を待つことにする。
・・・・・・
再び時計を確認する。
00:07:17
「運営の人も忙しいのかなー」
モモンガを引き継いでからの3か月の間にこういったトラブルに遭遇したことは無い。
ただこう言ったゲームのサービス開始初期や大型アップデートの直後にバグ、トラブルがよく起きることは聞いたことがあり、これは仕方がない事なのかもしれない。
運営に対する異常報告や抗議はユグドラシルに慣れた他のプレイヤー達が行うだろうと判断し、モモンガは再び『極悪にして偉大なるギルド≪アインズ・ウール・ゴウン≫の長、モモンガとして相応しい姿勢』を維持し続けることに集中することにした。
・・・・・・
再び時計を確認する。
00:33:41
「これは、さすがに・・・・・・」
サービス終了の日を間違えたかとも思ったが、すぐに否定する。何度も確認をしたはずだ。
鈴木悟氏のメモをもう1度見直す。確かにサービス終了時にはサーバーダウンで強制排出されると記されている。
やはり自分で運営に確認をしようとユグラドシルのヘルプを起動するためにコンソールを操作しようとしてー
「あれ?」
コンソールが浮かび出てこない。トラブルは予想よりも深刻なものかもしれない。
最終手段としてのコンソールを使わない強制終了、通称回線ブッチを使用しようとしてそこで思いとどまる。
・もし強制終了している間にユグドラシルのサービス終了してしまったら?
0時までいたという事、時間通りに終わらないのはユグドラシルの運営の責任である事、
それに依頼人は既に死亡している事から怒られたり、訴えられたりすることは無いであろう。
なにより自分にはユグドラシルというゲームへの愛も執着も全く無いのだから留まる義務はないはずだ。
しかし受け取った相場よりも多めの報酬に対しては義理を示すべきという思いもある。
「と言うかあの人ユグドラシルの最期を確実に見届けないと化けて出てきそうだもんなーモモンガさんの姿で」
依頼を受ける時に当然ながら鈴木悟氏とは連絡を取り合っているのだが、温和な常識人であるという印象とともに
滲み出る明確な狂気、異常なユグドラシルへの執着をも強く感じ取れていた。
「明日というか今日は予定もないし体力が続くまではつきあいますかー」
口を動かしながら大き目の独り言をいい、例の姿勢を続行する。
・・・・・・
再び時計を確認する。
03:49:01
「ん?疲れも眠気も感じなかったから気が付かなかったがもうこんな時間か・・・・・・」
相変わらず世界は終わらず、コンソールは呼び出せず、運営からのアナウンスもない。
「そろそろ脳内ナノマシーンの補充メッセージが出るころだな。」
メッセージが出たらそれでログアウトだ。たとえ本物のモモンガであってもナノマシン不足の強制排出には抵抗できない。つまりモモンガとしての役目を完璧に果たしたと胸を張っていえるだろう。
「というわけで、化けて出ないでくださいよモモンガさん・・・・・・」
・・・・・・
再び時計を確認する。
04:03:12
「おかしい・・・」
補充メッセージが出ない。これは自分の体内の問題であるから、たとえユグドラシルのゲームでどれほどの未曽有のバグ、エラー、トラブルが出ても関係なく届くはずだ。
「まずいっ!!!」
モモンガは大きく口を動かして絶叫する。
ようやく気が付いた。これはユグドラシルのゲーム内だけで収まっているトラブルではない。おそらくは自分の、自宅のコンピュータまでが巻き込まれているのだ!いや自分の体までもだ!
「やばいっ!やばいっ!!やばすぎるぅっ!!!」
なぜか冷静な、冷静だと感じる精神状態で急ぎながらも的確に強制終了の操作を行おうとする。
ーしかし一切の反応が無い
脳内ナノマシーンが無い状態で無理やりログインし続ければ絶対に脳が持たないはずだ。
脳が限界を迎えるまでに助けが無ければ当然死ぬだろう、いや助けが来るタイミング次第ではむしろ死んだ方が良い状態になるかもしれない。
モモンガは必死にそれでいて冷静に自分の知っているあらゆる操作を実行しようとし始めた・・・
・・・・・・
ふと時計が目に入る。
04:16:55
「・・・・・・どういうことだ?」
なぜかパニック状態にならない自分は意外とスゴイ人間なのかもしれない。
など的外れなことをと思いつつ、状況は絶望的だということを理解する。なにしろログアウトの為の操作を行うこと自体ができないのである。
こうしている間にもタイムリミットは近づいている。
「・・・・・・どーするんだこれ?」
モモンガは一人で呟く、そう一人のはずだった。
ーそこに、
「どうかなさいましたか?至高のお方?」
聞こえるはずのない女性の声。それは玉座の横に立つ『ちなみにビッチである。』いや確かアルベドだったか?のものであった。