モモンガが声の来た方向に視線を向けると
そこには跪いた姿勢でこちらを見上げるアルベドがいた。
「あっハイ、うむ、ログアウトができないようだ」
素の話し方で途中で止め、モモンガとしてふさわしいだろう話し方に変える。
そんな細かいことに拘っていられるような状況ではないがー
「・・・・・・ログアウトといわれますと至高の方々がここをお離れになる行いの事で御座いますね。」
返答をするアルベドに驚きでモモンガの口が大きく開く
「・・・・・・申し訳ございません、無能な私では至高のお方がログアウトできないという状況に対し対処することができません。」
と、そこでアルベドが自身の服に手をかける
「代わりに、この無能な私の体を使って頂くことで至高の方のお役に立てない失態を僅かなりともお許しいただけるのであれば、これに勝る喜びはございません。どうぞ至高のお方のー」
「いや、それは不要だ。服を脱ぐのを止めろ。そしてしばらく黙ってろ。」
突然、服を脱ぎだしたアルベドを慌てて冷静に止める。
また慌ててたはずなのに急に冷静さを取り戻した自分自身に奇妙さを感じつつもモモンガは自身の尖った顎に手を当て考える人の姿勢を取りながら今のアルベドの行動の意味の分析を開始する。
・・・・・・
1:プレイヤーとNPCの間に会話のようなものが成立した。
どれだけ複雑なプログラムを組めばそんな事が可能なのか?
2:アルベドが喋るときに口が動いた。
プレイヤーであるモモンガですらそんなギミックは付いていない。
3:アルベドが18禁的な行動をとろうとした。
ユグドラシルでは18禁的な行動は禁止である。
・・・・・・
「課金か?課金なのか?」
思わず呟く。ユグドラシルでは課金すればそこまでできるのか?鈴木悟氏は一体いくら課金したのだ?
そして先ほど見てしまった膨大なアルベドの設定テキストとその最後に書かれた『ちなみにビッチである。』の文字を思い出す。
前モモンガの恐るべきユグドラシルとNPCへの執着と拘りと変態性に恐怖を超え、感動すら覚え始めたモモンガは、また1つの事に気が付いた。自分が呟いた時に顎に当てた手が振動を感じたのだ。
「えっ、口が動いて・・・る?」
今度は口に手を当てて呟く。間違いなくモモンガ自身の口が動いていることを確認する。
さらなる異常事態にとうとうモモンガは自身の思考の放棄を望み始めるが、なぜかそれはできない。
・・・・・・・
長い時間が過ぎた・・・・・・
考えて考えた結果として、あり得るだろう可能性は2つ
脳内ナノマシーン不足に耐え切れなくなった自身の脳が崩壊し始め、完全に狂ってしまった可能性
そして実際にゲームの世界が現実の世界となったという全く、全くの馬鹿げた可能性
「いや、どちらも同じ事か」
世界が狂おうがモモンガが狂おうがモモンガ自身にとっては全く同じことかもしれない。
「鈴木悟の、モモンガの願いは叶ったのかもしれない。」
ログアウトが不可能となったモモンガは中の人が脳死しようがどうしようがユグドラシルに、アインズ・ウール・ゴウンに残るだろう。
最初の内は普通の青年だと感じた鈴木悟の言葉を思いだし、口にする。
「モモンガはアインズ・ウール・ゴウンを守護る。」
「モモンガはアインズ・ウール・ゴウンを最後まで守護る。」
「モモンガはアインズ・ウール・ゴウンを最後まで守護らなければならない。」
「モモンガは死んでもアインズ・ウール・ゴウンを最後まで守護らなければならない。」
「モモンガが消えるのはアインズ・ウール・ゴウンが消える時である。」
「アインズ・ウール・ゴウンが消える時にモモンガは必ずそこに居なければならない。」
聞いた時は全力でドン引きした台詞だったが、さらにドン引きするのはこの誓いの台詞が実際に実現しつつあるという現実である。
・・・・・・もしかしたらあれは誓いの台詞ではなく呪いの台詞だったのかもしれない。
念のためタグにR-15追加しました。