キャラの口調って難しいね。
「やっぱりカルデア学園シリーズは外れがないな」
カルデア学園。俺が親友であるロマニから貸してもらっているPCゲームであり、いわゆる学園物のエロゲである。
たぶんタイトルは適当にカルデアというこの施設名からとったんだろう。だがその内容は驚くほどの良作ぶりで、今回やっているのですでに3作続いている。
ただし作ったのはカルデアの職員だ。何やってんだ仕事しろ、と自分を棚に上げてよく思っていた頃が懐かしい。今ではすっかりお世話になっている。当然R-18指定である。
カルデア学園は確かに学園ものなのだが、その特徴は攻略対象が全てサーヴァントなのである。
女性サーヴァントは(ごく一部を除いて)俺の目から見ても魅力的な者が多い。乳上とかもうたまらんよねあの魅惑の果実、明らかに騎士王より大きいし。
そんな訳でかなりの時間ぶっ続けでゲームに勤しんでいる。
ちなみに現在攻略しているのは
「こんなところで……ダメですよ、マスター」
恐らく一度は名を聞いたことがあるであろうフランスの聖女ジャンヌ・ダルクである。
彼女は特に俺のストライクゾーンど真ん中な英霊だ。
あの豊満な果実にむっちりとした太ももはさることながら安産型であろう魅惑のヒップ。綺麗で長い金髪も特徴の1つだが、何より異性を虜にするのはあの物腰と笑顔だろう。
英霊でありながら謙虚な姿勢を保ちつつ、落ち着いた雰囲気で物事にあたる。
俺自身彼女とよく話をしたり行動を共にすることがあるがまさに聖女といって差し支えないと常日頃から思わされている。
一緒にいられるなら現実でもいいじゃないかって?オカズにできないだろうが。
そんな訳で理想形ともいえる聖女様で俺はまさに絶頂を迎えようとしていた。
絶頂間際であるという高揚感に加え、日頃親しくしている女性で抜くという罪悪感や背徳感も湧き上がってくるがそれも今はスパイスにしかならない。
現時点で俺はただのモンキーに成り下がっていた。まぁ進化論では人類は猿から進化したらしいから多少はね。
体の奥底から湧き上がってくる衝動にいよいよ我慢の限界が訪れる。
後は身を任せるだけ、それだけで賢者へとランクアップすることができるのだから。
「あ、あぁ……イっ……イっ…」
「『吼え立てよ、我が憤怒』!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 燃えるぅぅぅぅぅぅぅ!?」
その日、俺は人生で初めて燃えカスになるところだった。
「……て感じなんだけど。アルトリア、おかしいとは思わないか?」
「それは貴方の頭の話ですか? それとも貴方という存在そのものの話ですか?」
「違うわ!? いきなり毒を吐くのは止めろぉ! というかお前今さらっと俺の存在全否定しやがったな!!」
マイルームが一瞬の内に全焼し尽くしてしまった事をマスターである友人に報告した後、カルデア内の食堂で友人その2であるアルトリア・ペンドラゴンに部屋やもろもろが全て燃えたことを伝えた。報告の際友人の頬が引き攣っていたような気がしなくもないが、気にしないことにした。
当然アルトリアは慰めてくれるだろうと思っていたのだが、話を聞き終わるなり彼女は可哀想なものを見るような目で俺を見て、呆れたと言わんばかりに俺を責め立てた。
これがかの有名なアーサー王本人であると考えると泣けてくるのだが、本人はどこ吹く風といわんばかりに目の前の茶を啜り、おやつであろう大判焼きを頬張っている。俺にもどうぞと言って渡してくれる辺り、まだ見捨てられてはいないのだろう。かなり危ういが。
「いやさぁ……俺が悪いのは分かってるんだよ。オルタと同室なのをすっかり忘れて3日に一度の行為に耽ってしまったのも俺だし、そんな物を持ち込んだのも俺だ。さすがにオルタに責任を擦り付けるつもりは毛頭ない」
「そこまで自分の中で整理できているのなら何がそんなに不満なのですか?」
「前振りもなしに宝具展開するのはさすがにおかしくない? おかげで熱に焼かれる苦しみと快感で絶頂しちゃったんだけど。全くその気はないのに新たな扉を抉じ開けかけたんですけど」
「誰もあなたの性事情など聞いていません。そもそも原因を作った貴方が言える事ではないのでは?」
「そりゃそうだけどさぁ……」
厳しい指摘だが正論なので言い返せない。
しかしアルトリアよ、もう少しオブラートに包んでくれてもいいんじゃない? さっきまで丸焼きにされて死地から舞い戻った戦友に対して少々冷たすぎるのでは?
などと思ってはみたもののどう考えても今回は自業自得。さすがに口には出せなかった。
ただなんだかんだ言いつつ言葉の途中から苦笑を浮かべてくれる彼女はまだ優しい方だ。
これが英雄王ならうるさい笑い声で罵倒され続けていたことは想像に難くない。そしてまた誰かが仲裁に入るまで殴り合いのリアルファイトが繰り広げられるのだろう。
「いずれにせよ彼女には謝った方が良いと思います。宝具を使用するまで激怒したのは何か理由があったのでしょう。彼女は見かけに違わず繊細なようですから。一体何をしていたのです?」
「エロゲやってたのバレました」
「貴方が想像以上に愚かだということはよく分かりましたが今は置いておきます。それで、今回はいつもと何か変わったことはしていたのですか? あぁ、先に言っておきますが私の嫌うようなことは口には出さないでください。貴方もまだエクスカリバられたくはないでしょう?」
「何それカッコいい」
ちょっと見たいかも、とは思ったものの身の危険を感じた俺は咄嗟に言いかけていた言葉を飲み込む。ただでさえ丸焼きにされたというのに、対城宝具までくらえばさすがにヤバい。
ただ……変わったこと…ねぇ。特に今回もいつも通り俺がアホして見つかってやられただけなんだけど。
「確かその時はカルデア学園3やってた」
ちなみにカルデア学園はサーヴァント達にもその存在は知れ渡っている。たぶん何人かは隠れてやっているんじゃなかろうか。
「またそのような頭の悪いものを……いい加減そのような類は」
「あれ企画したのお前のとこのマーリンだぞ」
「とりあえず彼は後でエクスカリバります。報告感謝します」
まぁ身内の人間(?)が大本と聞けばそうなるか、と割とどうでもいいことを考えながら俺は知り合いのネカマを売りとばした。だってあいつちょっかいばっかかけてくるんだもん。しょうがないね。
「と言ってもなぁ。対象がジャンヌだったぐらいで変わったことは……何だよ、その目は」
「どう考えてもそれが答えでしょう」
はぁっ、と大げさなリアクションでアルトリアに溜め息をつかれてしまった。
ジャンヌが理由……あー、分かった。何となく分かった。つまりあいつは
「ジャンヌに嫉妬したのか。ゲームなのに」
「十中八九そうでしょうね」
「お前十中八九とか難しい言葉よく知ってたなって待て待て待て、その構えたエクスカリバーをそのまま下してくれ。悪かったから。俺が悪かったから、また今度なんか奢るから!! エクスカリバーは止めろぉぉぉぉぉぉ!」
なんとか命拾いをしたが代わりに財布の中身が死んだ。決して安くない代償である。
とはいえ、オルタが嫉妬していたと分かった以上やはり仲直りするしかないだろう。
しかし、オルタが嫉妬……嫉妬かぁ………
「正直知ってた定期」
「分かってるのなら止めてください」
再びアルトリアが呆れ顔になる。
「私もよく貴方の事を聞かれたりしますし、時々威嚇するような視線を向けられることもあります。私は貴方以上に気軽に話せる異性はいませんから自然と貴方といる時間が増えるわけですが、どうも彼女曰く「アンタ達、ちょっと距離が近すぎるんじゃない?」とのことらしいです。そのような関係ではないと説明はしているのですが、今でも時々言われることはあります」
「やだ……うちのオルタ、可愛すぎ……」
「ある意味蚊帳の外である貴方に私はたまに殺意が湧くのですが」
「それは俺に言ったってどうしようもないだろ。甘えたいってオーラ出してる時は極力構ってるし、今だって無理言ってルームシェアしてるんだから。お前知らないだろうがルームシェアしてるのバレた後かなり黒ひげに付きまとわれたんだからな。おまけにブリュンヒルデにも一時追い掛け回されてたし。さすがにキレてアンメアコンビに売り渡したけど」
ヤツのしつこさは相当なものだった。
おまけにブリュンヒルデとかいう実質バーサーカー枠のランサーに事あるごとに追い掛け回されたあの日々は今でも忘れられない。ひどい時には風呂に入っている時まで突撃されたものだ。その後オルタにかなり怒られてそれ以来は襲われてはいないが、それでも時々鋭い視線を送ってくる辺り安心はできなさそうだ。
それを聞いたアルトリアも微妙な表情になった。
彼女も何度か(黒ひげの)被害にあっているせいか、追及はしてこなかった。ブリュンヒルデ? ないんじゃないかな。
「と、とにかく! 話し合って仲直りするしかないでしょう。……彼女も待っているようですし」
と、視線で俺の背後に目を向けるよう促してくる。
その先にいたのはやはりというかなんとうか、オルタことジャンヌ・オルタであった。先程は俺が燃やされてもがいている間にどこかへ行ってしまったようだが、多分他のサーヴァントのところに行っていたのだろう。
オルタはどこか気まずそうな表情で壁に身を隠してこちらの様子を伺って……いたかと思えば視線に気付いて身を隠してしまった。お前は野生のポ○モンか何かか。
ただこのような場合こちらから話しかけなければどうにもならないこともすでに経験済みなため、アルトリアに一言断りを入れながら席を立つ。彼女は彼女でまだ腹が膨れないのか追加で何やら注文しに行った。
その細い体のどこにそれだけの量が入るんだ。さっき喋りながらずっと食ってただろう。
「そんな陰に隠れなくてもいいだろ」
そう声をかけたのだが、どうやらまだ機嫌が悪いらしい。
死角になっている壁から顔は出してくれたものの、上目遣いで睨まれてしまった。身長差があるのでどうしてもそうなるのだが、それが余計に不機嫌さに拍車をかけているように感じた。
まぁ可愛いだけで怖くはないが。
「ふんっ、またアイツと話なんかして。アンタはそんなにアイツが好きなのかしら。そんなにあの青いのが好きなら円卓の騎士にでもなったらどう? 何回か誘われてるんでしょう」
「いやいやいや。俺は騎士には向いてないし、アルトリアとは対等なつもりなんだが」
案の上拗ねている。
槍ニキやキャスニキ辺りに相談した方が良かったかな、今回は。
「オルタだって俺とアルトリアがそんな関係じゃないのは知っているだろう。あいつとの付き合いはここの中でもかなり長いこともな。……別に心配しなくても」
「……だって、アンタはなんだかんだいって大体のサーヴァントとは仲良くなってるじゃない。あの聖女様ともよくいるようだし」
結局そこかよ! ホント絵に書いたようなツンデレだな。
ただ原因の元が俺である以上、どうにかしなければならない。
……仕方ない、アラフィフ直伝の小粋なジョークでも実践してみようか。
真剣な表情でオルタの顔を見る。向こうも何か感じ取ったらしい、視線を彷徨わせながらもこちらを見てくれた。
「……オルタ」
「……何よ」
「お前の気持ちはよく伝わったし気に入った。ルームで生セ○クスしていいぞ」
この日、俺は宙を舞った。
「………何があったか聞いてもいいですか?」
「ただ宙を舞っただけです。……今晩泊めてくれない?」
「それは構いませんが……彼女には知られないでください」
「おうともよ」
案の上バレて大変なことになった、まる。
<登場人物>
主人公:名前はある。色々とおかしい。多分異世界から来た。
とある事情でジャンヌ・オルタは恋人ではない。
ジャンヌ・オルタ:ヒロイン。乙女思考で寂しがり屋。
主人公の恋人ではないが実質嫁である。
アルトリア:主人公とは親しく対等な友人関係。
ただ初めから仲が良かった訳ではなく、むしろ険悪だった。
主人公を円卓に誘ったのは彼女ではなく、円卓の騎士達である。