バカとテストとお月様   作:酉野笹実

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英霊召喚システム始動

サーヴァントアシスト

 

 

それが実施されたのはテスト後間もなくだった。

 

 

「いいか、今からムーンセルシステムを起動のもと、サーヴァントアシストができるか、確認する。各自、MPの数字は把握しているな?」

 

鉄人の声にFクラスはやる気のない返事を返す。元気が無いところを見るとメンタル面でもダーティさが浮き彫りになり、低い数値を弾き出した者がほとんどだろう。

 

 

MPとはmental pointの略で、MPが高いと強い一撃必殺技をもつサーヴァントを召喚できる。

 

サーヴァントの種類は七種類。

 

・剣兵(セイバー)

・弓兵(アーチャー)

・騎兵(ライダー)

・槍兵(ランサー)

・狂戦士(バーサーカー)

・暗殺者(アサシン)

・魔術師(キャスター)

 

このいずれかのサーヴァントの召喚ができる。

 

これをサーヴァントアシストという。

 

 

ただし、召喚ポイントが低くければ召喚するサーヴァントも弱い。

 

サーヴァントは、一人一人、独自人格AIをもち、メンタルが下がると命令を聞かない場合がある。それに対して召喚者は礼呪という、契約したサーヴァントを三回命令する権限があたえられている。

 

 サーヴァントを召喚可能にしたムーンセルシステムの開発者曰く、AI開発もう平行して行っているということだが、怪しいことこの上ない。

 

 MPの数値基準は、その人間の倫理、道徳、社交性、思考力を基準としており、一応プライバシーにあたるため、メンタル数値は本人にしか表示されない。

 

鉄人曰く通常の人間のメンタル数値はムーンセル基準だと300~500が平均だという。

 

 

(…僕のこれってバグなのかな?)

 

 

【2年 Fクラス 吉井明久】

 

・ mental point 7000p

 

 

 

契約

 

・剣兵1  800

・騎兵  800

・弓兵1  800

・槍兵  400

・剣兵2  500

・弓兵2  500

・魔術師1 500

・剣兵3  600

・暗殺者  500

・魔術師2  100

・狂戦士1  700

・狂戦士2  800

 

 

・貴方のメンタルは素晴らしい。見事なメンタル美人です。ただ、金銭面でルーズで、女性の心に鈍いところがありますので、注意してください。

 

なお、契約したサーヴァントが複数いる場合は、戦闘中に一人しか召喚できません。誰をだすかは召喚者の選択となります。

 

観察処分者(腕輪持ち)の場合、学園以外の場所でもをサモン・サーヴァントと叫べばサーヴァントと会話する事が可能です。

 

 

(あばば!こ、これ、雄二に相談すべき?)

 

携帯電話に転送されたデータを読みながら、明久は雄二の方に振り返ると、ムッツリーニと互いの携帯を見て神妙な表情で唸っている。

 

「雄二、ムッツリーニどうしたの。そんな顔をして」

 

「ああ、明久見てくれ。」

 

 

「?」

 

明久は、恐る恐る雄二の携帯の画面を見ると顔が固まった。

 

 

【2年Fクラス 坂本雄二 】

 

・mental point 700

 

 

契約

 

・槍兵  500

・暗殺者 200

 

 

・精神力と自制心は高いですが、素直になれない天の邪鬼。

・意中の異性を大切にしましょう。

 

 

 

 

【2年Fクラス 土屋康太】

 

・mental point 700

 

契約

 

・弓兵  400

・暗殺者 300

 

 

 

・趣味や、物事に関しては一途で、凝り性。しかし、其れを追求しすぎて自分の身体を大事にしないのはよくありません。趣味はほどほどに。

 

 

「…。」

 

「え…えーと。」

 

 雄二の顔は余計のお世話だと言わんばかりに、苦い表情を浮かべている。ムッツリーニに至っては困惑気味で自分のデータを覗きこんだ。

 

 

「お前はどうだった?」

 

「どうもこうも…。」

 

 

「よし、各自確認したな!では、模擬戦闘を各自ペアを組んで行って貰う。」

 

 雄二に聴かれた明久はどうしたらいいかと悩んでいたら、鉄人の声にはっとして顔をあげる。

 

(も、模擬戦闘~~~~~!?)

 

「うむ、何か良いたそうだな吉井。ではお前は島田と組んで貰おうか?」

 

「ちょっ!!まって鉄人!」

 

「島田、吉井と組んでくれるか?」

 

「はーい。」

 

 姫路瑞希と話していた島田美波に鉄人が声をかければ美波は喜々とした顔で明久のところにやってきた。反対に姫路は「いいなぁ」と島田に羨望の眼差しを向けている。

 

「教科は数学で良いな?」

 

「ちょっと鉄人!僕なんかした!?なんであえて数学!?」

 

「島田いけるか?」

 

「はい!任せてください!」

 

「鉄人、無視しないでよ!美波、その笑顔は明らかに僕をフルボッコするつもりだよね?」

 

「吉井さっさと配置につけ。他はもう初めて居るぞ?」

 

「なんか、凄い理不尽だと思うのは僕だけかな…。まあいいや。召喚(サモン)!」

 

 色鮮やかなエフェクトと共に明久の召喚獣が召喚される。相変わらず学ランに木刀姿の明久の分身が軽快な動作で明久の前に飛び出してきた。

 

 

「こっちも行くわよアキ! 召喚(サモン)!」

 

 島田のかけ声と共に、躍り出てきた騎士服の召喚獣は自信満々といった表情で明久の召喚獣にサーベルの切っ先を向けている。

 

 

 【数学】

 

 島田美波 186点 VS 吉井明久 37点

 

 

「終わった…。」

 

「なんで黄昏れてんのよ!しゃきっとしなさい!」

 

 項垂れる明久とその召喚獣に島田が渇をいれるように言えば、明久は更に涙ぐむ。

 

「できないよ!何この点差!!!」

 

「吉井…そんなに補修授業がs」

 

「さぁ、やろうか美波。」

 

 

 背後にいた筋肉スーツに思わず涙も引っ込んだ明久は戦闘に集中する。

 

 ふと、召喚獣のステータス画面に必殺技ゲージが浮いているの見える。砂時計みたいなそのゲージの上には数字が浮かんでいる。どうやら1秒ごとに数が増えるようだ。

 

 

「へ?なにこれ」

 

「召喚獣の頭の上に見慣れんものが浮いているだろう?それがサーヴァントアシストゲージだ。

ゲージは約3分で溜まる。其れまでに決着をつけるか、溜まるまで待つかは個人の判断に任せる。が、今日はサーヴァントアシストができるか試すものだ。故に各自戦闘はせずに3分待て。」

 

 

 その言葉にFクラスからはやる気のない声が上がる。

 

 カチカチと体育館の時計の秒針が時を刻んでいく。Fクラスの大半はやる気がないのか空気がいまいち引き締まらない。

 

 開始してから2分がたったころ、明久の目の前にウィンドウページが開く。

 

 

 【戦闘に召喚するサーヴァントを選択してください。】

 

 

 周りを見れば、ムッツリーニと雄二の目の前にも似たようなウィンドウが開いている。おそらくサーヴァントを複数所持している人間にしか広がらないものだろう。サーヴァント召喚1分前に表示される仕組みらしい。

 

 

 明久は考えた結果、【剣兵3】を選択した。選んだ理由は、何となくであり他意はないが何故か

呼ばれたような気がしたのだ。

 

 

 

 砂時計のゲージが満タンになり【EX】と言う文字が浮かび上がった。

 

「では、各自「英霊召喚(サーヴァント・サモン)!」と叫んでみろ。」

 

 

「「「「英霊召喚(サーヴァント・サモン)!」」」」

 

 

 その瞬間、生徒達の足下に魔術の召喚陣に似た模様が浮かび上がる。

 

「っう!!!」

 

 明久は腕輪が着けられた腕に強烈な痛みを感じ、手の甲を見れば幾何学模様に似た赤い文様が浮かび上がっている。あまりに痛いものだから他のクラスメイトもそうなのかと見れば、みんな平気そうだ。

 

 

(え?僕だけ?)

 

とまどいがちに首をかしげると明久と島田の召喚獣の隣に白い光が集まり、人の形に象っていく。

 

 

「サーヴァント・セイバー、召喚に応じ参上いたしました。」

 

「サーヴァント・ランサー、召喚に応じて可憐に参上してあげたわ!感謝しなさい下僕!」

 

 

 光は突然淡い燐光がはじけ飛び、その全貌が現れる。

 

 

「は?」

 

「えええ!?」

 

 

 島田と明久はその姿に驚愕の表情を浮かべる。

 

 明久の召喚獣の隣には白銀の甲冑に身を包んだ見目麗しい青年騎士が、島田の召喚獣の横には頭に異形の角と、爬虫類の尻尾をはやした15歳ぐらいの美少女がそれぞれ佇んでいる。

 

 

「あら、貴女が私の付き人(マネージャー)?随分と…ぺったんこね。そこの騎士はともかく後ろのあなた、可愛いじゃない?下僕はみな子豚って呼ぶけど、貴方は特別に子リスって呼んであげる。」

 

 

 喚ばれたドラゴン美少女は自分の胸を棚に上げて憐れむ表情で島田を見ると、向かいに立つ明久に視線を向ける。どうやら女装が似合いそうな明久の容姿に興味を持ったのか、あどけないながらも狂喜の笑みを浮かべている。

 

 明久の背中にゾクリと良くない汗が流れる。そんな明久とドラゴン少女を隔てるように、美貌の騎士が明久の前に恭しく膝を折った。

 

 まるでおとぎ話に出てくる王子様のような容姿と所作に島田は若干顔を赤らめている。

 

 

「初めまして主。数居るサーヴァントの中から私を喚んでいただき有り難うございます。このガウェイン、御身の剣として応えて見せましょう!」

 

 

「わ、えええ?ガウェインって…アーサー王伝説の!?円卓の騎士の!?」

 

 最近はまっているRPGのキャラクターと同じ名前に、明久は素で驚いた声をあげると、ガウェインは明久が自分のことを知っていた事が嬉しいようで、とろけるような甘い微笑を浮かべた。

 

 

「ちょっと、ど、どうなっているのよ!」

 

 

「ぼ、僕にもわからないよ。」

 

 

「ちなみに、サーヴァントは皆、歴史上、神話上、伝説上の人物がモデルになっている。各自、自分のサーヴァントの力を確認しておくように。」

 

 騒然とする体育館に、鉄人の声がむさ苦しく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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