拙い文面ではありますが、ご容赦ください。
誤字脱字等ありましたらご連絡下さい。
おそらく、この世に存在する物事の多くは・・・いや、すべては限界を有している。
止めどなく流れる滝も、輝く満天の星でさえも、いつかはきれいさっぱり消えてなくなる。
人間にしてもそうなのだ。散々、努力しても届かない領域。立ちふさがる壁。そこが己の限界なのだと知る。
世界とは、そうして棄てられてきた人々の夢で作られている。
しかし、その立ちふさがる壁を見事超えたとき、人は何物にも砕かれない絶対的な力を手に入れる。
これは、一人の少年が世界を描く物語。
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「あ~、暇だなぁ」
現代社会に於いて、それがどれほど贅沢な不満であるかなどお構いなし。数百年は経年したであろう深緑色の屋根の上で胡坐をかく少年は退屈そうに呟く。
ここは中国のどこか。周りを取り囲む険しい山々、霞がかっているが山からは動物たちの命の歌が聞こえてくる。乱開発が進む中国にこれほど自然が自然らしい場所も少ない。
ここは梁山泊。人々はこの土地を、さらにここに集う者たちをそのように呼ぶ。人ならざる力、異能を有する彼女等は、常に歴史の舞台裏で暗躍し、現代に至るまで厳しい裏世界を生き抜いてきた。そんな彼女等の仕事は暗殺から護衛まで多岐に渡る。
「あ~、空が綺麗だなぁ」
上を向くと今日は快晴。標高の高い場所なのか、はたまた少年の坐する屋根のおかげなのか空が近く感じる。
彼女等・・・。そう、梁山泊の構成員は【原則的に女子】である。これは女子の方が圧倒的に異能の力を有し易く、さらに暗殺時にターゲットを油断させ易いといった理由からである。そのことが長く裏世界で梁山泊の名を知らしめることになっていた。
しかし、梁山泊の長い歴史から見て、不慮の事態によって異能持ちの男子が代理として立てられることもあった。この少年もそんな口である。
(ってもなぁ・・・。先代が急死して急遽《星》を継いで早数年・・・。これといった事件もなく平和だもんなぁ)
平和・・・。急速な世界の変化に伴う時代の波は、ここ梁山泊のビジネス体系にも大きな変化を与えていた。今の梁山泊への依頼は彼女たちの異能に頼った護衛がほとんどであり、派手に暴れまわる機会などほとんど無くなってしまっていた。
(俺の異能は護衛向きじゃないしなぁ)
少年は苦笑する。
「あー・・・暇だなぁ」
「なら少しは鍛錬でもしたらどう?」
「!」
横を振り向くと梁山泊特有の衣装に身を包んだ、青空色の髪をした少女が近づいて来ていた。知的な眼差しに美貌も相まってクールビューティーの形容がピッタリである。
「へんた・・・楊志か」
「いま変態って言おうとしなかった?失敬だな」
「年がら年中パンツに欲情してる奴は議論の余地なく変態だ。それ以上もそれ以下もないよ」
「私だってパンツなら誰のでもいいって訳ではない。拘りがある。知ってた?公孫勝のロリパンもいいけど、やっぱり林冲のが一番なんだよ」
「変態っぷりに磨きがかかってるね、流石は青面獣。んじゃさ、俺のパンツやろうか?」
「男のパンツなんて死んでも要らぬッッ!!」
「顔が真剣だよ楊志・・・」
楊志という少女と何気ない会話をする。そういえば、自分がここに来たとき初めて友達になったのもこの少女だったな。少年はそんなことを考える。
「君さえよければ私のパンツハンティングに同行させてあげてもいいよ」
カオス過ぎる誘い文句でもあるが、普段の彼女からしたら少年との仲は良いほうであった。
「せっかくのお誘いだけど命が惜しいんでね。遠慮しとくよ」
「こんな所にいたのか、青面獣。操刀鬼を呼びに行くと言っていたが、いつまでかかってるんだ」
「あ、武松。その操刀鬼と喋ってたの」
「そうだったのか。けれど時間にルーズなのは感心しないな」
武松と呼ばれた少女は腕組みした。紅い衣装、紅い髪、紅い眼。その出で立ちは見た者に紅蓮の炎を想起させる。この少女も楊志と同じく落ち着いたイメージを受ける。
「それで、俺に何か用か?武松」
「ああ、操刀鬼。首領がお呼びだ」
「!」
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「護衛任務・・・?俺に?」
「いかにも」
老人は「ゴホン」と咳払いをしつつ続ける。
「正確に言えばお前たちに・・・だの。任務内容は始めに話した通りじゃ」
「けどよぉ、本当に俺でいいのか頭領?人選ミスなんじゃないのか?」
頭領と呼ばれる老人は細い目を糸のようにして答える。
「無論、お主が護衛任務に・・・いや、お主の持つ異能が護衛任務に不向きなことは百も承知だ」
「だったら何故?」
「史文恭」
「!?」
「我ら梁山泊と長きに渡り争ってきた曹一族。その曹一族武術師範がこの一件に関与してくる可能性がある。・・・対抗できる実力者は多い方がよかろう。それに・・・」
「・・・」
「どうやらお主とアレの間には不思議な縁があるようじゃからの」
「しぶりんが出張ってきてるのか・・・。その護衛対象ってどんな奴なんだ?」
「任務の詳細は豹子頭、林冲から聞け。場所は日本国・・・川神じゃ」
「川神・・・」
「ゴホン。それでは、地羈星(ちきせい)操刀鬼曹正よ。頼めるか?」
「分かったよ、首領」
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「んで?結局、依頼を受けたんか?」
「ま、仕方ないよね。いろいろと不確定要素が多いんだし」
少年が頭領からの説明を受け終え、外へ出ると見知った二人の女子が待ち受けていた。
「盗み聞きとはよくないぞ。史進、公孫勝」
「だってマサルが行こうって言ったんだ」
「あ!パッドお前裏切ったな!」
「誰のどこがパッドだコラ、くらえグリグリ攻撃!」
「うわぁあああ!い、いたいぃぃぃ!!」
「はぁ、相変わらず仲が良いな二人とも」
少年は取っ組み合いをする二人の乙女を見てため息を吐く。
ツインテールに荒々しい性格の史進。完璧ロリ体形に末っ子気質の公孫勝。二人ともこれからの梁山泊を背負って立つことを期待されている注目株だ。しかし、本人たちにその自覚は無いようだ。
「おい九紋龍。あまり入雲龍を苛めてはダメだぞ」
「ちぇ、わかったよ」
「うわーーん!ブショー、ブショー!あの違法建築物が私をグリグリしたんだぁ!」
「誰が違法建築物だ」
武松に抱き着く公孫勝。誰にでも面倒見のいい武松は公孫勝の姉代わりとなっていた。
「それよりもお前たち、急いで準備をしろ。今日中に梁山泊を出ておきたいと豹子頭が」
「急ぎすぎだなぁ林冲は。ま、わっちはとっくに準備できてるけどね」
胸を精一杯張る史進。なぜか切なくなってしまった。
「わかったよ、俺も準備が出来たら向かうよ」
「なーなー曹正」
出支度をするべく部屋に戻ろうとすると公孫勝に袖を引っ張られる。
「どうしたんだ、公孫勝?」
「最近になって私のパンツが何枚か無くなってるんだが・・・オマエは知らないか?」
「おいおい、なんで俺に聞くんだよ。俺は女の子のパンツ盗んでアレコレするほど落ちぶれちゃいないよ」
「むー。それもそうか・・・。疑って悪かったな、んじゃ!」
「おう!」
「まってー!ブショー!」と言いながら駆けてく公孫勝。俺はとりあえず心の中で(ごめんな、公孫勝)と謝っておく。犯人は知っている。しかし、触らぬ変態に祟りなし、変態危うきに近寄らず。知らない方が良い事実だってあるのだ。・・・パンツがナニに利用されてるかなど知りたくもないし・・・。
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部屋に戻り準備を進める。と言っても、あまり荷物を増やすことは任務上望ましくない。必要最低限の衣服と金銭だけ持って行けばよいのだ。
「っと、忘れてた」
タンスに掛けていた自分の愛刀を手に取る。荷物を纏め終え、最後に棚に飾ってある写真に一礼する。
「それでは師匠。行って参ります!」
そう言って少年は部屋を後にした。これから出会う数々の強者に心惹かれながら。
一話目はこのあたりで終了です。
次からもう少し書いていきたいですね。