ある龍のお話 リメイク前&外伝   作:流血事故

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こんばんは。お久しぶりの流血事故です。
ちょっとずつ書いてたのを眠い中仕上げたのでおかしいところあったら訂正ください。
この話を投稿し始めて本編は20話になりました!
ここまで読んでもらいありがとうございます!
これからも「ある龍のお話」をよろしくお願いします!!

6000文字くらいです。
ちょっと多かったですかね...


第20話 ハンター②

時は、シオンとハンターの出会う数時間前に遡る。

 

ーハンターsideー

 

霧の森に入れるようになった。

クエストボードに貼られていたその依頼は、ハンターを生業としている僕たちにとってはとても信じられない情報だった。

 

霧の森。

名前の通り自分の手も見えなくなるような濃霧が常に森を覆っている。

さらに厄介なのは方向感覚が狂ってしばらく森の中を迷い、必ず元の場所に帰ってくること。

初めは挑戦するものが多かったけど、違和感に気づいてから引くまでは早かった。

周囲を何百キロも続く豪雪地帯、足元は凍りつきスパイクが無いと下手に動けず、たどり着けない。

新しい土地で新発見をして一躍有名に、と考えて何度も挑んでいた人たち(ライバル)もいた。

でも、みんな諦めた。

森に入れないんじゃ意味がないからね。

 

凍りついた土地に森がある、ということに研究者たちも目を輝かせて飛び込んだらしいけど、結果は散々だったって聞いた。

なんでも、豪雪地帯に入ってすぐにベリオロスの親子に襲われて、命からがら逃げたところでメラルーに測量具の一部を盗られた。

どうせなら一眼森を見よう、と進んだ先で暴嵐が直撃した。

...本当にひどい話だ。

死にかけていたところを氷上を移動する村の見張りに助けられたらしいけど。

と言うか、なんであんなところにメラルーがいるんだろう。

......まあ、いいか。

結果、一応誰1人欠けることなく無事帰還したらしい。

が、霧の森は研究者と護衛の身体ともに傷を残してったって訳。

 

これだけ考えてると今回のクエスト自体を受ける人は相当なバカか、腕に覚えのある奴だけだろうな。

クエストを依頼したのは氷上を移動して暮らす村人の1人。

研究者たちを助けた人たち。

なんで水が凍っていないのかいまいちわかんないが森に"なにか"が落ちた、と言うのが重要だ。

もし、それが森の霧が変化した理由なら徹底的に調べる必要がある。

何日経っているか知らないが相手は手負い、簡単な仕事なはずだ。

それに報酬が増えればあの子達にも美味いご飯を食べさせてあげられる。

あとはライバルに気をつければいいだけだし。

 

「───ン。ジアン!そろそろ着くぞ!」

「ん...?ああ、わかった。」

 

少し、考え事をし過ぎたらしい。

僕の悪い癖だな。

この森に来たのは何回目か...。

本当に霧が薄くなってる。

これなら....もしかしたら。

そんな期待を胸に、一歩踏み出し───

 

───その足が、霧に巻かれることなく降り積もった雪に沈んだ。

 

「...本当に入れちゃったね。霧の森」

「そう、だな」

 

しんと静まり返った森の中を歩いていく。

振り返れば真っ直ぐ進んでいることを示す足跡がくっきりと見えた。

感動は、あった。

ただそれを塗りつぶすほどの.....

不安、だろうか。

 

「静かすぎる。」

「動物に出会ってもおかしくないのにね」

 

歩いていくうちに足元が雪のない地面に変わる。

豪雪地帯で、木がまばらなのにもかかわらず、だ。

それだけじゃない。

 

「さっきより暖かくない....?」

「もしかして、僕たち古龍の縄張りに入っちゃったとか?」

「おいやめろ。冗談でもきつい」

 

冗談は半分だけ。

古龍ではなくてもそれと同じくらいの気配を感じる。

これを言っても不安がらせるだけだから言わないけど。

古龍の影響じゃなきゃこの現象は起きないだろうし。

あの豪雪地帯は古龍の縄張りを囲む要塞のようなものなのか。

だとしたら古龍自体はさほど強くないのか....それとも余った力を使っていたり?

 

「おーいジアン、黙ってないで指示をくれー!」

「......そうだな、まずはこの近辺を調べようか。」

「おー!俺たちがお宝を見つけてやるぜー!」

「ウィーゼル、はしゃぎすぎだ。」

「そーよ!ここは未開の地なんだから気を引き締めないと!」

 

ウィーゼルはいつにも増して陽気だな。

まったく...羨ましく感じてくる。

まあ...みんなも薄々気づいているんだろうけど。

僕もそれに便乗させてもらおうかな。

口を開いて言葉を話す、瞬間。

 

「ゴガアアアアアアッッッ!!!!!」

 

咆哮、衝撃。

鼓膜が破れるほどの大音量と、凄まじい風圧が叩きつけられた。

すぐ、目の前に。

オレンジに近い鱗と、青いしまのような模様。

轟竜ティガレックス。

そのG級個体と思われる巨体が興奮状態(・・・・)で目の前に現れた。

 

「───シッ」

 

息を吐きながら抜刀。

鞘走りで加速したその一撃は軽くない。

踏み込みからの抜刀切りは本能でバックステップする轟竜の左前脚を切る。

追いかけ切り込む。

途中でぞわりと悪寒が走りその場で横にステップを踏み───

 

───ガチンッ

 

先ほどまでいた空間を大きなアギトが噛み砕く。

戦慄するより早く横なぎにティガレックスの腕が迫る。

ギラリと光る研ぎ澄まされた鉤爪をいなし、迫る尾を背面跳びでかわす。

着地したところへティガレックスの上から体重を乗せた一撃。

ティガレックスの懐に滑り込み、その勢いを利用して胸から腹をなぞるように切る。

ボディプレスをかわし、咆哮をいなす。

踊るように戦いながら援護に回っている仲間に合図を送る。

 

閃光が夜明けの森を白く染めた。

 

「ガアアア!!」

 

狂ったように暴れるティガレックスから一旦退避して息を整える。

よく見てみればティガレックスの体には無数の傷があり、その中には僕の見覚えのないものもあった。

なにかから逃走してくる最中だったのなら、興奮状態だったのも頷ける。

しかし、一体何から逃げてきたのか....?

 

バキバキバキバキ.....

 

遠くから連続して木の折れる音が微かに聞こえた。

他の人より耳が良くても、ギリギリ聞こえる小さな音。

なにかが、そう...例えばモンスターが縄張りの印として木に傷をつけたり、折ったりする音に似ている。

ただ、それが連続しているのはおかしい。

飛行船が不時着してもこんな音になりそうだ。

それだけの重量を持ったなにか、であるのは間違いないだろう。

ティガレックスが現れた方向とは微妙に合わないが。

 

「閃光が解ける!一気に叩くわよ!」

「「「おう!!!」」」

 

弓をつがえ直すミアの声を合図に逸れていた意識が戻る。

今は考え事をしている場合じゃない。

油断していた人たちがどうなったかなんて何回も見てきた。

ティガレックスの強さは脅威にはならないがここはなにが起きてもおかしくない。

現にこのティガレックスだって通常の個体より硬い。

G級の個体で間違いないだろう。

閃光が切れて視界が元に戻ったのか、ティガレックスはターゲットの僕たちを視界に入れた。

 

「.......え?」

 

あまりに突然のことでそんな声が出た。

なぜならティガレックスが瞬時に方向転換し、森の中へと走り去ったから。

命尽きるその瞬間まで敵と戦い続ける単純なモンスターじゃなかったのか?

ティガレックスはそんなものだと思っていた。

単純で余り物を考えずに手当たり次第に暴力を撒き散らす危険な竜といった認識は、僕らの中で凝り固まっている。

この地のモンスターは....あそこまで知性があるのか?

 

「まいったなぁ....」

 

ぽりぽりと頭をかきながらウィーゼルは拍子抜けした顔で言った。

あまりに間抜けな顔に思わず吹き出す。

 

「なんだよー?」

「いや、ウィーゼルも真剣に考え事をするとはね。まあ、あそこまでモンスターの頭がいいと本当に困るんだけど」

 

非難げに僕を睨むウィーゼルに同意の意味を込めて笑いかける。

ウィーゼルはまだ不満そうだが、ニッと笑って剣を研ぎはじめた。

 

「まいったな、じゃないわよ。やり損ねたのよ?どうするの?」

「まさか考える頭があるとは思わなかったからな。奇襲をかけられても困るし、深追いはやめておいた方が..」

「あんな害獣に知性ですって!?さっさと駆除して安全にすべきよ!!」

「ミナ、お前の気持ちはわかるんだ。」

「はいはいそうですか。私だって死に急いでるわけじゃないんだけどね!」

 

ミナはいつもより機嫌が悪い。

モンスターを恨む気持ちは多少僕にもあるけど、やっぱりミナは他の人たちよりもよりモンスターを恨んでいるみたいだし...。

空気の悪くなってしまったパーティーはいつもより精度が落ちてしまうし、モンスターに遭遇しないように川の様子でも見に行った方がいいかもな。

 

川のことをみんなに伝え、歩き出す。

事前に森周辺は調べてきているし、川も問題なく見つかった。

問題は....

 

「これ、大河の方があってるんじゃない?」

「確かに。川といってもこれは広い。」

「ガノトトスとか出そうだな!」

「そうしたら私が撃ち殺してやるわ」

「みんな、ちょっとここで休んで」

 

バッシャーーーン

 

遠くでガノトトスが跳ねた。

 

 

 

 

 

 

「すげぇ!薬草がめっちゃ綺麗だぞ!」

「薬草なんて普通でし..なにこれめっちゃ綺麗!!」

「葉の色が鮮やかだな。」

 

川の周辺を歩きながら採取に勤しむ。

たまにはこういうのもいいな。

ワイワイと採取に精を出していると突然マルトが集合の声をかけた。

 

「これ、古龍の血じゃないか?」

「確かに似てるけど...そんなのどうでも良いじゃない!サンプル採取のために狩猟よ!」

 

森の奥に続いている血痕は頻度が高く、痕跡は見つけやすかった。

ミナの言った通りその血痕は古龍の血のような独特さがあったけど、まだ断定できない。

先ほどのティガレックスかもしれないし奇襲に十分気をつけて進まなければ。

 

前進するたびに、少しだけ悪寒が強くなる。

嫌な予感、肌が敏感になにかを察知しているような。

ただの杞憂で終わってくれればいいが。

 

その祈りは、届かなかったようだ。

 

 

 

時は戻り───

 

ーシオンsideー

 

真っ赤な鮮血が。

地面を赤黒く汚す血が。

赤が視界を埋め尽くして、次第に考えることが億劫になってくる。

 

血だ。血を、血が、赤い、血が、ちがちがちがちがチガチガ

 

真っ赤に染まる。

怒り、いかり、怒り?

わからない、知らない、多分怒ってる?

怒り、怒り!

 

血が、騒ぐ。

怒りに沸騰する。

心臓が爆発しそうなほど脈打って。

 

いまは、いまは、目の前の%*➖●を。

ーーして、ーーーーーーに。

*-・●(るんだ!

 

体が変。動かない。

知らない、関係ないや。

とにかく今は羽虫を殺さなきゃ。

 

危ない危ない危険な羽虫。

 

ぐちゃぐちゃに殺して、血を。

 

 

 

 

違う、違う....違う。

そうじゃない。

こんなの嫌だ。

気持ちが悪い。

 

 

僕はこんなの、望んでいない。

 

 

 

 

 

 

ージアンsideー

 

 

 

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

それ(・・)は叫び声をあげた。

叫び声と言うよりもモンスターの咆哮に近い悲痛な声を上げた後、ゆっくりとそれが立ち上がる。

ゆらり、ゆらり。

危なげに揺れるそれの体からは、ボタボタッと血が流れ出し地面を染める。

それの目は光が完全に失われ、代わりにドロドロとした負の感情が渦巻いているように感じた。

体から滲み出ていると錯覚するほどの殺意がそれから放たれる。

 

「ッ!?」

 

気づかぬうちに一歩下がっていた。

脅威。

先ほどまで一ミリも感じなかったそれは、脳内で激しく警鐘が鳴るほど強く感じるようになっている。

今まで久しく忘れていた恐怖が全身を駆け巡り、初めて大型モンスターと出くわした時のような無力感が思考を支配し始めた。

これほどまでに恐ろしいものと対峙していたのか。

殺気だけで僕を無力化できるほどの怪物と僕は戦って、勝てるのか?

 

「無理、だ。だけど...」

 

ひとりでにそんな弱音が口から漏れる。

僕以外の3人は立てなくなるほど震えて、ブツブツと何かをつぶやいていた。

ここで動けるのは、僕だけ。

守らなきゃ。

こんなところで諦めていたらアイツには届かない。

 

「ぁ...あ、ゔ..」

 

うめき声をあげて、それは唐突に動く。

僕がそれを繋ぎとめられていた岩...それに爪を立てた。

苔で覆われた岩のように見えていたもの、その正体は青緑に輝く綺麗な宝石。

その宝石に、それは指を食い込ませていた。

爪ではなく指。

おそらく手がなにかしらの変化をしている。

 

「───ヒュ」

 

音を置いてきぼりにするほどの一撃。

とっさに横へ転がった僕を通り過ぎて、それは後ろにあった木をへし折った。

大木、までとはいかないがそこそこの大きさの木が簡単に折られ、倒れる。

直線的な一撃...知能が退化した?

一撃必殺としては申し分ない威力、おそらくあの木が僕だったなら今頃バラバラの肉片になってただろう。

 

ゆらり。

 

それが振り向く。

 

「───ヒュ」

 

また同じ一撃。

直線的で高威力な、それでいて方向修正はきかない。

カウンターをしてくださいと言っているようなものだ。

念のため、突進の範囲には入らず脇から切り裂く形でカウンターしようと───

 

───それが、ニタリと、凶悪な、笑みを、浮かべていた。

 

 

「ガア"あ"ア"あ"あ"ア"ッッッ!!!!!」

 

全身の骨が軋むような衝撃。

吹き飛んで、地面を転がり、ようやく止まって顔を上げてそれを見た。

それは、

黒く美しかった。

大きく広げた翼はクシャルダオラを連想させるような、それでいて一風違った風格を放っといた。

スラリとした四肢は美しく整って、爪は宝石より美しく。

その瞳だけ、名称し難い狂気に満ちた、黒。

 

「っ!?」

 

それが翼を無造作に振るう。

その翼からなにかが飛び散った。

 

キィィィィィイイン!!

振動した鱗がガララアジャラの鱗と同じように高周波を撒き散らしている。

鼓膜が強制的に揺らされて、平衡感覚が狂う。

倒れないよう踏ん張って鱗を切り捨てる。

もう少しで狂うところだった。

恐怖で頭がどうにかなりそうだ。

救いだったのはそれが偶然攻撃を外してこと。

 

体が震え出す。

耐えきれない、もう、なにも考えたくない。

なにができるんだ?

他の人より、少しだけ剣を振るうのが上手い?それだけでなにができるんだ。

ああ、あの時だって、今回も救えないのか?

またなにかに救われることを期待してなにもしない。

それでいいのか?

 

...

 

.......

 

...........いいはずが、ない

 

 

ドクンッ

 

 

心臓が強く脈打った。

 

身体中を回る血液が熱く燃え上がるような気がしてくる。

 

僕は、守りたい。

あの時とは違う。

強くなった。

強くなるために努力した。

大切な仲間も増えた。

 

今度こそ。

 

 

剣を強く握る。

体から震えは消えて、代わりに力が湧いてくる。

 

それはミナに前足を振るおうとしていた。

鉤爪がミナを捉える、その前に。

滑り込み鉤爪を剣でいなす。

2撃、3撃と繰り出される攻撃の合間を縫ってそれに傷をつけていく。

 

 

本当は僕たちが悪い。それはわかっている。

 

標的が僕に変わる。

 

 

最初に手を出したのは僕たちだ。

 

集中攻撃、動きの鈍ったところに鱗の破片が突き刺さる。

 

丸太のような尻尾に吹き飛ばされて、木に激突して止まる。

血が口からこぼれた。

肋骨が折てる。右腕に鱗が突き刺さっている。防具は今にも壊れそうだ。

目の前にそれが迫っていた。

膝が笑って、うまく立てない。

 

それでも僕は....

剣を構えて、覚悟を決める。

木にすがりつくように立って、形だけの構えを取る。

僕は!

 

 

ザシュッ

 

 

「は.....」

 

それの攻撃が....

 

ボタボタッ

 

僕のすぐ横に炸裂して。

 

 

 

あの攻撃が外れるはずはない。

確実に、一瞬前まで目の前にそれはあった。

振り下ろすだけで済んだはず。

なぜ、なぜ?なぜ、どうして?

 

 

 

 

 

 

「ぁ...」

 

声が漏れる。

だって、それは、その行動は。

僕の親友と同じ。

 

 

それ...彼の胸から僕の剣が突き出ている。

柄の部分以外、見えるところはない。

その先から赤い血が流れ出て、

僕の手を真っ赤に染めていた。

 

「───.....」

 

彼は唸りもせず、ゆっくりと後ずさる。

その胸から僕の剣が抜けてカランと音を立てておちた。

彼の目に光が戻っていた。

その瞳は、とても綺麗な紫色をしていた。

 

バサッ

 

翼をはためかせて彼は空へ吸い込まれていく。

 

「あ、待...!」

 

ピシピシ.....

 

僕の小さな声は、宝石に入ったヒビが広がる音にさえかき消され、彼には届かない。

いつのまにか彼を追い詰めていた宝石の前まで移動していることに気づいた。

雨が降ったあとのように鮮血が地面を濡らしている。

 

パキン....

 

宝石は、僕の後ろで粉々に砕け散った。

まるで衝撃が後から来たような。

宝石のカケラは陽の光を受けてキラキラと輝いた。

僕が硬直から溶けるまで、ずっと。

ずっと輝いていた。

 

 




闇落ちって良いですよね(違う)
作者は変態に分類される人種なのでちょくちょく血が出てきますので苦手な方は自衛お願いします。
相変わらず汚い文面と亀更新になりますが、よろしくお願いします!

20話記念に奏音龍描いてみました!

【挿絵表示】

リメイク版は

  • 見たい(いる)
  • 見たくない(いらない)
  • モンスターの活躍を楽しみにしてる
  • ハンターの活躍を楽しみにしてる
  • 両者の活躍を楽しみにしてる
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