リアルが忙しくなりモチベがさらに低下してしまっています。モチベをこれ以上下げないよう頑張ります。
4000文字超えています。
*初登場キャラの視点となります。
彼女はとても退屈だった。
森の中をぶらぶらと歩く彼女の前には、モンスターは疎か、動物すら現れることが無い。
なぜなら、森に住まうモンスター達は本能的に強者が通ることを理解し、彼女の視界に入らぬよう身を潜めるからだ。
彼女が森に入ったその瞬間から、モンスター達は彼女の動作、呼吸の一つ一つに注意を払い、決して彼女を不快にさせないよう縮こまることしか出来ない。
だが、その行動すら今の彼女にとっては不快。
「暇だわぁ....」
ため息とともに彼女はそんな独り言をこぼす。
彼女はいっその事森を吹き飛ばしてしまおうかしらぁ、と不機嫌極まりない顔で頬をふくらませた。
風が木々を揺らす。
葉の隙間から差し込んだ光が、彼女を照らしだした。
彼女の見た目は10歳ほどだろうか。
長い、先に向かって明るさの増す紫の髪に、怪しく輝くオレンジと銀のオッドアイ。
小さな体に対して大きな魔女帽子を被った少女こそ、先程から森を吹き飛ばそうと目論んでいる彼女の姿だ。
帽子を弄りながら頬をふくらませる彼女は、どこからどう見ても無力な子供。
先程も言った通りモンスター達は襲いかかる機会を伺っている訳ではなく、ただ弱者なりに縮こまって震えているだけなのだ。
見た目こそ弱者。
されど、その身に纏う覇気はそこらのモンスターを束にしても叶わないことを表している。
それもそのはず、彼女と並のモンスターでは生きた年月が違う。
文字通り、私に勝つのは1000年早いわぁ、と言われるだろう。
姿こそは少女だが、彼女の正体は生まれてから1000年を軽く超えるれっきとした古龍なのだ。
完全に見た目詐欺だ。
冒頭に戻り、彼女は退屈していた。
それはもう暇つぶしに森ひとつを消し飛ばそうかと考えるほど。
実際に彼女はそれができる訳だが、暇つぶしに消し飛ばされる森の住人はたまったもんじゃない。
と、その時。
森のさらに奥から、低い地鳴りのような音が響いた。
普段の彼女なら注意を払わなかっただろう。
しかし、今の彼女は面白いことに飢えていた。
モンスター達にとっては運が良かった、としか言いようがないだろう。
彼女の注意は森の奥へ向けられたのだ。
「あらぁ...珍しいこともあるみたいねぇ....」
モンスター達の幸運は続いたようだ。
どうやら森の奥には何があるらしく、彼女の注意は全てそちらに向けられた。
足早に森の奥に進んでいく彼女の後ろ姿を見て森に潜んでいたモンスター達は大きく息をつく。
モンスター達だけでなく森の動物や、あげく森の木々まで警戒を緩めたように見える。
どうやら幸運は森の生き物全てのものだったらしい。
ザッザッザッ...
森の中を少女の皮を被った古龍が歩く。
彼女の小さな足では進む速度もそれなりに遅い。
...はずだが、たいして大人と歩く速度が変わっていない。
「ルン♪るる♪ルンルン♪」
彼女は、ここ数十年感じられなかった気分の昂揚に酔いしれて、上機嫌に鼻歌を歌う。
いつの間にか、のんびりとした足取りは早歩きに変わり、ついにはスキップに変わる。
そのスピードの、なんと早い事か。
全力で走る成人男性ほどの速度。
まだまだ早くなる!
「フーン♪フフー♪ンーン~♪」
ついには自転車の速さに追いつき、追い越す。
スキップとは一体なんだったのか。
自転車の全力でこいだ早さに匹敵する速度でスキップする彼女は、息も切らしていない。
速度の異常さを除けばスキップで森を進む可愛い女の子なのだが...。
汗のひとつもかかず自転車の速度でスキップする彼女はなるほど、怪物そのものだ。
「あらぁ?」
ピタッと慣性の法則やなんやらを彼方に吹き飛ばす止まり方をした彼女は、珍しい来客に目を細める。
「いち、にぃ、さん、、し?」
距離にして250メートルほど。
彼女の注意を引いてしまったのは、森を歩き回っている哀れなハンター達だ。
(男と女、2人ずつねぇ...)
250メートルといえば常人なら顔は確認できないだろう。
しかしそれも彼女からしてみれば、たかが250メートル。
彼女にしては5メートルも250メートルも大して変わらない。
彼女が何かをしようと思えばどうにでもなるのである。
(ハンターだわぁ!どうしようかしらあ...邪魔されるのも嫌だしぃ....)
先程の幸運が続いていたのか、彼女はハンター達にさほど興味を持たなかったようだ。
普段の彼女ならハンターを片手で倒しながら散策などもこなすが、余程余裕が無いらしい。
彼女は掌で石ころを転がし、ポーンと投げながら考える。
(ハンターを別のところに誘導できないかしらぁ)
ふと彼女は名案を思いついたように指を鳴らし、石ころを斜め上に向けて弾くと、何事も無かったかのように森に消えた。
~Now Loading~
ッッドン
遠くで何が爆発したような音が響く。
ちょうど目的地の前に来ていた彼女は、その音を聞いてにっこりと笑顔を浮かべた。
(これで邪魔者もいなくなるわぁ!あとは、)
「ここで何があったのかしらぁ」
全く疑問に思ってなさそうな不敵な笑みを浮かべて彼女は目的地の巨大な建造物を見上げた。
それは、言うならばコロシアムだろう。
なぜ危険な森の中に建てているのか。
その理由はこのコロシアムの所有者にある。
所有者の名前はマリス·コシュマール。
悪名高い貴族の中でもトップクラスにブラックな人物だった。
事実、マリスは裏でならず者達を率いており、密かにこのコロシアムのようなものを建てては違法行為を繰り返しているのだ。
その行為に、罰が下ったのだろうか。
「楽しそうねぇ~」
跳躍ひとつで壁の上に立った彼女は、呑気にそう言った。
壁の中では人間達が逃げ回っているが、彼女の興味はそちらには向いていない。
彼女が熱心に見つめる先には、4対の翼を持つ漆黒の龍がいた。
それがところ構わず暴れ周りコロシアム内部に地獄を生み出している。
龍の体は返り血で汚れ、しかし傷一つついていない。
人間達が大砲やバリスタ、あげく撃龍槍まで使い龍を攻撃しているにも関わらず、だ。
「ッッガアアァアアアアア!!!!」
龍が、吠える。
たかが咆哮、されど咆哮。
小型の竜が使うそれとは全く別もの。
龍がそれを行うだけで前方の瓦礫が吹き飛び、更には聴覚保護を付けていない人間は耳から血を流し絶命または気絶した。
龍が暴れ回る様子をゴロゴロと寝転がりながら眺めていた彼女は、ふと何を思ったのか立ち上がる。
ちょうど彼女のいる壁の下が出入口だったようで、我先にと人間達が逃げ出し始めていた。
人間が逃げ出すのを待っていたかのように(いや、実際待っていたのだろう)モンスター達が森の中から現れる。
まさに一難去ってまた一難。
護衛のハンター達が飛び出し、交戦を始める。
彼女はコロシアムの中と外を見比べしばらく考える。
そして、いきなりモンスターと人間の入り交じるその中心部に降り立った。
「な、子供!?」
「グルルル」
一瞬、護衛ハンターとモンスター両者の動きが止まる。
「え?ぁガあア!?」
「ギャアア!?」
比較的離れた位置にいたハンターの腕が、半ばから切れ、地面に落ちた。
その反対側ではモンスターの背中に大きな傷ができ、その痛みにモンスターはのたうち回った。
あの一瞬で動けるものは限られている。
この場所では上機嫌に笑う彼女にしかできない芸当だ。
悲鳴と血飛沫が舞い、彼女はニコニコと笑いながらハンターに近づく。
彼女が加わったことで恐怖はさらに加速する。
そして、その恐怖が限界を超えるのに時間はかからなかった。
「う、うわあああ!!」
「グオオオ!!」
恐怖と緊張に負けたハンターが突進し、1部のモンスター達もそれに乗る。
ハンターの剣が、モンスターの牙や爪が、彼女に迫る。
刃が彼女に触れる瞬間、
「面白くないわぁ.....」
彼女は残念そうに小さく呟いた。
先程まで浮かべていた笑は消え、退屈そうな冷たい目を向ける。
ああ、なんだ。
あいつが居なくなってから何一つ面白くない。
ハンターは腑抜けの集まりになったしモンスターすら弱い。
彼女からすれば今迫る刃や牙、爪、その全てが停止して見える。
仮に全ての攻撃が当たったとしても彼女には幼児が木の棒で叩いた程度、酷ければそれ以下のダメージもない。
(当たるのも癪だしぃ...)
それでもやはり古龍としてのプライドがあるのか、彼女はどこからか取ってきた大剣を片手で軽く振った。
そのまますたすたと歩いてき、適当な場所で止まる。
丁度合わせるように闘技場から爆音が響き、彼女はニタリと好戦的な笑みを浮かべた。
「100年と、ちょっとぶりかしらぁ...!」
僅かに上ずった声は恋する乙女のそれだが、彼女の目は獲物を見つけた古龍の目だ。
足早に去ろうとした彼女は何かに気づいたように足を止め、
「もう食べてもいいわよぉ」
細切れにされ原型をとどめていない肉塊のその後ろの森に声をかけた。
足を軽くまげ彼女は跳躍した。
「...飛びすぎたわぁ」
少々力加減を間違ったのか、彼女は雲に手が届きそうな高さまで飛んでしまった。
だが、彼女は失敗の1つや2つではめげない。
いや、10や20でもめげはしないだろう。
...なんにせよ、彼女は飛び上がった高さを生かすことにした。
落下に合わせて位置を調整し、丁度龍の頭を狙いかかと落としを繰り出す。
ドゴッッ
衝撃でコロシアムが振動した。
「やっぱり避けるのねぇ...」
龍に避けられたにもかかわらず、彼女は何ら変わりない姿でニッコリと笑った。
普通なら彼女は衝撃に耐えられず絶命または足が使い物にならないはずだが、強度が足りなかったのはコロシアムの床だったようだ。
1mほどのクレーターができている。
「ッッガァ!!」
龍が吠える。
先程の咆哮と違い一点集中の威力が彼女の、
「....まさか、その程度なのぉ?」
髪を僅かに揺らした。
彼女は心底驚いた顔をし、同時に落胆した。
あれほど楽しみに待っていたのにまさかのハズレ、それも大ハズレである。
まさか、他人の空似か。
それはありえないわぁ、と彼女は首を振った。
その間も龍の攻撃は留まることを知らず、現にコロシアムは崩壊寸前。
それでも、彼女は髪の毛1本たりとも失ってはいない。
彼女は絶対強者なのだ。
並び立つ者がいる時点でおかしい。
「それでも"彼"は、彼だけは私と同等...それ以上だったわぁ。」
彼女はすでに『偽物』を見ていない。
彼女にとってはこの龍も『偽物』なのだ。
弱者に変わりのないただ、似ているだけの『偽物』。
「....少し、違うかもしれないわねぇ」
彼女は、何かに気づいたようだ。
先程も言ったように、龍は全力て彼女を攻撃している。
ただ、全ての攻撃が当たらなければ意味をなさない。
当たったとしても意味が無い可能性も捨てきれないだろう。
彼女は考える。
この龍は『本物』だ。
中身が違うのだ。
器だけ用意しても中身が違っては意味が無い。
"彼"でなければ意味が無いのだ。
どんなに強い体を手に入れても、一般人には100%の力が出せないのと同じだろう。
なら、もし、"彼"があの龍の中にいたのなら...?
答えは、直ぐに浮かんだ。
「たたき起こしてやるわぁ...私を待たせたんだからぁ、その位は良いわよねぇ?」
彼女の姿が掻き消え、瞬間移動をしたかのように龍の頭の上へ。
「眠りなさい」
ッッドッッッッ!!!!
血飛沫が舞い、凄まじい衝撃が地面を揺らす。
衝撃は森全域と近くの村を襲い、この世界で数少ない地震として数えられるほどの威力だった。
そして、その場に立っていたのは、
「...あーあ、また汚しちゃったわあ」
先程の一撃を生み出した、彼女1人だった。
最後の言葉は、彼を叩き起すために偽物を眠らす意味で言ってます。
次回はシオン視点になる...はず。
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リメイク版は
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見たい(いる)
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見たくない(いらない)
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モンスターの活躍を楽しみにしてる
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ハンターの活躍を楽しみにしてる
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両者の活躍を楽しみにしてる