ある龍のお話 リメイク前&外伝   作:流血事故

30 / 33
突然ですが「ある龍のお話」リメイクします。
こちらを外伝とし本編は別で投稿しようと思います。
詳細は後書きに書いています。




※今話にモンスターは出ません。



第25話 芽

 

 「────」

 

 

 風が少年の髪を揺らす。

 ベッドに寝かされている少年は右手に枷が嵌められ、鎖に繋がれていた。

 少年の体のほとんど全身に包帯がまかれている。

 少年──盗賊「骸」と名乗るその殺人鬼が昏睡状態に入ってから3日が経過しようとしていた 。

 

 

 

 

 

 

 

 「────·····」

 

 

 風が頬を撫でる感覚に骸は目を覚ました。

 靄のかかったような意識の中、骸は視線を彷徨わせる。

 最初に感じたのは下腹部の燻るような痛み、体の倦怠感。

 次に喉の乾き。

 立て続けにやってくる不快感に骸は顔を顰めた。

 ただ、それらの苦痛は耐えられないほどではない。

 骸は重い瞼を開けているのも億劫になりもう一度目を閉じようとした。

 

 

 「....?」

 

 

 ふと、半身に重りが乗っているような圧迫感を感じ視点を落とす。

 視界に飛び込んできたのは明るい茶色。

 モゾモゾと起き上がる塊が生き物──人間であることに気が付くのに、数秒。

 骸の頭の中に疑問符が飛び交う。

 困惑の色をうかべた骸の瞳と眠たげな金色の瞳が交差する。

 それはぱちぱちと何度か瞬きし、

 

 

 「れ、お....?おき、た?」

 

 

 それ──ミキの顔に安堵と喜びが浮かぶ。

 その顔がくしゃりと歪んだ。

 

 

 「よがっだあぁああああ!!!」

 

 「ッ!?」

 

 

 骸に飛びつき泣きじゃくるミキ。

 突然の衝撃、胸部に走る鋭い痛みに骸は呻き歯を食いしばる。

 泣きじゃくるミキを宥めようと左腕を上げようとしたが、鉛のように重く動かない。

 

 

 「──」

 

 

 右腕を上げて撫でようとしたが、ピンッと張られるような感覚とともに腕が動かせなくなった。

 

 

 右手首に鈍く光る手枷が、鎖で繋がれていた。

 

 

 

 

 

 ........

 

 ....

 

 ..

 

 数日後 · · ·

 

 

 「──驚きました。たった数日でほぼ問題なく動けるなんて。」

 

 「少々育ちが特殊なのでね。」

 

 

 骸の監禁部屋から数メートル離れた廊下で骸は床に転がされていた。

 不機嫌な顔を隠そうともせず、骸は真冬を見上げる。

 仁王立ちになって骸を半目で睨んでいた真冬はその顔を見て大きくため息をついた。

 

 

 「...一応聞きますが、何をしようとしていたんですか?」

 

 「トイレだ。」

 

 「やはりにげ──

 ....えっ?」

 

 「トイレだ。」

 

 

 骸があまりに自然に「トイレ」と答えたため真冬は唖然とした。

 嘘の気配が一切しないのもその一因だ。

 

 

 「...逃げるつもりではなかったのですか?」

 

 「逃げる必要があるか?」

 

 

 何言ってんだこいつ、とでも言いたげな顔で骸は問い返す。

 問に対しての答えはあまりにありすぎる気がする。

 真冬は内心頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「人を呼ぶという発想がないあたり、人殺しは非常識なのですね。」

 

 「....」

 

 「自然治癒能力の高さも異常ですし、それについても──」

 

 

 部屋に戻るまでこれか?

 骸は内心ため息をついた。

 

 

 「──?」

 

 

 ふと、骸は体の違和感に気づく。

 動悸が激しい...?

 と言うよりモヤッとするような?

 首をかしげ、胸に手を置いてみる。

 

 

 「....」

 

 

 体温も上がっている...?

 動悸が激しく、体温が上昇...逃げ出したいようなそうじゃないような感覚。

 あれが来るのか?

 いや、大体は予兆なく来るはずだが。

 ハッと骸は目を見開いた。

 この症状...。

 

 ...これは、恐怖かッ!

 骸は自身が真冬に恐怖しているということに愕然とした。

 まさか、手酷くやられただけで恐怖心が芽生えた...?

 

 

 「──ッ」

 

 

 いや、違う。

 違うはずだ。

 絶対に違う。

 

 ...。

 

 違う...はずだ。

 

 ...違うに決まっている!

 認めない。それだけは決して。

 骸は歯を食いしばる。

 ギリギリのラインでポーカーフェイスを保っているが、衝撃の事実に心臓はバクバクと鳴っていた。

 

 

 「骸、聞いてますか?」

 

 「ぉ!?あ、ああ。」

 

 「...?まあ、次からは何かしら用意するのでそれを利用してください。無駄に人は斬りたくありませんので。」

 

 

 これが恐怖なら色々と面倒だな。

 どうしたものか。

 トントンと指の腹でベットを叩きながら骸は悶々と考える。

 

 

 「ああでも、ちょうどいいですね。骸、あなたについてまだ聞いていないことがありました。」

 

 

 

 

 

 「レオと骸、どちらが本当のあなたですか?」 

 

 

 その言葉に骸は妙な気分になった。

 何かが引っかかって取れなくなったような不快感。

 

 

 「どちらでも」

 

 

 素っ気なくそう言い放つ。

 どちらでも。

 どちらでもあると言えるししどちらでもないとも言える。

 

 

 「.......そうですか。」

 

 

 気に入らなそうな表情で、しかし何も言わずフミは立ち上がる。

 そこは気になってもいいと思うが。

 背を向けて去っていくフミを見て骸は胸の違和感が強くなるのを感じた。

 ...不愉快だ。

 

 

 「....ン。」

 

 「え?」

 

 「レイン、だ。」

 

 

 ....おかしいな。

 なぜ俺は自分から名を明かしたんだろう?

 そっぽを向いて窓の外を眺めながら、骸は考えた。

 自身に興味を持たせるため...なのか、訳の分からない感情に流されたのか。

 1度だけ....そう、1度だけ...こんなことがあった気がする。

 いつだったか。

 

 

 「レイン。」

 

 「!」

 

 

 まとまりかけた思考は小さな囁きを拾ったことで瓦解した。

 心臓が痛いほど早鐘を打つ中、足音が遠ざかる。

 

 

 「それでは。

 今度は誰かを呼ぶことを忘れないでください。」

 

 

 扉の閉まる音と鍵のかかる音。

 それらを聞きながら骸はゆっくりと目を閉じる。

 その口元が自然に上がっていることに気づかないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わりドンドルマ。

 大通りから外れた脇道のさらに奥、怪しげな店があった。

 店の中にはずらりと棚が並んでいる。

 棚の中には店主の作った試作品、もといガラクタが乱雑に置かれている。

 その一つ一つを店長であり制作主でもあるラインはぼけーと眺めていた。

 

 

 「ライイィイイインッッ!!!!」

 

 「うおっ!?」

 

 

 扉をけやぶる勢いで乱入してきた人影にラインは反射的に武器を向けた。

 しばらく掃除をしていなかったためホコリが煙幕のように入口を覆う。

 

 

 「ゴホッゴホッ...ゔぇ」

 

 「ちょ、お頭ぁ...」

 

 

 咳き込む音と間の抜けた声が聞こえ、ラインは武器を下ろした。

 聞き覚えのある声だ。

 お頭、という呼び方に隠そうともしていない大きな気配。

 となると、ラインの知っている人物とよく重なる。

 

 

 「頭ぁ...」

 

 「んな情けない声出してんじゃ──って、そうだッ!!」

 

 

 ホコリから飛び出した友が一息で距離を詰めてくる。

 初対面のハンターなら泣き出しそうな勢いだ。

 

 

 「ライン、聞け──」

 

 

 興奮からか熱量が凄まじい。

 相変わらずの友の様子にラインは苦笑した。

 

 

 「レインが、笑った、らしい」

 

 

 一言一言噛み締めるように、鼻息荒く告げた友の声はとても弾んでいる。

 満面の笑顔で、本当に心の底から嬉しいのだろう。

 そうか。あのレインが笑ったか。

 しけた面に久しぶりに笑顔が浮かぶとはな。

 そこまで考えて、ラインは驚愕に目を見開く。

 直後、

 

 

 「──なにぃいいいい!?!?」

 

 

 ここ数年は出していなかったであろう叫び声が遠く響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 「──というわけでして、骸の旦那は本名を明かしたついでに隠れて笑ったんさぁ」

 

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべて運び屋が語り終える。

 先程から思い出し笑いをしているということは相当いいものが見れたのだろう。

 

 

 「な....ありえん!そんな、あいつが」

 

 

 未だ頭の整理がつかないラインは落ち着きなく武器の柄を指で叩き否定する。

 

 

 「証拠ならありますぜ」

 

 

 畳み掛けるように机に置かれた紙を見てラインは撃沈した。

 机に突っ伏したラインの目からはとめどなく涙が流れており、とても幸せそうな笑みを浮かべている。

 その横に2度目にもかかわらず同じく机に沈むお頭の姿が。

 紙には骸の笑みを浮かべた瞬間が描かれており、何度も修正を加えられた跡もあった。

 

 

 「骸の旦那にも気付かれないよう、遠くから不安定な木の上で望遠鏡を見ながらスケッチしたものさぁ!」

 

 

 あとからちょこっとだけ修正しましたがね、と付け加え運び屋は自慢げに胸を張る。

 確かにその絵は実物を見なければ描けない類の細やかな部分まで描かれており、想像のものとは明らかに違った。

 

 

 「これは...もう、疑いようがない....!」

 

 

 ありがとう、ありがとうと繰り返すラインは、さながら生まれてきた我が子を目にした親のようである。

 それほど骸の笑顔はこの場に集う者たちには貴重なものなのだ。

 

 

 「問題があるとすれば、それがギルドナイトに向けられてたことだ。」

 

 

 ほんわかとした表情だったラインは冷水をかけられたように一気に真剣な顔つきになる。

 ギルドナイトが悪い訳ではなく、それを取り仕切るギルドマスターが問題だ。

 

 性格に問題あり、ハンターたちの嫌われ者。

 どうしてこうなったと言わんばかりの人物であり、現状ギルドマスターとして椅子に座るもの。

 

 

 「今のままならレインは確実に不幸になる。」

 

 「それは許容出来るもんじゃあありません」

 

 

 ピリピリとした空気を醸し出す一同。

 路地裏に住む動物たちが大通りに飛び出すほどの圧を醸し出す。

 

 

 「...やるか。」

 

 

 重々しくラインが口を開く。

 賛同するように運び屋が何度も首を縦に降った。

 

 

 「後任は?」

 

 「あいつがいる。」

 

 

 静かに計画が練られ始める。

 ....実行日は遠くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──??side──

 

 

 「アハッ!最高だねェ.....」

 

 

 机上に並べられたカードを裏返しにしながら歌うようにそれは言う。

 『GAME OVER』と馬鹿にしたように舌を出す絵が描かれたカードを何枚も混ぜながら、それは隣に並んだ人形を手に取った。

 

 

 「君の決死の判断はァ...1000年ちょっとしか持チませンでシたァー!ざァんねんだねェ」

 

 

 人形の首を引きちぎり嗤うそれは足元から赤い液体を掬い人形をデコレートしていく。

 一通りして満足したのか、それは人形置き場へと赤い固まりを投げる。

 粘度を持った液体が染み込んでいく人形の傍らに同じような形をした人形がもうひとつ並んでいた。

 

 

 「そこで見てなよォ?

 キミが守ろうとしたものが壊れていくサマをさァ!!」




 ある龍のお話を読んで頂きありがとうございます。
 ある龍のお話をリメイクするというのは前々から決めていました。
 書いていくうちに色々とおかしな所が多く、繋がらなくなっている箇所もあったため、1から設定を見直し要らない箇所を削り、1部書き足すことにしました。
 更新速度も遅くグダグダだったこの話を読んで頂いていた皆様には感謝しかありません。
 現在投稿した話以降はif、番外などを投稿する「ある龍のお話 外伝」とし、「ある龍のお話」本編を別に作り直すことにしました。
 ストックができ次第リメイク版の投稿を再開しようと思います。
 ここまで読んで頂きありがとうございます。
最終回のような後書きですがリメイク版は必ず出します。
 もし興味がありましたらリメイク版もよろしくお願いします。




知ってると想像しやすいかもな設定
レインはフミと比べて体長は20センチ以下なので小さめ。
左利き。



それではまたいつか。

リメイク版は

  • 見たい(いる)
  • 見たくない(いらない)
  • モンスターの活躍を楽しみにしてる
  • ハンターの活躍を楽しみにしてる
  • 両者の活躍を楽しみにしてる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。