ある龍のお話 リメイク前&外伝   作:流血事故

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Q リメイクまだ?

A あと1年くらい待って

やる気のない作者のクズ。
投稿している自覚がないと書こうとも思わなかったので番外投稿頑張ります


お姉ちゃん争奪戦、あるいは弟妹会議

 

 命溢れる弱肉強食の舞台、孤島────

 

 ──から、いくらか離れたこじんまりとした無人島。

 小さいとはいえ、平均よりは少し大きいその島に3頭の竜が集っていた。

 竜たちはそれぞれ持っていたキノコを食べると瞬く間に人間の姿に変貌する。全員が人の姿になったのを確認し、真っ先に口を開いたのは海を閉じ込めたような青色の髪を低い位置で括った仏頂面の美丈夫。

 

 

 「改めて名乗ろう。ヴォルトだ。種族は海竜種、この海域を縄張りとしている。」

 

 

 「シアラだよ〜!セルレギオス!縄張りは...ない!!」

 

 

 「ガララアジャラのライズです...。原生林に住んでます...。」

 

 

 ヴォルトに続いてボーイッシュな金髪の女の子...シアラが紫寄りのピンク色の目を輝かせて手を挙げながら自己紹介する。最後に濃い黄緑色の髪の少年...ライズがおずおずと自己紹介した。

 ヴォルトは2人を改めて見、実力がほとんど変わらないことを感じ取る。なお、ヴォルトに目を向けられた瞬間シアラは好戦的に笑い、ライズは「ヒッ」っと声を上げた。

 

 

 「今回お前たちを呼んだのは、お互いをある程度理解し合うためだ。」

 

 

 実力を含めてな、とヴォルトが続けた途端、シアラを中心に気温が上昇する。

 

 

 「....へぇ」

 

 

 先程までの無邪気な顔は消え、獰猛な顔でシアラは嗤う。狭められた瞳孔が気持ちの昂りを表していた。

 

 ...笑みに当てられたライズは一瞬のうちに島の端まで退散した。

 

 ライズに参加の意思なしと判断したヴォルトはシアラと向き合う。黄色の目に静かな闘志を宿して。

 

 

 「ただし、本来の力で戦うにはこの島は小さすぎる。よって、擬人化(この姿)で戦う。無論、命を奪うことは禁ずる。」

 

 

 「わかった!

 

 ...間違って殺しちゃったら、ごめんね?」

 

 

 シアラが地を蹴る。刹那、爆発。

 轟音が連続して響き渡り、余波で木々が根こそぎ吹き飛ぶ。熱が地を焦がし、雷撃が地を穿つ。互いに擬人化という枷をつけながらも、人の域を脱する力を存分に撃ち合う。

 

 その戦いをライズは震えながらも冷静に観察していた。精神が追いついていなくても、ライズはシアラやヴォルトと同格の強さを持っている。余波の熱や散った雷撃程度では擬人化をしていようとも傷つきようがない。

 ...とは言え、熱や雷撃が当たる度に大袈裟なほど反応するのだが。

 

 (なんでこんなに本気でやってるんだ....)

 

 シアラは拳で、ヴォルトは大剣で。互いに得意な武器を使い、時に炎を、時に雷を混ぜて戦う。その様はライズから見ても本気でぶつかり合っているのがわかった。

 

 ライズは命を優先するため理解できないが、ヴォルトとシアラにとって実力は最優先事項と言っても過言ではない。

 

 

 ──全ては、敬愛する姉様(あねさま)のため。

 

 ──いちばん強い竜がお姉ちゃんのいちばん!!

 

 

 少しだけ考えは違えど、ヴォルトもシアラも思うことは同じ。

 

 即ち...夫と子供を除き、みどりの1番になりたい。

 

 モンスターの価値観は単純だ。強いものが上で、弱いものが下、悪ければ死ぬ。だからこそ、弟妹であっても負けられない。

 

 島の動植物が凄まじい勢いで死滅した行く中、変化は思わぬところから訪れる。

 

 後にこのことを聞くと、ヴォルトとシアラは目を逸らして言う───

 

 ───不運が重なった、と。

 

 

 不幸だったのは、2人は戦いに夢中で周りが見えていなかったこと。本気で相手を倒すべく、属性攻撃(炎や雷)を使っていたこと。

 なにより.....張本人(ライズ)が恐怖で固まり動けなかったこと。

 

 

 「あっ」

 

 

 誰が出しただろうか。

 そんな間抜けな声とともにライズの意識は暗転した。

 

 

 

〜Now Loading...?〜

 

 

 ゆらり、と。

 至近距離でヴォルトとシアラの攻撃──2人はズラした──が炸裂し、吹き飛んだライズが立ち上がる。

 不意打ちではなかった。ライズは攻撃を見ていたが避けられなかった。衝撃を受け流す体制は取れていた───

 そんな言い訳がヴォルトの脳内をグルグルと回る。

 

 (やってしまった...。)

 

 熱を入れすぎた。急激に脳の温度が下がる。

 氷海を泳いだときのように、体が冷える。

 

 (はやく、手当をーーー)

 

 

 「避けてッ!!」

 

 

 咄嗟の判断だった。反射的に体を傾ける。

 先程までの首があった位置をなにかが通り過ぎた。それを理解している間に体が引かれ、さらに後ろへたたらを踏む。

 

 (ーーなんだ?なにが起きた?)

 

 

 「...酷いよ、姉ちゃん。

 

 ーー邪魔するなんて。」

 

 

 酷く、抑揚に欠けた声が耳朶を叩く。ヴォルトの腕を引いて下がっていたシアラが、苦虫を100匹ほど噛んだような顔をして「やっちゃた」と呟いた。

 ヴォルトは、今しがた起こり、現在も続く状況に理解が追いつかない。

 

 (目の前に立っているのはなんだ)

 

 

 「僕は兄ちゃんと遊びたいのに。」

 

 

 (こいつは、ライズなのか?)

 

 ハンターの持つような剥ぎ取り用ナイフを振って、歪な笑みを浮かべているのは、

 

 

 「...キール、久しぶりだね」

 

 

 ライズと呼ばれていたはずの少年だった。

 

 

 

〜Now Loading...〜

 

 

 

 「キー...ル?ライズではないのか?」

 

 

 ガンガンと警鐘を鳴らす本能に戦慄しながら、ヴォルトは絞り出すように尋ねた。シアラは先程から引きつった笑みで冷や汗を滝のように流している。

 キールと呼ばれた少年はこてりと首をかしげ、シアラの顔を見て合点したような顔をした。無表情で。

 

 

 「兄様からなにも聞いていないの?(ねえ)さまは...多分言ってないことを忘れてたのかな。

 でも、姉ちゃんまで僕のことを言ってないなんて...傷つくよ。」

 

 

 「あ、はは...ヴォルトとは、あったばかりなんだよ...!」

 

 

 びくりと体を震わせ、目を泳がせながらシアラは答える。

 

 ──いや、それで納得するわけないだろう。

 ヴォルトは心の中で冷静にツッコミを入れた。

 

 

 「...そっか。なら自己紹介するよ。

 僕が姉さまから貰った名前はキール。よろしくね?兄ちゃん。」

 

 「...ヴォルトだ。」

 

 

 嘘だとわかっているのか、キールは表情を動かさないまま自己紹介をした。

 シアラはぶるりと体を震わせる。サブイボがたった。

 互いに自己紹介できたことが満足なのか、キールはうんうんと頷いた。

 

 

 「あー...キール、そのナイフ、どうしたの?前は持ってなかったよね?」

 

 「.......戦利品。」

 

 

 長い沈黙から一言。

 シアラは確信した。また(・・)こいつ人殺したな、と。念には念を込めて確認する。....十中八九、殺しているだろうが。

 

 

 「人間は殺したの?」

 

 「........尻尾で叩いたら落ちてった。

 弱っちいのに、剣向けてきたから。」

 

 

 キールは無表情を若干崩し、ボソボソと言い訳する。

 あれ?これは勝てるのでは?シアラは思った。いくらキールが子供でも、自分より弱い相手を殺したことは気にかけているのかもしれない。

 

 

 「ねぇ、キールーー」

 

 「ガアアアッ!!!」

 

 

 突如、怒りに包まれた咆哮が響き渡る。声の主はこの島を寝床としていたルドロスの群れだ。寝床を荒らされた彼女らが怒るのは当然のことだろう。ただ、相手が悪かった。

 

 

 「うるさいんだけど。」

 

 

 たった一言。咆哮が響く中、キールは呟く。いつ取りだしたのか、鈍く光る赤黒い弓を引き絞っている。殺意に揺れる錆色の目がルドロスの群れを睨み付けた。

 

 

 「今、姉ちゃんが話していただろ。」

 

 

 キリキリと、ハンターの引く力にも耐えられるはずの弓が軋む。

 

 

 「邪魔。」

 

 

 限界まで引き絞られた殺意が開放される。

 番えられた矢は1本。竜をも穿つその矢は直線状の障害物(ルドロス達)を射抜き、遠くの沖で大きな水柱をおこした。

 遅れて、轟音。音速を越す矢から生まれた摩擦熱で炎が生まれ、ソニックブームが大地を抉りとった。

 

 

 「消えるなら許してあげる。」

 

 

 一撃で群れの大半を消し飛ばしたキールは、運良く生き残ったルドロス達を睨み殺気を乗せて言う。

 

 (攻撃前にそれを言え)

 

 我先にと逃げ帰るルドロス達を睨み、焼けた地面をグリグリと踏むキールを見ながらヴォルトは戦慄しつつ心の中でつっこむ。いつの間にか隣に来ていたシアラが真顔になったのを見て、いよいよ事の重大さが理解出来てきた。

 

 (シアラがこうなる真顔(こうなる)ということは気持ちが落ち込んだ時、もしくはーー)

 

 とてつもなく面倒なことが起こった時。

 

 

 「邪魔なのもいなくなって綺麗になったね。」

 

 

 くるりと振り向いたキールは、心底嬉しそうに笑う。その笑みが悪魔の微笑みに見えるのは果たして気の所為なのだろうか。

 

 

 「それじゃぁ、遊ぼ?」

 

 

 相手してよ。兄ちゃん。

 

 

 

 

 ──それから日付を2つほど跨いで、その間に島は岩山のような有様になり、孤島に舞台を移そうとした2頭は煌炎帝により丸焼きにされかけた。

 

 勝敗は最後までつかず、ヴォルトは火傷と毒で、ライズは火傷と痺れで、シアラは説教で苦しんだ。

 

 

 




〜多分本編で語れないからここに置いとこうのコーナー〜
 
3(4)頭の強さ比較(現時点)
 
 シアラ≧ヴォルト=(キール)>ライズ
 
将来(完全成長)
 
 キール>シアラ≧ヴォルト≧ライズ
 
精神年齢
 
 ヴォルト>ライズ>シアラ>キール
 
 シアラ···戦闘センスが飛び抜けて高く、それにあった身体能力の高さも比例して現時点最強。
 
 ヴォルト···成長しきれば希少種並みの電気を扱える。技術力は高く、物理属性共に圧倒的な攻撃力を持っていて、属性相性のいいシアラにたまに勝てる。
 
 ライズ···身体スペックがチートなのに気持ちが伴っていない。本気出せば強い。
 
 キール···全ての能力がチート級に高い。毒や麻痺で絡め技などを使う反面、スピードと攻撃力も高いため一瞬で狩られる危険がある。
 
 シアラは今のところいちばん強いですが、既にキールと戦うことが嫌になるくらいにはキールも強い。純粋にぶつかり合っている感じがするヴォルトとは結構戦うかも。
 
 ヴォルトは意外と戦うのが好きで、売られた喧嘩は買う。ただ何気ない日常というのも好きなのでギルドからは特殊許可扱いになっている。
 
 ライズとキールは双子。卵の中で成長している途中にキールはライズに吸収された。そのためライズの体にキールも宿ったいわゆる二重人格のようになっているが主人格はライズである。ライズ(キール)の体は通常の臓器を1とすると2ある。つまり2倍。心臓と肺、脳の比率が2。
 
 キールは全てのステータスがカンストしているような状態。ただし、精神年齢が幼いまま成長しないのでその面では不安定。通常個体を遥かに凌駕する身体スペックはラージャンを一方的に転がせるくらいには強い。キール相手に立回るさいはカウンターを狙うしかない。
 
キールが家族に使う呼び方
 みどり···姉様(アネサマ)
 ヴュール···兄さん(ニイサン)
 ライズ···兄様(アニサマ)
 シアラ···姉ちゃん(ねえちゃん)
 ヴォルト···兄ちゃん(にいちゃん)
 
擬人化時の姿について
 それぞれ自身の鱗などを変化させて身に纏う。大体視野が狭まるのが嫌なので頭装備は取っていることが多い。アレンジが入っている。武器に関しては生成できない。ハンターの振りをしたり(ヴォルト)そのまま突撃したり(シアラ)ハンターから奪ったり(キール)する。
 
ヴォルト「この素材で大剣を作ってもらいたい。」
鍛冶屋「なんじゃこの素材はァ!?」(超爆速生成)
 
シアラ「武器作って〜!」
鍛冶屋「なんだコイツ!?」(脅されて作った)
 
キール「あっ....死んじゃった。なんか使えるのあるかな」(死体漁り)
 
使用武器
 ヴォルト···大剣
 シアラ···ナックル(殴る)
 ライズ···戦わずに逃げるか擬人化を解除する
 キール···弓:衝弓【虎穿】改(死体漁り)
 

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