ジリリリとけたたましく鳴る目覚ましの音で目が覚めた。
やぁ。僕はこの話の主人公。
春風高校に通う2年生『
ここは僕の自室。
だけど特に特徴がないからそこは省こう。
「ふぁぁ…今はえっと…」
僕は寝ぼけながら目覚ましの時間を確認する。
時刻は8時。
僕の登校時間より1時間ぐらい前に設定している。
目を覚ますために一階へと階段を降りて顔を洗いに行った。
その時、居間から出て来た母にすれ違う。
「あれ、悠まだいたの?てっきりもう行ったのかと思った」
僕はまた母が寝ぼけたのかと思った。
何故ならうちの母は朝にめっぽう弱いからだ。
「いや。まだ8時だから時間はある」
それを聞いた母は不思議そうな顔でこう告げた。
「?何を言ってるの。今は8時40分よ」
…はい?
僕は硬直した。
しかし急いで居間に行き、時計を確認すると8時40分になっている。
念のため自身の携帯でも確認した。まごうことなき8時40分。
「やばい」
急いで用意されていた朝食のパンを食べ。
服を着替えながら歯を磨いて顔を洗い、荷物を乱雑に持ち家を出た。
この時点で既に47分。
幸い、家と学校までの距離はそこまでない。走ればまだ間に合う。
そして僕は速さだけなら学校一だ。
「うぉぉぉ。間に合えぇ!」
今日に限った事ではないにしろ久しぶりに時間ギリギリになった事により僕は全力で走った。
歩道を走り、横断歩道を注意して走り、校庭を走り、靴を適当に履き替え、校舎内を悪いけど走って教室へ。
「間に合ったぁぁぁ」
息を切らしつつ僕は席へと座った。
「今日はギリギリだな悠」
と話しかけて来るのは友人であり同じ放送委員の『
幼稚園からの付き合いでふんわりした天パに眼鏡が特徴的な男だ。
余談だが学校一視力が高い裸眼でな。
何のために眼鏡してんだこいつ。
「あぁ。なんでか自室の時計がずれててよ。遅刻なんかしたら鬼丸に課題を倍に増やされちまうからな」
鬼丸とは担任の『
そんな姫と言うには程遠いと皆が親しみを込めた結果のあだ名が鬼丸。
いつもテンションが高く、美人なのが特徴。美人なのに未だ貰い手がいないらしい。
因みに加賀の義姉でもある。
「おっと…鬼丸がすっ飛んで来る時間だ。じゃあまた後でな」
加賀は自分の席に戻っていく。
そして他の生徒もぼちぼち会話をやめ、着席していく。
キーンコーンと授業のチャイムが鳴る。
廊下の方から何かが走って来る音が聞こえる。それは一旦教室の前扉を行きすぎて戻ってきた。
「はぁーい!みんな元気してるー?今日はね。皆さんにとってもハッピーな情報があります!」
鬼丸のハッピーな情報とは大体が僕らにとっていい事じゃない。
「それはーーー!」
鬼丸は言葉を溜める。嫌な予感しかしない。
「じゃーんッ!数学抜き打ちテストしちゃいまーす!」
鬼丸がバァンとテスト用紙を見せる。
その瞬間クラス中からブーイングの嵐。
勿論、僕もブーイングした。
「なんでテストなんだよ鬼丸ー。」
「テストやだー」
「こないだもやったじゃねぇかよ」
そんなブーイングに対し鬼丸はテンションを全く下げず対応する。
「うるさーい!先生は…先生は君達の事を想って…。そんな訳で受け取りなさい☆」
いつもこんな感じなのである。1時限目は地獄の時間だったが…まぁさして問題はない。
そして地獄の時間が終わり、2時限から下校時間までは特にいつもと変わらなかった。
そして放課後、僕と加賀は放送委員の仕事を終え下校しようとしていた。
「そういえば。鬼丸に何か頼まれごとされてたんじゃなかったのか?」
加賀が言う。…頼まれごと?あっ。
「やべー。放送室に行くならジャンプジャパンのCD持ってきてって言われてたんだった」
ジャンプジャパンとは今ブームになっている音楽ユニットである。それはどうでもいいとして。
「あのCDって鬼丸の私物だったんだな。どうする?戻って取りに行くか?ばっくれて明日でもいいが」
僕は考えたが、頼まれた事をばっくれる気分ではなかったので戻ることにした。
既に陽が落ちかけ、校舎内は極端に暗い。
「お、あったあった。これだよな」
「んー。多分そうだろうな鬼丸の私物ならどっかに熊のシールが…お、あったあった。これで間違いない。鬼丸の奴、私物全てに熊の刺繍やらシールやらがあるからわかりやすいんだよな」
「さ、回収したし帰ろう」
と言った時背後の出入り口がピシャリと勢いよく閉まった。
「なんだ⁉︎」
僕らは薄暗くなった部屋で顔を見合わせた。
そしてそっとドアノブに手をかけてみるとどうやら開くらしい。
「誰かのいたずらか?おどかすなよ」
と安堵し、ガラリと扉を開いた。
「どうゆうことだ…これ」
僕らは唖然とした。
そこは先程までの校内の面影はなく、あちこちにヒビがはいり風化した廊下に、窓ガラスがいたるところ割れて降り風が静かに吹いている。
「ちょっと待て。は?俺らはさっきまで学校にいて…」
加賀が戸惑う。
僕だって戸惑っている。
嫌な予感が走る。
元居た放送室を確認するため僕は後ろを振り向いた。
「放送室がない?そんなバカな」
そこには放送室とは程遠い、何もない風化した部屋があるだけだった。
「夢か?これ」
「夢だったらいいな」
「……」
僕らはしばらくその場で考えた。
しかし考えてもこれは夢ではないと言う事しか出てこない。
明らかに異常。
空間転移?過去?未来?僕らは一体どこに来てしまったのか。
加賀が、考えて居ても仕方ないのでとりあえず動こう。と言ったので放送室を後にすることにした。
「帰れるかな。俺ら」
加賀が呟いた。
「わからない。けど人さえ見つけてここがどこなのか聞けば何とかなるさ」
そうは言ったものの確証なんて何処にもない。
自分自身、急にわけわからないところに来て恐ろしいのだ。挙句夜みたいだし。
暫く歩き分かったことはこの建物は三階建のようで僕らが居た場所は三階の右奥の部屋だった。部屋の構造的にオフィスビルの様な感じがする。そして一階に降りた時、ある部屋に灯りがついているのを見つけた。
「なぁ、あそこ灯りがついてるぜ」
「人の声も聞こえるし少し覗いてみよう」
そっと入り口から覗き見る。
しかしそれは見てはならないものだったのかもしれない。
とても高価そうなシャツを着込んだ50代ぐらい男性が二人の黒スーツを従えた、二十から三十の間ぐらいの茶色い背広の男に銀色のトランクを渡しながら。
「これが今回の前金だ。いいね?絶対にしくじらない様に」
背広の男は笑って答える。
「はっは。問題はありません。我々をなめないでいただきたいですなぁ。暗殺の一つや二つ。事故死に見せかけることすら容易い」
こんな会話を聞いてしまったら後はどうなるか。
簡単に想像できる。死だ。
「まずいよ悠。今すぐここから離れないと」
「あ、あぁ。分かってる」
が、なんたる運の無さか。
僕は自分自身が恨めしい。
近場にあった錆びついた鉄パイプを少し蹴ってしまったからである。
中にいる全員が気づき驚いたようだが、すぐさま。
「誰だ!人なら殺せ!今すぐにだ。行けお前ら」
茶色い背広の男が黒スーツに命令した。