少し時間を遡る。
彼らが迷い込んだ建物の外。
それなりに離れた向かいの茂みの中に一人、ジッと右手に持った双眼鏡を覗き。
一階のある部屋を覗いていた。
「あ、来たわ。あれが時期役員の小田 英二ね。伊勢、そっちはok?」
左手には手のひらサイズの小型の通信機を持ち、伊勢と言う者に尋ねた。
「こっちは指定の位置についた。いつでも大丈夫だ」
「なら私の合図で突撃して頂戴。相手はプロといってもまだ全然の殺し屋が相手らしいから。貴方なら何とかなるわ」
「へーへー。その
女性はふふんと、貴方は馬鹿かしら。と言わんばかりの感じで言った。
「いいの。あれでもあの殺し屋の首には金がかかってるんだから。スクープも貰って殺し屋も捕まえて…ほら一石二鳥じゃない?」
その時女性は自分の計画には無かった一つの問題を発見した。
「…んんっ⁉︎ちょっと待った。伊勢、このビルって全くと言っていいほど人が来ないのよね?」
「ん?あぁ。建物の老朽化が進んであちこちが崩落の危険があるってゆうんでな。だからあいつらもここを選んだんだろ?」
女性の双眼鏡を持つ手が震える。もちろん怒りで。
「何てこと…何で今日に限って一般人が居るわけ?いや、それよりあの二人は何で覗いてるの!さっさと帰ればいいのに。あぁもう!私の計画が台無し!」
通信機越しに聞いていた伊勢は、
「落ち着け落ち着け。一般人が居るってなるとどうするんだ?流石に巻き込むわけには」
女性が答える。
「いいわ。作戦変更。貴方はあの二人を保護しなさい。私も今から向かうから。て、あぁ!あの二人が気づかれたわ。なんて日なのッ!」
と怒り任せに通信機を叩きつける。しかしすぐに我に帰り通信機が壊れてないか確認をした。
「これ壊れたら色々まずいのよ。あー!聞こえる伊勢!あーー!」
ほんの数分相手からの声は聞こえなかったが、ため息が聞こえた後
「聞こえてるさ。お前が叩きつけた音もやかましいその声も」
「よかった。壊れてないようねって…やかましいは余計よ!はやく二人を保護しなさい」
「分かっている。しかし、これは厄介だ。お前もこい。でなけりゃ俺は撤退する」
女性は少し驚いた、が。
「理由は後で聞く。私が行くまで何とかしなさい」
女性は通信を切り。茂みから出ると同時にその場で姿を消した。
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「やれやれ。これだからあいつは抜けてるところがあるんだ。何が『プロといっても全然』だ。まんまとあの情報屋に騙されたな。金と命じゃ割りに合わない」
耳につけた通信機からの通話を終了した体格の良い男性、伊勢だ。
「えっと…改めてありがとうございます」
短めの黒髪の青年が頭を下げる。
「問題ないさ。それよりこっからどうしたもんかなぁ。今俺の仲間がこっち向かってるんでね。それまで何とかしないといけないんだが。どうだ天パの坊主。あいつらは今どこに居る」
伊勢は加賀に尋ねた。
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少し前、俺らはあの黒スーツに追いかけられて2階へと走っていた。
「逃げろ加賀!全力で!」
俺より少し前を走っている悠が言った。
「分かっている。分かってるがお前ほど足が速いわけじゃない。それに…」
それに黒スーツも足が速い。
悠はともかく俺は追いつかれてしまう。
後数歩、届きそうになったが。
ドォンと後方から音がなる。
何だと思い俺は足を止め後ろを振り向いた。
悠も同じ。
黒スーツの一人が曲がった扉の下敷きになっていた。どうやら傍にある部屋の扉らしい。
そしてその扉から、見た目30〜40の間の男性が出て来た。
「無事か?坊主ども」
「え、あ、ありがとうございます」
もう一人の黒スーツが近づいてくる。
が、下敷きになっていた黒スーツを男は軽々と持ち上げ。
「お仲間さんだ。受け取りなッ!」
と黒スーツに思い切りぶん投げ、二人をそのまま奥のガラス窓から突き落とす。
「す、すげぇ…」
俺も悠もよくわからない事だらけだったが助けてくれるならありがたかった。男は逃げるぞと言い先導するため1階へと歩き出した。
でも俺は歩けなかった。
「どうした加賀。顔色悪いぜ?」
吐きそうなぐらい目の前がぐらつく。
それにこの耳鳴りは何なんだ。
いや耳鳴りか?違う、これは会話だ。
「大丈夫なのか?」
これは先程の高級スーツの男の声だ。
「問題はありません。何せもうこのビルは包囲していますから。殺し損ねなどありませんよ」
今度は茶色い背広の男。
「なら私は一足先に帰らせてもらうがいいな?あまり遅くなると危ない」
「ええ。後はお任せください」
それ以上は聞こえなかった。
しかし今度は目の前に異変が起こる。
建物全体が透過、と言っても物体のラインは形作られてはいるが、人物のみがそのままの状態で俺の視界に入ってくる。
「おい、大丈夫かよ!加賀!しっかりしろ」
悠が僕に叫ぶ。俺は、はっと我に帰った。
「あぁ。すまない。少し気分が悪くなっただけだ」
しかし、目の前は変わらず。黒スーツが下の階に見える。それも最初の二人だけではない。いつから居たのか?
既に数十はいる。
建物が広かったのがまだ助けになっているのか、黒スーツ達はまだ二階へと上がっては来て居ない。
俺は男に言った。
「そっちはダメだ。下に沢山の黒スーツがいる。逃げるなら上の方がいい」
二人は俺が何を言っているのか不思議に見ていたが男は何かを察した表情をし、上の階段へと進み始めた。
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そして今、僕らは一番奥の部屋に鍵をかけて隠れている。
「四人が三階に。十二人が二階に。一階に三十人と背広の男がいて外に軽く五十はいる」
加賀が男の質問に冷静に答えた。
「やっぱり明らかに増えてるんだよなぁ。ん…通信か」
男はしばらく誰かと会話していた様だが窓の外を確認し了解と言う言葉の後。僕らに向けてこう言った。
「お前ら。バンジーは好きか?」
「「はい?」」
僕らは答える暇もなく男に抱えられ部屋の窓へ。
しかし何の策があって窓に?僕が下を見ても何もない。
「あの!僕ら死にたくないんですが!」
男は笑った。
「なぁに。死ぬわけじゃないさ。だがちょいと衝撃はくるぞ。それ」
「「うわぁぁぁ」」
ついに飛び降りた、そのまま地面に激突…。
かと思いきや何やらクッションの様な物に着地した。それでもそれなりに痛かったが。
「…死んで…ない?」
僕は周りを見渡す。
すると声が聞こえてきた。
「当たり前よ。誰が死なせるもんですか。エンジンフルスロットルするから掴まっときなさい」
近くに来てようやく見えた。
どうやら軽トラの荷台の様で、運転席には女性が座っていた。
僕らが落ちてきた場所は荷台にそのまんまクッションを敷き詰めた所だった。
女性はエンジンをかけるとアクセルを力一杯踏んだ。僕らは思いっきりガクンとなったが落とされない様に荷台を掴んだ。
周りに何十と言う黒スーツが見えたが何故かこちらには気づいてない様子だった。
ビルがだんだんと遠くなっていく。
一体何処へ連れて行かれるのか。
不安でしかないが今は彼、彼女に命を預けるしかない。
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「さて、君達にまず名乗らなきゃいけないね。私は
夏奈はどう?偉いのよ?と言った様な顔で名乗った。
「で、俺が
「以上2名がこの暁相談所のメンバーね」
そう、僕らが連れてこられたのは彼女、夏奈さん達の事務所である。
「えっと…。僕は天音 悠です」
「俺は加賀 善一です」
女性はよろしいと言う表情で話を進める。
「悠君と善一君ね。よろしく。さて、まずはあなた方の入社を祝おうかしら。おめでとう」
ん?入社…?
「えっと…それはどうゆう?」
僕は戸惑った、いきなりにいきなりが重なる。
そろそろ頭がパンクしそうだ。
「何って。聞いてわかる通りこの事務所は人が足りないのよ。だから君達を助けた手前、見返りとして手伝ってもらおうかなって。返事は、はいかYESしかないわ」
夏奈さんは笑顔で言ってくる。
加賀と顔を見合わせるが正直これから行くあてもないし、渡りに船だと思い。なし崩し的にとも言えるが。
「はい、よろしくお願いします」
「俺も同じく」
僕らは入社を受けることにした。
「よかったな暁。本当の所は心配なんだろ?二人が」
伊勢さんがちゃかす。
「な、何を言ってるの。まぁ確かに断られたらどうしようかと一瞬思ったけど…。
そんな事より、今から貴方達の家はここよ。
今からお勉強会…と行きたいけど今日は貴方達も疲れてるでしょう?休みなさいな。
空き部屋はいくらでもあるからそこを使って頂戴。伊勢、案内は任せたわ。私は明日の準備をするから」
伊勢さんはへーへーと言い。
この家の何処に何があるかを教えてくれた。
1階は先ほどまでいた事務所になっており2階が生活する家と言う構造だ。
とりあえず空き部屋を二つ割り当てられた後、僕らは風呂に入った。
「なぁ。悠」
風呂場で加賀が聞いてきた。
「なんだ」
「俺ら、どうなるんだろうな」
「……しらね。でも夏奈さん達はいい人そうだし。それだけは幸運だったんじゃないか?」
「そうだな…今日はぐっすり寝たい。明日になったら何時もの朝になってたらいいな」
風呂を上がると着替えまで用意されていた。
伊勢さん曰く大体のサイズの服は倉庫にあるそうだ。どうしてあるかは後で聞こう。
ご飯も僕らの分まで作ってくれてありがたかったが、今日はあんまり喉を通らなかった。
その後就寝になった。
けれど僕は中々寝付けず自室を出た。
居間の方から明かりが少し漏れていたので誰か起きているのかと見に行く事にした。
「…あら。まだ起きていたの?」
居たのは夏奈さんだった。
「えぇ。少し寝付けなくて…少しだけお話ししても?」
夏奈さんは何かノートに書いて居た様だがノートを閉じて了承してくれた。
「ココアでいい?」
「あ、はい。ありがとうございます」
夏奈さんは台所にココアを作りに行き、コップを二つ持って帰ってきた。
「あの。なんで僕らを助けてくれたんですか?」
「それ私に聞く?助けたかったから。当たり前の事よ」
僕は我ながらアホな質問をしたと苦笑いした。
「そうですよね。なんで命の恩人にこんな事聞いたんだろう…」
「別に気にしないわ。今まで助けられなかったから…貴方達が生きてるだけでも十分なのよ」
夏奈さんは何処か悲しそうに微笑んだ。
「さ、明日は早いわよ。もう寝なさい。明日から貴方達はこの世界を生きるのだから」
僕は彼女の言葉に従い何とか就寝した。