他作品でギルメンと転移したり人間になったり女になったりと忙しいモモンガさん。そして、モモンガさんは新たな扉を開く。

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こんにちは。すずきさとる5さいです

12年

 

この年月は恐ろしく長く、呆気ないほどに早いものだった。

 

 

楽しかった時間も

 

辛かった時間も

 

くだらないことに没頭した時間も

 

後僅かで、ユグドラシルと共に幕を下ろす。

 

(これで、終わりか……長くて、短くて……)

 

先ほどまでログインしていたヘロヘロにも最後までいて欲しかった、そんな本心も吐き出せなかった自分の愚鈍さ、そして去って行ったギルドメンバーに対する怒りのままに手を振り上げ……テーブルに叩きつける直前でピタっと止まった。

 

(分かってる……皆が正しくて、俺が異常だって……!!)

 

誰もがリアルで必死に生きて、現実と向き合っているのだ。

生きるため、食うためにも必要なことである。

 

少なくとも、誰もいなくなったゲームで惰性をむさぼる自分と比べるなど烏滸がましい。

 

(嫌なことから目を背けてゲームで現実逃避……はは、これじゃあまるで子供じゃないか……)

 

何の目標も持たず

 

嫌なことがあればゲームの中に逃げ込んで

 

 

仮想世界で「理想」の自分を作りこんで悦に浸る。

 

 

少なくとも、立派な大人とは言えない体たらくだ。

 

仕事の息抜きとかでやっていたギルドメンバーとは違い、自分はなんと浅ましいことだろう。

こんな底の浅い自分だったから、皆も自分から離れて行ったのではないか?

 

(魔王ですらない……私は何なんだろうな……)

 

現実を見れなかった大人でもなければ、毎日を全力で駆け抜ける子供ですらもない。

 

 

ゲームの中で得た職業も、自分の証明になどなるわけがない。

 

 

自分の功績である神器級の装備も日付が変われば全てが消える。

 

 

結局、行き着く先は“無”だった。

 

 

「……もう、いいか」

 

諦めとも取れる台詞と共に壁に立てかけられていた杖を手に取る。

装備した瞬間に各ステータスが上昇する。

 

こんな性能も意味のない物となる運命だが、何物でもない自分に残された「自分の軌跡」ともいえる。

せめて、これだけは最後の最後まで自分の手元に置いておきたかった。

 

 

ギルドを象徴する杖を片手に、モモンガは最後の時を迎える場所へ向かった。

 

 

 

 

 

玉座に向かう途中でモモンガは階層守護者、及びプレアデスの面々を付き従わせ、玉座の間の扉前に待機させた。

 

天井に飾られたギルドメンバーの旗以外に目立ったものはない、静かな空間。

この空間にいた守護者統括のNPCさえも扉の外へ出した。

今はただ、一人だけでいたかった。

 

仲間たちが心血と金をつぎ込んで作りこんだNPCは過去を思い出させてしまうのだから。

 

 

 

思い出すと言えば、先ほどのヘロヘロの言葉が気になっていた。

 

(ユグドラシル2……か)

 

最盛期を誇っていたユグドラシルでさえもこうして終わりを迎えようとしているのにユグドラシル2なんて始まってもすぐに未来予想図が頭の中でできてしまう。

『サービス終了』という結末がオチだろう。

 

(またチュートリアルから始めるのもダルイしサービス直後のガチャって絞られてるからなぁ……)

 

そもそも一つのゲームに12年ものめりこんだモモンガは今更他のゲームに靡くような精神は持っていない。

今のアインズ・ウール・ゴウンでさえも長い年月と給料をつぎ込んできたのに、それが一瞬のうちに水のあぶくのように消えると考えるとやる気も無くなる。

 

(ペロロンチーノさんみたいにエロゲでも……あ、ぶくぶく茶釜さんの声があるんだった)

 

ユグドラシルが消えた後、自分は何をしていこうかと考えるが、中々見つからない。

思えばメンバーの一人一人が癖の強い猛者たちだったが、それぞれのめり込んでいたジャンルがあるのだ。それは間違いなく趣味なんだろう。

 

タブラ・スマラグディナのようにニッチな逸話とかに詳しかったりウルベルトのような悪の道理、たっち・みーのように正義に憧れたり。

思えば、彼らは自分の趣味を全開にしてたからお互いにぶつかり合ったりし、それを自分がなだめていた気がする。

 

その時は苦労したけど、今思えば彼らはとても楽しそうだった。

 

(皆、子供みたいに我儘だったなぁ……やっぱり充実した人生ってのはあれくらいに子供っぽくなることも必要なのかな)

 

さっきまでの暗い感情もギルメンのことを思い出すと胸が軽くなった。

そして、その思い出の中に理想的な人生の歩み方があったんじゃないかと思い返す。

 

(もしかして皆、実は凄かったんじゃあ……)

 

やっぱりギルメンは凄かった。この場にいないギルメンへの評価をモモンガの中で上げていると、コンソールに表示されている時間に気が付き、明るくなりかけた気分がすぐに鎮静化した。

 

(今度こそ終わりか)

 

何だかこんな土壇場で自分は過去を思い返すばかりで何もできなかった気がする。

迫りゆく終わりの時に何もできないのは何だか癪だと思うも、すぐには思いつかない。

いっそのことNPCの設定でもイジってみるか、とも思ったけどその時間さえも惜しいほどにユグドラシル終焉のカウントダウンは進んでいた。

 

それなら、と思って《流れ星の指輪》をおもむろに天に掲げた。

 

自分のボーナスをつぎ込んで当てた超レアアイテム。結局、大事に重宝し続けて最後まで使わなかった指輪を初めて使用する。

 

(どんな願いも……か)

 

現実にあったら間違いなく国宝もいいところだ、そう思いながら縋るように告げた。

 

「I wish」

 

指輪が光るのを確認し、願いを告げる口は自然に吐き出された。

 

 

「俺を……

 

 

 

何もかもが新鮮に思えて

 

 

 

全てが未知で

 

 

 

 

我儘でいられて

 

 

 

全てが楽しいと思えた

 

 

 

 

無垢な子供の時代に

 

 

 

 

戻してくれ……」

 

 

 

過去への懐疑か、それとも決別か。

本人にしか知りえない真意はモモンガの胸の中にのみ響く。

 

 

これでユグドラシルの冒険は終わった……

 

 

願わくば、次の冒険があると願って

 

 

世界の終わりを静かに見送る。

 

 

 

 

それは兆候だったかもしれない。

 

自分たち下僕の尽くは至高の御方により玉座の間に入ることなく、待機するよう命じられた。

守護者統括でさえも待機を命じられる……これほどの異常事態などそうそうにない。

 

だとしたら、自分たちは至高の御方であるモモンガ様の元で待機しなければならない……それなのに、その使命そのものがモモンガ様によって止められている。

何らかの我らには及びもつかない意図をお持ちなのか、それとも不要とみなされたのか。

 

前者はまだいい、ただし後者だけは絶対にあってはならないことだ。

 

我ら下僕にとって至高の御方々に仕えることこそが至高の喜びであり、存在理由なのだから。

 

 

御身のために「死ね」と命じてくださるのなら喜んでこの身、命の尽くを御方に差し出そう。

我らにとって真に恐ろしいのは、至高の御方に不要の烙印を押されることである。

 

もし、我々が気付かぬうちに無礼を働いてしまったが故の対応なのだとしたら―――

 

今はそんなことを考えている場合じゃない。

たとえ、どんな意図が込められていようともやることは変わらない。

 

至高の御方をお守りする、その一点に限る。

 

 

断固たる決意を固め、私情を捨てて敬語に集中しようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

玉座の間から何かが落ちた音が聞こえた。

 

下僕が一糸乱れぬ動きで扉の向こう側を見据えるように体を向けた。

 

何かが床に落ちる音は断続的に続く。まるで重いものが転げ落ちていくように。

落ちたものが何なのかは分からない……だが、玉座の間において高い場所など一つしかない。

 

玉座

 

「モモンガ様!!」

 

導き出される異常事態は下僕たちの不安を掻き立てた。

その衝撃は凄まじく、あろうことに守護者統括の任を担うアルベドが真っ先に扉を開いて玉座の間に飛び込むように駆け出した。

 

至高の御方に控える最高責任者とも言うべき守護者統括がモモンガ様からの命令に、誰よりも早く背いた。

これは決して許されるべきことではない。平時ならアルベドの行為は越権行為の何物でもなく、自害を命じられても文句は言えない、逆に自ら進んで自害するほどの反逆行為に他ならない。

 

ただし、今の非常事態でアルベドの行為を咎めるものなど誰もいない。

むしろ、アルベドは自身の勅命を忠実にこなしているのだから。

 

モモンガ様の身に何かが起こってしまった可能性のある現段階においてアルベドの行動は間違っていない。

いや、そもそもこのような事態を引き起こさないように務めるべきだったのは我々の方だったのだ。

 

下僕たちは己の無能さに拳を握り締め、デミウルゴスに至っては拳を握り締めて出血したほどだ。

 

だが、ここで自らの無能を振り返る時ではない。

 

最後まで我々を見捨てることなく残って下さったモモンガ様に危険が迫っている……たとえ、後で我々の無能さに呆れ、自害するよう命じられることになろうとも構わない。

 

 

至高の御身の安全

 

 

至高の御身に仕えるという我々の存在意義

 

 

その二つを天秤にかけた結果など言うまでもなかった。

 

「モモンガ様! 如何なされましたか!?」

 

外で待機していた守護者、セバスを加えたプレアデスが玉座の間になだれ込む。

下僕の見据える先は玉座のみ、それ以外のものなど視界に映らせないまま玉座へ続く段差の前に辿り着いたとき、下僕たちの心は絶望に染められた。

 

誰もいない。

誰も鎮座することない玉座にはモモンガが装備していた装備品だけが脱ぎ捨てられていた。

まるで、この世界から忽然と姿を消したように。

 

見捨てられた……そんな諦めが心の中に浮かんだ時だった。

 

 

 

 

「んん~……」

 

下僕以外の声が聞こえた。

姿なき声の主に下僕たちは臨戦態勢に入る。

 

各々が姿を確認と同時に迎撃するように構えた状態で声の元を辿り、絶句した。

そこはあろうことにも玉座であり、モモンガがいたとされる場所

 

脱ぎ捨てられた装備がモゾモゾと動き、その中から声の主が現れた。

 

 

それは異形種しかいないナザリックにはいるはずのない人間の子供だった。

5、6歳くらいの小さな人間の子供が脱ぎ捨てられたマントから這い出てきた。

 

下僕たちは混乱の極みにいた。

 

本来なら玉座の間に立ち入るべきでない下賤な人間に対し、相応の報いを味合わせなければならない。

有無を言わさず子供相手でも排除すべきはず……それなのに、下僕の尽くが動けなかった。

 

人間から感じるはずのない気高き気配、そして微かに感じる絶対的強者たるオーラ

 

まさか、まさか、まさか……っ!!

 

 

 

信じがたい光景が目の前に広がり、それが現実だと思い知らされる。

 

 

ナザリックの至宝……リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが人間の子供の指で光った。

 

 

「モモンガ様……なのですか……!?」

 

アルベドの声に反応したモモンガは眠そうにつむっていた目を擦り、困惑する下僕たちを目にすると舌足らずな口調で口を開いた。

 

 

「なにこれぇ……?」

 

小さくつぶやいた声は玉座の間に響いた。




やってしまった、ショタンガさん爆誕!!

記憶は失ったわけではなく、精神と体が幼児化し、すずきさとる5歳になってしまった以外は原作と変わらず現地人からすればチート仕様です。

息抜き程度でほのぼのナザリックでも載せてみました。
あまり長続きしませんので、これで書きたいという人がいたら私の代わりに書いてくれれば幸いです。

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