ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~   作:兵隊

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 『それはありえたかもしれない結末』からOS編入ったら愉悦できるじゃろがい!と言われて、確かにってなりました、兵隊です。天才かよ。
 あっ、バレてるかもしれませんが、Vol.6とVol.7のヒロインは後輩です。ヤッタネ!




~べるせるく・おふらいん~
SAOコード・レジスタの魔法少女姿を見て。

恐怖「ブワハハハハハwwwww」
英雄「(怒)」
恐怖「明日奈はいいとして、マジかよ桐ヶ谷! 魔ww法www少ww女wwwってwwww」
英雄「なんか文句あんのか?」
恐怖「ないよ。ないけどよ、オマエ、ノwリwwノwwリwww」
英雄「(抜刀する音)」

紅閃(わ、わたしは良いんだ……///)




第12話 英雄と恐怖の奇妙な関係

 

 

 2025年6月2日 AM8:34

 帰還者学校 教室

 

 

「昨日はどういうつもりだったのよ?」

 

 

 黒髪の彼――――桐ヶ谷和人が帰還者学校に登校し席に座ると同時に、篠崎里香が近づきそんな問いを投げかけてきた。彼女は和人の空いている椅子に腰掛ける。どうやら腰を落ち着かせて、じっくりと話す気満々のようだ。

 

 

「……何が?」

 

 

 和人も里香の言いたいことは何となく検討がついている。

 彼女が言う昨日。特別に何かがあったとすれば、仮想(ネット)でも現実(リアル)でも騒がせていた出来事――――統一デュエルトーナメントしかなかった。

 そしてその大会に、和人は“キリト”として参加している。

 となれば彼女の問いは、統一デュエルトーナメント内で起きたことを指しているに他ならない。

 

 しらばくれる、とも取れてしまう和人の反応を見て、里香はニヤリと「ふーん」と口元に笑みをちらつかせて楽しそうに。

 

 

「とぼけるんだ?」

「何のことだか、サッパリ……」

「そう言う割には、眼が泳いでるんですけど?」

 

 

 最早言い逃れが出来ないと見た和人は、チラッ、ととある場所へと視線を送る。

 そこは窓際の席。その場所に座るはずの“金髪碧眼の目付きの悪い男子生徒”の席。だが今は無人で誰も座っていない。どうやらまだ登校していなのだろう。それを証拠に、机の中は空っぽであり、登校してきた形跡すらもない。

 

 和人はため息をつく。

 そして小声で里香に再び視線を送ると。

 

 

「誰にも言わない?」

「誰にも言わない」

 

 

 力強い里香の頷きを見て、和人はポツリポツリと渋々と言った調子で言葉を絞り出していく。

 

 

「アレだろ。リズが言いたいのは、一回戦目の俺だろ?」

「当たり前じゃない。何なのあれ? やる気がないにも程があるでしょあんた」

 

 

 自覚はあった。

 動きは繊細さを欠いた散漫なもので、相対するプレイヤーの動きに注視せず、余計なことを考えながら剣を振るっていたことを、和人は覚えている。

 

 余計なこと。

 それは彼が負けた理由に他ならない。試合に集中せず、相手の動きすらも分析しないで、言ってしまえば考えながら剣を振るっているの状態。そんな状況下で勝利することは出来ない。例え彼が“はじまりの英雄”と呼ばれていようと変わらない。

 本来であればそんな愚行を起こす人間ではない。桐ヶ谷和人は――――キリトは、“はじまりの英雄”は常に冷静で、相手の動きを分析し、類まれなる洞察力で動きを読み、例えイレギュラーが起きようとも非凡な持ち前の反応速度で以て対応していく。

 だからこその“はじまりの英雄”。SAOでも一人しかいなかった二刀使い、ユニークスキル『二刀流』の担い手なのだから。

 

 だが先のトーナメントでは見る影もなかった。

 一般プレイヤー以下のプレイヤースキル。むしろどうして本戦にまで勝ち残れたのか疑問に思うほど、世辞でも強いとは言い難いモノ。とても“はじまりの英雄”と称されたプレイヤーとは思えない。

 

 キリトというプレイヤーを良く知らない人間であれば、それは調子が悪かっただけだろう、と簡単に片付けてしまうだろう。

 だが里香は違う。彼女は常にキリトの背を見守ってきた。命をかけて攻略する際でも、ギルド仲間と喧嘩をするような取り留めのない日常でも変わらない。変わらず、里香はリズベットとして、キリトを見守ってきた。

 

 故に、気付いた。だから、違和感を覚えた。

 和人は全力でもなければ、本気も出していないのだと。

 そして疑問に思ってしまった。そんな興味本位でしかなかった。

 

 

 二人の間に沈黙が流れる。とは言っても、気不味いそれではない。

 和人は言葉を選びながら、里香はそんな和人の言葉を待っているだけだ。しかし傍から見たら、奇妙な光景に映ることだろう。何せ腕を組み首を捻る和人を、ジッと里香が見ているだけだ。その間二人の間に会話という会話がないのだから、奇妙に見えることだろう。

 

 それも永遠と続かない。

 数秒の沈黙。それを破ったのは和人であった。彼はポツリポツリと力無く口を開いていく。

 

 

「その、俺が負けたのは……」

「負けたのは?」

「アイツが先に負けたからだ」

「………………は?」

 

 

 ポカン、と口を開く里香。

 アイツという曖昧な三人称。心当たりがない――――訳ではなかった。和人がアイツなる人物に心当たりはある。

 だがそれとこれと、どう関係するのか皆目検討がつかない。

 

 里香が眉を抑えて、考えるのも無理はない。

 肩を落とし、理解が出来ないことを何とか理解しようと努力したまま、里香は再度問いを投げる。

 

 

「えーっと、どうしてあんたが負けた理由と、アイツが負けたことが関係あんのよ?」

「ぶっちちゃけるとさ。俺、別にデュエルトーナメントとか興味なかったんだよ」

「どうして出たのよ?」

「アイツが出るって言うから。決着つけるなら今かなーって」

「決着って……。もう着いたんじゃないの?」

 

 

 少なくとも里香はそう聞いている。

 ゴールデンウィーク、5月3日で行われたオフ会の最中に、和人と“アイツ”なる人物はアルヴヘイム・オンラインへログインをして、人知れず争い決着したと。

 聞き間違いでも、デマでもない。何故ならそれは、“アイツ”本人から里香は聞いたのだから。どちらが勝利し、どちらが敗北したのか、里香は耳にしている。

 

 しかし、和人は納得していないようで。

 間髪入れずに彼は首を横に振って、“アイツ”なる人物が言っていた決着を拒否していた。

 

 

「何一つ着いてない、何も終わってない。アイツが勝手に言っているだけさ」

「……あんたも拘るわねぇ?」

 

 

 仲良くすればいいのに、と里香が思ってしまうのは間違いではない筈である。

 誰だって争うのは疲れるものだ。物事に勝利するということは、必ず何者かが敗北していなければならない。そして誰だって敗者でいるのは嫌なものであるし、勝者でいたいと思うのは世の常であろう。

 

 だが妙なことに、和人の反応は違う。

 “アイツ”に勝利して嬉しい、というより、“アイツ”が敗北して悔しい、に近い。勝利を誇るのではなく、敗北して遺憾に覚えているように。

 まるでそれは、“アイツ”が自分に負ける姿など、見たくもないというかのよう。複雑で奇妙なものに見える。

 

 

「つまりはなに? アイツが負けたから、あんたもやる気がなくなったってこと?」

「まぁ、そんな感じ、かな?」

「……呆れた」

 

 

 はぁ、とため息を吐く。

 言葉の通り、里香は呆れながら席を立つことにした。心配して損したとはこのことだ。何か特別な理由で調子が悪いというわけではない。ただ単純に、和人のやる気がなかったから負けた。その程度の理由でしかなかった。

 

 

「あっ、アイツには言うなよ!」

「言わないわよ。本当にあんた達は仲が良いんだか、悪いんだか――――」

 

 

 そこまで言うと「ん?」と何かを思いつき、里香は立ち止まって考える。

 そして一瞬で、瞬きする程度の数秒で、ある結論に至った。

 

 そう。

 自身の数多のライバル達。

 それは『月夜の黒猫団』のサチであったり、彼の血の繋がっていない妹である桐ヶ谷直葉であったり、“アイツ”の妹と友達であるシリカこと綾野珪子であったり、神出鬼没の情報屋こと鼠のアルゴであったり、ダークホースのAIユイであったり。とにかく数が多かった。

 

 しかし警戒すべきは彼女達ではなかった。条約をむすべき相手、注目するべき相手は他にいた。

 “アイツ”に負けたくないという男の子特有の負けたくない相手、だが負けた姿も見たくないという“アイツ”に向けられた複雑な心境。

 

 

「あたしの本当のライバルはアイツだった――――?」

 

 

 違う、そうじゃない。

 根本的な部分で、間違っているのは、気の所為ではない――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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 2025年6月2日 PM16:45

 某都内高校 校門前

 

 

 どうやら私は、自分が思っているよりも、有名人になってしまったようだ。

 どうしてこうなったのか、何故そうなったのか。自分でもわからない。

 

 いいや、実のところわかってはいる。

 私が有名人になってしまった事件を、私は何となく理解していた。

 

 出来事は数週間前に遡り、場所はここ校門前。

 私は妙な集団に絡まれた。確か名前は遠――――何と言ったか。とにかく同性の私が見ても化粧が濃く、世間では彼女やその取り巻きのことを不良と称するのだろう。

 

 そう、不良。

 彼女達の人間は本当に目立つ人種だ。良くも悪くも、いいや、悪く目立つ。周りの生徒達からは腫れ物を扱うように、彼女達の奇行にも見て見ぬふりをする。それは教師だって同じだ。無視する教師もいれば、笑顔で接しているモノ好きな教師もいる。だが根本的な部分は同じだ。面倒事を起こされたくない、という本音が見え隠れしている。

 しかし彼女達は騙される。彼女達に笑顔で接している教師は『話のわかるヤツ』だと勝手にフィルターを掛けているが、本質はどの教師たちも一緒。面倒事を起こしてほしくない、それに尽きるものだ。ただやり方が違うだけ。そもそもいないものと無視してやり過ごすか、少しでも印象良くしていざという時言うことを聞いてもらう、くらいでしかない。

 なんとも滑稽なことに、彼女達を本当に思って接している教師や生徒など、この学校には存在しなかった。

 

 それが、いけなかった。

 言ってしまえば彼女達は異分子。むしろ、いないほうが良いくらいの存在でしかなかった。

 それ故に、彼女達は目立つ。だからこそ、目立ってしまう。

 

 規律を守る人間もいれば、破る輩も存在する。

 どちらが目立つと言えば、完全に後者なのだろう。

 学校を遅刻してくるなど日常茶飯事、他校の不良とも繋がりがあり、援交しているとも噂すら有る。

 

 そんな人間に、私は歯向かった。

 真正面から堂々と、関係がないと言わんばかりに空気を読めずに。

 正直な話し、歯向かったのは私だけではない。あの人も、というよりもあの人が――――先輩が完膚なきまでに撃退していた。

 

 それからというもの、遠なんちゃらの姿は見ていない。

 彼女だけではなく、彼女の取り巻き連中すら見ていない。それほどまでに先輩の言葉が刺さったのだろう。残念なことに私は何一つ聞き取れなかったが。

 流石、先輩である。言葉だけで追い払うなど、先輩にしか出来ない芸当だろう。

 

 そう、先輩が追い払ったのだ。私はただ見ていただけ、絡まれている私を守り、誰も傷つけることなく事を収めたのは先輩だ。

 しかし第三者からはそうは見えなかったらしい。学校でも有名な不良グループを追い払ったのは謎の金髪碧眼の男子高校生と“私”という事になっているようだ。

 

 迷惑――――というわけではない。

 むしろ嬉しくもある。何せ先輩と私で撃退したことになっている。それはつまるところの共同作業に他ならない。二人で行った、初めての、共同作業。そう考えたら気分も高揚するというもの。

 真実はそうではない。全て先輩の功績であり名誉。何もしていない私が一緒になって一目置かれるのは絶対に間違っている。

 

 だが第三者はその事実を知らない――――。

 

 

「ねぇ、今日こそお礼をさせてよ朝田さん!」

 

 

 彼もその一人だ。

 私服であれば中学生とも見える、痩せ型の小柄な男子高校生。しかし私と同じ学校の男子制服であるのだから、彼も高校生であることがわかる。

 

 お礼とは大げさなことだ。

 私は特別なことをしていない。校舎裏で他の男子生徒に絡まれていたところを、何をしているのか? と見ていただけだ。声を掛けるかどうか迷っていた。先輩ならば声をかけていただろう。だが私は先輩ではなく、先輩のような勇敢でもない。そう私は、先輩のように、強くないのだ。

 

 それが良かったのか、悪かったのか。

 件から私は素行の悪い生徒達からも一目置かれるようになってしまった。

 そんな私がジッと何も言わずに、ただ見ていたのだ。不気味に思ったことであるし、彼に絡む男子生徒も逃げるというもの。そうして勘違いは加速していく。彼は私が助けてくれたのだと、物事は進んでいってしまう。

 

 

「えっと、新川くん、だったっけ?」

「そうだよ。覚えてくれたんだね!」

 

 

 それは毎日、お礼をさせて言われればね。

 という軽口を飲み込んで、私は努めて冷静に、表情も変えずに説明することにした。

 

 

「何度も言うけど、アレは勘違いなの」

「勘違い?」

「そう。私は貴方を助けるつもりはなかった。だからお礼を言われることも、される謂れもないわ」

 

 

 きっぱり、と。

 さっぱり、と。

 ばっさり、と。

 これでもかというくらい、私は断言してみせた。

 

 しかしそれも無駄に終わる。

 新川くんは少しばかり眼を丸くさせるが、直ぐに笑顔になり、なおかつ距離を一歩詰めて。

 

 

「でも僕を助けたという事実は変わらないでしょ?」

「だから助けたわけじゃ――――」

「追い払ってくれたでしょ?」

「……まぁ、結果だけ見てみたら、そうだけど……っ!」

 

 

 ハッ、と口を抑えるも遅かった。

 認めてしまった。私は追い払ったという事実を、認めたことを口にしてしまった。

 

 瞬間、新川くんの笑みは深まっていく。

 ニッコリと、私の言葉を待っていたかのように、満面の笑みで。

 

 

「だから、ね? お礼をさせてほしいんだ」

「……貴方、図ったでしょ?」

「何のことかわからないよ。僕はお礼をしたいだけさ。そうでもしないと僕の気が収まらないからね」

 

 

 気が収まらないとは比喩ではなく、そのとおりなのだろう。

 彼は私に“お礼”するために、これからもこうして会いに来てくれるのだろう。

 

 正直、心苦しい。

 これは勘違い。彼が恩を感じる必要もないというのに。

 だからこそ――――。

 

 

「お礼って何をしてくれるの?」

 

 

 速く終わらせようと思った。

 これ以上先延ばしにしないためにも、早急に終わらせて貰おうと。

 

 新川くんは少しだけ考えて。

 

 

「近くの喫茶店で何か奢る、というのはどうかな? 静かなところを知ってるんだ」

「喫茶店ね、了解」

 

 

 それだけ聞くと、私はカバンから携帯電話を取り出し、通話履歴の一番上のとある人物に電話をかけた。

 携帯を耳に当てると直ぐに、コール音が鳴る。良かった。電源は切っていないようだ。

 

 

「誰に、電話かけているの?」

 

 

 恐る恐る、といった調子で新川くんが尋ねてきた。

 

 

「喫茶店好きな人がいるから、その人にも来てもらおうと思って。大丈夫、その人の分は私が出すから」

 

 

 嘘である。

 彼には悪いが、正直な話し彼を信用している訳ではない。友達でもない人がこうして誘うなど、何か狙いがあるに決まっている。

 

 伊達に長年ボッチをやってないのだ。侮らないでほしい。

 だかこそ――――。

 

 

『ンだよ?』

 

 

 繋がった。

 私は安心したのか、無意識に胸を撫で下ろした。

 だがやはり緊張しているようだ。浮ついた声を隠すことも出来ず、心臓は高鳴ったまま。

 

 

「もしもし、暇? 暇よね?!」

『……トラブってんのか?』

「似たような感じ、かな?」

『……仕方ねぇな。どこにいんだ?』

「喫茶店、なんだけど……」

『はぁ?』

 

 

 ――――我、救援を、願う――――。

 

 

 

 





~べるせるく・おふらいん~

クライン「な?」
キリト「んー?」
ユーキ「あー?」
クライン「かっこつけしりとり、やらね?」

アスナ「え?」

キリト「(待ってましたと言わんばかりに立つ)」
ユーキ「(やれやれと言った感じに準備体操)」

アスナ「え、え?」

クライン「(片手をポケットにいれ斜に構えたポーズでもう片方の手で明後日の方を指差しながら)腐れ外道の蝉時雨」
キリト「(仁王立ちして天を睨みながら)冷凍みかん母性本能改革」
ユーキ「(クラウチングスタートの姿勢で)屈折した防虫剤」

リズ「……なにしてんのあれ?」
エギル「男の子ってのはな、ああいうことを偶にしたいもんさ」
ユイ「団長さんが右往左往してます。可哀想です……」
リズ「ユウキもバカ兄貴のマネしてるし……」


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