ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~   作:兵隊

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 べるせるく・おふらいん
 ~血液型占い~

後輩「先輩、血液型占いしましょ」
先輩「あぁ? やだよ、面倒くさい。オレ、そういうの信じてねぇし」
後輩「いいから、いいから。まずこの祭壇の盃に血を垂らして――――」
先輩「おいちょっと待ってや。オレが知ってるのと微妙に違う」

和人「いや、微妙どころの騒ぎじゃないだろう」


幕 間 妹同盟

 二人の剣姫が相対していた。

 一人は片手剣を構え、もう一人の獲物は長刀でそれを両手に持つ。

 

 剣を両手に構える。

 獲物の剣先を相手の眼に向けて構え、右足を一歩前にしている様は、どこか剣道の中段の構えに通じていた。正眼の構え、人の構え、水の構えとはよく言ったもの。この構えから、他の全ての構えにスムーズに移行することができ、どんな攻めに対しても、瞬時に対応することが出来る。突かれるものなら剣先で受け流し、振り下ろされるものなら剣背で受ける。正に基本の構え。

 

 攻防共に隙が少なく、何よりも無駄がない。現代では剣道の基本として教えられる構え。それこそが“中段の構え”と呼ばれるモノであり、きっと彼女の最も得意とする構えだろう。

 

 対する少女は、構えと言う構えをとっていない。いいや、少女の今の姿が少女本来の構えと呼ばれるモノなのか。

 片手に持つ剣先は地に向けて腰を落とす。中段の構えをとっている彼女とは対照的で、奔放な様子でもある。一見、侮っているようにも見えるが、実際はその真逆。口元には笑みを張り付かせ、どこか楽しそうでもあるが、少女は明らかに目の前の彼女を警戒していた。

 

 一挙手一投足。

 表情の変化、何一つ見逃さないと言わんばかりに、集中し観察している。

 

 それを彼女もまた油断することなく、少女を見つめていた。

 

 

 奇妙な光景だった。

 彼女達がいるのは、アルヴヘイム・オンラインに浮かぶ浮遊城アインクラッド。その第一層であるはじまりの街。

 誰もが第一層の攻略をせんと、一層目のフロアボスが居る迷宮区に足を運んでいる。なのに彼女達はそんなものには目を向けずに、ただ眼前に存在する者に意識を集中させていた。

 周囲の人影は少なく、数少ない見物人達は固唾をのんで彼女達の動きに注目していた。

 

 わかっているのだ。

 初心者でも、上級者でも、腕に覚えるがあるプレイヤーでも。誰もが理解している。

 達人達による勝負が一瞬で決まるように、彼女達の剣撃も一瞬で決着すると。ならば無駄話などしていられない、余所見などもっての外。そんなつまらないことをして見逃してしまうなど勿体無い。

 

 誰かが生唾を飲み込み、一陣の風が吹いて、鳥が羽ばたいた。

 それが合図となったのか二人は同時に疾走を始めていた――――。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、負けた負けたー!」

 

 

 悔しそうに、されどどこか気持ちよさそうに、長刀を構えていた彼女――――リーファは自身の敗北を言葉としていた。

 彼女も自身の腕には覚えがある方だ。先程行っていた決闘(デュエル)するにあたって、リーファの実力相当なものだ。彼女が所属している風妖精族(シルフ)の中でも指折りの実力者でもある。

 

 それもあってか、決闘(デュエル)においてリーファはかなりの自信を持っていた。

 そして、今正に自分は得意であった決闘(デュエル)で敗北したという事実。悔しいという気持ちはもちろんある。だがそれ以上に気持ちが良かった。自分の持てる実力を発揮し負けたのだ。不完全燃焼ではなく完全燃焼。やれることをやって負けたのだから、悔いなどあるわけがなかった。

 

 対する少女も笑顔。

 今まで真剣に剣を振るい、相対していたとは思えないほど気持ちの良い笑顔を向けて片手剣の少女――――ユウキはリーファを純粋な気持ちで讃えていた。

 

 

「いやぁ、危なかったよー。リーファ滅茶苦茶強いから、ボクずっと集中してて疲れたもん」

「本当? 統一デュエルトーナメント優勝者にそう言ってもらえると、なんだか嬉しいな」

 

 

 それは本心での言葉だった。

 自分よりも一回り小さい目の前の少女は、かつて大々的に行われた統一デュエルトーナメントの優勝者である。リーファも出場していたからこそわかる。並大抵の実力者では勝ち残れない、文字通り熾烈を極まった大会だった。それこそ、運だけでは到底勝ち残ることなど不可能。真の意味での強者でなければ優勝など出来なかっただろう。

 そして今現在、リーファは肌で感じていた。優勝者と相対して、彼女がどれほどの怪物なのか理解することが出来た。

 

 ユウキは本物の天才だ。

 今では笑顔で天真爛漫にしているが、いざ剣を持つと変貌を遂げる。性格が変わるといったことではない。純粋無垢で、何事も楽しそうにしている姿は変わらない。

 雰囲気が違うのだ。透き通る紫色の双眸は真っ直ぐに自身に向けられて、些細な変化すら見逃さない。

 

 その視線はまるで剣だ。一本の剣だ。真っ直ぐに剣先を向けるかのように、視線が動くことはない。

 こと一対一において、ユウキに勝るプレイヤーなど存在しない。そこまで断言できるほど、リーファから見た少女は圧倒的だった。少しでも斬り結べていたのが奇跡であるかのよう。

 

 しかし、だというのに、絶剣と呼ばれる少女は慌てながら否定するように手を横に降って。

 

 

「やめてよー。ボクが優勝できたのは運が良かったからだもん」

「そんなことないってー。ユウキちゃん凄い強かった。実際戦ったあたしが言うんだもん、間違いないよ」

 

 

 そう、誰よりも強かった。

 今まで戦ってきたプレイヤーよりも。同じ風妖精族(シルフ)であるサクヤよりも、ALO最強の一角と呼ばれているユージーン将軍よりも、ユウキは強かった。

 

 だがユウキは否定する。自分が優勝したのは運が良かっただけである、と。

 謙遜、とは何やら違う。ユウキは本気でそう思っている。本気で自分が優勝できたのは幸運だったからと断言していた。

 

 ユウキの言い分が変わることはない。

 少女は何やら困ったような笑みを浮かべて。

 

 

「ありがとう、リーファ。でもボクより強い人達が調子悪かったから優勝しただけで、本当に運が良かっただけなんだ」

「ユウキちゃんよりも、強い人達……?」

 

 

 思わずリーファは訝しみながら首を傾げる。

 ユウキよりも強い、しかも“達”ということは複数形だ。はたしてそんなプレイヤーが存在するのか。リーファは皆目検討がつかない。一体全体それは誰のことを言っているのか。

 

 対するユウキは、ほら、と促しながら続けて言う。

 

 

「一人はボクのにーちゃんでしょー?」

「ユウキちゃんのお兄さん?」

 

 

 思い浮かべたのは、目付きが悪く口も悪く態度も粗暴で、兄という割にはユウキに全く似ていない金髪碧眼の男性。

 どこか近寄りがたく、リーファも一言二言程度しか会話していないことを覚えている。正直に言うと、リーファはユウキの兄を苦手としていた。しかしユウキが懐いていることや、何だかんだ言ってリーファの兄も一緒にいることから、悪い人間ではないことはわかる。

 

 だが言われてみれば確かに、とリーファは頷いた。

 彼女がユウキの兄を苦手としている理由の一つ。どこか彼には凄みがある。彼の纏う空気は、どこか現実離れしたものがあり、常人では推し量れない何かを秘めているのをリーファは無意識に感じていた。

 現実世界でも剣道を嗜んでいるリーファだからこそわかる。アレは武士に似たモノ、言うなれば戦士。厳密に言うと、戦う者の雰囲気であると。

 

 であれば納得する。

 ユウキの兄であれば、納得することも出来る。

 しかし次に出てくる人物だけは、リーファの予想外のモノだった。

 

 

「もう一人はキリトだね」

「えっ、お兄ちゃん!?」

 

 

 聞き間違いではないようだ。

 目を丸くするリーファを他所に、ユウキはうんと自信満々に頷いて。

 

 

「キリトはにーちゃんに勝った人だしね」

「うそ……」

 

 

 呆然と呟くリーファは想像が出来なかった。

 剣呑な雰囲気を常に纏っている人物に、明らかに常人とはかけ離れた人物に、自身の兄が勝利したという現実。リーファにとって受け入れ難いモノだった。

 

 何せリーファが知るキリト――――桐ヶ谷和人は普通の少年だ。

 家にいればだらしなく、それこそ休日なら昼過ぎに起きてくることなどしょっちゅう。家事全般など自分や母に任せっきりで、一人では料理すら出来ないと断言できる。確かに“はじまりの英雄”と呼ばれているのを何度も耳にしたしめにしたことがある。だがリーファにはまるで実感が湧かなかった。彼女の中ではあくまでだらしない兄であり、放っておけない初恋の男の子なのだ。

 そんな兄が、絶剣と称されるユウキよりも、ユウキの兄である彼よりも、強いという事実。

 

 

「同姓同名の別の人じゃないの?」

 

 

 出した結論が別人。

 うーん、と考えてひねり出した答えがソレであった。

 

 

「キリトはキリトしかいないよっ! リーファも見てたでしょ、シルフ百人斬り!」

「た、確かに見てたけど……」

 

 

 ついでに見惚れてたけど、と心の中で付け加えてリーファは少しだけ頬を紅潮させて続けた。

 どうやら当時の状況を思い出してしまったようだ。

 

 

「想像ができないと言うか……」

「リーファは頑固だなー」

「だ、だって~……!」

「でも、うん。リーファの気持ちも何となくわかるよ」

「ふぇ?」

 

 

 情けない声を上げるリーファに、ユウキは笑顔で頷いて。

 

 

「キリト何もないとき抜けてるもんね。SAOのときもそうだったよ」

「えっ、そうなの?」

「うん。何もないときはボク達のギルドホームの木陰で寝ているか、ユイと遊んでるかしかしてなかったなー」

「……それは想像出来る」

 

 

 目を細めて納得するリーファに、苦笑を浮かべて。

 

 

「でもね、凄いときは凄いんだよ。こう、なんだろう。ボクが考えもつかない事をやっちゃうんだ」

 

 

 だからね、と言葉を区切りユウキは好戦的な笑みを浮かべて続ける。

 

 

「ボクはキリトに勝ちたい。仇討ちってわけじゃないけど、にーちゃんに勝ったキリトに、ボクはどうしても勝ちたいんだ」

 

 

 何という向上心の塊だろうか。

 自然とリーファは感心していた。同世代でも歳上でも、ましてや歳下でも彼女のように上を向いている人間は見たことがなかった。

 今いる位置では満足できない。まだまだ、まだ自分は出来る筈だ、と上を見ている。それでいて、ユウキは楽しんでいた。楽しんで、努力をして、更に楽しみ、自分の至らぬ部分を貪欲に吸収する。どうりで強い筈だ、どうりで上手い筈だ。天才が何よりも楽しんで努力しているのだ。強くない筈がなかった。

 

 リーファから自然と笑みが溢れる。

 本当に彼女は凄い、と心から尊敬できる。競技者として、何よりも武道を嗜む身として、ユウキは手本となるところばかりだった。

 

 

「それじゃ、あたしはユウキちゃんのお兄さんに勝とうかなー」

「えっ、どうして!?」

「ユウキちゃんがお兄ちゃんと戦うんでしょ? だったらあたしも頑張らないとなーって」

「ボクがキリトに勝って、リーファがにーちゃんに勝つ、かー。……うん、面白そうだね!」

「もしくはさ、あたし達対お兄ちゃん達っていうのも楽しそうじゃない?」

「わー、なにそれ! 楽しそう! やりたいやりたい、それやってみたいよボク!」

 

 

 両手を上げて、身体いっぱい使って表現するユウキに、リーファは同じく笑う。

 

 兄を持つ妹同士、気が合うようだ。

 談笑し合い、自然流れで決闘(デュエル)を再び再開する二人。

 トップクラスの二人のプレイヤーの決闘(デュエル)だ。人垣が出来上がるのは時間の問題であり、夜遅いこともあってかユウキを迎えに少女の兄が登場し一波乱が起きるのも、そう遠くない――――。

 

 




ユウキとリーファの絡みがみたい人生でした。
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