ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~ 作:兵隊
~べるせるく・おふらいん~
汝、課金者の爆死を見よ編
クライン「」←サトノダイヤモンドピックアップで爆死した男
エギル「あっ(察し)」
キリト「なんというか、クラインって運が無いよな」←単発で引き当てた
ユーキ「運命力がねぇんだよ。オレも回すか」
キリト「意外だな。お前も回すのか」
ユーキ「おぉ、回す。ブン回す。当たるまで引く」
キリト(マジで意外だ。コイツもやってるのか)
ユーキ「来い、ビワハヤヒデ(鋼の意志)」
2025年12月13日 PM16:31
ガンゲイル・オンライン BoB予選
――凄い。
それが純粋な感想だった。
強がりではない。本当に心から、彼女は――――シノンは地下の待機ドームから見える予選の映像を見上げながら感想を漏らした。
彼女が見ているのは自身と同じ、Fブロックの予選の様子だ。
彼女は予選の対戦選手を速攻で撃ち倒すと、一人の選手の試合運びや癖を観察するために試合の映像を見守っていた。言ってしまえば敵情視察。その選手を応援する気などなく、少しでも隙を探ろうとするために、シノンは見守っていた。
彼女が驚いたのは、その選手が予選を突破したからではない。
“彼”が勝つのなんてわかっていたし、何より勝ち残ってもらわねば困るくらいだ。むしろ臨むところでもある。そういう意味では、“彼”と同じFブロックであることは好都合。途中では当たらないものの、勝ち残れば決勝戦で否が応でもかち合うというものだ。
彼女は勝ち残ったことには驚かない。
ならば何故、彼女は“凄い”と思ったのか。
それは問題の“彼”の試合運びにあった。
使用する武器は知っていた。
サイドアームに【FN・ファイブセブン】という片手でも扱えるハンドガン。そしてメインアームを【フォトンソード】またの名を光剣と呼ばれているこの世界の剣であった。
良く言えば近接特化。悪く言えば最弱装備。
それもその筈だ。
この世界において、近接戦闘メインで立ち回るメリットは薄い。
離れた距離で戦えるアサルトライフルやサブマシンガンのような連射性の高い武器を使用した方が良く、そんなに近接戦闘をしたいのならばショットガンの方が立ち回り的にも強いのだ。
それに折角、銃の世界とも呼ばれているガンゲイル・オンラインでプレイするのだ。わざわざ剣を選んで戦う物好きはおらず、所詮ロマン武器として扱われている。それがフォトンソードという武器の現状であった。
しかもサイドアームであるファイブセブンも引き金を引き続ければ弾丸が射出されるフルオートではなく、いちいち引き金を引かなければ弾がでないセミオート。連射性など皆無に等しい装備である。
圧倒的に装備が貧弱であり、極めつけは“彼”は銃撃戦など素人。
誰がどう見ても、勝ち目はないに等しかった。
それでも“彼”は勝ち上がっていた。
シノンが驚いていたのはそこである。
勝ち上がった事実ではない。その内容で、彼女は驚きを隠せなかった。
相対する相手を、“彼”は斬り伏せていたのだ。
そう。それは文字通り。この銃が覇権の担っている世界において、剣を用いて勝利を重ねていた。
弾丸を斬り伏せ、目にも留まらぬ速さで接近し、そのままの勢いで敵の首を落とす。つまりは文字通り、キリトは迫りくる弾丸を斬り落としている、ということだ。それを行うには、自身を狙っている標準――――弾道予測線から急所に延びている線だけを瞬時に識別しなければならない。
それだけでも、ありえない技術なのだが、実行に移す度胸も必要になってくる。なにせ弾丸を斬る、最悪逸らすことが出来なければ大ダメージを負ってしまうのだから。
弾道を読み取る反応速度、自分の感覚を信じ切る度胸、実行に移す技術。
この三点が一つでも欠けていると失敗する神業を、キリトは難なくやって魅せる。
だからこそ、シノンは手放しに称賛した。
同時に苦虫を噛み潰したよう、歯を食いしばる。
ここまで強いとは計算外だった。考えていた勝つためのプランもあらかた潰されていた。
だがー―――、
――まだ、手はある……。
シノンは諦めない。
ガンゲイル・オンラインは初めてといえど、初心者より動けるとは思っていたものの、ここまで強いとは思っていなかった。
だがそれでも、自分の優位性は変わらないという自信があった。
手はある。
弾丸を斬るというのなら、爆発物で攻めればいい。
弾道を予測するというのなら、弾道予測線が出ないように狙撃すればいい。
――そうよ。
――まだ勝ち目はある。
――私は諦めない。
――必ず倒して、優勝して。
――先輩の元へ。
そのために、少しでも勝率をあげるために、シノンはキリトの戦闘を観察していた。
食い入るように見ているのは、彼女だけではない。
周囲も声を上げることを忘れて、魅入ってしまっている者も居た。
ある者は口を開けて、ある者は眼を離さず、ある者は握りこぶしを作り、キリトの姿を――――はじまりの英雄の姿に魅入っていた。
ただ一人を除いて――――。
それは中性的な声だった。
頭部を覆う仮面を被り、表情は読み取れない。
だがキリトが戦うモニターを見上げているのだから、その人物も彼を見ているのだろう。
その人物は妙なものを見るかのように、一言不思議そうに呟いた。
「……なんだありゃ?」
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そうしてキリトは勝ち進んでいった。
一回戦、二回戦、三回戦、と彼は苦戦することなく勝利を重ねて、あと一回勝てば決勝というところまで登りつめた。
しかしキリトの表情は穏やかなものではない。
むしろ暗く、思い耽るかのように、一人椅子に座り込み、顔を伏し地面に視線を落としていた。
考えが纏まらなかった。
思えば目の前の敵に集中出来ておらず、ここまで来れたのも奇跡だろうと失笑する。
キリトが考えるのは先程の邂逅。
死銃と名乗る男との会話だ。
あの男は言った――――アインクラッドの恐怖がここにいる――――と。
それはつまり、アインクラッドの恐怖――――茅場優希もガンゲイル・オンラインをプレイしているということだ。
何を馬鹿な、と鼻で笑うことも出来た。
でまかせだろう、と否定することも出来たはず。
だが出来なかったのは、相手が死銃であったからだ。
銃撃した人間を意識不明にさせるという謎のプレイヤー。
とは言っても、本当に死銃が原因で意識不明になったのかは定かではない。偶然なのかもしれない。死銃が撃ち込んだと同時に、件の被害者であったゼクシードが持病かなにかで意識不明になり、居合わせた者が連絡し、一命を取り留めただけ。偶然が重なった結果なのかもしれない。
「そんなわけ、ないだろう……!」
キリトの両手を握りしめる。
己の楽天的思考を握りつぶすように。
そんな偶然はありえない。
そもそも死銃は己の力を認識していた。
でなければ、殺す、という単語など使わない。
偶然ではなかったのだ。死銃は殺意を持ってゼクシードを撃ち、意識不明に追い込んだのだ。
しかし証拠がない。
誰がやったのか――――死銃。
どうやったのか――――わからない。
何故やったのか――――わからない。
まるで虫食い回答を見ているかのようだ。
肝心の計算式すらわからず、いきなり答えが書かれている。そんなものでどうやって問題を解けというのか。
――しかも死銃は
――明日奈から二人はアスカ・エンパイアで遊んでるって聞いた。
――それを知っているのは、俺達だけ。
――なのに死銃は二人は一緒にいるって言い当てた。
――どうやってだ。
――どうやって、俺達しか知らない情報を、アイツは知ったんだ。
――どうやって……。
考えても考えても、答えは見つからず纏まらない。
何よりも無視できないのが――――。
――死銃のやつが、二人を狙っている……。
方法はわからない。
だが一つだけハッキリしているのは、あの兄妹の命が危ないということだ。
二人が前菜で、自分のことをメインディッシュと死銃は口にした。それは二人を殺してから、キリトを殺すということに他ならない。明確な殺意を持って、死銃は二人へ害をなそうとしていた。
知らせなければならない。
しかしどうやって。死銃は二人を知っているが、キリトは知る術がない。
――呼びかけるか?
――何て言えばいい。
――言ったところで応じると思うか?
――俺がキリトなんて証拠もないのに。
――どうやって俺が俺だと証明し、
――どうやってアイツらアイツだと判断すれば良いんだ。
――そもそも、アスカ・エンパイアにいるんじゃないのかよ!
理不尽であることはキリトも理解している。
それでも、勝手気ままに振る舞っている二人に一言二言文句を言いたい衝動に駆られていた。
命狙われているだぞ馬鹿野郎、と。
心配かけんなこの野郎、と。
声を大にして叫びたいのを、キリトはグッと堪える。ここで取り乱しては正体不明の死銃を喜ばせるだけだ。
周囲を見渡しても、死銃の姿は見えない。
苛立ちが募る。舌打ちをしたいのを我慢し、再び視線を落とす。
死銃のみが優位なこの状況、そして何も出来ない情けない自分を噛み殺す勢いで、奥歯を噛みしめる。
「……よう」
「え?」
ふと視線を上げると人が立っていた。
性別はわからない。頭部を覆うヘルメットのような仮面を装備しており、表情も読み取ることができない。ボディラインをハッキリとわかる凹凸のない装備。男性なのか女性なのかわからないプレイヤーがそこに立っていた。背丈は小さく小柄である。
そのプレイヤーはどこか小馬鹿にするような調子で続ける。
「随分とイラついてるじゃねぇか。何だオマエ、思春期か?」
戦い方も雑だ、と言い捨てると同時に背後から同じような格好をしたプレイヤーが現れた。
今度はわかる。新しく現れたプレイヤーは女性であり、胸の膨らみで判断できる。
先にキリトに声をかけた小柄なプレイヤーとは違い、凹凸がハッキリとわかることから、どこか扇情的に映るがそれとは裏腹に無邪気な声で小柄なプレイヤーに抗議の声をあげた。
「にーちゃん! いきなり走らないでよぉ!」
「……別に走ってねぇよ」
「走ってたよー! キリトが心配だったのはわかるけどさー」
「別に心配もしてねぇ」
「それじゃどうして声かけたのさ。本戦でサプライズ奇襲する予定だったじゃん」
「コイツが情けねぇ顔してたから笑いに来ただけだ」
「えぇー? ほんとでござるか~?」
「ムカつくから打首にしてやろうかオマエ?」
「わわっ! 後生! にーちゃん、後生でござる!」
「えーっと……」
ポカンと口を開けて、キリトは恐る恐るといった調子で。
「……君たち、誰だ?」
「あ?」
「うぇ?」
数秒の沈黙。
それを破ったのは女性らしきプレイヤーだ。
彼女は、あぁ、と納得するようにポンと手を打ちながら。
「にーちゃん、頭の防具だよ。これ被ってたら、ボクたちのことわからないじゃん」
「……察しの悪い奴め」
対してチッと舌打ちをしながら言う小柄なプレイヤー。
その対象は彼女ではなく、自分に対してだろう、と理解できる自分自身キリトは不思議に思っていると。
「―――ふぅ、ピトさんに進められて被ってたけど、やっぱりない方がいいなボク」
「あってもなくても変わらねぇよ。あのクソ女の言うことなんざ聞くな」
「なんで? いい人だと思うけどなピトさん」
「……オマエの前ではそうだろうな」
これでわかったかな、と黒髪女性プレイヤーは言う。身長は170センチメートル程あり、出るところは出て、引き締まっている部分は引き締まっているグラマラスな身体。どこか妖艶な雰囲気を醸し出すも、どこか仕草が子供っぽく、言動でどこか台無しになっている部分がある。
対する150センチメートルあるかどうかな小柄なプレイヤーは金髪碧眼。腰の辺りまである長い髪の毛で、前髪は切り揃えてあり、どこか儚い造形が大変良いフランス人形を連想させるも、言動と表情でこちらも台無しにしていた。
「これでボクたちのことわかったかな?」
「……見てみろこの間抜け顔を。わかってねぇぞコイツ」
「えーっと」
―――いや、だから誰だ?――――