ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~   作:兵隊

163 / 170
第17話 BoB本選 ~三人共~

 

 

 息を吸い、吐き出した。

 気配を殺し、感情を押さえつける。

 うつ伏せに身体を寝かし、姿勢を制御をし続ける。

 身体はボロ布で覆い風景に溶け込むように最大限の努力を怠らない。

 

 

 狙撃主とは見つかってはならない。

 狙った獲物は必ず仕留め、最少の手数で最大の攻撃をするのが狙撃の王道である。一回引き金を引くだけで、敵対する者達の戦闘力を削ぎ、動きを抑制し同時に威圧する。面制圧ではなく、言うなれば点抑止。それこそが、狙撃というものだと私は考える。

 

 となれば、私は何かを狙っていなければならない。

 私が狙撃主であるのなら、見つからずに一発で敵を撃ち倒すために、暗殺者のように、標的を狙っていなければならない。

 

 しかし、私の手元に得物はなかった。

 片手にフィールドスコープを持ち、覗き込み辺りを観測し――――()()()()への観察を怠らない。

 

 私が巣を張るのは山岳地帯。

 眼下に広がるは、森林地帯であり、森林地帯と山岳地帯を繋げる錆びれた鉄橋があった。

 スコープから見えるのは銃撃による連続した閃光、遅れて銃声が耳に入った。

 

 BoB本選が開始されてから、既に一時間ほどが経過している。

 それでも私はここまで獲物を構えることはなかった。最低限の動きでやり過ごし、接敵など許すことなく立ち回っている。

 以前の私には考えられない行動だった。強さを追い求めて、名の知れたプレイヤーを狩り、我武者羅にこの世界を駆けていた人間と同一人物とは思えない。これが“恐弾の射手”と呼ばれ、いい気になっていた人間の戦い方なんて笑わせる。もはや振る舞いが臆病者のそれだ。慎重を重ね、常に警戒している、弱い者――――まるでネズミのよう。

 

 

 ――構わない。

 ――どうでもいい。

 ――私の標的は、あの人だけ。

 ――それ以外に神経を集中していられない。

 ――時間が勿体無い、敵意が惜しい、気力が削がれる。

 

 

 笑われても構わなかった。臆病だと嘲笑されようと、卑怯だと後ろ指を指され様が知ったことではない。

 私の標的は、有象無象の強者ではない。

 

 唯一人。

 私の弾丸は一人のみ。

 標的はあの人だけ。

 

 そう。

 どんな状況でも、私は得物を構えない。

 それがどんな状況であろうとも、私はヘカートⅡを手にすることはない。

 私の視線の先には、山岳地帯と森林地帯を繋ぐ鉄橋。その上で、二人組みのプレイヤーと、倒れている一人のプレイヤーが存在している。倒れているプレイヤーは見知った顔だった。何度もクエストに付き合ったことがあるし、依頼を受けたこともある。だとしても、私は行動しない。ジッと観察に徹する。

 

 元より、BoBはバトルロイヤル方式の生存競争。眼に映る者達は全員が敵なのだ。顔見知りだろうが、助ける道理なんてあるわけがない。

  

 二人組みのプレイヤーは肩を並べて、倒れているプレイヤーを見下ろしている。

 このことから察するに、二人組みのプレイヤーは協力関係にあることがわかる。となれば必然的に二対一。数的不利であるのは明確であり、あの中に割って入るのは余程の戦闘狂か、もしくは――――。

 

 

 ――動いたっ?

 ――嘘っ、この状況で……!?

 

 

 思わず息を呑む。

 予想はしていた。相手は()()()だ。もしかしたら、動く可能性は考えていた。だが本当に動くとは思わない。

 

 人が好い――――流石にここまでではない。

 何のために――――想像がつかない。

 貸しがある――――聞いたことがない。

 だったらどうして――――情報が足りない。

 

 ありとあらゆる可能性を考えて、私は片端から否定する。

 この状況でゲームオーバーになりそうだったから助けるほど、()()()は人が好いわけではない。

 

 如何なる理由で、どういう考えで、どのような思考で。

 どちらでも構わない。

 私は観察に徹する。

 

 ()()()は言った。私の挑戦(エゴ)を受け入れると、確かに口にした。

 それはそういうことだ。どのような理由があろうが、私と戦うまで()()()は絶対に負けないし倒れない。

 

 故に、私がヘカートⅡを手にするのは今ではない。駆け出したい衝動を抑え、並び立ちたい欲情を堪えて、息を吸い深く吐く。

 

 観察を続ける。

 全ては勝つために。真正面から勝利するために。私は私の我侭を殺し尽くして――――。

 

 

「見せて貰うわよ、先輩――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンゲイル・オンライン

 BoB本選 鉄橋

 

 

 鉄橋の上。

 無骨な鋼鉄で作り出され、ところどころが痛み錆付き、長い年月が経過しているkとが安易に想像が出来る。特別な装飾もない施されてない橋の上に三人の人影が存在していた。

 

 一人は男性。

 仰向けに倒れ伏し、身体に妙な青色のスパークが這い回っている。その足元には彼の物だろうか、テンガロンハットが無常に転がっている。だというのに彼は起き上がらずに、倒れたまま見下ろす二人組みを睨みつけている。

 起き上がらず、ではない。彼は起き上がれないのだ。

 彼に打ち込まれた弾丸は電磁スタン弾。命中した対象を麻痺(スタン)させる特殊な弾丸。ダメージはなく拘束させるための弾。一発の値段が高額であり、対人戦ではなく大型のモンスターを狩るために用いられるのが一般的な使い方である。

 

 男性にとって、予想外の一手。

 三十人が敵同士のBoBにおいて、拘束するだけの電磁スタン弾など、どうやって想定出来るだろうか。

 

 

「コイツが、ターゲットか」

 

 

 見下ろしている一人――――声色からして男の声。

 ボロボロのマントを纏い、髑髏の仮面(マスク)を顔に張り付かせているため、表情は読み取れない。双眸が赤色に妖しく光、倒れている男性を見下しながら続ける。

 

 

「本当に、コイツか? 全く、歯応えがない」

「そりゃ、君が狙撃したからでしょ」

 

 

 もう一人は女性。

 ボディラインがハッキリとわかるスーツで身を包み、頭と顔を覆うヘルメットを被っていた。

 そして、彼女は暗に語る。真正面から撃ち合ってない癖に、大口を叩くな、と。倒れている男性には、そんな蔑みが込められているように聞こえる。

 

 仮面の男も汲み取ったのか、チッ、と小さく舌打ちをしそれ以上口を開くことはなかった。

 

 フレンド同士――――というわけではないようだ。

 プレイベートで付き合いがあるような距離感でも、会話の内容もどこかトゲがあるようで親しげな様子はない。

 BoBを勝ち抜くために手を組んだだけの関係。それこそ掲示板などでで募集し、たまたま利害が一致しただけの上辺だけの関係である、と倒れている男性は予想する。

 

 面白くない、と男性は思う。

 なんでこんな連中に、自分が見下ろされているのか、苛立ちが募り、やがてそれは爆発し男性は口を開いていた。

 

 

「き、汚ねぇぞ! 二人ががかりとか、恥ずかしくねぇのか!」

 

 

 仮面(マスク)の男は得に反応がなかったのだが、もう一方は、おや、と。どこか楽しげに、感心するように、男性に向かって応答した。

 

 

「暫くは動けない筈。口を聞けるってことは、対策してたってこと?」

「当たり前だ。こんなこともあろうかと、俺ぁ麻痺(スタン)耐性を防具に積んでるのよっ! GGO上位ランカー舐めんな!」

「さすが、ダイン。相変わらず用心深いじゃーん」

 

 

 特に驚いている様子はない。

 倒れている男性――――ダインであればその程度の備えはしてあって当然、と言う口調で肯定する。ハッタリではなく、ダインというプレイヤーの行動がある程度わかった上での発言であった。

 

 対するダインは眼を丸くする。

 まさか、と。対人戦であるBoBで自分以上の対策をしているプレイヤーは存在せず、ましてやいの一番に度外視される麻痺(スタン)への対策すら備えていることにも驚かれない。

 つまりそれは、ダインのプレイヤーとしての傾向が理解しているということ。

 

 次に生まれるのは疑問。

 髑髏の仮面《マスク》が誰なのか皆目見等もつかない。

 しかしもう一方は。慎重すぎるダインの備えに驚かなかった彼女は、誰なのか、という疑問。ダインを知っている彼女は、一体何者なのか。

 

 

「お前、誰だ?」

「あれ、わからない?」

 

 

 事も何気に、あっさりと。

 両手で頭部を覆っていたヘルメットを持ち外して。

 

 

「アハッ☆」

「ぴ、ピトフーイ!?」

 

 

 ダインの絶叫が木霊する。

 当の本人である彼女――――ピトフーイは何処吹く風といった調子で涼しげに、口元に薄く笑みを作っていた。

 

 対するダインは本気で驚愕していた。

 何度かクエストを共にした事があるし、諸金首を追って争ったこともある。彼女の傍に控えている大柄な男性プレイヤーの他に、金髪碧眼のプレイヤーと黒髪長髪のプレイヤーと行動を共にしていることは記憶に新しい。

 ダインも彼女には注目していた。奇抜な行動には何度も頭を抱えさせられた。いわば天敵、ダインにとってピトフーイは行動の読めない危険物の一人でもある。

 

 故に、解せない。

 彼女がBoB本選にいるのがありえない。

 

 

「何でお前がここにいる。本選出場者にお前の名前なかったぞ!?」

「名前変えて出てるもん。わからないの当たり前じゃん」

「はぁ!?」

 

 

 意味が分からない、とピトフーイの行動に理解が出来ないダインに追い討ちをかけるように、ニッコリ笑みを浮かべてピトフーイは続けて。

 

 

「今の私、アインクラッドの恐怖だから」

「はぁ!? いいや、待て待て。ちょっと待て。アインクラッドの恐怖ってお前が!?」

 

 

 混乱するダインを余所に、そう、と頷き軽く肯定して。

 

 

「まっ、GGO(ここ)限定だけどね。どう、ビックリした? 賞金首トップなんですよね私」

「……賞金首が賞金首を狩ってたことか?」

「そうなるかな。いやぁ、楽しかったなぁ。クソ野郎共をブッ殺すの!」

 

 

 お前がそのクソ野郎連中の頂点じゃねぇか、とダインが口を開きかけるが、今まで沈黙していた髑髏の仮面(マスク)の男が口を開く。

 

 その声色は苛立ちがあった。

 静かに、好き勝手行動するピトフーイが癪に障ったのか、赤い眼光が正確にピトフーイを射抜く。

 

 

「おい」

「んー?」

 

 

 対する彼女は特に気にする様子もなく、涼しげな表情で殺気が込められた視線を受け止めていた。

 その態度が気に入らなかったのか、髑髏の仮面(マスク)の男の殺気が鋭くなっていく。

 

 

「勝手な、行動をするな」

「冥土の土産ってヤツよ。いいでしょこれくらい」

「誰が、そんなこと、許した?」

「ていうかなに、指図するの? 君が私に?」

 

 

 口調は彼女特有の飄々としたそれであるが、雰囲気はまるで違う。髑髏の仮面(マスク)の男への明確な拒絶があった。

  

 あまりにも異様な二人の様子に、ダインは疑問を感じざるを得なかった。

 当初は二人は手を組んでいると思っていた。しかしその様子はまるで違う。利害が一致した関係とは思えない。そう、言うなれば――――同じ獲物を狙っている肉食獣のような。隙あらば共食いを始めるような歪な関係に見える。

 

 とはいえ、獣とは違い、彼女達は人間だ。

 会話をすることで、最低限の協力は出来る。

 現に、髑髏の仮面(マスク)の男は低い声でピトフーイに促す。

 

 

「……始めるぞ」

「はいはい」

 

 

 軽く言うとアサルトライフル――――KTR―09を片手に装備すると、もう片方の手を天へと掲げて握り拳を作る。そして親指と小指を立てて振った。

 何かの合図であることは明確であり、何を意味しているのかは彼女達しか知らない。

 

 何やら嫌な予感がしたダインはピトフーイに向かって焦るように。

 

 

「おい、何だその合図は?」

「可哀想なダイン。生贄なんだってさ」

 

 

 どういう意味か尋ねる前に、ダインは顔を蹴られ反射的にそちらに視線を向けた。

 そこに立っていたのは髑髏の仮面(マスク)の男。その赤く光る双眸は、真っ直ぐにダインを見つめて。

 

 

「俺を、見ろ」

「なん――――」

 

 

 言葉が出なかった。

 自身を見つめる正体不明の髑髏の仮面(マスク)の視線に、ダインは思わず黙る。

 その視線からは嫌な、殺意に満ちた、どす黒い気持ちの悪い何かを、ダインの本能が感じ取ってしまった。

 

 ドクン、と。

 一際心臓の音が高鳴り、脈も遅く速く不規則に流れていくのを感じる。

 背筋が凍り、ここから一刻も早く逃げ出したいのに、身体が動かない。麻痺(スタン)しているから、ではない。ダインは完全に呑まれていた。髑髏の仮面(マスク)の男から放たれている殺気に、完璧に呑まれてしまっていた。

 

 

「いいぞ、恐怖しているな。この俺を、恐れているな」

「誰がお前なんぞを怖がるかクソガキ」

 

 

 精一杯の虚勢であった。

 明確な怯えがあり、ダインの視線の先にいる男にもわかっているのか、くつくつと喉を鳴らすように楽しげに笑みを零して。

 

 

「お前を贄にし、俺は英雄を、打倒する」

 

 

 いつの間にかその右手には拳銃が握られていた。

 片手に収まるサイズ。一度の引き金で致命傷を与える散弾銃でもなければ、弾幕を張り反撃を許さない短機関銃や小銃でもない。形状からして拳銃――――トカレフTT-33であった。

 

 左手でゆっくりとした動作で、額に当て、胸へと動かし、右肩、左肩へと十字を切り、右手に持っていた拳銃の銃口をダインへと向ける。

 頭を狙っているわけでもなく、身体の面積が大きい胸部へ。当てるだけが目的であるようであった。

 

 

「お前にとっての、“恐怖”はこの俺だ。お前の犠牲で、英雄(ヤツ)は、眼を覚ます。お前の、死によって、必ず、眼を覚ます。英雄(ヤツ)は、俺の前に、現れる」

 

 

 だから、と言葉を区切り。

 

 

「――――死ねよ、生贄」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かに、現れた。

 英雄でもなければ、絶剣でもない。

 彗星のように。空から降ってきたほうき星のように、金色のそれは降ってきた。

 

 轟、という轟音が辺りに鳴り響かせて、無骨な鉄橋を頼りなく揺るがせ、両足を踏みしめて金色のそれは君臨した。

 そして一歩、また一歩。ゆっくりとした動作で金色は歩き距離を詰める。その視線の先には二人。ピトフーイと髑髏の仮面(マスク)へと向ける。

 

 

「貴様、どうして……ッ!」

 

 

 その存在を認め、明らかに狼狽え始めた髑髏の仮面(マスク)に対して、ピトフーイの表情は満面の笑み。待ちに待ち、やっと手に入れた玩具を前にした子供のような満ち足りた笑みを浮かべて。

 

 

「そんなもん、私達――――いいや、この場合君か。探してたんでしょ。下手な真似しようものなら、いつでも出張れるように――――」

 

 

 ピトフーイの視線は“金色”に注がれたままだ。

 情熱的に、情愛的に、蠱惑的に、なおかつ扇情的なまでに。“金色”に意識を向けたまま、片手に握っていたKTR―09を倒れているダインに向けて、躊躇うことなく引き金を引いた。

 

 悲鳴はない。

 辺りに連続した乾いた音が鳴り、薬莢が地に落ち金属音が響く。

 

 声一つ漏らさずに、HPバーが削り切られ事切れたダインの頭上にはDEADの文字が浮かび上がる。

 逸脱した行動、髑髏の仮面(マスク)の男にはそう見えたのか、困惑しながら声を漏らしていた。

 

 

「お前、何を……」

「邪魔だったから」

 

 

 ピトフーイは一歩ずつ確実に近づいてくる“金色”に意識と視線を向けて続ける。

 

 

「私の大本命が来たんだ。ちょっとダインは邪魔だよね」

「計画と、違うぞ……」

「計画? あぁ、ダインを殺すってヤツか。アイツは殺すつもりないよ最初から」

「なに……?」

 

 

 ギョッ、と。髑髏の仮面(マスク)の男の身体が固まった。

 視線の先には、漸く足を止めた“金色”の姿。両者の距離はざっと50メートルほど。一息に詰められる距離である。

 

 ピトフーイの言葉の真意を計りかねられず、混乱している髑髏の仮面(マスク)の男の耳に、問題の“金色”の声が叩き込まれる。

 

 

「……オマエから厭な気配を感じた。それにキリト(ヤツ)の言っていた特徴と一致する」

 

 

 それだけ言うと、片手に回転式弾倉を備えられて散弾銃――――MTs-255を持ち、もう片方の手に軍事用スコップを携えて。

 

 

「――――死銃(デス・ガン)だな」

「アインクラッドの恐怖……ッ!」

 

 

 髑髏の仮面(マスク)の男――――死銃(デス・ガン)は半歩後ろに下がり、冷静さを欠き混乱した調子で、アインクラッドの恐怖――――モブ(ユーキ)へ問いを投げた。。

 

 

「お前、俺を、止める気か。あの時のように、俺の邪魔を……!」

「――――」

「だが、無理だ。確信した。今のお前では、俺には勝てない。SAOのときとは違う、弱くなった、お前では……!」

 

 

 あの時とは、どの時のことなのか。

 アインクラッドの恐怖である自分を知っていて、なおかつソードアート・オンラインでの強さを知っている人物。 

 

 そこまで考え、候補など絞られてくる。

 PKに勤しんでいたプレイヤー。それもPK自体を生業としていた連中、かつてユーキが潰したギルド――――笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の残党であると。

 潰しても潰しても、どこからでも出てくる存在に、ため息を吐いて退屈そうに。

 

 

「……オマエを止めるのはオレの仕事じゃない。元からオマエなんざ眼中にねぇよ」

 

 

 それだけ言うと、モブ《ユーキ》は事実だけを突きつけた。

 

 

「英雄なんて大それたヤツなんて必要ない。オマエを止めるのはありふれた――――身近なヤツさ」

 

 

 そこで興味を失ったのか、死銃(デス・ガン)から、ピトフーイへ意識を向ける。

 相も変わらず笑みを浮かべる彼女に、面倒といった調子で問う。

 

 

「オマエがそこにいるってことは、そういうことでいいんだな?」

「んー、私も最初はそのつもりだったんだけどね」

 

 

 軽い足取りで、近所のコンビニに行くような極めて気軽にモブ(ユーキ)に近付く。そして、彼女の足が止まった。空から見たら、三人の位置を繋げば、綺麗な三角形を作れるような位置でピトフーイは止まり――――。

 

 

「――――こうした方が、もっと盛り上がると思わない?」

 

 

 なっ、と驚いた声が上がった。

 深、と沈黙でもって応対した。

 彼女は何を思ったのか、右手に持っているKTR―09をモブ(ユーキ)に向けて、左手に装備していた擲弾発射器――――HK69A1を手を組んでいた筈の死銃(デス・ガン)へと向けられていた。

 

 

「本当に悪いね。昨日まで迷ったんだよ本当に。でも絶対にこっちの方が楽しいって! 片や、人を殺しまくってたクソ野郎、方やそのクソ野郎を叩き潰して回ったイカレ野郎だよ? そう考えたら、ほら。つい引き金も軽くなっちゃったというか」

 

 

 興奮するように、早口で捲くし立てるかのうように呟き、頬を紅潮させてピトフーイは言うと、一際興奮した口調で。

 

 

「当然だけど、ゲームオーバーになったら死ぬから。三人だけのデスゲーム。死ぬ方法は――――君が一番良く知っているよね?」

 

 

 つまりは殺し合い。

 二対一ではなく、一対一対一の三つ巴の争い。

 バトルロイヤル形式であるBoBの原点に立ち返り、細かいことなど考えずに、つまらない策略もなく、ただ純粋に殺し合おうと。ニッコリ、と満面の笑みで、死銃(デス・ガン)に向けて言い放つ。

 

 異常、あまりにも異常。一歩二歩、気圧される調子で死銃(デス・ガン)は後ろへと下がる。まともではない、と口を開きかけるが上手く言葉が出ない。

 

 対する、モブ(ユーキ)は深くため息を吐いて、得物を構えなおした。

 散弾銃の銃口と、軍事用スコップを順手に持ち直し剣先を敵対者二人に向けて。

 

 

「なるほど、つまりはアレだ。オマエらは邪魔だな――――」

           「――――なら、キッチリ蹴り飛ばさないと、な?」

 

 

 





>>死銃
 手を組む相手を間違えた人。
 何だか可哀想だけど、自業自得である。
 はじまりの英雄アンチ。アイツは必ず俺が殺す勢の一人。


>>ピトフーイ
 イカレ。
 ダインを狙うように提案したのは彼女。
 でも殺す気がない。全ては餌。意中のアイツをおびき寄せるための餌。
 割とライブ感で生きてる。計画性、なにそれ美味しいの?


>>ダイン
 巻き込まれた可哀想な人。
 ピトフーイとは顔見知り。ちょっとアイツ危なくない?と密かに思っていたが、顔が良いからまぁいいか、と思っていた。
 今回で理解する。ヤバイ。ピトフーイ、ヤバイ。


>>「――――こうした方が、もっと盛り上がると思わない?」
 ピトフーイ「死銃に協力しようと思いましたが……やめました」
 死銃「やめたn―――は?」

>>散弾銃の銃口と、軍事用スコップを順手に持ち直し剣先を敵対者二人に向けて。
 どこの深淵の監視者だお前は。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。