ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~   作:兵隊

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 リクエストを消化させていただきました。Vol.5まだ先何じゃよ。
 シノン視点のちょっと未来の話。具体的に言うとVol.7が終わってから少し未来の話。パラレルワールドでこんな未来もあったかも的な話。
 もっと甘々な話を書きたかった(辞世の句)

 マカロニサラダマンさん、アリシア・アースライドさん、鯖味噌煮さん、誤字報告ありがとうございました!


リクエスト 先輩と後輩の何気ない日々

 2026年1月某日 PM14:20

 優希のアパート

 

 普段であれば、高校に通っている時間帯。

 本来であれば学生らしく勉学に勤しむべき時に、私はとあるマンションにお邪魔していた。

 

 学校に行かないのは、別に嫌になったからとか、サボりたかったからとかそんな理由ではない。

 ただ単純に休みなのだ。学生大型二大連休の一つ、巷で言うところの冬休み。

 

 そんなこともあってか、外には人っ子一人歩いている様子はない。これが学生大型二大連休の一つでもある夏休みでもあるのなら話しは変わってくる。

 今も元気に、太陽の光に照らされた子供達が外で遊んでいることだろう。だが生憎と今は冬休み、好き好んで外で遊んでいる物好きは存在せず、私のように家の中で寛いでいることだろう。

 

 それも仕方ないことだ。人間、誰もが寒いのは苦手。暖房のきいた室内でのんびりしてて何が悪い。

 苦手なことから逃げて何が悪い。猫だってこたつで丸くなっている季節、外でなんて遊んで入られない。

 まぁ、私は猫ではないのだけど。

 

 

「……」

 

 

 そんな下らないことを考えながら、私は一枚読んでいた本の頁をめくる。

 読んでいる小説は恋愛小説、我ながら似合わないと自覚している。私は恋愛小説よりも、ミステリー小説のほうが似合うとリズに言われたのは記憶に新しい。でも読んでみたら面白いものだ。

 心理描写、登場人物達の距離感、そして悩みなど共感が持てる内容となっている。何よりも展開が面白い。昔馴染みの女の子よりも、後輩の女の子と添い遂げる展開など、私好みのものだ。

 

 幼馴染よりも、後輩の方が良いに決まっている。

 それは太古の昔、神々が定めた鉄則なのだ。

 

 

「――――オイ」

 

 

 と、頷く私に声をかける声が一つ。それは背後から聞こえてきた。

 私はそちらに目を向けない。本にだけ視線を送り、意識を後ろへと集中する。

 

 

「……何よ、先輩?」

 

 

 どうせ机と向き合って宿題しているに決まっている。

 学生の鏡といってもいい先輩――――優希先輩は、今は私と背中合わせに座っていた。

 

 というよりも、私が先輩の背中に一方的に体重を預けている。

 それも仕方ない話しだ。私が遊びに来たというのに、先輩は宿題を優先していた。

 ……正直に言うと、私は拗ねている。私よりも優先にされている宿題が気に入らない。面白くない、ムカつく、面白くない、少しは構って欲しい、もっというとかなり面白くない。

 

 せめてもの抵抗。

 それが今のこの状況。丸机で勉強している先輩の背中にもたれ掛かり読書をする私という絵の完成である。

 子供っぽいという自覚はある、邪魔をしているのはもちろんのこと。拗ねているのだ私は。俗に言うストライキと言うやつなのである。

 

 そんな労働断固反対状態の私に、先輩はこれでもかというくらい低い声で。

 

 

「鬱陶しいんだけど?」

 

 

 うんざりした口調で呟いてきた。

 もうノートを取る音が聞こえない。持っていたシャープペンも机の上に置いてある。

 

 勝利である。

 私の奮戦によって、宿題から私に意識を向けることに成功した。ざまあ見ろ宿題。

 

 望むべく戦果を得て、私の頬は自然と緩んでいった。

 気持ちも高揚しているのか、声も少しだけ弾ませて言う。

 

 

「あら、私は別に気にしてないけど?」

「オレが気にしてんだが? つーかよぉ、何なのオマエ。いきなりアポなしで来たと思いきや、人の家で本読み始めて、人を背もたれ代わりに使う。ホントなんなのオマエ、やりたい放題なの?」

「茶目っ気あるでしょ?」

「オレの憤りをそんな一言で済ませて欲しくなかったんだが?」

 

 

 深いため息を先輩が吐くと同時に、机の上に置いてあった携帯が鳴り始めた。

 私のではない。となるとその持ち主が誰のものであるのか、自ずと分かるものだ。

 

 先輩は手慣れた操作で携帯を操作し始めた。

 どうやら電話ではなく、メールの通知音だったようで、先輩は画面を見てどう返信したものか少しだけ考えている。

 

 先輩の交友関係は狭い。

 恐らく誰からか聞けば、私が知っている人からのものであることがわかる。

 

 

「誰から?」

 

 

 だから聞いてみようと思った。

 理由の半分は好奇心、もう半分は独占欲。

 誰からなのか気になるし、誰とやり取りしているのか把握しておかなければ気が済まない。本当に我ながらどうかと思う。どうにかしなければならないと思うのだが、抑えが効かない。

 

 そんな私の心情を知らずに、先輩は何気ない口調で、軽い気持ちで答えてくれた。

 

 

「明日奈だ」

 

 

 その一言で、チクリ、と私の心に棘が刺さった。

 その人の名前は何度も聞いたことがある。先輩の口から、そして先輩を何度も救った人の名前。

 

 結城明日奈――――。

 この人こそ、先輩の幼馴染であり、恐らくこの世で一番大切にしている人である。

 本人は気付いてないかもしれないが、彼女の名を口にする先輩は穏やかな表情と口調になっていた。それだけ彼女の存在が大切で、先輩の中で大きな存在なのだろう。

 その感情が友情なのか、親愛なのか、それとも――――愛情なのか。私には推し量ることは出来ない。それだけ先輩にとって彼女は、複雑な感情を向けているのだ。それこそ一言では表せることが出来ないくらい。

 

 彼女がもし、嫌な奴なら、最悪で性格が悪い人物であったのなら、それこそ遠藤のようなどうしようもない奴であったのなら、私も容赦しなかっただろう。

 ありとあらゆる手を使って、先輩にアタックして、彼女を出し抜いていたことだろう。

 

 だがそれは出来ない。

 一度彼女とは先輩を巡って一騒動起こしているものの、もう争う気は起きなかった。

 それだけ彼女は人が出来すぎている。先輩が大切にするもの納得がいくほどの人格者だった。恋敵である私が言うのだから間違いないだろう。

 

 ――――とは言っても、先輩の隣を譲る気はどないのだが。

 

 

「何て言ってるのよ?」

「木綿季の服を選びに来てるんだけどどっちが良い? だってよ」

 

 

 そう言うと、先輩は後ろを振り向かずに、携帯だけ私に寄越して見せる。

 送付されているメールには二枚の画像が添付されていた。どちらもユウキによく似合っており、彼女らしいポーズで笑顔で映っていた。

 一枚目はダブルピース、二枚目は謎のガッツポーズ。

 

 それを見て言っているのだろう、先輩はどこか呆れたような口調で。

 

 

「ったく、女の子らしくしろって言ってんのに……」

「それが妹ちゃんの良さだと思うけど?」

 

 

 それに「まぁな」と先輩は肯定して、私から返された携帯を受け取る。

 それからしばらく考えていた。きっとどっちが良いのか悩んでいるのだろう。そう言うところが真面目というか、自分のことではないのに一生懸命というか。

 

 私はそんな先輩が好きであるし、口を挟むつもりなどなかった。

 元より明日奈は先輩に聞いている。その二人の間に私が入る要素などなく、むしろなんだか気が引けるというものだ。

 

 多分長くなるだろう。

 私は再び読んでいた本に目を向ける。

 無言で携帯を凝視する先輩を他所に、私の読書は快調だった。一頁、また一頁、読み進めていく。

 背中合わせで近すぎる距離感の癖に、パーソナルスペースなど感じさせない。それもこれも先輩が相手だからだろう。これが別の異性なら、こんな距離感など保っていない。むしろ同じ部屋にすらいないかもしれない。

 

 暖房が効いた先輩の部屋で、穏やかな時間が過ぎて行く。

 だがそれもずっと続くわけではなかった。

 

 

「よし」

 

 

 先輩は一度思いっきり頷いた。

 どうやら決まったらしいので、私は呼んでいた頁に栞を挟み、次の言葉を待つ。

 だがその言葉は目眩を覚えるモノだった。

 

 

「――――全部だ。好きに買えばいいだろう」

「は?」

 

 

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

 待って、待って欲しい。

 

 

「ちょっと待ちなさい。全部って言った?」

「あぁ。決められねぇから全部買えばいいだろ。オレが全部出すしなどうせ」

「……先輩って、本当に妹ちゃんに甘いわね」

 

 

 先輩は意味がわからない、と言うかのように不思議そうに言う。

 

 

「妹が欲しいものを買うのが兄貴ってもんだろ。浩一郎兄だってそうだったし、アイツが欲しいってんなら出し惜しむつもりはねぇぞ」

「それ、キリトにも言ってあげたら?」

「桐ケ谷はケチくせぇんだよ、全般的に」

 

 

 やれやれ、と肩を竦めて先輩は言った。

 そう言うと同時に、また新しいメール着信音が鳴り響く。

 

 また明日奈からだろうか、と私は考えるとどうやら違ったようだ。

 先輩は携帯を操作して、誰からか確認するや否や「ゲッ!」心底嫌そうに声を上げる。そんな先輩を見るのは稀だ。そこまで露骨に嫌そうに――――というか、本当に嫌そうにするのは珍しい。

 もはや嫌そうなんてレベルではない。もっと汚物を見るような、もっと汚いナニかを見たかのような声を、先輩は上げていた。

 

 

 私は再び聞いてみることにした。

 今度は100%好奇心で、その他邪推など一切なく、純粋な興味本位で私は問いを投げる。

 

 

「誰から?」

「クソ女」

 

 

 端的にそう言うと、先輩は携帯を私に寄越した。

 メールアドレスも登録されてない。メールの内容は絵文字など一切なく、私が見たら不快に感じる単語がそこにあった。

 

『ダーリン、今度はいつGGOにログインするのかにゃー? 私とまた殺し合おうよ』

 

 気に入らない、本当に気に入らない。

 特にダーリンという単語が気に入らない。私も明日奈も、その領域に達していないのにも関わらず何様なのだろうか。

 

 

「誰、これ?」

 

 

 携帯を握りしめて、押し殺して問いかける。

 別に先輩は悪くない。悪いのは訳がわからないメール送信者だ。事によっては明日奈と同盟を組むことも辞さない。

 

 当の先輩は本当に嫌そうな口調のまま答える。

 

 

「BoBのときにやり合って、それ以降ずっと付き纏われてんだよ。本当に良い迷惑――――いいや、悪い迷惑だ」

「でも珍しいわね。先輩が女の人をクソ呼ばわりするって」

 

 

 先輩は捻くれている。性格も悪ければ、目つきも悪い。初対面の子供には必ず泣かれて、騒動になることなど日常茶飯事と言える。

 それでも、先輩は女子供には手を上げることはなかった。GGOでもALOでも、敵対者が女性であるとわかれば全力で手を引いてくる。

 私が知る中で、例外だったのBoBでの一戦のみだろう。あの時はどちらにも譲れないものがあった。そう言うことでない限り、先輩が女子供に手を上げることはない。

 

 そんな先輩が侮蔑しきった声で“クソ女“と呼称する人物。興味がないといったら嘘になるだろう。

 

 先輩は少しだけ考えていた。

 慎重に言葉を選んでいるようで、簡潔に纏めて言う。

 

 

「SAOのときにいたクソ虫と気配と言うか、匂いが似てるんだよ。それだけだ」

 

 

 それだけ言うと、先輩は私から携帯を取ると一切の容赦なくそのメールを削除する。

 

 SAO。正式名称はソードアート・オンライン。

 数年前に先輩が巻き込まれたVRMMOの名前である。忘れがたい惨劇、世間の記憶に深々と刻み込んだサイバーテロ。

 

 当時の私には何も出来なかった。ただ先輩の帰りを待つしか、私には出来なかった。もう一度先輩に会いたくて、話しがしたくて、私は待ち続けていた。

 

 そして何もかもが解決されて、先輩が戻ってきた頃には――――彼は変わっていた。

 とても抽象的で、漠然としたモノであるが、先輩は確かに変わっていた。

 

 憑き物が落ちた、という表現の仕方のほうが正しいのかもしれない。

 巻き込まれる以前よりも、幾分か穏やかな表情をすることが多くなった。口元を緩める程度だが、笑みを零すことも多くなった。そして――――どこか悲痛な表情をすることも多くなった。

 

 私には先輩がSAOでどんなことを経験したのかはわからない。

 だが恐らく、先輩は何かを得て、何かを失ってきたのだろう。それも消失感を抱かせるほど大きなモノ。

 

 私が一緒に居たら先輩に辛い想いをさせなかった、何て事を言うつもりはない。

 それは傲慢な考えだ。先輩だけではない、明日奈も妹ちゃんも、キリトだって一緒に必死に戦った結果、先輩は何かを失ってしまったのだ。皆が一生懸命に戦い、なし得た結果を『かもしれない』というIFを考えるのは当事者達に失礼だと思うから。

 私一人程度増えた所で、変わるモノでもないだろう。だがそれでも、先輩の苦しみを分かち合えることは出来た筈だ。

 

 

 それが私は、悔しい。

 先輩が死ぬ気で戦っていたであろう状況でも、私は待っているだけだった。

 先輩が剣を手にしている最中でも、私は両手を合わせて祈ることしか出来なかった。

 助けてくれた恩人に、小学校の頃あれだけ私はこの人に助けてもらったのに――――何も出来なかった。

 

 だが今は違う。

 今度は、今度こそは、私だって戦える。

 先輩が傷つくよりも速く、先輩が剣を握るよりも疾く、先輩が敵に気付くよりも早く。私の弾丸は敵を射抜く。

 

 守られるだけでは終わらない。

 守られた上で、私は先輩の敵を射抜く。

 だから、今度こそ、置いてきぼりにはされない。

 

 私を守ってきてくれた背中に、私は身体を向けた。

 子供の頃は小さかった背中。人一人背負いきれなきれなかった背中は、いつしか大きく頼りがいのある背中に変わっていた。

 どれほどのモノを背負っているのか、私に推し量れるものではない。でも、それでも、一緒に分かち合うことくらいは、出来る筈だ。

 

 私はそっと先輩の背中に手を置いた。

 すると――――。

 

 

「――――っ!?」

 

 

 ビクッと先輩の方が大きく上がり、部屋の隅に思いっきり飛び退る。

 眼を丸くさせて先輩は私に言う。

 

 

「きゅ、急に触るな! ビックリすんだろボケっ!」

 

 

 その反応が面白かった。

 真面目に考えていたのが、なんだかバカらしくなって。

 

 

「ふふっ」

 

 

 自然と笑みがこぼれた。

 ずっと望んでいたやり取り、待ち焦がれていた声が、こんなにも愛しいものだとは思わなかった。

 

 だから思わず言葉が紡がれていた。

 自然と、口から滑るように、その言葉は紡がれていた。

 

 

「先輩」

「……ンだよ?」

「――――おかえりなさい」

 

 




>>先輩
 茅場優希。
 色々とあって、色々と経験を積み、色々と修羅場を潜ってきた。
 地味に現実世界の彼を描写するのは凄い久しぶり。

>>後輩
 朝田詩乃。
 狙撃手。絶対に先輩の敵殺すウーマン。
 BoBでは先輩と騒動あり、幼馴染と修羅場を経験して現在に至る。どんな内容かは今後に注目。
 ちなみに先輩が後輩の名前を呼んでいなかったのは仕様。

>>クソ女
 優希をダーリンと呼称する謎の女。
 優希からの好感度は最低。クソ女、カメムシ、便所の残りカス、など辛辣過ぎる。
 でも優希を愛してる、殺したいほど。

>>「妹が欲しいものを買うのが兄貴ってもんだろ」
 シスコンの鏡。
 Volを重ねることにシスコンが加速する素敵設計。最後とかどうなっちゃうんだろ(他人事)
 ちなみに最近妹のためにバイトで溜めた資金をオーグマーの予約として使う。シスコンの鏡。

>>「浩一郎兄だってそうだったし」
 凄い飛び火。
 この作品での浩一郎兄はシスコン。




 べるせるく・おふらいん
 ~エロ本を見つけた時の対処編~

明日奈→隠している場所はなんとなくわかるから見つけようとはしない。ただしもし付き合うことになれば問答無用で捨てる。

木綿季→顔を真っ赤にさせて恐る恐る見る、でも途中で耐えきれなくなり元の位置に戻す、そしてまた手に取る。を何度か繰り返す。

詩乃→持ち帰って研究、主にポージングなど。次の日にそれを先輩の目の前で試そうとする。もちろん服を着たまま。

クソ女→「ダーリンなら一発くらいはヤラせてあげるよ。その後は私の好きに動くけどね」

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