インフィニット・ストリーム ~ヒロイックメモリー~ 作:ジミーのようなもの
それは、ある日の出来事だった。
ある事件を発端とした一連の出来事である。
「試作運用型ISの暴走」
軍用に新たに量産型ISを製造しようと全世界が躍起になっていた最中に日本のISを専門に扱う研究所「赤城総合機械研究所」は、試作モデルのIS「アクセル・パンデモニウム」を開発した。
悪魔を彷彿とさせるクロー形状をとった腕部。禍々しさを放つメタリックブラックに塗装された外装。顔の全体を覆い隠し、流線型の頭部のヘルメットには湾曲した二つの角。背中には4枚のエナジーウイングブースターと4門のブースター。各所の配線部分には血の色をさらに濃くした色のが入っている。
特徴はこのくらいだろう。まさに「悪魔」を形どったような機体は、イギリスで先行開発されていたBTシステムに加え、弱点である行動制限をAIを搭載することでBT兵器を動かしながら戦闘することが可能になった。
だがしかし、これを扱えるものがいないことには始まらないとしてこの機体はコアのみを分離して凍結、封印されることになった。
制作期間2年総額3億を費やした計画がパーになる寸前、1人の操縦者が現れる。
この物語はこの操縦者を中心として繰り広げられる一連の事件の模様である。
5月4日朝8時36分…赤城総合機械研究所メインデッキ
ここの所長を務める「赤城宗次郎(あかぎそうじろう)」は朝の日課である機体のメンテナンスを終え一息付きながらタバコに火をつけた。
「…ふっー。今日も絶好調だなアクセル。」
「…」
当然、まだコアを抜かれたままの機体が反応するはずもなくただその場を佇んでいた。
「それにしても、悪魔なんてセンスねぇな。どうせなら戦乙女とか大天使とかの方が女の子受けしたんじゃねぇのか」
「そんなことないと思いますけどね」
そこへ現れた女性「川上おとね」は続けて話した。
「私はこの機体は悪魔の名を関して良かったと思いますよ。パンデモニウム…悪魔が住む都市を冠しているんです…きっとこの子を使いこなしてくれる悪魔の王様が現れてくれますよ」
「そうかね。でもこの子は扱いが難しいからな…選り好みしすぎる癖に気に入った者を無理やり意のままに操ろうとする。システム上の問題でなければ組み込んだAIの仕業だな、はっはは!」
「それ、笑い事じゃないですからね…はぁ。」
朝から雑談に花を咲かせ1本吸い終わると宗次郎は自分の研究室へと歩いていった。
彼の専門はAIの基本設計だ。
AIの基礎を固め、どのように思考させるかはこの段階で決まる。
AIと言っても自立思考型のものであるためその基礎設計も膨大な量のデータが必要になる大変な部分である。
だが、アクセル・パンデモニウムに組み込まれたAIは単純なもの。「敵を追尾して打て」ただそれだけだ。
敵の認識はパイロット自身で行うがそれ以降は自動的に敵と認識した機体を追尾して打つ。
所長はこれをどう改良していいのか試行錯誤していた。
「うーむ…これがこういう動きをするからこうなるのであって…」
「所長、難しい顔してますね。」
「そうだな。お前のせいでな」
話しかけてきたのは制限AIのブエルである。
悪魔が住む都市の名を冠している訳なので各所の名称には必ずと言っていいくらいに悪魔の…ソロモン72柱の名が使われている。
「ブエル、突然話しかけてどうした。機嫌がいいのか?」
「いいや、絶賛絶不調だ。今組み替えたプログラム少しおかしな点がいくつかあったぞ。ざっと120件だ。」
「そんなにスペルミスがあったか」
「スペルミスだけではない。言語自体意味不明だぞ。いい加減寝たらどうだ。研究するのは構わないがこのままだとお前がぶっ倒れるぞ」
「なーに、お前が上手く働いてくれたら万々歳で終わりなんだ。」
「ほー、ならマシなものが書けるように寝てこい。」
「説教か?お前も随分と人らしくベラベラと喋るようになったな」
「そんなことはどうでも良い。そら、ワシも寝る」
「はいはい。分かったよ。寝りゃいいんだろ」
「そうだ、寝ていいアイディアでも産んでこい」
そうして床に着いた宗次郎は考え込む
このスペックに付いてこれるパイロットは現れるのだろうかと…
5月4日夕方16時02分…市街地 大通り広場
その日はゴールデンウィークということもあり市街地ではいろんな人が買い物やデートを楽しんでいた。
そんな中、1人中央広場のベンチに座って空を見上げる少女の姿があった。
「新島悠香(にいじまゆうか)」はゴールデンウィークの最終日をベンチに座って過ごしていた。
公立の高校に通う彼女はいつも何か足りないと考えながら妄想の世界を膨らませる極々一般的な少女だ。
「はぁ…ゴールデンウィーク最後ってのに何にもなかったな…宿題は出たがこれと言って…ねぇ」
「…」
いつも持ち歩いているぬいぐるみに話しかけるが返事はない。だが、話しかけ続けた。
「こうさ、空からISが降ってきてさ、ババババッバっとライフルぶっぱなしてさ暴れたりしないかね~」
「…」
「はぁ…そうだ、最後だしあの森行ってみるかな。小学生以来だけどまだ残ってるかな私の秘密基地」
そうして、目的地を決めて歩き出す悠香。
20分歩いたところで目的地に着いた。そこには森ではなく研究所があった。
「ありゃ?こんな所に研究所が出来てる。うーん?赤城総合機械研究所?訳分からんが入ってみよう。面白そうだし」
そうして、研究所へその足を進めた。
中に入るのは容易だった。セキュリティもエントランスまでは内容なものだったが次の瞬間…
「穴?なんで壁にでっかい穴が空いてるんだ?」
そこにあったのは人1人が余裕で入れる位の大きな穴だった。
彼女は興味本位で入ってみることにした。
その通路はあまりにも短かったがある部屋にたどり着くメインデッキの「アクセル・パンデモニウム」が格納されてる部屋だった。
「何だこりゃ…この悪魔的カッコよさは何だよ!大興奮だよ!」
そんな大はしゃぎをしていれば気付かれるのも当然のこと。
スグに捕えられ所長も駆けつけた。
「ほほぉ…また若いのが迷い込んだものだ」
「ん?ここって元々森だったろ。あの森って全部切り刻んだって言うのか?」
「そうではない。全て別空間に格納してある。ここは転々と移動するからな…環境破壊は私の本望ではない」
「それにしても…こりゃ何だ?あれか?あいえす?って奴か」
「その通りだ。どうだ、その気があるかな乗ってみるかね?」
「いいのか!?うっしゃー!乗るよそいつに」
偶然の巡り合わせはどんな危険なことに首を突っ込んでいったのかまだ分かりもしないまま機体にコアがはめ込まれていく…