「おいアクア、アイさん、俺の仲間のところに行く・・・きます・・?」
冒険者登録が一通り済み、仲間の元に行こうと二人に声をかけたのだが、
「なに、カズマ?あんた言葉遣いが滅茶苦茶よ?流石はヒキニート、教養ってものがないのかしら?」
アクアが馬鹿にするように言ってくる。
そしてアイさんも不思議に思ったのか、「どうして?」とばかりに、首をかしげながらこちらを見てくる。
「ちげーよ、だれがヒキニートだ。お前にはため口でいいけど、アイさんはそういう訳にはいかないだろ。両方に話しかけんのに、どっち使えばいいか分かんなかっただけだ。」
「ちょっと待ちなさい、あんた私を誰だと思ってんの?女神よ?女神に敬語は使って当然でしょ、悩む余地なんてないじゃない。そういえば、なんで愛には敬語使って、私には使ってないのよ。おかしいじゃない。」
当然とばかりに言ってくるアクア。
しかし、
「いやだって、お前って見た目的に俺と歳変わんねーけど、アイさんは俺よりたぶん年上だろ?それに、アクアには品はないけど、アイさんにはちゃんとあるし。同じように扱うのはおかしいだろ?」
こいつに敬語はなんか嫌だ。
「はああああ!?女神よ、私女神!聖なるオーラを身にまとう、水の女神アクアよ!気品なんて存在するだけであふれてくるの!なんでそんな私よりワキガ女のほうが痛いっ、って、なんで拳骨打つのよ!?」
「お前忘れたのか?アイさんにその呼び方するなって、次言ったら、同じ宿に泊まらせないからな。」
「う、う~~~っ」
言い返せないのか、そんな声を出して、目を潤ませながら睨みつけるアクア。
散々バカにしてくれたこのくそアマをこんな風にできるとは、なんともまあ、気持ちがいい。
そんな風に悪い笑みを浮かべていると愛さんが、
「あの、カズマ君。私には別に、ため口で構わないからね。」
と、いってきた。
「良いんですか?」
「いいの、だってアクアにだけそんな口調で、私にそんな気を使われるの、なんか嫌だし。」
「・・・ならそうするよ。じゃあこれからよろしく、アイ」
「こちらこそ、よろしくねカズマ君。」
そうして愛と俺は握手を交わす。
すると、
「ちょっと、いつの間にアイまで私に敬語使わなくなったのよ。」
アクアが非難がましくそういってきた。
「だって、さっきのカズマ君とアクアのやり取り見ていたら、本当に威厳もなにも無かったし。見た目的に年下そうだからもういいかなって。」
「よくないわよっ。何度も言うけど、私女神!あらゆる生命体の頂点!敬われるのは当然なのよ!」
そんなアクアの発言に、俺とアイは互いに顔を見合わし、
「「ていう夢を見ていたのか」」
「むきーーーーーっ!!」
「ちょ、へんなとこ叩かないでよ!」
「おい、ッこ、こら暴れんな!落ち着けっ、悪かったよ。それに、明らかに俺と同い年で、アイより年下に見えるお前が敬語なんて使われてたら、周りのやつが不振がるだろ!」
「・・・確かに」
叩く手をとめ、顎に手を当ててようやくおとなしくなる。
「ようやく止まったか。いいか、これはお前の正体を隠すためだ。この世界でも、お前ぐらいはっきりとした青髪なんて見たことがない。それに見た目も良いからな。そんなお前が、同い年や年上に敬語を使われてみろ。絶対変な勘繰りする奴が出てくるからな」
「・・・それもそうね、なら我慢してあげる。この寛大な私に感謝なさい」
なぜか上から目線なのが腹立たしいが、とりあえずほっとこう。
俺たちはそのままダクネスとめぐみんの元に向かう。
「遅かったじゃないかカズマ、ん?そちらの方たちは確か、」
到着と同時、ダクネスが聞いてきた。
「俺の知り合いの、アイとアクアだ。二人には急で悪いんだが、二人を仲間に入れたいと思ってる。」
「本当に急ですね。私としては、爆裂魔法が打てればそれで構いませんが。」
仲間が増えるというのにこの反応。相変わらずというか、実にこいつらしい。
爆裂に支障がなかったらたいていのことはオーケーなのだろうか?
「私も別に構わんぞ。あとはクリスだが、まあ、いいだろう。あいつならオーケーしてくれるだろし。では愛とアクアだったな、二人はどんな職業なんだ?」
ダクネスは表向きは落ち着いて、けれど仲間が増えるのが嬉しいのか、そわそわしている。
たしかこいつは昔、いろんなパーティーに断られていたらしいから、仲間が増えるのはこいつにとってありがたい話なのかもしれない。
そういえばクリスは、なんでこいつの仲間になったんだろう?
見張っとかないとすぐモンスターの群れに突っ込もうとする変態なのに。
確かに盾としては優秀だが、普通のパーティーに入ってダンジョン探索をしていたほうが、よほど効率的に金を稼げるだろう。
気のいい性格ではあるが、クリスはお宝が結構好きで、お金も好きなのだ。
もちろん困っている人よりお金を優先するような奴ではないが、馬鹿な悪評のあるダクネスとわざわざパーティーを組もうなんて、まともな神経をしてれば思わないはずだ。
もしかすると、二人は幼馴染だったりするのだろうか?
「おいカズマ、なにをぼーっとしているんだ?」
「えっ、?」
一人でそんなことを考えていると、ダクネスが声をかけてきた。
「い、いや、ちょっと考え事をな」
こいつに対しちょっと失礼なことを考えていたため、どこかバツが悪い反応になってしまう。
「そうか、ならいいんだ。」
それだけ言うと、ダクネスは席に座り、座っていた残り三人とテーブルを囲み談笑し始めた。
どうやら俺が考え事をしている間に、自己紹介を終わらせたようだ。
アイがめぐみんとダクネスに苦笑いを向けているのが良い証拠だ。
どうせ中二病と、変態発言をそれぞれぶっ放したのだろう。
まったく、少しは自重ができないのだろうか。
「ねえ、カズマ君。そんなところで立ってないでこっちにすわりなよ。」
アイはそう言って、自分の隣の席をポンポンと叩く。
「じゃあ、遠慮なく。」
おれは言われるまま、アイの隣に座る。
この後俺たちはたくさんの料理を頼み、お祝いパーティーをして宿に帰った。
お祝いパーティーにクリスがいればもっと良かったのに、なんて考えながら。