ブラック&ホワイト2 英雄代行   作:あぞ

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ご注意
この話より、モブ以外の他地方ネームドキャラクターが登場します。


第二十話 強者たち

映画「ハチクマン」の撮影を終えて、再びタチワキジムに挑戦する為にポケモンセンターを訪れ、フロントのパソコンから予約申請をしたのだが。午前の部は締め切っていたので、またしても午後の一番手で申請させて貰った。

 

時間潰しがてら、散歩にでも出よう。そう考えてコインロッカーにバッグを預け、最小限の荷物だけをサブバッグに移して、約一ヶ月ほど前に見ることが叶わなかったタチワキコンビナートへ向かったものの。

なんか、予想以上に見る所が無かったな。というのが、タチワキコンビナートを見学して思った正直な感想である。

きっと見る人が見れば眼を輝かせるんだろうけど、オレの感性にはまるで響かなかった。

 

そんな訳で、目論んでいたほど時間を潰せず。暇を持て余したオレは、野バトルでもやっていないものかと。観戦目的でバトルコートが備えられた公園へと向かうのだった。

 

 

公園に辿り着くと、二人のトレーナーがバトルを繰り広げており、周りには結構な人だかりが出来ている。

対峙するのは12歳ほどの金髪の少女と、オレと同年代か少し上くらいの茶髪の少年。

 

「ムーンフォース」

 

「10万ボルト!」

 

幼い少女の指示に従って、小さな黄色いポケモンが静かな光を放ち、それを受けたゼブライカはダメージを受けつつ10万ボルトを放つが。

 

「避けて、接近」

 

たった一言の指示で回避され、一瞬で小さなポケモンがゼブライカへと接近した。

 

速い。

 

思わず息を飲む。あのスピードにオレだったらどう対応するか、一瞬の内に数通りのパターンが脳内を駆け巡る。

 

「ドレインキッス」

 

肉薄した黄色いポケモンがゼブライカに口付けすると、ゼブライカは地面に倒れてた。

 

その瞬間、やっと肉眼で確認できた。あの黄色いポケモンはアブリボン、虫とフェアリータイプを併せ持つ。主にアローラ地方に生息するポケモンだ、イッシュで見るのは珍しい。

 

ゼブライカの次に繰り出されたのはドリュウズ。鋼タイプのポケモンであれば、フェアリータイプの攻撃に強く出られると言ったところか。

 

「ドリルライナー!!」

 

角と爪を連結させたドリュウズが、一直線にアブリボンへと向かう。しかしアブリボンはそれを、まるで舞い散る木葉ヒラリと回避する。

 

いや、今のは只単に回避しただけじゃない。蝶の舞で回避して見せたのだ。アデクさんのウルガモスが見せた高等技術を、オレよりも年下の少女が軽々とやって見せた。その事実にオレは、どうしようもなく胸が高まるのを感じた。

 

今すぐ、あの子と戦ってみたい。オレの高揚を感じたのか、腰に位置する4つのモンスターボールがまるで共鳴するかのように振動した。

 

その振動で、我に帰る。これからジム戦が控えていると言うのに、これはイケナイ。

 

「目覚めるパワー」

 

少女が技を指示すると、アブリボンはピンク色の球体を射出した。

 

それは再度ドリルライナーで突撃してきたドリュウズに着弾すると、一瞬でに燃え広がり。ドリュウズは炎にその身を包んだ。

そしてそのままコントロール失い、地面に墜落する。たったの一撃で戦闘不能。

目覚めるパワーは使うポケモンに依ってそのタイプが異なる。あのアブリボンが放つ目覚めるパワーのタイプは炎。本来持たざるタイプの攻撃を以て、相性の悪い鋼タイプのポケモンを下して見せたのだ。

 

ルカリオで挑んでいたらどうなっていた?勿論負けるつもりは毛頭無いが、目覚めるパワーを警戒しながらあの速度に喰らいつけたか?ランプラーの早射ちなら捉えられたか?

 

あの子が12歳だと仮定して、三年前のオレはあの子に勝てたか?

 

駄目だ、これ以上観ていると、バトルを挑んでしまいそうだ。オレは鉛のような脚を無理やり地面から引き剥がすと、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

キョウヘイが去った方角を、金髪の少女が見遣る。

 

キョウヘイからは死角になっていたが、その顔には、ピンク色の絵の具がフェイスペイントのようにこびりついていた。

それでも少女の美貌は損なわれる事はなく、寧ろミステリアスな雰囲気を助長してさえいる。

 

「…熱いけど、痺れるような冷たい視線」

 

ゼブライカとドリュウズを相手している時に感じた鋭い視線。それを思い出し、思わず背筋が震えるのを己の肩を抱いて鎮める。

 

次の対戦の立候補を断り、金髪の少女はベンチに置いた画材道具一式を背負うと。今しがた感じた悪寒を振り払う為。趣味の画を描くための題材を求めて、ふらふらとバトルコートから立ち去った。

 

 

 

 

 

 

一方。キョウヘイとは反対の方角から、一連のバトルをベンチに座って観戦していた一組の男女が居た。

 

「なんだぁ、もう終わりか?」

 

金髪の少女が対戦を断ったのを見て、サングラスを掛けた長身の男が詰まらなそうに声を上げる。

 

「先輩、あの子に声掛けなくていいんですかぁ?」

 

隣に座った白い帽子を被った少女が、媚びたように間延びした声で男性に問い掛ける。

その視線は、大きな荷物を背負った少女に向いている。

 

「あ~、そっちならいいわ。あの嬢ちゃんもう天井だわ、天井。早熟の天才ってやつだな、勘だけど」

 

「適当過ぎません?」

 

思わず素の口調で呆れ返る少女。

 

「だったらお前が声掛けて来てくれよ。俺が声掛けたら事案だよ、事案」

 

ベンチ背にを預け、手を掛けて浅く座り。サングラスに黒いパーカーとインナー。下はダメージジーンズに括った金色の鎖型アクセサリーをジャラつかせる男性は、その長身の威圧感も相まって完全にヤンキーの風体である。

 

「まぁ先輩。完全に見た目怪しいですもんねぇ。でも、お断りします」

 

問題に発展しそう。という点については同意するも、ニッコリ笑って拒否する少女。

 

その笑顔を見て、男性は思わず「どういうことだよ」と顔をしかめる。それを聞いて少女は()()を作り言った。

 

「だってぇ、わたしぃ。ああいうマイペースそうな子、苦手じゃないですかぁ」

 

「知るか。まぁ養殖もんじゃあ、天然にゃ敵わんわな」

 

その瞬間、少女の容赦ない拳が男性の無防備な腹に突き刺さり。男性は思わずもんどり打って倒れる。

 

「何か?」

 

少女は笑顔だが、その背中からは次言ったら容赦しないという「波導」が満ち溢れていた。

 

「なんでもないです」

 

少女よりそれなりに年上であろう男性は、冷や汗を掻きながらも先ほどよりもベンチに深く座り直すと。口をつぐんだ。沈黙は金。

 

「マイペースな人見ると、"あの人"思い出すんですよねぇ」

 

数秒の沈黙の後、思わずといった様子で少女は呟く。

 

「お前、半年近く共同生活送っておいてまだ苦手なの?」

 

男性は腹を擦りつつ、気まずそうに目を逸らす少女に呆れた顔を向ける。

 

「てか、俺から言わせりゃ。今の金髪の嬢ちゃんと"あの人"じゃあ。トリデプスとボスゴドラくらいには違うぞ」

 

「…どっちも岩鋼タイプじゃないですかぁ」

 

少女は不満そうに頬を膨らます。

 

「タイプが同じでも内面が違うってんだよ」

 

「ならそう言って下さい」

 

いよいよヘソを曲げ始めた少女を見遣り、苦笑する男性。

 

「まぁさっきも言った通り、あの子はもう天井だよ。ホームに連れ帰って付きっきりで鍛えれば、超えられるかもしれねーけど?」

 

そこまで言って少女を横目に見ると。冷めた目をして、両手でバツ印を刻んでいた。

それを見て溜め息を吐くサングラスの男性。

 

「でもまぁ、それより…面白い眼をしてるヤツ見付けたわ」

 

そう言って口の端を歪ませて笑うと、懐から煙草の箱を取り出して。振って飛び出した一本の煙草を口にくわえてライターを取り出す男性を、少女は。

 

「先輩…ここ禁煙ですよ」

 

「やべっ」

 

そう窘めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

公園から立ち去ったオレは街中のベンチに座って、自販機で買ったサイコソーダのプルタブを開けると一息で飲み干した。

 

さっきのアレはまずかったなぁ。五年前、プラズマ団にチョロネコが拐われ、己の無力を知ったあの時から。強そうな相手がバトルしているところを見ると、無性に挑み掛かりたい欲求に駆られるようになった。

これではフタチマルの事を強く言えない。

 

ぼんやりとそんな事考えつつ道行く人を眺めていると、キョロキョロ忙しなく動く綺麗な金髪が視界に入り、思わずその持ち主の顔を見ると。先ほど公園で見た少女と目が合った。

直接顔は見てないが、後ろに縛った毛先と顔の横に垂れる毛先だけが何故かピンク色に染まったその特徴的な髪色は、見違えようがない。顔にもピンク色が塗りたくってあるところを見るに、どうやら毛の色ではなく何かで染色している様だ。

 

一瞬で先ほどのバトルが脳内にフラッシュバックし、思わず目を細めると。

 

「ッ!」

 

少女は眠たげにしていた目を見開き、踵を返して走り去ってしまった。

 

 

「…もしかして今、逃げられた?いや、面識もないしそんな馬鹿な」

 

 

もし避けられたなら、見に覚えが無いだけにショックである。

 

そのまま呆けていると、ライブキャスターのホームで刻まれる時刻が15時40分となったので。タチワキジムへと向かうため、何故か重くなった腰を上げた。

 

 

「タチワキシティのジムは地下なのか」

 

ライブキャスターのナビゲーションを頼りに路地裏を進むと、ポケモン協会の定めた公式エンブレムが点灯する入り口を見付けた。

 

扉を開けると地下へと続く階段が真っ先に目に入る。

それを降って行くにつれて、ギターやドラムの音が耳に入ってきた。

何でもジムリーダーがバンドのベース兼ボーカルという話で、その練習にジムを使っているとか。全てライブキャスターで調べた情報の受け売りだが。

 

それは兎に角、いざジム戦。

扉を開けると、映画の撮影スタジオにちょっと似た空間が広がっており。入り口付近の受付は、マーブル・スタジオなどで見た音声や映像の編集機材を縮小した規模のものが設置してあった。

其処に座ったDJ兼受付スタッフの人に、ポケモン図鑑を渡して挑戦の最終登録をするが。もう少しでリハーサルが終わるので待っていて欲しいと言われて、用意して貰ったパイプオルガン椅子に腰掛けてジムリーダー兼ボーカリストであるホミカさんを見る。

 

白い髪の前髪を結わえて纏め、肩出し脚出しの青と紫の毒々しいぶかぶかのワンピースを着用。足にはブーツを履いており、ベースのモチーフはペンドラーの様だ。

 

見詰める、目が合う、逸らされる。見詰める、目が合う、逸らされる。見詰める、目が合う、逸らされる。

 

何度かそれを繰り返すと、ホミカさんが左手を挙げて演奏を中断した。

 

『…あー、アンタ』

 

指を指されたので、首を傾げる。

 

『あのさ、待たせてんのは素直に悪い。でもさ、いくら何でもガン見しすぎでしょ』

 

「ああ、すみません。ライブは目を合わせるものだって聞いたので」

 

『いや、確かにライブ中のフィーリングは分かるけどさ。これはライブじゃなくてリハだから。そんなに見られるとハズい』

 

そうなのか、音楽って難しいなぁ。そんな事を考えていると、ドラムを叩いていたスキンヘッドの男性が立ち上がり右手を挙げた。

 

「よぉ坊主。前にホミカに挑戦の予約入れたと思ったらキャンセルしやがったから、怖じ気付いたのかと思ってたぜ」

 

この強面は見覚えがある。

 

「あれ、クックさんですか?トーナメントで戦った」

 

そうだ、ベスト4第一回戦で戦い。3位入賞していたクック選手だ。控え室で独り言呟いてた人でもある。

 

「なに?アルの知り合い?」

 

そこで漸くスタンドに置かれたマイクの電源を切ったホミカさんが、クックさんに問い掛ける。

アル…確かアルジャーノン・クックさんだからアルなのかな。

 

「前に話した、ガントル使いのロックなヤツだよ」

 

「…あー」

 

バンド仲間にもその洒落披露していたのか。ホミカさんとギターの方が目を逸らしている様子を鑑みるに、どうやらウケなかったらしい。

なんだかオレ自身も滑った気がして、気まずい。

 

「まぁいいや、こっち来な」

 

後ろ手に頭を掻くと、何故かマイクをスタンドから外して親指をステージ横の扉に向けるホミカさん。

 

クックさんとギターの人も観戦するらしく、揃って扉を潜って行くと。ヒオウギジムと似たようなバトルコートが広がっていた。

 

「じゃあ早速始めよ」

 

「宜しくお願いします」

 

ホミカさんとオレがバトルコートのトレーナーレーンに着くと、何故かクックさんが審判位置に付いた。

 

「それじゃあ説明始めるぞ。確か坊主…ヒオウギシティのキョウヘイはジムバッジ2つだったよな?」

 

オレが頷くと。音声ガイドではなく、クックさんがルール説明をし始めた。

と言う事は。クックさん、公式審判員免許持っているのか…以外過ぎる。

 

ルール内容は、ヒオウギジムで聞いたものとほぼ変わらず。変わった所はオレの使用ポケモンが三体から二体に減ったというだけだ。

 

そして説明が終わると。

 

『あんたの理性、ブッ飛ばすからッ!!』

 

ホミカさんがマイクにキメ顔でシャウトした。

 

いや、その為だけにマイク持ってきたのなら、ルール説明するクックさんに貸してあげても良かったのでは?

オレは、そう思わずにはいられないのだった。

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