なくならないもの   作:mn_ver2

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E6でタシュケントとガングートゲッチュ。
いい加減秋月来てくれませんかね? 三隈が20人いるんですよこちら泣

ではでは。
江本のカーチェイス。決着。


ドッタンバッタン大騒ぎ♪ 終

 ……ぁ。

 と、長門は自らの死を確信した。

 しかし、それは隣の小型車が見事な空中回転をしながら、江本たちの車の上を舞うのみだった。

 

「一台排除。ラスト一台です」

 

「タイヤを狙ったか。さすがだな」

 

 長門がゆっくりと後ろを振り返れば、スリップによって三台を巻き込みながら大クラッシュしているのが見えた。

 もくもくと立ち上る黒煙から一台の車が躍り出る。助手席の人物は同じようにRPGは装備していないが、銃を構えている。

 ドリフトして引き剥がそうとするも、向こうも手練れらしく、なかなか難しい。

 速度を上げれば上げるほど距離を空けることはできるが、細かいカーブを曲がることはできない。

 どうするべきか、江本は提督に手渡したUSBのことを脳裏に浮かべながらぼんやりと考えた。

 やがて二台は開けた道路へ出た。

 向こう200mも曲がり角のない、完全な一直線の道路だ。

 

「狙えるか?」

 

「射角が小さすぎて無理です」

 

 電が淡々と告げる。

 敵は真後ろにいるから、電の位置から狙うのは不可能だった。

 悶々とした爆走は束の間に終わり、次に電車の線路の標識が江本の目に飛び込んだ。

 このままでは堂々巡りだ。鎮守府への帰路だが、こんなひっつき虫をひっつけたまま帰ることはできない。

 どうにかして処理しなければ。

 もうすでになんの関係のない一般人を巻き込んでいるし、怪我人だっているはずだ。提督に掛け合えばなんとかしてくれるのだろうが、それはできるだけ抑えておきたい。つまりはこれ以上の無駄な影響を及ぼしたくないのだ。

 

「……揺れるけど我慢してくれ」

 

 ちょうどいいタイミングで上がった遮断機の下をくぐり抜け、線路を突っ切るかと思ったが、江本は急激にハンドルをきると、線路と線路の間に車体を納めた。

 バラされている石ころを踏み、ぎこちないバランスで進む。後ろも同じく、左車体を線路に乗り上げて追って来た。

 

 そして、発砲。

 

「ッ⁉︎」

 

 寝ている大淀の頭の横をすり抜け、江本の座る座席の頭部に命中し、鉄の欠片が散った。

 

「伏せろ!!」

 

 江本が叫ぶ。

 その間にも敵は接近し、ついに横並びになってしまった。

 

 電は素早く運転手に銃口を向けた。

 後部座席の男も江本に銃口を向けている。

 無言のまま、いつ触発するかわからない、まさに沈黙というモノがこの二台間のやり取りを押し殺しているようだった。

 ……男の体が揺れる。

 ……車体が揺れる。

 ……電の体が揺れる。

 

 殺意と殺意の出し惜しみないのぶつけ合いに、長門はひとつまみ分の呼吸しかできないほど恐縮していた。作った握りこぶしが汗で滑り、爪が深くくい込んで少量の血が流れていることに気づかないほど。

 駆逐艦にこれほどの眼力があるのかと長門は世界の常識すら疑ってしまった。歴戦の駆逐艦たちもその眼にはギラギラとした本能じみたものを感じていた。

 だがどうだ。この駆逐艦、電は違う。決定的に違う。

 例え姫級の特異個体三体と対峙したとしても無言かつ無表情で事務処理の如く戦い始めるような感じ。はるか超越した意識。

 両幅は8m、フェンスに囲まれ撒くことは不可能。ここで落とし所をつけねばならない。それは向こうも同じだ。

 

 ゴンッッ!! と体当たりをされる。

 ガクンッ、と江本の車は大きくバランスを崩し、そこを一気に攻められて右の前車輪がレールの中に入ってしまった。

 

「クッ……ソ……!」

 

 江本が悪態をつき、仕返しと抜け出そうと足掻くが、左からの敵の接触に、つっかえる右前輪。

 

「ーー前方から電車あああぁぉぁ!!!」

 

 長門の雄叫びのような怒号に、江本の視線がはるか前方へと伸びる。

 

 ……確かに、まだ黒い粒だがあれは間違いなく電車だった。

 

 このまま進めば確実に……。

 

「電!!」

 

「はい」

 

 発射。

 偶然重なった揺れで相手の窓ガラスを割るのみ。

 

「マズ……ッ!」

 

 江本が短く喘ぐ。

 男が指をかけ……。

 

「させるか!」

 

 長門が手元にあった自身の小さな手提げ鞄を迷うことなく投げつけ、運良く男の手元に当たり、銃弾は無辺世界へと跳ねた。

 ほんの一瞬、判断が遅れていたらきっと電に当たっていただろう。

 それに比べて手提げ鞄など安いものだ。中身はどうせハンカチティッシュ。パンフレットに陸奥のためにこっそり買ったイルカのキーホルダー。

 ……あまり安くはなかった。

 

「よくやった」

 

「それはいいから早くレールから退かないと!」

 

「電、今度こそ!」

 

 大きな石ころをタイヤが踏み、車体が大きく跳ね上がった。

 この1秒に満たない、切り取られた時間。ガタガタ揺れることのない約束された安定。これを逃せば、もうチャンスは

 来ないと電は確信した。

 眼を大きく見開き、銃の持ち手にヒビが入るほど力強く握りしめ、標準を合わせ、躊躇うことなく撃った。

 直後、揺れる。

 遠い向こうで電車の重いクラクションが響く。恐らくあと14秒。その間に決着をつける!

 電の撃った弾は男の首に命中し、絶命していた。だがしかし、運転手が残っている。この男をどうにかしなければどちらにせよバッドエンドだ。

 電は浮かれることなく次の標的を定め、一発で殺そうと引き金を引ーー。

 

 

 

 

 電の手から銃が落ちた。

 

 

 

「グッ……!」

 

 電の腕からは血が流れていて、江本はすぐに撃たれたのだと悟った。

 江本が見ると、男は左手でハンドルを。右手で銃を構えていた。

 あと11秒。

 ガタガタ。ガタガタ。

 ガタガタ。ガタガタ。

 揺れる。揺れる。揺れる。

 上手く的を絞られず男は撃てずじまいでいる。

 あと8秒。

 

「銃を!」

 

 それに反応した電が怪我していない左腕で銃を掴もうとしゃがみこんだ。

 

 ーー銃声。

 

 江本の鼻を掠った。

 

 あと6秒。

 

 電から江本に銃が渡る。

 電車はもう目の前だ。

 恐怖のあまり無様にお漏らしをして失神しそうだったが、長門は極度の緊張に、大量に分泌されたアドレナリンによって完全に意識をはっきりさせ、目は冴え、来たる瞬間を待っていた。

 

 あと5秒。

 

 勝負は一瞬。

 狙いは完璧。後は撃つのみ。

 地面の不安定さを案じる暇などない。

 江本は指をかけ、躊躇することなく撃った。

 ……5秒後、長門の世界は暗転した。

 

 ◆

 

『一隻建造するだけで何億という金を使う。私にはドブに金を捨てるのと同じように思えるのです』

 

 男は語る。

 確かにこの男の言う通り、今や海を航行するのは艦娘か、漁船か輸送船のみだ。軍艦などここ数年見ていない。

 

『我々の技術は進化するのです。昔、石炭によって世界が変わったように。私たちはその『石炭』なりうる存在に邂逅しました』

 

 重鎮たちはさっきまでの怒りを鎮め、黙って男の発表に聞き入っていた。

 スクリーンが移り変わり、次が映し出された。

 

『そう! この小人たちです! 彼女たちによって、新たな時代が幕を開けるのです!』

 

 そこに映る映像は紛れもなく、妖精たちだった。工具を持って鋼材を加工したり、道具にメンテナンスを行っている様子が流れていた。

 提督は一度ここで映像を一時停止させた。

 ゆっくりと眼をつぶり、目頭を押さえ、ため息を吐く。この映像は江本が大本営から盗み出してきたもの。つまりこれに大本営が関わっていることは確実だ。

 いきなりのトンデモ発言に早々提督は置いていかれそうになっていた。

 江本が言っていたことを思い出す。

 

 ーー入手したもの、すべて解析完了しました。その中で特に興味深いものを見つけたので渡しておきます。

 

 ーーお疲れ様。それで? 興味深いとは?

 

 ーーそれは見てからのお楽しみということで。ですがこれだけは約束してください。これを容易に艦娘たちに見せてはいけません。また提督がこれを観る時、必ず最後まで観てください。そして艦娘たちへの態度を決して変えないでください。

 

 ーーそうか。ありがとう江本。明日観ることにする。それと、明日の動物園、楽しんでこいよ。何かあった時は電もいるから大丈夫だ。

 

 脳内回想を終える。

 江本の言っていたこと、よほど重要なことなのが理解した。

 ふと、パソコン画面に見直る。

 ……まだここまでは遊びの部分なのだろう。それを告げるが如く、映像はまだ半分以上も残っていた。




何を見るか何を知るか。そして江本の忠告の真意とは。
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