なくならないもの   作:mn_ver2

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実況動画とか見て勉強中……


一航戦は大食い

「次はどこに行くのかしら?」

 

 執務室を出た金剛たちはエレベーターに乗った。霧島がいなくなったので、代わりに加賀が車椅子を押している。

 比叡が一階のボタンを押し、閉を押す。

 

「……あれ? そういえば榛名さんは?」

 

「本当ね。いないようだわ」

 

 気づけば、いつの間にか榛名がいなくなっていた。どうりで来た時と比べてエレベーターの狭さが感じられなかったわけだ。

 

「迷子にならないか心配ですけど……まあ大丈夫でしょう」

 

「それどっち⁉︎」

 

「合体して大心配……でしょうか?」

 

「……」

 

「……」

 

「……ごめんなさい」

 

 ポーンと一階に着いた音がして、3人はエレベーターを降りた。

 廊下を歩き、日差しの眩しい外へ出た。

 正直本当にどこに行けばいいか金剛には全くわからなかった。

 最終的に、もう適当に順番に見ていこう。そう2人に提案しようとした、その時だった。

 ひとりの女性が曲がり角からスッ、と現れた。綺麗な黒髪を惜しみなく垂らし、手には弓矢を持っていた。

 

「あ、加賀さんじゃないですか」

 

 その女性はこちらに気づくと、加賀に声をかけた。トタタと走り寄って2人が並ぶと、服装が似ていることに気づいた。

 

「赤城さん……こんちには」

 

「はい、こんちには……って金剛さん⁉︎」

 

「はい、金剛です。こんちには。えっと……」

 

「私は赤城です、金剛さん」

 

 赤城……そういえば、加賀がよく口にしていた人物だ。

 どこかおっとりしていて、頼り甲斐のある人、が金剛の、赤城への第一印象だった。

 

「あかぎ……あかぎ……覚えました」

 

 呪文のように何度か呟いて頭の中に叩き込む。

 

「ところで赤城さん……やりましたよ」

 

「何がですか?」

 

 ニヤリと口角を上げて加賀は懐に手を入れた。そして出て来たのは……。

 

「ーーわかっているじゃないですか」

 

「はい」

 

 先ほどの執務室から持ち出した饅頭だった。さらに驚いたことに、その数は6個もあった。

 果たして赤城という人物はどれほどの食いしん坊なのか。気になる。

 

「まあ、これは後ほどで……ところで、金剛さんは今は暇ですか?」

 

「まあ……言われてみれば暇……なんでしょうね」

 

 実際のところただ車椅子を押されてぶらぶら見学しているだけだから。なにも否定することはない。

 それに、彼女と行動を共にすることで何かを思い出せるかもしれない。

 赤城は嬉しそうにそれはよかったです、と手を合わせた。

 

「ちょうど今から演習場に行こうと思っていたのですが、見学に来ませんか?」

 

 金剛は快く了承しようと思い、比叡と加賀に確認を取ろうとしたが、迷わずに首肯され、せっかくだから見学させてもらうことにした。

 

「じゃあ、見学させてもらいます」

 

「ならついでに私も赤城さんと一緒にやります」

 

「もちろんですよ。努力は絶対に裏切りませんからね」

 

「そうですね。今から道具を持ってくるので、金剛さんをお願いします」

 

 はい、と喉をのぼって口から発せられようとした時、赤城は『それ』を見た。

 比叡だ。比叡がなにやらおかしな行動を始めた。

 こっそり赤城にだけ見えるように手を出して、二本の指を立てたのだ。全然意味がわからない。

 そして、次に現れた物を見て、赤城は目を見開いた。

 

 ーー饅頭だ。

 

 紛れもなく、饅頭であった。

 そして、再び二本の指を立てる。

 比叡の考えていることはわかった。

 比叡は赤城を買収しようとしているのだ。饅頭で。どれだけ金剛の車椅子を押したいのかがうかがえる。

 次に比叡は三本の指を立てた。

 

「いや……ここは比叡さんにお任せします。ほ、ほら、大事なお姉さんですからね」

 

 赤城は食欲に勝てなかった。

 

 ◆

 

「お待たせしました」

 

「……では、始めましょうか」

 

 金剛が連れてこられたのは岬。海上には何個か的があって、たぶんそれを撃つのだろう。

 そういえば、まだ榛名と霧島に合流していない。榛名は執務室に残り、霧島は明石に『お話』をしに行ったきりだ。

 探しに行きたいのもやまやまだが……まあ、比叡の言う通り、大丈夫だということを信じる。

 

「赤城、いきますッ!」

 

 赤城が矢を放つ。

 空気を裂く気持ちのいい音を鳴らしてまっすぐに飛び。

 

 炎に包まれ、数機の爆撃機へと姿を変えた。

 

「ーーえ?」

 

 それらは的に向かって飛翔し、機銃の一斉掃射で破壊した。

 

「どうでしたか、金剛さん。これが私たち空母の攻撃方法です」

 

 ドヤ顔で赤城はこちらを向いた。

 金剛には今の現象を理解することができなかった。それはもうはっきりと、ゼロだ。

 矢が爆撃機に変わったのだ。

 これはもう物理法則などの前にこの世の摂理からも明らかに逸脱していた。

 

「ちょっと……驚きすぎて……あはは……」

 

「そうでしたか?」

 

「だって矢が爆撃機に変わるんですよ? 顎が外れるかと思いましたよ」

 

 開けた下顎に手を当て、顎が外れるを実演してみせる。

 その金剛の行為に赤城は目を見開き、ぷっ、と吹き出した。

 

「……なんだか変な感じですね」

 

 風が吹き、赤城の長い髪がなびく。

 

「え?」

 

「金剛さんはいつもハイテンションでした。でも今はすごくおとなしい……それはそれで面白いんですけどね」

 

 くすりと笑い、こちらに歩いてくる。その後ろでは加賀が待ってましたと言わんばかりに矢を放っていた。

 

「私ってそんなに変わりましたか?」

 

「ええ、とても。180度変わりましたね」

 

「……やっぱり皆が求めているのは私ではなく、以前の金剛でしょうか?」

 

 提督にも、そして赤城にもお前は変わった、まるで別人のようだ、と言われてしまった。金剛はそれをどう受けとればいいのかわからないでいた。

 自分はただセーブデータをなくしただけなのか。それともセーブデータそのものがなくなってしまったのか。どちらか、なんてわかるわけがない。

 

「率直に言いますと、前の金剛さんを求めているのは確かです。この私も含めて」

 

「そう、ですか……」

 

「でも、だからといって今の金剛さんを蔑ろにするつもりなんてありません。ですよね、比叡さん」

 

「そうですよ! お姉様は皆のお姉様なんですから!」

 

 いい顔をしてサムズアップする比叡を見ると、なんだかマイナスに考えていた自分がまるでバカに思えてしまった。

 そして加賀も訓練を終えたようで、3人の元に寄ってきた。

 

「お姉様お姉様」

 

「ん? どうしましたか?」

 

 比叡はもじもじとしていてなんだか落ち着かない様子だ。

 

「比叡さん、じゃなくて、普通に比叡って呼んでほしいです……」

 

「あぁ、そうですね」

 

「あと……敬語も……」

 

「そうで……うん」

 

 目覚めてから今の今まで金剛は敬語でしか話していなかった。姉妹、や仲間、と言われて納得していないわけではなかったが、やはり自分でも知らない心のどこかで彼女たちに遠慮していた。

 一週間しかないのだ。

 どちらを選択するかによるが、一週間で彼女たちと別れるかもしれないのだ。

 せめて、その限られた間だけでも、精一杯関わって……いや、自分から関わっていきたい、と……。

 

「じゃあ……比叡……?」

 

「もう一度……」

 

「……比叡」

 

「はい、比叡です!」

 

 アハ! と嬉しそうに笑うと、比叡は勢い構わず金剛に飛びついた。

 ぎゅう、と締め付けられる強さが比叡の愛情そのもののように感じられて、金剛も嬉しくなった。それと同時に色々なことが吹っ切れてしまった。

 

「もういっそのこと皆のこと呼び捨てにしようかな。どう思う? 赤城?」

 

「ええ。もちろんいいと思いますよ。その方が他の子たちも接しやすくなるでしょうね」

 

 赤城の目は金剛を通り過ぎ、その後ろの艦娘寮を捉えていた。金剛も彼女につられて後ろを振り向く。

 耳を澄ませば誰かの声が聞こえている。

 果たしてあそこにはどんな子がいるのか、楽しみだった。

 

「……うん、ならこれからはそうするよ」

 

 よかったです、と再び赤城が戻ろうとした時と、加賀が放ち、矢から変化した爆撃機が最後の的を撃ち落とした時は同時だった。

 

「……ふぅ」

 

「あ、加賀さん⁉︎ 私の分は? ねえ私の分は⁉︎」

 

「……やりました」

 

「知ってますよッ!」

 

 赤城が加賀の肩を掴んでぶんぶんと揺さぶっている。そんなふたりを見て、比叡と金剛は腹を抱えて笑ったのだった。

 

 ◆

 

 ドアをノックする音。

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

 そう言って中に入ってきたのは大淀だった。

 

「大淀、呼び出しに応じ、参りました」

 

「ん」

 

 提督はどこか難しそうな顔で大事な呼び出しであることを大淀は感じた。

 そして、つい反射的に彼女は提督の机の上を覗き、驚いた。いつも通りならば、なんの法則性もなく書類が広げられているのだが、今回はそうではなかったのだ。

 代わりに、封筒が一通。

 

「要件なんだが……」

 

「はい」

 

 なんとなく予想は付いているが、念のためそれっぽく装った。

 提督が椅子から立ち上がり、封筒を持って大淀の前に立った。

 

「これを長門、陸奥に渡してほしい」

 

 ……やはり。

 

「わかりました」

 

 意外に簡単な仕事だ。と杞憂に終わった大淀は提督から封筒を受け取ろうとした。

 

「……これは決して他の誰にも見せてはいけない」

 

 掴む瞬間に手を引かれ、大淀は空を掴んだ。

 

「来週には全艦娘に伝えるつもりだが、一応先に知っておいてもらいたいと思ってこうした」

 

 今度はきちんと提督から差し出され、大淀は受け取った。

 窓から射す光が封筒を容赦なく照らし、中の文字や画像がボヤけてだが見えた。

 

「あの……どうして私に……?」

 

「お前含めて3人に知ってもらいたいからだ」

 

 長門は秘書艦を務めている。その補助を担っているのが陸奥。大淀は作戦中に進行形で報告を受ける、言わば鎮守府と現場を繋ぐ架け橋であるのだ。

 つまり、この封筒はそれほど重要なものであるということ。

 

「……わかりました」

 

「ああ、あと最後に。この封筒についての質問は一切受け付けない」

 

「それはまたどういう……」

 

「話してるところを偶然聞いてしまうやつがいるかもしれないからだ」

 

「ちなみにこれの中身は……?」

 

「比叡、榛名、霧島、加賀の報告書と俺独自に調査し、そこから推察できることを簡単にまとめてある」

 

 もうその特定の4人で、なんのことかは考える必要すらなかった。

 

「了解しました。では、失礼します」

 

 最後にそう言い残して大淀は出て行った。

 

 ◆

 

「おいひいれすねぇ、かがふぁん」

 

 上へ上へと積み重ねたご飯に、たっぷりとカレーをかけて赤城の食べっぷりは異常だ。また、赤城ほどではないが、加賀も同様だ。

 

「すごく食べるね……」

 

「お姉様も負けてはいられませんね!」

 

「いやいやいや、無理でしょ⁉︎ それに私はもうお腹いっぱいだし……」

 

 半分ほど減ったカレーを見てあはは、と弱くなる。

 赤城と加賀の食べる量がもはや笑えないレベルなのだ。

 それに加え、4人全員が同じメニュー、つまりカレーであり、皿は4つ並んでいるはずなのだが……なぜか2皿多い。

 

「翔鶴姉、あんなに食べすぎたら何が起こるかわかる?」

 

「もちろんよ」

 

 姉妹、だろう。

 服装が金剛型のように酷似しているため間違いないだろう。

 片方の白髪の方が、最後の一口を食べ終え、恥ずかしながらカレーを口の端に残したままドヤ顔で言った。

 

「ーー太るわ」

 

 おそらく今の会話はこそこそ話でするつもりだったろうが、どう考えてもわざと赤城と加賀に聞こえるような声量で話している気がしてなない。

 

「……なぜ五航戦の子たちなんかと一緒に食事をしないといけないのかしら?」

 

 ふたりを一瞥するや加賀は容赦なく愚痴を漏らした。

 

「ここに金剛がいたからよ。なによ、悪い?」

 

 不機嫌そうに鼻を高く鳴らし、ツインテールが特徴的な子だが、これまた恥ずかしいことに、服にカレーが付いていることに気づいていない。

 

「良いわ」

 

「……ふん」

 

「言っておくけど、私たちがこんなに食べるのは、それほどの量じゃないと戦闘を満足にこなせないからよ」

 

 加賀はふたりを見て、ふっ、と蔑むように口角を上げた。

 

「……それに、あなたたちを見ると、女の子のなんたるかを忘れてしまいそうで怖いわね」

 

 何を言っているのかわからないとでもいうように翔鶴と瑞鶴は顔を見合わせると、すぐに互いの至らない点を発見してしまった。

 

「ねえ比叡」

 

「なんでしょうか?」

 

「あの2組っていつもあんなに仲が悪いの?」

 

「うーん、どうでしょうねぇ……見た感じはああなんですけど、たぶん本当に嫌悪しているわけではないと思いますよ」

 

 瑞鶴がツインテールを猫のように逆立てて加賀に突っかかるが、それを赤城は微笑ましく眺めているだけだ。

 

「そうだ比叡、私の分、いる?」

 

 金剛は残した皿を指す。

 比叡は既に食べ終えていて、あとは皆が終わるのを待つだけだった。

 

「食べ残し、ですか……」

 

 どうも興奮する。

 愛しの姉の口づけ……つまり間接キスとなるこの食べ残し……。しかも、金剛の使ったスプーン付きときた。

 

「あ、嫌だった?」

 

「そそ、そんなわけないじゃないですか⁉︎ 比叡、気合い! 入れて! いきます!」

 

 金剛から渡されたスプーンと皿を比叡は大事にしながらもらおうと……その時。

 

「待ってください!!」

 

 突然榛名と霧島が現れて、今まさに食べようとしていた比叡の邪魔をしたのだ。

 

「勝手は榛名が許しません!」

 

「私たちがいない間にこんなことを……うらやま……いえ、うらやましい!」

 

 驚きか、それとも怒りか。

 おそらく怒りだ。眉をピクピクとさせながら比叡は静かに立ち上がった。

 

「比叡……?」

 

「大丈夫です、お姉様。妹たちと『お話』してきますので、少し間待っていてください」

 

「う、うん」

 

 そしてふたりは泣く子もさらに泣くような笑顔のまま食堂の外へと出た。もちろん内容は、誰が金剛の食べ残しとスプーンを手に入れるか、だ。

 

「あの3人、最近で言う、ヤンデレにいつかなるんじゃないの?」

 

 遠い目で3人を見送った瑞鶴がぽつりと漏らす。

 

「あら、極めて遺憾だけど、私も同意見よ」

 

「あんたと同じだなんて、翔鶴姉のスカートを剥いてしまうほうがマシよ」

 

「ちょっと瑞鶴⁉︎」

 

 瑞鶴と加賀のやりとりは見ていてなんだか面白く感じる。

 昼食をとるだけだったのに、もう今はすでに15時を越えようとしている。

 

「瑞鶴と翔鶴はこれからなにかあるの?」

 

「なんか金剛が片言じゃないって面白いわね。まあ、今日は特に何もないから、これから翔鶴姉と艤装の点検に行こうと思ってるのよ。昨日の出撃で少し傷がいったからね」

 

「私は瑞鶴がどうしてもって言うからついて行ってあげるだけなんだけどね」

 

「もう、翔鶴姉!」

 

 ポカポカと翔鶴を叩く瑞鶴はまだ成長しきっていない甘えん坊のようだ。

 ところで、赤城はというと、ずっと金剛の方を見ている。詳しくは、金剛の食べ残し。

 

「もしかして……欲しいの?」

 

「どうしてわかったんですか⁉︎」

 

「顔に書いてたからね」

 

 あれほどの量を食べたというのにまだ足りないというのか。比叡たちはまだ帰ってこないし、これ以上時間が過ぎれば、カレーが冷えて美味しくなくなってしまう。

 

「あげるよ。冷えたら嫌だし」

 

「いいんですか⁉︎」

 

「比叡には私からちゃんと説明するし、きっと大丈夫だよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 美味しそうにカレーを食べる赤城を横目に瑞鶴は口を開く。

 

「完全に餌付けされたわね」

 

「そうね、瑞鶴。あと、妹3人に闇討ちされるのが頭の中で簡単に想像できるわ」

 

 金剛は嬉しそうにカレーを食べる赤城を見て、彼女たちと過ごす時間がとても楽しく、容易に手放したくない。そんな風に考えた。

 

 ……しかし、金剛はまだ『艦娘』を知らない。




結局はアニメキャラしか出せなかった……。

至らない点があればビシビシバンバン指摘よろしくです。
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