なくならないもの   作:mn_ver2

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最近艦これ始めました。
飛龍が建造できたけど、燃料と鋼材の消費が半端なくて禿げそうです。




 痛い。

 恒久的に電気を流されているような鈍い痛みを感じる。腕がうまく上がらない。足も上がらない。

 頑張ればなんとかできるが、その痛みは代償として大きくなる。どちらかというと、腕の方が痛い。具体的に右腕。

 金剛は顔をしかめながら、その痛みに抵抗する。やはりキツイ。

 頭は痛くない。意識ははっきりしているし、布団の暖かさだってはっきりと身体全体に伝わっている。

 ではなぜか。

 なぜこのような事態に陥ったのか。

 寝ぼけている金剛の思考能力は言うまでもなく著しく低下しており、その原因がわからない。

 事故?

 違う。そんなことはない。昨日はそんなことはなかった。

 ならば病気?

 可能性としてはありえる。轟沈寸前だったらしい身だ。明石でさえ気づけない、重大な何かがあったのかもしれない。

 下手すると死ぬかも?

 結局結論は出ることはなかった。諦め、太いため息を吐く。

 

「ああ、痛いよ……きりしまぁ」

 

 甘えるような声で隣でりんごを上手に切る霧島にかける。

 一瞬にして理性が吹っ飛び、りんごを落としそうになったが、どうにかもち堪える。

 切り終えたりんごを皿に乗せ、金剛の側に置いた。そして、メガネをくいっと上げる。

 

「筋肉痛ですね」

 

「そかー。あいててて……」

 

 爪楊枝で切ったりんごのひとつを刺し、なんの抵抗もなく、霧島からの『あーん』を受けていた。

 そこを偶然比叡と榛名に見られた霧島にその後どうなったかは、涙をのんで見守ってほしいものだ。

 己の欲求を満たすことには成功したが、その代償は壮絶なもの。

 霧島に、合掌。

 

 ◆

 

「あの卓球がちょうど俺が帰ってきた直後で良かったわ」

 

 執務室でくつろぐ提督は、暇そうにペン回しをしている。

 集合時間はそろそろ。今日は爆撃機による様子見の日である。長門、陸奥、大淀と揃い、待つのはあと1人だ。3人ともソファーでくつろいでいて、あまり作戦前という状態には見えにくいが。

 コンコンとノックの音。

 

「失礼します」

 

 入って来たのは赤城だ。

 これで全員そろった。

 

「ん。じゃあ始めるか。長門」

 

「ああ」

 

 ちょっとしたお菓子パーティーを絶賛開催中だったが、目にも留まらぬ速さで片付けると、地図を大きく広げた。

 映るそれはこの鎮守府からはるかに離れた海域だ。そのど真ん中に大きな赤丸が書かれている。

 

「これがあの深海棲艦の存在予測地点だ」

 

 長門が指でなぞる。

 しかし、簡単に言っているように聞こえるが、そうではない。縮尺などの関係から考えると、その範囲はとても広い。

 これでは爆撃するどころか見つけることすらできないかもしれない。

 

「あの……どうして私でしょうか?」

 

 赤城は不安にかられ、とうとう提督に尋ねてしまった。

 確かに赤城は爆撃機を発艦できる艦娘だ。だが、それだけならば同じ一航戦の加賀……他にも飛龍などでも十分事足りるはずではないのか。

 そんな不思議が絡み合い、解けそうになくなってしまったのだ。

 

「なんでだと思う?」

 

「わからないから訊いているんですけど……」

 

「あ、うん、そうだったな。ごめん」

 

 赤城は心の中で少し提督に呆れてしまった。が、提督はやることはちゃんとやる、真面目な提督だ。そこは揺るぎのない真実であり、深い信頼もある。

 

「お前、加賀が心配なんだろ」

 

「……はい」

 

 言い当てられた赤城は素直に頷いた。

 

「だってお前、いつも加賀のこと気にしてたもんな」

 

「そうです。加賀さんの辛そうな顔を見たくない……ずっとその一心でした」

 

 思い返す加賀の苦悩。誰もいないところでひとり頭を抱えていたのを見てしまった赤城はどうにかして加賀の助けになりたかった。赤城にできるすべてをもってして加賀を救い出したかった。

 

「だから私を選んだのですか?」

 

「まあそんなとこよ。引き受けてくれるか? ……って言っても正直いろいろ話してしまったからあれなんだけど」

 

「私が断るわけないじゃないですか。いえ、むしろぜひ私にやらせてください」

 

「おーけー。じゃあ具体的なこと話すからそこのソファーに座ってくれ」

 

 陸奥がソファーのスペースを空け、そこに赤城が座る。

 

「この作戦は相手の戦力を見極めるためのものだ。無駄に深追いしたり、過剰な攻撃は禁止する」

 

「では具体的にどうすれば?」

 

 赤城が質問を投げかける。

 

「基本的な行動は数発だけくらわせてやって、その後の様子を見る。で、想定外のことが起こらない限り即時撤退だ」

 

「あ、爆撃機には映像カメラを搭載させてもらいます」

 

 大淀が間に入る。

 

「構いませんよ」

 

「ありがとうございます」

 

「あと最後に、この攻撃は超遠距離にしたいから、お前はこの辺な」

 

「えっ⁉︎」

 

 提督の指した場所は予測範囲外であることはもちろん、またさらにその遠方だった。

 

「これまでの敵とは賢さが別次元だ。なんらかの方法で位置を察知されてしまうかもしれない。正直もっと下げてもよかったんだが……」

 

 そう言って今さらになってうんうん提督が悩み始めた。

 

「またか……もっと、もっと後ろにっ! って駄々こねてたのは提督ではないか」

 

「いやぁ、だけどさ? やっぱりほら、あれじゃん?」

 

「あれとはなんだ?」

 

「なんとなく感じろよ」

 

 なるほど、長門が話している内容から、提督は赤城をできるだけ後ろに配置しようと考えていたらしい。

 そんな優しい気遣いが嬉しくて、ついつい笑みがこぼれた。

 

「ありがとうございます、提督。私は大丈夫ですから」

 

「む……わかった」

 

 歯切れの悪い返事だったが、どうにか提督をなだめることに成功した。

 

「随伴艦として長門と陸奥を連れて行ってくれ……頼むぞ」

 

 神妙な提督の表情に、ふたりとも無言で首肯する。

 

「よし、じゃあ行こうか!」

 

 膝を叩き、己に喝を入れた提督は4人を連れて執務室を出る。

 できるだけ明るく努めた提督の顔の裏では、あることを危惧していた。その『想定外の出来事』が起こることを。

 

 ◆

 

「あ゛〜〜」

 

「はしたないわよ」

 

「でも〜」

 

「デモもストもありません」

 

「むぅ〜」

 

 身体中がギシギシして、油をさされていない機械人形のようだ。ついつい呻き声を漏らすと、すぐに加賀に突っ込まれる。昨日、金剛に負けじ劣らずの動きをしていたはずなのだが、筋肉痛の様子はあまり見られない。

 車椅子を比叡に押され、鎮守府をぶらぶらする。それが本日3日目だ。

 本当に何もすることがないので、誰かにかまってほしいものだ。

 

「こうやってぼーってするのも……悪くないなー」

 

 太陽の光に照らされ、目の前の海の潮を嗅いでいると、心が無心に還る。

 戦争を忘れ、自分が艦娘だということも忘れて……。

 妹たちもそう思っているのだろうか。

 ふと金剛は首を傾けて妹たちを見てみる。

 3人とも大きく深呼吸をしていて、平和を身に染みて感じるようだ。

 

「あ、金剛さん、こんにちは!」

 

 ランニングの途中だろう、ジャージを着た吹雪が肩で息を吐きながら挨拶をしてきた。足踏みをしながら頬を流れる汗を拭い、にぱっと笑顔になる。

 

「うん、こんにちは。吹雪ちゃんランニング中なの? えらいね」

 

「はいっ! 私、もっと強くなりたいんです!」

 

 元気でいい子だ。金剛は吹雪の生真面目さを評価した。

 体力をつけ、戦いの中でも息が切れないように日頃の鍛練を欠かさない。そういったところか。

 そういえば、戦うといっても、どうやって戦うのだろうか。海の上を文字通り走ったりしているのか。しかしそれは普通に考えたら不可能なことで、本当に自分が記憶をなくしているのだと痛感する。

 

「昨日はすごく楽しかったですね! 金剛さんとシングルだったのに、なんだか比叡さんたちも相手にしているみたいでした」

 

 おそらく、いや絶対それは勘違いなどではない。

金剛と一対一をしたのだ。比叡たちの嫉妬のバーニングラブに襲われていたことを吹雪は知らない。

 むしろ知らない方が幸せだ。

 

「また今度やろうね」

 

「喜んで! あ、そうだ。赤城先輩を見ませんでしたか?」

 

 金剛は頭をひねって思い出したが、赤城に会った記憶はなかった。比叡たちも見てないようだ。

 

「うーん、見なかったかな。ごめんね」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「赤城に何かあったの?」

 

「何かあったわけじゃないんですけど……」

 

 急に吹雪がもじもじしだした。

 下を向きながら、恥ずかしそうに言った。

 

「一緒に食事に行きたいなー。なんて……」

 

「そういうことなんだね。じゃあ赤城に会ったら吹雪ちゃんが呼んでるって伝えておこうか?」

 

「はい、お願いします!」

 

「うん、了解」

 

 親指を立ててカッコつける。

 

「あははっ。ではこれで」

 

 そう言い残して吹雪は走り去っていった。

 その後ろ姿を見て、金剛はあることを考えていた。

 艦娘としての戦いとはどんなものなのだろうか。人間という形に収まり、かつ軍艦並の力を誇る。それが艦娘。

 金剛はまだ『戦い』を知らない。ベッドの上で資料ならいくらでも読むことができるが、それはただ間接的に知っただけだ。どれだけ詳細に書かれていようが、本物とは程遠い。

 今の子でも『戦い』を知っているのだ。知らないのは金剛だけだ。そう思うと変に恥ずかしく感じる。

 そして、そんな自分がここにいていいのかという不安も浮き上がる。

 ここに残る残らないにしても、艦娘というものをより深く知らなければならないと思った。

 

「ねえ比叡」

 

「なんでしょうか?」

 

「あとでさ、艦娘の戦いを教えてくれない?」

 

 その質問に比叡が不意をつかれたように一瞬だけ足を止めた。

 きっと記憶喪失のことが頭をよぎったのだろうが、それを振り払って比叡は笑顔で答えた。

 

「任せてください。比叡、気合い! 入れて!! 頑張るから!!」

 

「じゃあ金剛も気合い入れるよ」

 

「はい!」

 

 比叡はとても嬉しそうだ。

 

「お姉様、霧島もですよ!」

 

「わ、私も!」

 

「百合百合しい姉妹ね」

 

 やはり賑やかな姉妹だ。

 加賀がツッコミを入れても誰も否定しないまであるのだから。

 はたから見れば百合百合姉妹。そして、実際も百合百合姉妹なのだが、強固な愛と絆によって結ばれた、誰にも引き離せない姉妹でもあった。

 

「暇だからさっそく行こうよ。比叡、どこに行ったらいい?」

 

「それなら出撃ドックですね。皆そこから出撃するんです。あ、でも今は滅多に使われないから貸切になるかもしれません」

 

 貸切になれば周りに迷惑がかかることなくいろいろなことができそうだ。

 比叡に車椅子を押され、出撃ドックへ向かう。

 

「久しぶりね。後で艤装の手入れをしなくては」

 

「そうですね。あ、なら終わったら一緒にしませんか?」

 

「別にいいわ」

 

「ありがとうございます!」

 

 加賀と榛名で会話の花が咲いている。この組み合わせはわりと珍しい。

 

「あ、そろそろですね」

 

 霧島の声で金剛はふと顔を上げた。確かにそこは他と違う造りで、赤レンガの建物と比べると、よりしっかりしてある。

 

「私が開けるわ」

 

 加賀が前に進み出て横開きのドアを開けた。

 

「金剛さん、ここが出撃ドッ……赤城さん?」

 

 案内しようとした加賀の足が止まった。

 中では3人がぐったりとしながら艤装を下ろしているところだった。中にいたのは赤城、長門、陸奥だった。しかも、3人とも軽傷とは言えない怪我を負っていた。

 

「加賀さん……?」

 

 重そうな頭をゆっくりと上げて赤城は加賀、そしてその後ろにいる金剛たちを見た。

 赤城の服は破れ、はだけ、ところどころ黒ずんでいた。そして、飛行甲板も派手なダメージを受けていた。

 

「お前たち、どうしてここに……!」

 

 長門の声に力は入っておらず、ただ広い出撃ドックに虚しく響くのみ。長門も、陸奥も同じように様々な箇所に傷が目立っていた。

 

「私が艦娘がどんなのかって訊いたら皆でここに行こうって話になって……」

 

「そう、か……」

 

 金剛の説明に長門が納得したように低く息を吐いた。

 

「提督を呼んでこようか?」

 

「いえ、それには及ばないわ。もう来ると思うから」

 

 陸奥が疲れた表情を隠しきれずに答える。

 出撃を最小限に抑えているのに、強者の3人がここまでになるのか。

 これこそが『戦い』だ。

 金剛はそう思った。事後ではあるが、直接に見ることができた『戦い』に身体を強張らせた。

 これは恐怖か。震える手を見つめ、それを誰にも見られないように努めた。死と隣り合わせの『戦い』は、これほど怖いものなのか。

 いつの間にか唇は震えていた。

 

「いったい……何があったの……?」

 

 そう尋ねるので精一杯だった。

 

 ◆

 

 予測範囲に侵入してからすでに数十分。爆撃機は未だ目標を見つけられずにいた。

 

「なかなか見つかりませんね」

 

「そうなのか? このあたりは身を隠す場所は特にないはずなのだがな」

 

 観測を続けていた赤城の報告に長門が腕を組む。

 そろそろ全てを見て回った頃合いだ。

 敵は賢い。提督はそう言った。

 考え、策を労し、勝利を手にする。それが艦娘たちの戦い方だ。深海棲艦側に、それと同じようなことを思考できる強敵がいることを提督は示唆したのだ。

 正直信じられない話だが、金剛の件でその疑惑は確信へと変わった。

 はやく沈めなければ、また悲惨なことが起こってしまう。それだけは、なんとしてでも避けたかった。

 その時だった。赤城は敵影を見つけ、声を張り上げた。

 

「目標、発見ッ!」

 

「陸奥……!」

 

「わかってるわ!」

 

 長門に呼ばれた陸奥が鎮守府に通信する。返事は、作戦実行。

 

「OKよ!」

 

「わかりました。ではこれより爆撃します!」

 

 赤城の号令ではるか遠方の爆撃機に爆撃の体制に入る。

 目標……そしてその取り巻きの姫二体と鬼一体。一網打尽にできれば幸いなのだが。

 こちらには気づいていないようで海上に停止しているようだ。

 急降下し、爆撃機が迫る!

 駆動音に気づき、頭を上にあげたがもう遅い。

 爆弾が切り離され、綺麗に頭上へと放物線を描いて落下した。

 撃ち落そうと構えるのもすでに遅い。

 何もかもが遅い。

 なんの抵抗も受けなかった爆弾はその役割を見事果たした。

 爆発し、爆風が敵を殴り、爆炎が回りを包み込む。

 

「爆撃、成功しました!」

 

「気を抜くな、観測を続けるんだ」

 

「わかりました」

 

 陸奥が爆撃成功の旨を鎮守府に報告。返事は長門と同じ、観測を続けろ、だ。

 映像はリアルタイムで鎮守府に届いている。

 爆撃機が大きく弧を描いて飛び回りながらその後の様子を映像に撮り続ける。

 煙が晴れ、だんだん姿が見えてくる。

 傷ついた姫と鬼。そして、目標は健在。それはまさに味方を守ったようにしか見えなかったのだ。

 

「守った……?」

 

 赤城が驚愕の声が溢れる。長門と陸奥はその様子を見られないから何が起こったのかは赤城に尋ねないとわからない。

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ、その……姫と鬼が目標を守り……えっ」

 

 ました、と報告しかけていた赤城の口が震える。爆撃機ごしに赤城もリアルタイムで見ているから、目視している事態に、まるで理解できなかった。

 あの動きは……どう見ても……。

 

「歌っている……?」

 

「どうしたんだ赤城、はやく報告するんだ」

 

 急かしてくる長門。しかし、それすら耳に届かない。おそらく鎮守府でこの様子を見ている提督と大淀もそうだろう。

 映像だけで音声は録っていないから具体的にはわからないが、歌っているのだ。さらに驚くことはそんなことではなかった。

 

 

 

 

 

「姫、鬼……歌によって回復しています……」

 

 

 

 

 

 

 長門が目を見開く。

 

「なんだと……⁉︎」

 

 出血した箇所が塞がれ、折れた部位が再生してゆく。

 映像はまだ続く。姫鬼を全快させた目標は爆撃機を捉え、目を合わせてくる。

 冷たく口元が笑い、知らない方向に指をさす。

 次の瞬間、爆撃機は跡形もなく破壊された。

 

「爆撃機、堕とされました。はやく引きましょう! 報告は後です!!」

 

 覇気迫る表情で訴えられた長門は、一言も文句を言うことなく赤城に従った。

 鎮守府に撤退を進言し、許可をもらう。

 即座に後ろに向くと、最大戦速で撤退を始めた。

 3人の焦りとは裏腹に海はとても静かだ。そこを猛スピードで駆け抜ける。

 赤城は考える。爆撃された後のあの余裕の対応。そして、謎の指差し。

 なぜあんなにも余裕を醸し出していたのか。歌うなど、自ら隙を晒け出すも同然の行動だ。

 だが、もし爆撃機の存在を初めから分かっていて、これ以上の敵機はいないと判断していたなら……?

 そう強引に仮定しなければ納得ができなかった。

 しかし、そんなことが……。

 ……爆撃機が爆撃をする前には存在を認知されていたということ。

 それしかありえない。そうでない限り、かの仮定は成り立たないのだ。認めしまいたくはなかった。なぜならば、それはつまり赤城の実力不足であることを意味するからだ。もちろん見つからないように心がけたのに。

 赤城は熟練中の熟練だ。それを破るとならば大きな脅威であることは間違いない。

 提督の言葉が頭の中で何度も流れる。

 賢い、と。

 決して侮ってなどいなかった。ただ、それが予想の遥か上をいっただけ。だがそれは言い訳だ。

 そして、あの指差しには必ず意味があるはずだ。あの方角、目標の位置から考えると、もしかして、自分たちの待機していた場所……?

 意味があるとしたらそれしかない。それ以外考えられないのだ。

 だとしたら、

 

 どうやって……!

 

 ふたりに忠告しようとしたその時だった。

 

「三時の方向、敵影発見! 戦艦1、重巡2、駆逐3ッ!」

 

 遅いのは向こうでなく、こちらだった。

 陸奥が悲鳴に近い声で叫んだ。こちらはたった3人だ。

 いったいどうやってこちらの位置を捉えたのか。そんなことをぐだぐだ考えている暇はない。敵は既にこちらに砲を向けている。

 これが『想定外』のことだろうか。赤城は焦りの中でひとり漠然とそう感じた。

 

「まずいぞ……九時の方向にも敵影……はさみうちだ」

 

 長門が悔しそうに呟く。

 赤城は長門の言った方向を見る。確かにはさまれている。しかも、姫が混ざっているときた。

 もしかして初めから、遊ばれていたのではないか……。赤城はそのように考えてしまった。

 

「とにかくありったけの砲弾を撒きながら撤退しましょう」

 

 陸奥の言葉に長門は頷き、ふたりはそれぞれ砲台を左右に向けた。

 

「赤城、必ずお前を帰してやるからな」

 

 そこにあるのは信頼だ。

 赤城は疑いの欠片もなく長門と陸奥を信じた。

 

「私も必ず帰してあげますよ」

 

「うむ。では行くぞ! 全砲門……斉射ァ!!」

 

 長門の砲門が火を吹く。

 3人の、決死の撤退戦が始まった。




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・歌による味方の回復
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